皆様初めまして、私はローゼンと申します。
いきなりこんな事を言うのはなんなのですが、はっきり言って私の兄は馬鹿です。
どれくらい馬鹿かと言うとですね・・・
ズドガアアアアアアアアンッ!!
「はぁ。。。」
私は軽くため息をついた。
「また何かの実験ですか?馬鹿あにぃ」
「いや、料理だ。タコを茹でていたら爆発したっ!!くそっ!!」
どうしてそうなりますか・・・
タコを茹でてどうやったら爆発するんですか??
脳裏に浮かぶ至って普通の疑問を口にするのを抑え、私は馬鹿あにぃに近づいた。
「罠だ!!これは罠だ!!妹が私を陥れる為に仕組んだ罠だ!!」
何故か濡れ衣を着せられる私。
「くだらない茶番はいいですから。怪我はないですか?馬鹿あにぃ」
「馬鹿っていうな~!馬鹿っていうほうが馬鹿なんだぞ馬鹿~!」
「はぁ。。。」
もう馬鹿あにぃに何回ため息をついただろう?
もしかしたら今までに食事を取った回数よりも多いかもしれない。
「心配して損しました」
「まあまあ、そう言わないでよ!ちょっとタコが爆発しただけじゃない!」
「爆発でちょっととか言わないでください」
的確なツッコミを決め私は馬鹿あにぃを放置し部屋へ戻る事にした。
「くくく」
後ろから不気味な笑い声が聞こえてくる。
どうせ馬鹿あにぃだろうけどここは無視する事にします。
理由は至って単純明快。反応すればするだけ自分が苦労するから。
私は深いため息をつきキッチンを出た。
「ローゼン、私の勝ちだ!」
馬鹿あにぃが何か言っているけど無視無視。相手をするだけ無駄無駄。
どうせ私をからかいたいがために適当なことを言って呼び止め・・・
カァアアアアアアンッ!!
ローゼン「痛っ!?」
私の頭の上に何かが直撃した。
体勢は崩したものの強い痛みは感じなかった。
私は落ち着いて目の前の落下物を見る・・・タライ・・・
こんなものが自然と上から降ってくるワケがなく、
非常にくだらない罠を仕掛けた犯人であろう人物に目が行く。
「ば~か~あ~に~ぃ〜の〜・・・」
「そそそ、そんな怒るなよ!たかがタライがあたっただけじゃないか!」
「ばかあああああああっ!!」
ローゼンは激昂した。
色々困らされた挙句タライまで落とされては流石の彼女でも激昂するのは仕方のない事であった。
「今日という今日はもう許しません!」
ローゼンはキッチンへUターン、馬鹿あにぃことほーらいを撃滅せんとする勢いだ。
「ま、待てっ!待つんだローゼンちゃん!」
ローゼンはほーらいの制止を無視して跳び蹴りを仕掛けた。
「うわあっ!?」
ほーらいはそれを間一髪交わす。
「あ、危ないじゃないか!当たったらどうするんだよ!」
「狙ってるんですから当てに行ってます!」
ローゼンは次の攻撃の構えにうつる
「ま、待った!!」
ほーらいが再び制止を促す。
「またですか?意味のないことをしな・・・」
「違う!!あそこっ!!」
ほーらいは驚愕した表情でローゼンの後ろの壁を指差す。
馬鹿あにぃの様子がおかしい?
私は後ろを振り向く………すると・・・
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ!!!
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ!!!
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ!!!
キ ッ チ ン の 帝 王 こ と G が 壁 に 張 り 付 い て い た 。
「い、いやああああああああああああっ!!」
「お、落ち着け、落ち着くんだローゼンちゃん!」
「どうして毎日掃除してるのにあんなの出るんですかぁー!?」
「お、落ち着けって・・・」
「何とかしてよ。馬鹿あにぃ……」
黒い悪魔、私の嫌いな生き物優勝候補に君臨する恐ろしい昆虫。
その体格からは考えられない速度で走り、あまつさえ飛行能力を有する。
私にとっては恐怖の象徴とも言えるそれと相対する勇気はなかった。
そのせいか私は先ほどまで恨んでいた馬鹿あにぃを頼るという奇行に出てしまっている。
それほどまでに私はあの生物が苦手なのだ。
「これを使おう!」
ほーらいが取り出したのはゴ◯ジェット。
これは遠距離から瞬時にキッチンの帝王を抹殺できる有用アイテム。
と、馬鹿あにぃが言ってたもので、実際そのGに対する殺傷能力は高い。
ほーらいがローゼンにゴ◯ジェットを渡す。
そしてほーらい自身もゴ◯ジェットを装備し、ローゼンとの戦いは一時休戦。
今まさにほーらい、ローゼンペアとキッチンの帝王との戦いが始ろうとしていた。
「行きます!」
最初に仕掛けたのはローゼン。
行きます!の声とは裏腹に超遠距離の射程外からゴ◯ジェットを噴射しており帝王に攻撃が届いていない。
それどころか、その音に気づいたのかそれとも何かの偶然なのか帝王は羽ばたいてしまった。
「いやぁあああああああああ!!」
ローゼンは目を瞑りゴ◯ジェットを噴射!
それがほーらいの顔面を直撃した。
「ぐはあっ!?」
「あ、ごめんなさい」
「馬鹿やろおおおおおおおおおお!ローゼエエエエエエエエン!
誰を狙っているううううう!!ふざけるなあああああああああああ!!」
「あうう、ごめんなさい。わざとじゃないですから」
「目がっ!目がああああああ!!!」
ほーらい、戦闘不能。
☆チーン☆
「そ、そんな、私一人で帝王と……」
余りに非情な事態に絶望するも、そこに帝王の姿はなかった。
あ、あれ?いな・・・い・・・・・??
そう、帝王は何処ぞやのはぐれメ◯ルばりに逃げ足が早いのだ!
多分昆虫の中で鬼ごっこをやればかなり上位に食い込める強者だろう。
もう上述の事から察する事はできるだろうが、帝王は二人がパニックになっている間に逃げてしまったのである。
彼女は戦う事の恐怖から逃れた安堵と、この近くにまだ帝王がいるであろう恐怖の2つが入り混じったとても複雑な心境になった。
しかし、それは目の前に倒れているほーらいを見て一瞬で吹き飛ぶ。
「あ、あにぃ!!大丈夫ですか!?」
思わず大声をあげた彼女だが、先ほどまでの出来事が自然と脳裏を過ぎった。
キッチンで爆発を起こし、タライを落とされ、挙句の果てには謝罪もなく振り回され・・・
考えるとゴ◯ジェットが当たったのも因果応報な気がしてきました。
・・・これでイーブンという事で許してあげます。馬鹿あにぃ。
特にこれといって兄を心配する事なくローゼンは歩き始めた。
「はぁ……後片付け、しないとですね。」
そう言い終えるとローゼンは倉庫へ行き、掃除用具を取りにいくのであった。
ゴキジェットを人前で目を瞑り噴射する行為は非情に危険ですので絶対におやめください。