原作に関わらなかったけど悲惨なことになった(胸糞注意) 作:kaitolian
もし本家と設定が矛盾してたら独自設定ってことでオネシャス!(今付けた)
病院の屋上
太陽が高く昇る中、地球にとって未知の技術、魔法の練習が行われていた。
「次はこの術式を組み込んでみろ」
魔法を受け入れてから2週間がたった
「…計算を再度行う」
『魔法』を習い始めて分かったことが2つある。
1つ目は『魔法』は純然とした技術体系であるという事。
特にプログラミングに似ており、様々な基本的なコマンドがあり、それらを組み合わせることにより魔法は形作られる。少なくともファンタジー系やプイキュア系の魔法ではなく、理論だって体系化されている学問である。
但しこれらの作業は複雑であり、人力のみで行うのは少々難がある。普通はその補助として、術式を事前に保存した『デバイス』という道具を使うことが多いらしい。ただ『この世界』は技術や材料が根本的に足りていないので、『デバイス』は作れないらしい。『この世界』という言い方なのは、どうにも世界とは、宇宙という広がり方以外にも次元という形で広がっており、様々な次元の世界があるらしい。
長々と前置きをしたが、結論としてはデバイスを入手することは難しいという事である。
2つ目の分かったことはこのままの状態では本格的な習得は難しいだろうという事。
理由としては2つある。1つ目はオレが魔法に根本的に向いていないという事である。シグナム達が使う魔法は主に肉体や武器を扱うことを前提にしている『ベルカ式』という魔法であるからだ。オレの身体機能を踏まえると、ベルカ式魔法の習得はあきらめた方がいい、とのことである。勿論肉体や武器が関与しない種類の魔法、曰く補助魔法もあるにはあるが、難易度が高く効果も限定的なものが多いので初心者には不向きらしい。
ではどうするかというと、ベルカ式とは異なる『ミッドチルダ式』という魔法がある。これらは肉体や武器に依存せず、魔法を単体で運用する事を前提にしている魔法体系である。なので、これら『ミッドチルダ式』の魔法の方が今のオレには向いているらしい。
だがミッドチルダ式の魔法を専門的に修めた者がシグナム達の中には居ないので、教えることが出来る範囲はある程度限られてしまうという事である。
2つ目の理由としては、先程も述べたようにデバイスが手に入らないからだ。デバイスは主に魔法式の作成や演算の補助等を行うものであり、魔法を使用する際には必要不可欠なものであるらしい。デバイスなしで魔法を行使するのは、プログラミングで言えば毎回一々総てを書き始めるようなものである。
逆に言えば術式全体をしっかりと理解して覚えれば、魔法を使う事は出来るという事でもある。覚える魔法の種類を極めて絞れば使用も可能である。
シグナム曰く「オススメはしないが現状ではそうするしかないな」とのこと。こちらとしても別に何十種と覚える必要はないので、それで全く構わない。
オレとしては、扱える魔法は3種あればいいのだから。
いつでもどんな時でも攻撃でき尚且つ魔力を持たない一般人には防御不能である攻撃系の魔法
相手が拳銃等の武器を持っていた場合でも対応できる防御系の魔法
不意を衝かれること自体を防ぐサーチ系の魔法
この3種さえ扱えればよい。
幸い、攻撃系と防御系は術式自体の難易度が低く、サーチ系の魔法はベルカ式とミッドチルダ式でほとんど共通しているので、これら3種は時間をかければしっかりと覚えることが出来るだろう、とのことである。
但し書きとして、『実践では使えないであろう基礎レベルに関しては』という注意書きはつくが。それ以降のレベルとなると相応の努力と才能が必要であり、実際に練習してみないとどうなるかはわからない、とのことである。
現状は魔法の中で一番基礎的な魔法である魔力弾を習得中である。魔力弾は魔力を集めた塊を直進して放つという単純な魔法であり、実際の戦闘では牽制としても使われないレベルらしい。実践レベルではこれらに誘導や貫通力、爆発等の各術式を付加したものが使われていくらしい。
「では、今日はこれで終了とする」
「………うん」
もっと魔法の練習をしたいという逸る気持ちを抑えて返事をする。
「……どうだった?」
