原作に関わらなかったけど悲惨なことになった(胸糞注意)   作:kaitolian

5 / 7
投稿ゥウウウウ(4年ぶり)

作中の時間は大体9月初め位の予定

内容忘れた人の為の簡単なあらすじ

TS転生したぜ!(主人公)

お持ち帰りぃー(ガチ犯罪者)

1年監禁➡解放

目印付けるね(腕もぎ取り)
絶許、お前をコロス(主人公)
クズがぁ! 天誅!(シグナム)
ぎゃぁぁぁああ(ガチ犯罪者)
 
TS主人公は力を貯めている…!←今ここ


日常編2

 カチ カチ カチ

 

 秒針の規則正しく刻む音が響き渡る

 

「大分涼しくなってきたわね、葵」

 

 窓の外を眺めながら、黒髪の女性が声をかける

 

「………うん『おかあさん』」

 

 女性の呼びかけに、部屋の中央にあるベッドで横になっている少女が答える

 

「やっほー、きたでー」

 

 病室に明るい声が響き渡る

 

「葵、はやてちゃんが来たわよ。

 いつもありがとうね、はやてちゃん」

 

「………うん」

 

 ベッドで横になっていた少女ー葵ーが短く返事をした

 

 

 

 これは澄み渡る秋の1日

 

 

 その中の平凡な1ページ

 

 

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

 

 

 時刻は正午

 

 

 車椅子を自ら操作する少女――はやて――に先導されながら中庭への道を歩く。

 入院した当初は体力がなく、部屋と中庭間の道のりで休憩を何度か必要とする程だった。しかし3か月も同じことを繰り返せば体は慣れるもので、病室と中庭間の道のりで大きく息が乱れることはない。とはいっても流石に中庭まで車椅子を押し続ける程筋力が回復した訳ではないので、この少女の車椅子を押して往復することは出来ないが。

 

(………まぁ、仮に出来たとしてもそんなことはやらないが)

 

 3か月もすればバランスの取り方や身体の動かし方、疲労の把握など、生活する上で必要最低限の能力は身に着いた。しかし今の状態に慣れたといっても、筋力やその他もろもろの機能は随分と低下したままである。なのでまだリハビリが必要らしく、検査等もあるのでしばらくは入院しなければならないらしい。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ………まあ本当の理由としては外部から隔離又は保護あたりだろう。現に私のけがは傷口がふさがっているのに、病室は長期治療の階層に振り分けられている。勿論リハビリを必要とはするが、それは自宅訓練でも通いでも可能である。それをわざわざ長期入院にするということは外部と自身の接触をなるべく防ぎたかったという事だろう。入院した当初はテレビを見る事だけでなく、テレビが設置されている共同スペースに近づくことさえ禁止されていた。そのことからも、恐らくこの推測は正しいだろう。守りたいのは「外部から取材」なのか「1年近く監禁性的を含む暴行を受けた少女の精神」なのか、どちらかはわからないが。

 

 ……ちなみに今でも昼間の昼食の時間帯と夕方の人通りが少ない時間帯、なおかつ特定のエリアしか行くことを許されていない。そしてまだガラケーがメインの時代、スマホやノートパソコンなどもない。又トラウマを刺激しない様との配慮から、テレビの禁止も継続中である。つまり情報がほとんど全く入ってこない。

 

 ………まぁ仮に情報を手に入れたとしても、生かすことができるのは早く見積もっても6〜8年後だろうから、現時点で全く焦る必要はないのだが。

 

 今行うべきは銃を扱えるようになるだけの体作りと資金調達、人脈作りの3つである。

 銃を手に入れるための人脈作りなど現時点ではさっぱりわからないが、最悪低威力の銃ならば恐らく自作(改造)することも出来るだろう。資金調達も改造ならばそこまで難しくはないはずだ。

 仮に人を殺し続けるつもりなら様々な物や資金が必要になるだろうが、一度に特定の2人を殺すだけならば一般人レベルで問題ないはずである。それに相手は恐らく逃亡犯か出所犯。どちらの場合でもいなくなって騒ぐ輩などいないだろう。

 

 なので、現在の優先順位としては銃を扱えるようになるだけの体作りである。

 

 

