ハリー・ポッターと十六進数の女   作:‌でっていう

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第07話 九九三年

「九九三年に、何かあったんですか?」

「いいですか、九九三年は——

ホグワーツが創設された年です」

「なるほど……。でも、それってこれと何か関係あるんですか?」

 

先ほどマクゴナガル先生は「やはり」と言った。万年筆にホグワーツ誕生との関係を裏付ける何かがあったということか。マクゴナガル先生は近くにあった本棚からなにやら分厚い本を取り出した。

 

「では、私が調べて分かったことをお伝えしましょう。この万年筆には『我々の』魔法がかかっていました。とても頑健な防衛魔法です。強力な『闇の魔術』であっても、これを破壊することはおろか、汚すことすらできないでしょう。あと、インクを自動補充する魔法もかかっているようです」

「は、はぁ。そういえば、長く使ってるのに綺麗なまま……。インクも交換したことないし……」

「それってすごい便利じゃないかしら? まさに万年筆ね」

 

キキちゃんの言う通り、これはメンテナンスフリーで永遠に使い続けられる、とんでもない万年筆だったというわけだ。しかし、これだけではホグワーツの誕生と直接の関係は見当たらない。

 

「で、それが九九三年と何の関係があるんですか?」

「この手の防衛魔法は、術をかけてから魔力を与え続けることによって、どんどん効果が増していきます。そして、ここまでの防御力に達するには少なめに見積もっても八百年はかかります」

 

なんと、千年近く成長し続けた防衛魔法か。たしかにそれならホグワーツの誕生と同じくらいの時期にあたる。だが、それでもまだ決まったわけでは……。

 

「そんな便利な魔法があるなら誰でも使っちゃいそうだけど?」

 

そう、そういうことだ。キキちゃんの言う通り、必ずしもホグワーツでなくたって、何か事情があって万年筆に魔法をかけた可能性は十分にありそうなものだが。

 

「術をかけてからしばらくは、それを絶やさないように維持しないといけません。普通の環境なら、だいたい十年」

 

たしかに、十年もの間術を掛け続けるのは困難だろう。しかし、ミーティス家に渡ったのと作られたのはほぼ同時だと聞いている。この魔法を知ってすらいないミーティス家の魔女にそんなことができるはずはない。しかも、ホグワーツとの関連性は一体どこに……。

 

「じゃあ、この万年筆はどうやって……」

「普通の環境なら十年、と言いました。では、ホグワーツのような場所ではどうでしょう」

「ホグワーツのようなって……?」

「ご存知のとおり、この城には防衛魔法がかかっています。この万年筆にかかっているのと似たようなものですが、城の方は創設者——名前は知っていますよね。その創設者たちが一瞬で百年分ぐらいの防衛魔法をかけてしまいました」

 

なんということだ。百年分の魔法を一瞬で。四人いるので一人当たり二十五年分としても、強すぎる。

が、その割にはホグワーツの校舎は綺麗とは言い難い。百年分と、さらに千年経過しているのだからこの万年筆以上の防衛になっているのではないか。どうやらそう思っていたのが顔に現れてしまったらしく、マクゴナガル先生は疑問に答えた。

 

「千年分もの防衛が感じられない、と思ってるようですね。

実は、無理矢理百年分いっぺんにかけてしまったせいで時間経過による強化が無くなってしまったらしいです。つまり、ホグワーツの防衛はずっと百年分。それだけで十分すぎるんですけどね」

「……で、そんな場所だとアルの万年筆の魔法はどうなるのかしら?」

 

そうだ、一番知りたいのはそこである。すっかりホグワーツの魔法に話が脱線してしまっていた。マクゴナガルは先生よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにそれに答えた。ずっと前から聞いていたのだが。

 

「周りに強力な防衛魔法があったため、その万年筆にかけられた魔法もほんの数日で定着できたのでしょう。これは推測でしかありませんけどね」

 

つまり、成長こそしないがとんでもなく強力な防衛魔法をかけたホグワーツの中で、万年筆に成長する防衛魔法をかけた結果それが一瞬で定着し、ミーティス家に渡されてから千年間成長し続けた、ということか。たしかに辻褄は合うが……。

