『……し、死ぬかと思った』
人の手の届かない、暗い地下に造った巣穴の底で一人呟く。
あれから何とか東方不敗という名の生きる理不尽を振り切り、連邦軍と恐竜帝国との最前線付近に潜伏したおかげで束の間の平和が訪れている。
あの親父の足止めに使ったせいで増やしたデスアーミー軍団が7割くらい減ったけどな! あの親父どんだけ人間離れしてやがる!?
クライウルブズから回収して取り込んだエネルギーキャノン撃ち込めば簡単に増やせるけど、それでも精々日産三十機位が関の山なんだぞ! しかもゾンビ兵の数が少ないせいで動きが鈍いから数で圧倒するくらいしかできないし。
『あー……やめやめ。どうせ勝手に増えるんだし、この際災害に遭ったとでも思って諦めよう』
時間を置けば補充できる戦力等どうでもいい。それ以上に考えなければいけない事がある。
『……もっと強くならなきゃ駄目だ』
逃亡に成功し、地下に潜伏することで安全を得て最初に考えたのは、今のままではいけない、という事だった。先日遭遇したような化け物に対抗するためには、デスアーミー達だけではとても足りない。今まで通り放浪するにしても隠れ潜むにしても、もっともっと強くならなければならない。
『俺がこのまま泣き寝入りすると思ったら大間違いだぞ…!』
幸い俺の身体はデビルガンダムで、ここは技術力が色々な意味で狂ってるスパロボ時空だ。
Wマジンガーにゲッターロボ、ライディーンに各種ガンダム、クライウルブズが居たのだからEVAやゼオライマー等も存在してる筈。それらをどうにかしてゾンビ兵乗せるなり洗脳するなりして手中に収める事が出来ればどれだけの戦力とがなのか。しかし……
『…下手に手を出す訳にもいかないんだよな……』
今までに得た情報と先ほど挙げた機体の情報を統合、恐らくここをMXの世界だと仮定する。
地底勢力との戦いに明け暮れているWマジンガーやゲッターロボ、ライディーンはこちらを追っているだろう東方不敗をどうにかやり過ごし、機を伺えば手中に収めることも出来るかもしれない。否、Wマジンガーに関しては博物館に飾られている時を狙えば簡単に手に入れられ……あ、ライディーンは自我あるっぽいし無理か。
兎も角、それをやる訳にはいかない。やってしまえばこれから先地球に来訪するであろうベガ星連合軍、機械帝国ガルファを撃退できる戦力が無くなってしまう。
統一帝国ギガノス? 火星の後継者? 百鬼帝国? 鉄甲龍?
コソコソと暗躍してるテロリスト共や月に樹立したばっかりの独立国家じゃ幾多の星を攻め落としているベガ星連合軍やガルファとやり合うのは不可能だ。百鬼帝国はゲッター線増幅炉を手に入れて人類の改造が間に合えばワンチャン有るぐらい? ……鉄甲龍? アレは放っとけば勝手に内輪揉めで自滅するから放置一択で。
という訳で、下手にスーパーロボット達に手を出せば戦力が足りずに地球が滅ぼされてしまうかもしれない。それ以前に、ここが本当にMXの宇宙ならば地球が滅ぼされると並行世界が生まれ過ぎて宇宙がやばい。
今地球を滅ぼされると「時の観測者」であるラーゼフォンが覚醒しない。覚醒してくれないと平行世界へ移動する術がなければ宇宙消滅に巻き込まれて死ぬという事だ。
それは不味い。非常に不味い。他人がどれだけ死のうが人としての尊厳踏みにじられようが知った事ではないが、ラーゼフォンが覚醒せずに死ぬのは非常に不味い。宇宙が滅べば俺も死んでしまう。
『…うん、本編が終わるまでスーパーロボットに手を出すのは無しの方向でいこう』
下手に手を出して『戦力足りずに負けました!』なんて事態になったら目も当てられない。取りあえず、主人公達がラスボスのババア倒してくれるまでは放置一択で。暫くは東方不敗から逃げつつ地力と戦力を強化しよう。
取りあえず、今俺が保有してる戦力を並べてみよう。
・デビルガンダム(俺)×1
・デスアーミー×そこそこ(増殖中)
・デスバーディ×そこそこ(増殖中)
・デスネービー×たくさん(増殖中)
・デスビースト×ちょびっと(増殖中)
・ゾンビ兵×20
……うん、化け物だらけのこの世界を生き残るにはまるで足りない。デスアーミーはいくらでも補充は効くけど数を揃える前に蹴散らされたらその時点で詰む。つーか俺ってデビルガンダムの癖に全然進化してないんだよな……触手は生やせるけどガンダムヘッドも付いてないし。
『うーん……確かドモンと新宿で遭遇する頃には第2形態に進化してた筈だけど……何で進化出来ないんだろう?』
「くくくく、ふははははは……」
中身が俺のせいなのか、或いは腹で笑ってるキョウジの影響なのか……もしかして俺の知らない”何か”が足りないせいか……うーむ分からん。取りあえず俺の強化に関しては後回しにしよう。
『……となるとデスアーミーの強化、か……流石に難しいな』
その辺をうろうろしているデスアーミーの内1機を、触手で突き刺して目の前に持ってきて軽く念を送ってみる。
『■■■■■■』
串刺しにされて機能を停止していたデスアーミーは、もがく様に震え始め、やがてその原型を留めながら変化を始めた。
そして出来あがったのは、下半身に魚のような水中機動ユニットと三叉の槍を装備したデスアーミーのバリエーションの一つ、その名もデスネービー。
『どうしたもんかなぁ……』
俺の身体から産み落とされる時はどれになるかは完全にランダムだが、意図的に変化させるだけなら念を送るだけで十分。これにエネルギーを適当に送り込む事である程度の強化は可能だが、その程度では石破天驚拳の一発で諸共消し飛ぶ図しか頭に浮かばない、というか消し飛ばされたし。
『せめて全機にゾンビ兵乗せれればな……いや無理だな』
安直にゾンビ兵を乗せるという手もある。ゾンビ兵を乗せれば少しだが性能も上がる。
だがゾンビ兵を造るのに人を必要としてる現状では難しいと言わざるを得ない。
街を襲ってそこの住民にDG細胞を植え付けて感染させれば戦力を確保出来るのだが、それをやると間違いなく東方不敗が飛んでくる。ついでに宇宙から地球に戻ってきたらしいドモンも飛んでくる。少し性能を上げるためにWキング・オブ・ハートの相手をするなんて割に合わないにも程がある。
『ゾンビ兵は駄目となると……バリエーション増やしてみるか?』
デスアーミーは、こと量産という一点に関していえば最高の機体だ。なんせデビルガンダムである俺が健在である限り無限に増えるのだから。
そしてオプションパーツを付け加えることで容易にその性能を上げる事が可能。更に特定の機体のデータを組み込んで擬装させればその機能や武装まで模す事も出来る。
ただ問題は、ゾンビ兵の乗っていないデスアーミーでは多少の強化した所であまり意味はなく、色々な意味で最強格の東方不敗を相手に一撃で薙ぎ払われない程度に強力なMSやMFの存在を俺が知らないという事だ。
『本当にどうしたもんかなぁ……いっそマジンガー風味のデスアーミーでも造るか?』
「ははははは! ははは『やかましい!』」ハがっ!?」
頭を抱える俺を嘲笑うように高笑いを上げるキョウジを触手で叩きつつ、どうやって戦力の増強を行うか頭を悩ませるのであった。
悩む主人公と笑うだけのキョウジの図