 

 

 一年近くの監禁・暴行による筋力の低下と栄養失調状態の常態化を踏まえると、それがどのくらいの難易度なのかは全くわからないが。

 

 

 

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

 

 

 夕日が差し込み、部屋一面をオレンジ色に染め上げる。

 

「あれっ、みんなおらへんのか」

 

 居間で一人新聞を読んでいたシグナムに、入り口からはやてが声をかける。

 

「はい、ヴィータは遊びに、ザフィーラは散歩に、シャマルはその付き添いと夕飯の買出しに行っています」

 

 「なら丁度ええか」と小声でつぶやきながら、はやては何かを決意した。改まってシグナムの真正面に移動してから再度

 

「なぁ、シグナム。

 いっこお願いがあるんやけど、ええか?」

 

 シグナムは読んでいた新聞を畳んで置き、はやての方に向き直る。はやてが改まって「お願い」というのは珍しい。いや、もしかしたら初めてではないだろうか。

 そのように改まって言う程のお願いとは何だろうか、と若干気合を入れながらシグナムは聞き返す。

 

「はい、何でしょうか。はやて」

 

「あんなぁ、あおいちゃんを守ってほしいんや」

 

 

 

 

 

 

予想外の「お願い」にシグナムの思考がほんの一瞬、停止する。

 

「………私は主はやての騎士です。ですので、命じて頂けたら共に守ります。

 ですが葵は今病院に居ます。危険に晒されるようなことはないでしょう」

 

 本心も言葉の裏も隠して建前を語る。

 守れと命令されたとしたら守るだろう

 それにあんな惨状を目撃したのだから、可能なら助力したいと思う

 しかしそんな必要はない

 文字通り守る必要などないのだ

 なぜならその脅威はもう既に排除した後なのだから。

 そのことをはやてに伝えることはできないが

 ………いや、はやてに言うべきだろうか。もう既に恐怖の根元となる存在は居ないのだと、だから安心していいのだと。そう伝えればはやてはもう何も心配せずに済む。

 だがそれは同時にその過程をある程度話す必要性が出てくるだろう。

 

 

 どちらにすべきか内心悩んでいると、はやてが更に言葉を続ける。

 

 

「違うんや。あおいちゃんの心を守ってほしいんや」

 

「―――どういうことでしょうか?」

 

 

 はやてが言ったことを理解できない

 

 

 それがシグナムのストレートな気持ちだった。

 心を守ってほしいとはどうい事か

 慰めてあげてほしいという意味だろうか?

 心の支えになってほしいという意味なのだろうか?

 それならきっと―――

 

 

「心の支えになるということなら、私よりも適任がいると思います」

 

 それは本心だ。なぜならあの時犯人を倒したのは

あの少女を救いたかったからという訳ではなかったのだから。

 仮にあの場所で被害を受けていたのが大人の女性なら、男性だったのなら、老人だったなら、もっとさらに幼い子供だったのなら

 シグナムはきっと犯人を殺害などしなかったのだから

 

 主と同じ程度の背格好で主と同じ性別だったから

 もしかしたら主に危険が及ぶかもしれないから

 だから怒りを覚えた

 だから許せなかった

 だから殺した

 

 勿論不快を覚えなかった訳ではない

 しかし違っていたら殺しまではしなかった

『他人様に迷惑をかけない事』

 はやてと結んだ約束を思わず破ってしまう程、激情はしなかった

 

 

 もし犯人らしき男達を見ていなかったら追いかけはしなかった

 探そうともしなかっただろう

 いや探そうとはしたかもしれない

 だがそれは平和なこの町で悲惨な犯罪が起きたからであってそれ以外の理由など全くない

それに簡単に犯人が見つからなかったらきっと諦めていただろう

 私達ヴォルケンリッターが主を守ればいいだろうという結論に至り、そこまでこだわりもしなかっただろう

 

 

 そしてそのことについてシグナムは何も思っていない。

 後悔も

 罪悪感も

 後ろめたさも

 同情も

 他のなにもかも

 何も抱いていない

 

 

 葵と知り合った今になっても、その事実に対してそこまでの感情を抱いてはいない

 それについて違和感も覚えていない

 何故ならこの身は主はやての騎士なのだから

 