「ああ、術式の構築もはじめの段階より速く正確になってきている。
勿論実践や咄嗟に使うにはまだまだの段階だが、この調子ならあと1ヶ月もすれば術式全体の構築もできるようになるだろう」
魔法の練習を始めてから3週間
少しずつ進んでいる事を実感する。段々と術式を構成しているパーツの意味は分かってきた。
魔法術式全体の意味や流れといったものも朧気ながら分かるようになってきた。
部分部分なら再現をすることも出来るようになってきた。
魔法の完成は近い
♦ ♦♦♦
屋上での魔法の練習が終わり、葵の病室からの帰り道
「見ててさっぱりなんやけど、あおいちゃんの魔法の練習どんな感じなん?」
葵とシグナムの魔法特訓の光景を見学していたはやてが問いかける。
内容など聞いていてもさっぱり理解できないので、理解できるシグナムに現状を尋ねる。
「はい、きわめて順調です」
はやても当初は一緒に参加してみようとは思った
というか、最初は実際に参加していた
だが、難しすぎた
シグナムが説明下手なのかと思い、理解したらしい葵から分かりやすいように説明してもらった。
だがはやてにはわからなかった
何を言っているのか全く全然さっぱりわからなかった
よって現在は魔法の練習を見学しているだけである。
それにはやてには『闇の書』というデバイスがある。
デバイスの中でも最高峰の性能をもつであろう『闇の書』を、である。
つまり葵が行っているデバイスなしでの魔法習得の為の練習など必要ない。
それにもう一つ事実を述べるなら、術式を自ら構築しての魔法発動などすぐには理解できなくて当たり前なのだ。似たような技術――例えばIT関係―――を予備知識として知っていたり、魔法の専門的な学習等を幼少期から学んでいる等の経験があれば別だが、そんなことが無ければ分かるはずもないのだ。
葵は前世の大学の授業でIT関係を習っていたので、類似系発展型ともいえる魔法もスムーズに学ぶことが出来た。
それからも魔法の練習は順調に進んでいった
1週間後には魔力弾の形成に成功した。
2週間後には魔力弾の射出とシールドの形成に成功した。
それから更に1週間が経過した現在は、これらの魔法の成功率と発動速度の上昇をメインで行っている。何分デバイスなしで行っているので、上手く集中しないと魔法の発動が成功しないのだ。
その他にも敵を拘束するバインドという種類の魔法、一定範囲探知するサーチという種類の魔法、飛行系の魔法等色々とある。しかしこれらの魔法には魔力弾やシールドの魔法にはない独自の術式があり、魔力弾やシールドの魔法より一段階難しいらしい。なので魔力弾やシールドの基本的な魔法が安定的に発動できるようにする方が先、とのことだ。
サーチ系の魔法は非常に欲しいが、最悪習得できなくてもよい。
なぜなら相手はただの人間なのだから
魔法も使えなければ訓練を受けたわけでもない誘拐犯なのだから
体格差を覆す武器があれば
人数差を打ち消す防具があれば
不足はない
武器と防具、その2つがあれば
後はそれらを操る意思さえあればよい
『奴らを許さない』
絶対の意思さえあれば
生きている人々を自身の食い物にして、そのことに喜びを得る連中
そんな奴らを絶対に許さない
己を食い物にし、そのこと自体を愉しみとしたあの2人
自らに深く腐る傷跡を残したあの2人
あいつ等を絶対に許さない
その絶対の意思さえあれば十分だ
絶対にこの手で葬り去る
そうして未来は始まるのだから
そうしなければオレは過去から進めないのだから
それがこの傷口を治す唯一の方法なのだから
そんな
許さない
絶対に
欠片の可能性も認めない
徹底的に
磨り潰す
♦ ♦♦♦
「術式、構成 魔力、注入」
葵が言葉を紡ぐと、周囲を光が満たす。
夕日を想い出させるオレンジ色と澄み渡る大空を思わせる蒼色が混ざった紫。
愛情深く他人に寄り添ってくれるような夕方とどこまでも明るく笑って駆け出したくなるような青空。
そんな感情を抱かせる色だった。
魔力光の色は謂わば指紋みたいなものだとシグナムは言っていたが、そんな想いを葵の魔力光から感じた。
そんな風にはやてが思っていると、部分部分が合わさり、魔法陣を中心に光の球が作られる。
「魔力弾 形成」
徐々にしっかりと形作られる様子をみると、どうやら魔力弾の魔法は成功だろう。ここから失敗することもあるので油断はならないが。
