[前山、園枝宅にて]
8/13
「泊まりに来いだぁ?」
夏休みも中盤に差し掛かった13日。14日になろうとしている深夜に電話がかかってきたかと思えば、いきなり「泊まりに来て」と園枝が言ってきた。
「うん、明日と明後日親がいないからさ、一緒にいようよ」
「いや、全く理由になってない。というか、お前、1人が怖いのか?」
「べ、別に。そんなことはないもん」
「あっそ。じゃあ、明日こっちも予定あるから、行かなくても大丈夫だな」
「えっ、嘘でしょ………」
「なんてな。やっぱり、お前家で1人は怖いんだろ」
「むぅ………」
新事実。玲は意外にかわいい。電話の向こうで「むぅ」と息ついたが、頬を赤く膨らませているのが想像できる。今まで2点勝ったとか、3点負けたとかいった争いしかしてなくて、憎たらしい一面しか見てきてなかったが、こういう風に手のひらで転がせばかわいい一面も見れることが分かった。
「お前、かわいいな」
「か、かわ…えっ?どういう「じゃあ、明日な」」
早々に電話を切った。かわいいと言った瞬間に慌てふためく姿が想像できた。やはりかわいい///。玲に、こんな見方をするのは絶対に無いと思っていた。というか、考えもしなかったなぁ。まぁ、今気にしないといけないのは……
「少しだけ、荷物まとめとくか」
泊まりのことだった。めんどくせぇ。
※
8/14
「遅せーな………」
そこそこ玲の家に早く着き、呼び出した。しかし、出てくるのが遅い!ここまで待たされるとキレそうや。
「ごめんごめん!遅くなった!」
「全く、どんだけ待たせん………だ?」
扉に背を向けて待っていたが、出てきた玲に少しばかり驚いた。あまりファッションのことには明るくないからこうとは言えないが、ロリータファッションの中にガーリーな感じが混ざっとるとでも言うのだろうか。本当にファッションのことは分からないからハッキリと言えないが。とにかく、玲の装いにドキッとしてしまった。やはり、そういう関係になったからなのだろうか。
「………どうした?」
「いや、それより今から何すんだ」
「うーむ………あ、お昼まだでしょ?作ったから食べてよ」
「ん?あぁ。じゃあ、頂くとするか」
コイツの飯か。いや、別にマズイわけじゃない。むしろうまい。だが、地方の伝統料理とか、世界のマイナー料理ばかり作るからその辺どうなのかと思ったが。
「あ!そーいえば昨日のかわいいって何よ」
「うーん?まぁ、そのまんまだ」
「えぇ………」
軽くあしらっといた。細かく説明するのも面倒くさいもんね!!
その後は飯を食って(意外にも普通のヤツを作ってた)、部屋でダラダラとしていた。まぁ、2人とも宿題は終わってたし、ただ一緒に居てくれればいいということだったから、そんなもんだろうが。しかし、このあと………
※
「お風呂沸いたよー」
「あ、じゃあ先入っていいか?」
「いいよー」
僕はやはり一番風呂でなければやってられない。ジジイくさいとも言われるがそんなことはどうでもいい。
「ふはーーーーー」
なんとも心地よいこの空間。熱湯とは言えない、でも十二分に温かい湯に浸かっているこのなんとも言えない感覚によって身体に溜まった1日の疲れが流れ出ていくようだ。………完全にジジイだなこれ。
「そろそろ出るとするかな」
まだ湯船から出たくないと思いつつ、湯船から立ち上がる決心をした瞬間、今まで思いもしなかった光景が目の前に広がる。
「やっほー」
「!!?」
!が1つ多いのはミスじゃないよ。じゃねぇよ!は!?入ってきた?風呂に入って来やがった?な、なんでだ?と、咄嗟に湯船に浸かったまま壁に顔を向けてしまう。
「なんでお前が入って来るんだよ!」
「え?いやー別に。ねぇ?」
「全く理由になってねぇよ!お前はバカか!!」
コイツ、狂ってやがる………!まさか、女が(しかも同年代)入ってくるななんて頭にも無かったわ!唯一の救いと言えばしっかりとタオルは巻かれているところだが全然救いになってねぇ。
「あ、絶対こっち向かないでよ。見たら襲う」
「はぁ?ブチ◯すぞぉ!女ぁ!見られたくなかったら出てから入れやァァァァァァァァァァァァ!」
「まぁ、落ち着きなはれ」
僕は平静を保っていられないにも関わらず、僕の背後の園枝玲とかいうヤツは澄ました声で喋ってるから余計に腹が立つ。
「ま、別に早く出てってくれればそれでいい。早く体洗って出ろ!」
「はいはい」
面倒そうな返事、本当だろうか。ん?
