捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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I LOVE YOUをさがしてる ♯2

「ハラショ~」

「お兄ちゃん、文字だけだと紛らわしいから止めて」

「はい」

 ホテルに荷物を置き、ニューヨークの街へ繰り出すと、ついついロシア語が口から飛び出した。ここはアメリカなんだけどね!

 時期的なものもあるのだろうか、大学生っぽいグループをちらほらと見かける。

「よし、じゃあ俺はそろそろ……」

「あんた、本当に一人で大丈夫?」

「小町もついて行こうか?」

 一人になろうとすると、母ちゃんと小町から心配そうな声をかけられる。まあ、海外だしそりゃそうか。親父は……巨乳美女をチラ見していた。おい、母ちゃんに叱られても知らねえぞ。

「大丈夫だよ。別にそんな遠くにはいかねえし」

「そう。じゃあ、集合時間は守るのよ」

「おう、そっちもな」

「それと、絵里ちゃんへのプレゼントなんだから、ちゃんとした物選ぶのよ」

「うん、そこが一番心配だよ。お兄ちゃんだし」

「…………」

 仕方ねえな。あとでその認識を改めさせてやろう。

 

「……わからん」

 意気込んだはいいが、果たして何を渡せば最大限喜んでもらえるのだろうか。

 正直に言うと、絵里の場合何でも喜んでくれそうだから、だからこそ判断に困る。

 多分、そこの露店で売っているような髑髏の指輪を買ったって……

「わあ♪この指輪、とってもオシャカルトじゃない!」

 とか言って喜びそうだ。自信過剰とかではなく、そういう優しい人なのだ。だからこそ、最大級のプレゼントをしたい。

 さて、どうしたものか……。

 考えている内に、誰かが背中にぶつかってきた。

「ごめんなサイ…………!」

「いや、こちらこそ……」

 慌てて振り返ると、そこにはモデルばりの美女がいた。

 顔立ちからして外国人なのは間違いないが、カタコトの日本語が少し微笑ましい。多分年上だろうか。

 それ以外に気になる事といえば、その頬がやたらに赤く、目が少し潤んでいる事くらいだ。……この感じはどっかで見たことあるような……。

「あの……お名前と……レンラクサキヲ……」

「え?あ、いや……」

 いきなりな展開に、絵里と初めて出会った時の事を思い出す。そういや、初めて出会ったのも確か……あ。

「ダメデスカ?」

「す、すいません……」

 その場を立ち去ろうとすると、腕をがっちりとホールドされた。

「え?あ、ちょっ……」

「素敵な目……デスネ」

 またどこかで聞いたような言葉と、甘い香りと感触に戸惑っていると、低めの声が響いた。

「アナスタシアさん、そろそろ……」

 スーツ姿に長身の、強面の男が立っていた。どうやらこのお姉さんの連れらしい。

「あ、ワカリマシタ……」

 アナスタシアと呼ばれた女性は、俺からパッと離れる。しかし、一体どんな組み合わせなのだろうか。二人はそのまま歩き出した。

 その様子を何となく見送っていると、彼女はこちらを振り返り、小さく手を振った。

「それじゃあ、マタネ」

「あ、はい……」

 顔が熱くなるのを感じながら、何とか手を振り返す。

 そして、その背中が人混みに紛れた頃に、軽く溜息を吐いた。いや、下心など微塵もない。年上の綺麗な女子に話しかけられて緊張するのは、思春期男子からすれば当然の習性で……

「何をしているのかしら、八幡?」

「は?」

 そこには般若も真っ青の怒りの形相を浮かべた絵里がいた。

 

 




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