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それでは今回もよろしくお願いします。でも
「今、八幡の匂いが……」
そんなはずないのに。
私ったら、早くもホームシックになってるのかしら。はあ……八幡も来れたらよかったのに。いえ、駄目よ絵里!今の私はスクールアイドル。八幡への気持ちは胸の奥に仕舞っておかないと……いや、それも今さらよね。それに……
「やっぱり八幡の匂いがするのよね……」
「エリチ。アメリカに着いて早々、頭のおかしな事言わんで」
「そう?至って普通の事だと思うのだけれど」
「いや、普通の人は恋人の匂いを嗅ぎ分けたりせんから」
「ふふっ。希はまだ子供ね。恋をしたらわかるわよ。恋をしたら、ね」
「あれ?今、エリチを殴りたくなったんやけど……」
「アンタら、くだらない事言ってないで早く行くわよ。まったく、海外ぐらいではしゃいじゃって。子供ね~」
「おっと、どこまでも子供がなんか言ってるわね」
「マスコットやなかったっけ?」
「どういう意味よ!」
やっぱり……女子旅も悪くないわね。
「皆、早く行くよ!ほら、私みたいにしっかりしなくちゃ!」
「穂乃果ちゃん、そっちじゃないよ」
「あれ?」
「ま、まま、まったく……ほ、穂乃果は何をやっているのですか。海外だからといって、う、浮かれすぎです」
「海未ちゃんは緊張しすぎにゃー」
「ダ、ダメだよ、凛ちゃん!海未ちゃんだって頑張ってるんだから!」
「ねえ、どうでもいいから早く行きたいんだけど」
「お兄ちゃん、ばれなくてよかったね」
小町が笑いを堪えながら、悪戯っぽい笑みを向けてくる。終始ノリのいいμ'sメンバーの掛け合いが面白かったのだろうか。
「ああ。てか俺ってそんなに匂うのか……」
おかしい。ぼっち時代の習性で、清潔感にはかなり気を配っているはずなのだが……。
「だ、大丈夫だよ、お兄ちゃん!小町はお兄ちゃんの事、たまにゴミぃちゃんって呼ぶけど、あれは匂いとかじゃなくて、お兄ちゃんのどうしようもない性格とか行動に対してだから!」
「なあ、それってフォローなんだよな……」
「ほら、アレだよ!絵里さんにしかわからない匂いだよ!絵里さんってかなり特殊だし!」
「まあ、そうだろうな」
だって絵里だし。
「ほら、バカ兄妹!さっさと行くよ!」
「…………」
親父と母ちゃんがお待ちのようだ。特に親父が嫉妬の視線で睨んでくるのが気になる。わかったって。思う存分、小町と親子の時間を過ごせよ。
……さて、絵里にはどんなタイミングで会うべきなのか。やっぱり何か演出みたいなのは必要だろうか。サプライズはここに来ている時点で成立しているのだが。
それと、プレゼントは何を用意すればいいのか……。
アメリカに来たという感動もそこそこに、頭の中はただ一人の事で塗りつぶされていった。
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