「…………」
ふと上の窓の方へ目をやる。何か気配を感じたからだ。
「どうしたの?」
「何か、気配を感じてな。まぁ、蛾かなんかが止まっただけだろうけど」
「あーそう」
虫かなんか止まっただけだろうと気にも留めなかった。まぁ、それが人だと分かるのはもう少し先だが。
とりあえず、玲も体を洗って早々に出て、僕も無事に(欲情せずに)出て万事解決。その後は少しスマホをいじって、遊んだりしていた。
「じゃあ寝るか?」
「そうだね」
時間は11時半。2人とも十分お眠な時間だ。というわけで、寝ることにした。
「おし。じゃあ僕はどこで寝ればいい」
「え?私の部屋に決まってるじゃん」
「だよな〜………ん?」
あ?今コイツなんつった?私の部屋で寝ろ?…………あ?なんつった?澄ました顔で言うからホントか?マジか?まさかまさか!
「お兄さん、今正直に本当のこと言えば起こらないから、ね?」
「何お兄さんって………いや、正直に本当のこと言ったよ?ちゃんと私の隣で寝てよね」
「まぁ、お前がベッドで寝て、僕が下で………は?」
何度もしつこいけど、あ?なんつった?隣で寝て?それは、俗に言う添い寝をしろと?無理無理!!さすがにいろいろ保たねぇわ!理性とかの面で。
「おい、それはー添い寝をしろと?」
「そ、そうだよ。何度も言わせないで」
「フン。お断りだね。それだといろいろ保たない」
「保たない?何が?もし理性のこと言ってるんだったら弱い男だな〜」
「なにぃ?」
「だって、理性が保てないイコール意志が弱いじゃん?そういうこと」
「う、うるさい」
「それに、もっと傍にいてほしいし………」
「え?」
玲が小声で何か言ったようだが全くもって聞こえなかった。でも、どこか寂しさを感じる声だった。
「とにかく、一緒に寝てよね」
「………………襲っても知らんぞ。それならいい」
「やったぁ!」
子どもみたいに無邪気にはしゃぎやがって。でも、なんだか寂しそうな感じがしたから、添い寝くらいだったらしてやってもいいかな。理性を保てるか分からんけど。
「……………」
「スースー………」
寝るの速すぎだろ!いや別にこのあとの展開を期待してるわけじゃない。でもさすがに速すぎだろ!のび太か!…………普段から女というのはいい匂いを振りまいているが、こうも至近距離だとかなり強く感じる。………くそっ!少しばかり、ムラムラと………
「いっぺん、シてみる?」
「うおっ!?お前、起きてたのか?」
「うん。起きてたよ〜」
クソッ、垂れ目になんかなりやがって。コイツ、誘ってんのか?ならば、こっちにもするべきことがある。
「キャッ!」
「テメェ、今夜は寝させねぇぞ」
「うん、来て……」
僕はそのまま本番の一歩手前まで行ったとさ。(嘘)
※
「はい、お暇さしていただきます」
「いやいや朝ご飯くらい食べてきなよ」
さすがに通報されるところだった。誰かに見られていたらの話だが。しかし、速いところ去りたかったのだ。
「ま、また来てよ。誰も居なかったら」
「おう、お前の数少ないかわいいところも拝みたいしな」
「もうまた………どういうことよ」
「言葉のまんまさ」
「?」
顔の上に?を浮かべる玲もかわいらしい。そんなことを思っていた。やはりこういう関係になると今まで見ていなかった側面も見えてくる。改めて感じた。
「あ、夏休み明けのテスト絶対負けないから、覚悟しときなさい」
「なんだと?」
こういうウザいところはいつなにになっても変わらないようだ。
こうして、僕と玲で一晩を明かした物語は終わったとさ。そして、中2の夏の2人の物語はあと少しだけ残っている。2人の行く末を、見守ってもらいたい………
添い寝して、女の子から漂う匂いに興奮する主人公。変態すぎる……
次は・・・ちょっと重い回かも
追記:5,scorching heart-燻る弱気な想い-