捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

109 / 120

 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。でも


I LOVE YOUをさがしてる

「今、八幡の匂いが……」

 そんなはずないのに。

 私ったら、早くもホームシックになってるのかしら。はあ……八幡も来れたらよかったのに。いえ、駄目よ絵里!今の私はスクールアイドル。八幡への気持ちは胸の奥に仕舞っておかないと……いや、それも今さらよね。それに……

「やっぱり八幡の匂いがするのよね……」

「エリチ。アメリカに着いて早々、頭のおかしな事言わんで」

「そう?至って普通の事だと思うのだけれど」

「いや、普通の人は恋人の匂いを嗅ぎ分けたりせんから」

「ふふっ。希はまだ子供ね。恋をしたらわかるわよ。恋をしたら、ね」

「あれ?今、エリチを殴りたくなったんやけど……」

「アンタら、くだらない事言ってないで早く行くわよ。まったく、海外ぐらいではしゃいじゃって。子供ね~」

「おっと、どこまでも子供がなんか言ってるわね」

「マスコットやなかったっけ?」

「どういう意味よ!」

 やっぱり……女子旅も悪くないわね。

「皆、早く行くよ!ほら、私みたいにしっかりしなくちゃ!」

「穂乃果ちゃん、そっちじゃないよ」

「あれ?」

「ま、まま、まったく……ほ、穂乃果は何をやっているのですか。海外だからといって、う、浮かれすぎです」

「海未ちゃんは緊張しすぎにゃー」

「ダ、ダメだよ、凛ちゃん!海未ちゃんだって頑張ってるんだから!」

「ねえ、どうでもいいから早く行きたいんだけど」

 

「お兄ちゃん、ばれなくてよかったね」

 小町が笑いを堪えながら、悪戯っぽい笑みを向けてくる。終始ノリのいいμ'sメンバーの掛け合いが面白かったのだろうか。

「ああ。てか俺ってそんなに匂うのか……」

 おかしい。ぼっち時代の習性で、清潔感にはかなり気を配っているはずなのだが……。

「だ、大丈夫だよ、お兄ちゃん!小町はお兄ちゃんの事、たまにゴミぃちゃんって呼ぶけど、あれは匂いとかじゃなくて、お兄ちゃんのどうしようもない性格とか行動に対してだから!」

「なあ、それってフォローなんだよな……」

「ほら、アレだよ!絵里さんにしかわからない匂いだよ!絵里さんってかなり特殊だし!」

「まあ、そうだろうな」

 だって絵里だし。

「ほら、バカ兄妹!さっさと行くよ!」

「…………」

 親父と母ちゃんがお待ちのようだ。特に親父が嫉妬の視線で睨んでくるのが気になる。わかったって。思う存分、小町と親子の時間を過ごせよ。

 ……さて、絵里にはどんなタイミングで会うべきなのか。やっぱり何か演出みたいなのは必要だろうか。サプライズはここに来ている時点で成立しているのだが。

 それと、プレゼントは何を用意すればいいのか……。

 アメリカに来たという感動もそこそこに、頭の中はただ一人の事で塗りつぶされていった。





 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。