 

「あの、マクゴナガル先生? なんでそんな千年も前のことをそんなに詳しく……?」

「そうでした。まだ言ってませんでしたね。この本です」

 

疑問を率直に伝えると、先生は先ほど取り出した分厚い本を手に取った。タイトルは『ホグワーツの歴史』とある。同じタイトルの本なら自分も持っているが、雰囲気が大分違うようだ。

 

「えーっと、それは?」

「『ホグワーツの歴史』の未改訂版です。とても貴重な資料ですが……。あなたに渡すために残っていたのでしょう。複製も終わりましたし、持っていきなさい」

「えっ? 未改訂? って、え!?」

 

この教師、話を加速させすぎである。まず、未改訂版とはどういうことだ。自分の所持しているものにはうん十改訂版と書いてあった気がする。つまり、これは現在からうん十も前の版、ということになる。当然読める状態のものは貴重なはずだ。そして、なぜかそれを自分に渡そうとしている。何が起こっているというのだ。

 

「『ホグワーツの歴史』は時代に合わせて不要になった情報を削除、新たな歴史を加筆、というふうに何度も改訂されてきました。といっても、誰にとって何が要るかなんてわかるはずはないのです。重要な情報も削除されています。

そして、創設当時の様子を知るのに最も適した版がこれ、ということです。創設十周年かなにかで執筆されたものですよ」

「えーっと、それをなんでわたしに?」

 

尋ねると、マクゴナガル先生は机の上にあったわたしの万年筆を手に取り、杖で明かりをつけてキャップのほうを照らした。

 

「ここを見てごらんなさい」

 

マクゴナガル先生は『アルーペ』の名前が彫られている(後継者が決まるごとに魔法で彫り直しているらしい)クリップの裏側を指して言った。受け取って、少し浮かせて隙間を覗き込んでみると——

 

「ゴドリック・グリフィンドール……」

 


 

「雪、ねぇ……。雪が降ってるときの配達は大変だったわよ」

「配達って?」

 

談話室で暖まりながら外を眺めていると、キキちゃんが小さな声でぼやいた。

 

「あれ、話してなかったかしら? 『前世』ではいわゆる『魔女の宅急便』をやってたのよ」

「宅急便……。キキちゃん、すごい!」

 

なんだか、キキちゃんの話す『前世』の話は物語のような新鮮さがある。もしかしたら、物語の世界から出てきちゃったんじゃないだろうか、なーんて。

十二月になると、ホグワーツは銀世界となった。雪が吹き込む廊下はつるつるになり、医務室の仕事が増えている。当然、雪合戦の雪玉に石を入れるヤツもいる。『魔法薬学』の地下牢教室は特に寒く、釜に近づきすぎて火傷をする者もいる。

 

「アルーペ、キキ、クリスマスはここに残るの?」

 

ハーちゃんが駆け寄ってきた。ホグワーツにはクリスマスの前後合わせて三週間ほどの休暇がある。その間学校に残る者は名簿に名前を書けと言われていたのだ。

 

「うーん、色々調べたいことがあるから、一度家に帰るよ。ハーちゃんは?」

「私もよ。でも、休暇までにニコラス・フラメルについて分からなかったら、残ることになるかもしれないわ」

 

調べたいこと、というのはもちろん『ホグワーツの歴史』についてのことである。グリフィンドールの名が万年筆に刻まれている以上、ホグワーツとの関連性は否定できないだろう。が、さすがに千年前の書物に現代人の情報は載っていないと思われるのでの、ハーちゃんの協力はできなさそうだ。

 

「図書館で本を探してるんだけど、どんなジャンルの人なのかすら分からないから探しようがないのよ」

「うーん、そもそも本に載るような有名な人なの?」

「ハグリッドが調べるな、って言ってるから、多分調べればわかるような人なんじゃないかなって」

 

有名な人なら、自宅の図書館の本にも載っているかもしれない。しかし、残念ながら検索機能の魔法はかけられていなかった。自分で作るにしても、膨大な時間を必要とするだろう。ここは一人で頑張ってもらうしかない。