「発射」
魔力弾は途中で消えてしまう事も重力に従う事もなく、まっすぐに進んで壁に当たる。
ポスッ、と布の球が当たったかのような音が鳴る。
魔力は必要最低限しか込めていないので威力はないが(水風船程度の威力)、魔法自体は問題なく発動している。
そんな様子を見て、はやてはしみじみとつぶやく。
「けっこう魔法が成功するようになってきたなぁ」
「はい、デバイスなしでここまで魔法を形に出来るようになるとは思いませんでした」
まだまだ拙い部分や不安定な部分はある。しかし魔法を知ってから6週間程度しか経っていない事やデバイスの補助が全く無い事を考えると、非常に上達したと言えるだろう。
「ならそろそろ教えてもええかな?」
はやてが嬉しそうに、本当に嬉しそうに尋ねる
何の悪意も害意も含まれない、本当に透き通った笑顔だった
それは優しく慈悲のある、相手を本当に思いやっていることが伝わる、そんな笑顔だった
「ええ、守る力を手に入れて安心してくる頃合いでしょう。
伝えるタイミングとしてはいいと思います」
「せな、しっかりと伝えてやらんとな」
だからこそ、それは真なる一撃となる
「あおいちゃーん! 大切な話があるからこっちきてくれへーん!!」
「………どうした?」
魔法の練習を中断して、葵がはやて達の方へ近づいていく
「あんなぁ、急な話でびっくりするかもしれへんけど安心して聞いて欲しいんや」
「………大丈夫、驚かない」
驚くようなこととは何だろうと考えながら、返事をする。しかし、はやての表情が深刻そうでない所を見ると、悪いことではないだろう。
はやては一度深く深呼吸をした後に、まっすぐと葵に目を向ける。
「安心しいや、あおいちゃんにひどいことした悪い奴らはちゃんとシグナムがやっつけたんや!」
安心させるためだろうか
笑顔を浮かべて言葉を吐く
「あおいちゃんを最初に見つけたのがシグナムで、そん時に犯人2人をたおしたんやって」
もし他の人間に言われたら信じなかっただろう
死体が無いのに
警察が報道に無いのに
死んでいるはずがない
犯罪を1年実行し続けてバレない程、犯人には知力も財力も実行力もあるのだ
そんな犯人達をたまたま見つけて倒した?
そこらの一般人や訳知り顔の知識人に言われても信じなかっただろう
だが倒したと言っているのは誰だ?
地球にとっては未知の技術である魔法を習得している魔法使いである
その中でも守護騎士という戦闘に特化にした魔法使いだ
サーチの魔法を使えば追跡は簡単だ
結界魔法を使えば逃がすことも途中で邪魔が入ることもない
攻撃系の魔法と防御系の魔法があればどんな相手だって簡単に倒せる
まだまだ知らないだけでもっといろいろと便利な効果を持つ魔法もあるだろう
なんなら魔法を使わずにデバイスのみでも倒すことが出来るかもしれない
強力な武器にも便利な道具にもなりえるどこからでも自由自在に取り出せる物であり、そんな魔法だからこそ俺は欲したのだから
だから確実に倒せるだろう
やり損ねている可能性などそれこそ万に一つも、兆に一つもないだろう
そうして嘘をつく必要もない
だってオレを安心させたくて言っているのなら魔法を教えてもらえるだけで十分なのだから
そもそも魔法を教えるといったのもそれが理由だろう
監禁され暴行を受けた少女だ
哀れに思って、安心させる為に戦う手段である魔法を身に着けさせたのだろう
そのこと自体に、そこまでオレを思ってくれた事実に不思議には思うが、驚きはない
そう、だから嘘をつくとしたらこのタイミングではない
仮に傷ついた少女に安心してもらいたくて嘘をつくなら、今ではない
『既に君の脅威を排除した』という嘘をつくなら、このタイミングではない
サーチ系の魔法を使って、それを確認できるようになったその時だ
その時にもういない事を魔法で確認できる際に告げるべきだ
サーチ系の魔法で引っかからなければ、もう死んでいると安心できる
サーチ系の魔法に引っかかったとしても、サーチ系の魔法を使えるレベルなら恐怖におびえることもないだろう
現在、オレ本人が魔法で確認できず、基礎的な魔法ですら完成したとは言い難いこの状況
仮に今後警察やテレビを通してまだ無事であることが分かってしまえばどうする?