 

 だからふさわしくないと思った

 きっと彼女の心の傷を癒すなら

 その役目はきっと自分達の主で家族で心優しいこの少女だと思うから

 

 だから次に発する言葉は想定外だった

 

「あー、違うんや。あおいちゃんに戦い方を教えてほしいんや」

 

「………どういう意味でしょうか」

 

「あの子は怯えとる」

 

 はやてはあおいに共感した

 まるで自分を見ているかのようにさえ感じた。

 互いにいつ来るかもわからない恐怖に向き合ってきたから

 

 

 はやては下半身の麻痺と痛みと

 

 あおいは犯人を連想する大人と

 

 

 目が覚める度、痛みが襲ってくる度に恐怖する

 

 物音がする度、視界で何かが動く度に恐怖する

 

 

 はやてはそれを周りに悟られないように笑顔を絶やさないことにした

 常にプラス思考でいることにした

 

 だってどうしようもないことなのだから

 

 あおいはそれを考えないで済むように感情が無いように振舞った

 常に無感動であろうとした

 

 恐怖を感じていることを自覚しなくて済むように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はやてはあおいがうらやましかった

 

 恐怖が形としてあるのだから

 

 いつか克服できるものだから

 

 時間と共に曖昧になるはずだから

 

 誰かがきっと癒してくれるはずだから

 

 

 自分には目をそらし続ける事しかできないのだから

 

 段々と症状が酷くなっている自分とは違うのだから

 

 明確にタイムリミットがある自分とは違うのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けれどあおいのようにはなりたいとは思わなかった

 

 自分はまだ失ってはいないと思いたいから

 

 あおいのように取り返しのつかない喪失はしていないのだから

 

 腕も心も失ったあおいとは違うのだから

 

 自分はきっとまだ取り戻せるはずなのだから

 

 真に失ってはいないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だって家族が出来たから

 

 守ってくれる、頼りになる騎士達が出来たのだから

 

 だから失ってないのだ

 

 

 これから取り戻すことだってできるのだから

 

 家族が出来て、足が治って、皆が幸せになる

 

 そんな未来が待っているのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気にしないふりをする

 

 本当に少しずつ、だけど確実に

 

 麻痺の範囲が広がっている事から

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬一瞬の内に様々な感情があふれ、言葉にする前に消えてゆく

 相反する気持ちが混じりあい、クルクルと回転し続ける

 はやては自身のそんな複雑な気持ちの詳細などわからなかった

 

 けれど一つだけ分かることがあった

 

 奇跡を見たい

 

 そう想った

 

 時も恐怖も不条理も総てを吹き飛ばす、そんな奇跡みたいな出来事を見たかった

 

 自身がゆっくりとゆっくりと死に向かっている状況で

 あおいが心を含めて元気になったら、きっと自分にもそんな奇跡が舞い降りる

 

 そんな夢みたいな事が起きるんじゃないかと希望を持てる

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――きっと

 

 

 ――――きっとあおいちゃんも

 

 

 きっと、あおいちゃんにもそんな未来が来るはずだから

 

 

 

 

 だから

 

 

「だから力をあげて欲しい

 現実に負けない強さを付けて、元気になってほしい」

 

 はやては優しく微笑みながら

 目には絶対の意思を宿して

 言葉に熱を灯して語る

 

「証明して欲しい。私に奇跡をみせて欲しい。

 奇跡が起こるのだと勇気を持たせてほしい」

 

 それは恋に恋する夢見がちな少女のようで

 しかし強い意志は炎のように鮮烈だった

 

「最初に騎士っていっとったやろ、お願いや

 あおいちゃんに力をあげて欲しい」

 

 それはきっとあおいと出会わなければ自覚しないはずだった想い

 抱かなかったはずの想い

 

 

 

 本来ならきっと死ぬ直前まで蓋をしていた想い

 ずっと看てくれた先生にも

 親しくなった友達にも

 夢見ていた家族にも

 晒すことなく心に閉まっていた己の心

 

 

 

 

 けれどその心を自覚した

 自身の為だけではなく葵の為にこぼれた想い

 それは言葉にするには余りに不鮮明で強烈なその想い

 

 