 

「なるほど! ……ごめんね、役に立てなくて」

「いいわよ、ハリーとロンにも手伝ってもらうから。でも、アルーペは何を調べるの?」

 

聞かれるだろうとは予想していたが、果たしてどう返せば良いのか。学校のこと、なんて言ったらこの勉強熱心な女の子は食いついてきてしまうだろう。先祖のこと、なんていっても要らぬ心配を生みそうだ。ましてや自分の魔法の秘密を明かすなんてことはできない。どうするか——

 

「あたしがアルに、カメラについて教えてって言ったから、どうせなら一から作っちゃえってなったのよ」

「なにそれすごいじゃない! 楽しみにしてるわ!」

 

どう言い訳するか迷っていると、キキちゃんがうまいことこのピンチを乗り越えさせてくれた。

……と一時は思ったのだが、ハーちゃんが『楽しみに』している以上、カメラを『一から作っちゃ』わなければいけないのではないか!? 厄介なことを言ってくれたものだ……。

 


 

「『P』モードだと明るさを自動的に調整してくれるよ、所詮コンピューターだからあまり信用はできないけど」

 

帰りのホグワーツ特急で、早速はキキちゃんにカメラについて教えることになった。わたしがいないときにカメラを使うときは現像の魔法は使えないので、フィルムの扱いについても教えることになる。

 

「ところでフィルムを現像する魔法、あたしにも使えないかしら」

「わかんない。わたしもなんとなくでやってるだけで、論理的にはどうなってるのか……」

 

結局ハーちゃんはニコラス・フラメルについての調査をハリー達に任せてきたらしく、一緒にホグワーツ特急に乗ることになった。転移魔法でさっと帰宅できないのは、特急に乗っていないことがバレてしまうからである。悩み製造機と化したハーちゃん様は、そんなわたしに難しい顔をして話しかけてきた。

 

「ってか、そのカメラ、学校の中で普通に使ってたわよね。ホグワーツではマグルの電子機器は使えないはずよ」

 

ごもっともな指摘だ。そういえば、行きのホグワーツ特急でも『カメラが使えないかも』みたいな話をした。到着したその日に使えるかどうか試したが、何の問題もなくシャッターは切れたのだった。魔力密度の高い自宅で使っていたから、耐性ができたのだろうか。

 

「特に魔法をかけたりはしてないけど……。でも、これから作るカメラは魔法制御にしてみるよ」

 


 

「さてと、これが未改訂版の『ホグワーツの歴史』ね……」

 

自宅の図書館。ここが一番快適に読書ができる空間だ。パソコンの電源を入れ、机の上に分厚い本を置く。ちょっとしたメモにはパソコンが最適だ。

 

「どこから手をつければいいのかな……」

 

これだけの量があるのに、どこに目的の情報があるのだろうか。この本には何かを考えながら開いたときに考えていた内容に近いページが出てくるという魔法がかかっている。辞書的に使うならともかく、手かがりの少ない状態で情報を集めるためにしらみつぶしに読むには実に適さない魔法だ。

そんな本としばらく格闘すると、パソコンの画面を埋めるぐらいには情報が抜き取れた。主にゴドリック・グリフィンドールに関することであったが、有力な手がかりになりそうなものは見当たらない。一旦打ち切り図書館を出ると、出口にアリスが立っていた。

 

「どうしたのですか? ざっと二時間はここにいたみたいですが……」

「ちょっと、調べることがあって……」

「調べること?」

 

アリスに万年筆やもろもろの経緯を説明した。隠し事をする必要がないし、一番信頼して相談できる相手だ。もしかしたらなにか分かるかもしれない。

 

「メイさんがあなたの名前を彫り込む時にグリフィンドールがどうとか言ってたのは聞いた気がしますけど、詳しくは覚えてないです。すみません」

「いいのいいの。覚えてないってことは重要なことじゃなかったんだよ、きっと」

 