嘘をついていたことがバレるリスクを背負ってまで、今魔法を習得中の少女を安心させることを優先させるだろうか?
それに「逃げている犯人の所在が分かった」という知らせを聞くより、「魔法を使うシグナムですら逃がしてしまった」
そちらの方が遥かにショックは大きいだろう
今習っている技術が犯人にとっては無意味だと、わざわざ証明するようなものなのだから
それともシグナムがオレの代わりにサーチ系の魔法を使って、「犯人はもういない」と証明するつもりだろうか?
それもオレが本当にサーチ系の魔法を習った際に嘘だとバレる可能性がある
同様の理由でないと言えるだろう
そうでなければ魔法を教える最初の段階だ
『だから安心してゆっくりと自身を守る方法を身に付ければいい』と言えばいいだろう
少なくとも魔法を教える期間はシグナム達は近くにいるのだから
マスコミ達を見かけていないという事はオレの居場所もほとんど知られていないという事であり、病院内でもおおよそ安全だ
つまり病院内で魔法を教わっている限り、今しばらくは安全だということは分かり切っている
そうすれば心身ともに安らげるし、心の安定が集中力の増加に繋がり、魔法の習熟の短縮にも期待できるかもしれない
それに、はやてという少女とここしばらく過ごして分かったことがある
この少女は頭がいい
シグナムもはやてが主ではあるが、はやてに盲目的という訳ではない
仮にはやてが思い及ばなかったとしても、シグナムが助言という形で気が付かせてくれるだろう
『安心させるためと言っても、今嘘をつけば逆効果になる』と
シグナムの事を信頼しているはやてなら、「ほなやめとこか」という具合に伝えることはないだろう
その上でこのタイミングで伝えてきた
だから
つまり
はやての言っていることは嘘ではない
嘘ではないということは―――
ワルイヤツラハヤッツケタ
「ワルイ……奴ら……」
頭がそれ以上働かず、ただ聞いた事をそのまましゃべる
思考が全く機能しない
思考が動いていない事さえ自覚できない
「
空白だ
空白のみが広がる
まるで時間が跳んだように葵のみが止まってしまう
その事実にはやては気が付かない
いや気が付かない
絶対に気が付けない
様子がおかしくとも当然なのだから
己を監禁と暴行という形で傷付け、今も捕まらない犯人を倒してくれたと
もう目の前に現れないのだと
だから安心していいのだ
そう言われたらきっと皆驚くだろうから
戸惑いからの驚き故に
後に喜んだとしても、唐突すぎて驚いてしまうから
だからそれがショック故の
復讐できない事実を知ってしまったショック故の驚きだとは気が付かない
気が付けない
気が付くわけがない
それこそ心を読むことのできる超能力でもない限りわかるはずがない
だからきっとこれは必然の結果なのだ
いつか訪れる結末が来ただけなのだ
「そや、あおいちゃんにひどいことした奴らは皆シグナムがやっつけたよ」
「ぁっ、ぁ」
息が苦しくなる
今までのすべて 崩れ落ちる音が聞こえた
「ぁ ぁ ぁあ」
全部
無駄
何もかもが
おわり
「あああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」
ぜ
ん
ぶ
お
し
ま
い
今回の流れ(ざっくりまとめ)
基礎レベルの魔法、習得できそう
はやて「もう犯人はいないで、安心しいな!!」(満面の笑み)
葵、停止
とても久しぶりの更新だったのに、多くの感想と評価とお気に入りと誤字報告を下さりありがとうございます!!!
作者の励みになりました、本当にありがとう!!