捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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I'm in love ♯2

 

「あー、なるほど。それで本番で実力が発揮できなかったと」

「うん……」

 絵里が恥ずかしそうに俯く。

 どうやらこのポンコツ残念な彼女は、受験日を間違えていたらしい。前日を二日前と勘違いしていたとか。二日前に完徹で勉強して、前日はアニメを見てゆっくりするつもりだったらしいが、一日ずれて、完徹でそろそろ寝ようとしていた時に、亜里沙に叩き起こされ試験会場へ。受験中は眠さとアニメの事で頭が一杯で、その出来は散々だったようだ。

「電話出なかったのは何でですか?」

「……ショックだったから。ちなみに亜里沙は雪穂さんの家に電話を置き忘れていたらしいわ」

「……じゃ、じゃあ、チケットとパンフレットは?」

「受験に失敗した事を両親に報告したら、一年は許すけど、次失敗したら、こっちの学校に入学しろって……それとお祖母さまが会いたがってるから帰ってこいって」

「…………」

 東條さん……騙しやがったな。

 いや、写真送ってきただけだが、これは紛らわしすぎる。狙ってただろ、絶対に。

「あはは……心配させてごめんね」

「まったくだ」

 絵里の頭をがしがしと撫で、金色の髪をわしゃわしゃ混ぜっかえす。

「こ、こらぁ。やめなさい!」

「すんません。もう少しだけ」

「もう……しょうがないんだから」

 頬を赤らめる絵里の表情に、ついついいつまでもこうしていたくなる。

「ねえ、八幡」

「はい」

「わ、私って……もう、比企谷絵里なのかしら?」

「……あ、ああ」

「今……躊躇わなかった?」

「いえそんなことはありませんとも」

 結局、ただの浪人生活スタートだったわけだし。

 つーか、さりげなく立場が入れ替わっている。

「あ~!『結局ただの浪人生活スタートだったわけだし。』とか考えたぁ!ひどい!」

 いきなり俺を近くの部屋に押し込み、さらに押し倒して馬乗りになった。

「っ!ちょ、ちょっと、おい、絵里?」

「観念するチカ。このまま最後までいくチカ」

 や、やばい。この人、目がいってる。

「あの~、新婚さん?そろそろええかな?」

「「!?」」

 そこにはμ'sのメンバーが集結していた。

 

「まったく……せっかく許してもらったんだから、いきなり問題起こすんじゃないわよ」

「はい……」

「そういえば絵里ちゃん、浪人するんだよね。じゃあ、大学で私達と同級生に」

「やめてやめてやめて~!」

 絵里は両耳を押さえ、ポニーテールを暴れさせる。何かこう……不憫だ。かしこいエリーチカは当分の間、使われはしないだろう。

「絵里……い、一緒に頑張りましょう」

「大体、欲張りすぎなんよエリチは。一人で色んな属性つけて」

「な、何の事?」

「ポンコツ」「残念」「人妻」「浪人生」

「……か、かしこい、可愛いは?」

 全員がサッと目を逸らした。てか自分で言いやがったよ、この人。

「チカ~~~~~!!!!!」

 ポンコツで残念な人妻浪人生(クォーター)の絶叫が音乃木坂学園の校舎内に響き渡った。

 

「あの……皆、そろそろいいかしら」





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