つまり、少なくともメイ・ミーティス——母親はゴドリック・グリフィンドールの存在ぐらいは知っていた、ということになる。

組み分け帽子が『どこかで会ったような』と言っていたのも気になってくる。自分は校長室にいるとも言っていたが、校長室には当然ダンブルドア校長もいる。今のところ自分の秘密を明かすことにはしていない相手だが、盗聴防止魔法なんかが通用するとは思えない。

ここは一旦別のことをして気を晴らそう。暖かい紅茶を淹れてアリスと飲んだ後、防湿庫からカメラとレンズ数本を取り出し、研究室へ『転移』した。アリスに『逃げた』倉庫の捜索は頼んであったっけか……。

 


 

「アルーペです、キキちゃんは……」

「あら、いらっしゃい! ちょっと待ってね……。

おーい、キキー!」

 

数週間後。キキちゃんの部屋の玄関の前にピンポイントで転移することに成功した。転移の精度を上げるには少し魔力を多めに使う必要があるが、そばには山があるためその分はすぐに回復した。日本は気温こそ低いものの、まだ雪は降っていないようだ。

 

「あら、アルじゃない。どうしたの?」

「例のもの、持ってきたよ」

 

キキちゃんは要件は分かっていた、と言わんばかりに素早く身支度を整えると、すぐに飛び出してきた。写真の練習に山に行こう、というのはすでに決めていたことだ。十二月ではあるが、今年は暖かいのかまだちょっぴり秋のおもかげが残っていた。

山を登る、といっても標高百メートルもなく、麓から頂上の広場までの道は舗装されている。が、豊かな自然は意図的に残されていて、写真を撮るには好都合、というわけだ。

 

「ジジはお留守番してるのよ。アル、準備できたよ!」

「じゃあ、さっそく行こうか。……で、これが一部に魔法を使ったカメラ、なんだけど……」

「見た目はそんなに変わらないのね。性能は?」

 

カメラについての知識はあらかた教え込んだが、どのくらいまで理解してくれているだろうか。そんなことを考えながらキキちゃんにこのカメラのスペックを紹介することにした。

 

「まず、連射速度は比べ物にならないぐらい速くなったよ。前はパシャ、パシャって感じだったけど、こんどはパシャシャシャシャシャッ! って」

「えーっと、それはすごいのかしら?」

 

うーん、いまいち伝わってないようだ。実際に見せたほうが早いだろう。フィルムを入れないまま、連写の空打ちをした。

 

「うわっ! すごい! 一秒に十枚ぐらいは撮れるわよこれ。あっというまにフィルムがなくなっちゃいそうだけど……」

「うん……。魔法で現像してても間に合わないから、替えのフィルムはいくつか必要だね。一応、ここをこう、ぽちぽちやればゆっくりにできるよ」

 

基本的に電気で動いていた部分を魔法で動かすようにしただけで、そのほかの部分はマグルのカメラのままである。流石に全部を魔法にするのは技術とか知識とかが色々足りなかった。

写真を撮りながら登り、山頂の展望台にたどり着いた。しばらく写真を撮っていると、カメラが『魔力切れ』の表示を出して動作を停止した。

 

「あれ、魔力切れ、なんてあるのかしら?」

「うーん、さすがにここじゃ持たなかったかぁ」

「どういうこと?」

「わたしの家とかホグワーツでは使う魔力より溜まる魔力の方が多いから切れたりしないんだけど、ここは山の中とはいってもマグルの世界だし、すぐなくなっちゃうんだ」

 

あまり魔力を貯める容量を確保していなかった、そもそも燃費が良くない、と原因を挙げればキリがないが、まとめて言えば『魔力不足』ということだ。

 

「アルのやつはまだ動くの?」

「こっちは普通の電池で動くやつだから。

えーっと、あれ? 杖の魔力がほとんど残ってない! 転移魔法で帰ろうと思ってたのに……」

 

どうやら、カメラに杖からも魔力が供給されてしまっていたらしい。すっからかんだ。歩いて下山するほかない。いくら燃費が悪いとはいえ、たった数分で杖の魔力が尽きるなどありえるか? よく考えれば、今まで家やホグワーツ以外の場所で魔法を使ったことはほぼなかった。転移ネットワーク経由で自宅の魔力を吸い出すこともできるが、その速度はとても遅く、実用レベルではない。