 

 

 はやての真摯な想いに触れた

 総ての想いを聞かされたわけではない

 しかし言葉の端々から願いが伝わってくる

 

 

 ならば後はただ一つ

 

 

「わかりました。主の―――はやてのお願いならば喜んで引き受けます」

 

 

 はやての願いに応えるだけだ。

 

 

 

 

 

 ♦      ♦♦♦

 

 

 

 

 

 

「………なあ、葵ちゃん」

 

 車椅子に腰掛け、夕陽を見つめながら、はやては隣のベンチに座っている葵に言葉を投げかける。

 しかし後に続く言葉はなく、しばしの間沈黙が広がる。

 そんな様子のはやてに対し、葵は表情を変えずに淡々と問う。

 

「……何?」

 

 夕陽に注がれていた視線がこちらに振り向く。

 それはまっすぐな視線で何かを決めたかのようだった。

 

「教えたろうか、魔法ってやつを」

 

「……まほう?」

 

 いきなり突拍子のない意味不明な事を言い出した少女――はやてをしっかりと見つめながら言われたことを再度つぶやく。マホウ………まほー、まほぅ、まほう、魔法、真帆、mahou、mahow

 ありえそうな、マホウと聞き取れそうな単語をいくつか思い浮かべてみるが『魔法』以外にピンと来る単語はない。小学生の少女が話す内容としては年相応の内容である。

 

 

 

 真剣すぎるその表情を除けば

 

 

 

 人を騙そうとしている者特有の驕りも嘲りも見下しも何も感じない

 妄想に浸っている様子もなければ、狂気に染まっている様子もない

 正気のままで強い意思を感じる光を目に宿している

 

 

 それにそれは1人だけではない。後ろの2人も同様である。

 背が高く紫色の髪の女性、シグナム。

 同様に背が高い金髪の女性、シャマル。

 2人は少なくとも少女に合わせている訳ではなく、心から信じている。

 

 いや、それがあることを前提としている

 

 特別なことを告白するのではなく

 世界の秘密を打ち明ける訳でもなく

 洗脳でも説得でもなく

 何とか理解してもらおうとしている雰囲気すらない

 淡々と事実として聞いている

 

 つまり彼女たちにとって『魔法』とは普通で身近であるという事

 

 何を言っているんだ?

 ありえない

 空想だ

 証拠をみせろ

 そう反射的に反応しようとする常識を押さえつける

 

 ……いや、常識外れでありえない事実を抱えているのはこちらも同様だ。

 こちらは前世の記憶の保持、つまりは輪廻転生と別世界の証明。あちらは魔法と呼ばれる新たな技術。非常識度合いで言えばいい勝負だろう。

 なれば『魔法などありえない』となぜ疑う?

『常識ではありえないことだから』となぜ決めつける?

 自身は、世間一般の常識は、この世界の一般人はそれこそ総てを知っているとでもいうつもりなのか?

 違う、まだ世の中に広まっていないだけのことである。宇宙の果てを未だ観測できていないのと同様に、生まれ変わりや魂はまだ証明できていないだけである。ではなぜそのような未知がまだ存在する中で魔法だけが存在していないと言えるのか?

 言えない、ただ未だ発見できていないだけである。未だ世間一般には広まっていないだけである。もしかしたらこの世界ではあるのかもしれない。

 前世の常識などそれこそ指標程度にしか意味を為さないだろう。

 

 ならば捨てろ

 

 今すぐ捨てろ

 

 なぜならここまでの自身の経験前世も常識外で

 

 これからやろうとしていること復讐もまた常識外

 

 いつか必ず捨てる程度のものならば、今捨てなければ価値がない

 

 常識というフィルターを外して、再度3人を見つめ直す。

 

 

 それに魔法が本当の魔法だとすれば

 

 

 

 それは使える

 

 

 

 本能で感じる

 

 

 

 これは運命の分岐点

 

 

 

 魔法という武器を手に入れることが出来るまたとない機会

 

 

 

 勝利に至るための切り札

 

 

 なれば選択肢は一つだけ

 

 

 

 

「………うん、教えて」

 

 

 

 

 

 

 

 




4年ぶりの投稿です
読んでくれてありがと!!
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