こんなに早く尽きてしまうということは、今まで気づいてなかっただけで、杖が貯められる魔力の量が極端に少ないのかもしれない。家に帰ったら検証しなければ。

幸いにも転移用のポータルがあったため、自宅に帰るには苦労は要らなかった。こっちは貯められる魔力が多いため、何回か連続で使用しても大丈夫だ。

 

「もうちょっと改良したら、また来るね。そのときは手紙送るよ」

「はーい。その杖、大丈夫なのかしら?」

「うーん、大丈夫じゃないかも……。早めになんとかするよ」

「そうしておきなさい、いざという時、あたしじゃ助けきれないかもしれないわ」

「う、うん。がんばるよ」

 

またやるべきことが増えてしまった。一年目の冬休みは忙しくなりそうだ。そういえば、アリスに頼んでおいた倉庫はそろそろ見つかる頃だろうか。少しやりたいことがあるんだけど。そんなことを考えながら自宅へ転移すると、すぐにアリスが出迎えてくれた。嬉しい報告つきでだ。

 

「アリス、ただいま!」

「おかえりなさいませ、アルーペ。頼まれていた倉庫の捜索、完了しました。地図に書き込んでおきました」

「ありがとう!」

「余分な部屋がいくつもあったので、いい加減整理をすべきだと思います」

 

うーん、たしかに、家の中の様子を地図に書く必要があるというのは普通のことではないかもしれない。アリスから地図を受け取ると、早速倉庫へ向かった。

十数分ほど歩き、ようやく倉庫にたどり着いた。部屋番号こそ割り振られているが、空間を拡張して後から追加したりしているため連番ではなく、どの番号がどこにあるのかはさっぱり分からない。

今回はアリスが『二階の東側のいちばん北側の廊下』の『23E』号室と特定してくれた。倉庫はその構造上廊下のいちばん奥にある事が多いので、行くだけでも一苦労だ。

 

「ふう……。やっと着いた……。アリスの言うとおり、整理しないとなぁ」

 

扉を開くと、『袋』に適当に放り込んだものが綺麗に棚に並べられていた。この魔法を作った先祖の誰かさんには感謝してもしきれない。今回はこれに少し手を加えようと思う。

適当に転移魔法のための目標地点を設定すると、カメラを保管する防湿庫のある自室に転移した。いつもこれで転移できればいいのだが、残念ながら数日間しか維持できない。常に転移できる状態にするには、もう少し魔力の定着しやすい物質に設定する必要がある。具体的には、魔法的に強力な物体や、思い入れの深いものなどだ。

防湿庫と共に倉庫に戻ってくるとそれを設置し、カメラの保存場所として指定した。これで防湿庫の中のカメラも『袋』から出し入れできるということだ。

 

「さてと、やることを整理しないと……。例の本の調査に、杖の魔力に……。あと、部屋の整理……。あぁ、ニコラス・フラメルなんかもあったや……」

 


 

「——だいたい、なんとかなったかな」

 

気づけば明日はクリスマス。まずは作業しやすい空間を、と自宅の改装から着手したが、空間の変形は慣れていないうえに、莫大な魔力を消費するため自宅にいても魔力切れが発生し、結局一週間もかかってしまった。

が、その苦労は無駄にはならず、アリスに頼らなくとも目的の部屋にたどり着けるようになった。屋敷全体の部屋の数は五分の一ほどに減り、番号も順番に整理された。

例えば倉庫は『20F』に改番し、『2』が二階、『0』が北東側の廊下(廊下の数は東西二本づつ、北東から時計回りに0から3番に減らされた)、『F』が廊下のいちばん奥、というように番号だけで場所がわかるようにした。万一部屋を増やす場合もこの法則に則って付番する。

 

「そういえば、明日はクリスマスだね」

「はい、明日の朝までにご友人へのプレゼントを用意しなければなりませんよ」

「そうだね、プレゼント……。あぁっ! なんにも考えてなかった!」

「プレゼントを受け入れる用意はアリスがやっておきますので、アルーペは急いで贈るほうを用意してください」

 

明日の朝まで残り半日ほどしかない。今から慌てて用意したものを送りつけるよりは、既存のものをプレゼントにした方が喜んでもらえる確率は高いだろう。贈る相手は——。アリスと桔梗と、ジジもかな? あとはハーマイオニーと……、先生には——要らないか。一応、ハグリッドにも……。

さっそく、倉庫の利便性向上はその真価を発揮したのだった。

 


 

翌朝、郵便受けを確認すると、容量を拡張したその中身はいくつか包みが入っていた。

一番上の包みを取り出してみると、分厚い板のような形をしていた。開けてみると、ハーマイオニーからの高度な魔法の参考書だった。主に護身、攻撃用の魔法が書かれていた。ミーティスの魔法にそういったものは少なかったためありがたい、のだろうか。わたしなら高度な魔法も使えるはず、と思ってもらえているのは少し嬉しい。

次の包みは桔梗からで、日本の街並や夜景の写真が入っていた。ここまでのことをまだ教えた覚えはないが、恐らく素質があるのだろう。箒で飛べることを生かした俯瞰写真は圧倒的な迫力があった。

とても小さな包みがあったので開けてみると、ハグリッドからだった。中身はダイアゴン横丁にある『魔法動物ペットショップ』の割引券だった。そういえば、ペットがいてもいいかも、なんて言ったことがある気がする。選択肢がある、という意味では実物ではなく割引券というのはとても気の利いたプレゼントだ。

 

「そろそろアリスが起きるころかな……。朝ごはんの準備しないと」

 

準備を終えて食堂に戻ってくると、ちょうどアリスが起きてきたところだった。わたしの顔を見つけるや否や、嬉しそうな顔で言った。

 

「プレゼント、ありがとうございます。大事に使わせてもらいます」

「えへへ……。いいのいいの、いっつもお世話になってるからね。たまにはわたしからもってことで」

 

わたしからアリスへのプレゼントは成功だったようだ。

 

「アルーペ、これはどう扱えば良いのでしょうか」

「どうって言われても……。いつも通りにやってみれば分かるって!」

「……了解しました」

 

アリスに贈ったのは、魔力アシストつきの自転車だった。ほぼ自走するようになっているのでもはや自転車ではなく二輪自動車だが気にしてはいけない。これでアリスの任務も楽になるというわけだ。アリスの笑顔を見ると、自分も笑顔になっているのが分かった。




情報量多めでお届けしました。
ところでこの作品、どのへんが「16進数」なの? と思ったので無理やり部屋番号を16進数に。1桁で0-15まで扱えるって結構便利だね。

万年筆
 現在の万年筆の原型が出来たのは993年よりずっと後。細かいことは気にしない。

ミーティス宅
 外見は西洋のお屋敷をイメージ、内装は一応ただの「家」なんだろうけど、どうなってたんだろ……?
 ちょっと知識不足なんで細かい間取りは後で考えます……。
 魔法ででっかくしただけなので別にお金持ちじゃないです。嘘です。

防衛魔法
 分霊箱を超えるレベルの耐久力。やばい。

ホグワーツの歴史
 キーアイテム。何度も改訂されてる、というのは今作オリジナルの設定です。原作ではどうだったんでしょうか。

雪玉に石
 予測変換「ゆきがっ→雪合戦→の→雪玉→に→石」
 優秀かよ

ニコラス・フラメル
 さすがのフラメルさんも993年にはまだ生まれてません。ちなみにハリポタのフラメルさんは実在したフラメルさんよりも早く産まれてます。

自宅の図書館
 冷静に考えるとおかしい。なんだよ自宅に図書「館」って。どこぞの紅魔館かよ。

アリス
 旧・ロロナのアトリエのホムをイメージ。


 枡形山。標高84m。
 隣の山は114mあって専修大学があるが、名前はなさそう。

自動仕分け倉庫
 欲しい

クリスマスの話をクリスマスの日に書くうp主であった。
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