それでは今回もよろしくお願いします。
「ハラショ~」
「お兄ちゃん、文字だけだと紛らわしいから止めて」
「はい」
ホテルに荷物を置き、ニューヨークの街へ繰り出すと、ついついロシア語が口から飛び出した。ここはアメリカなんだけどね!
時期的なものもあるのだろうか、大学生っぽいグループをちらほらと見かける。
「よし、じゃあ俺はそろそろ……」
「あんた、本当に一人で大丈夫?」
「小町もついて行こうか?」
一人になろうとすると、母ちゃんと小町から心配そうな声をかけられる。まあ、海外だしそりゃそうか。親父は……巨乳美女をチラ見していた。おい、母ちゃんに叱られても知らねえぞ。
「大丈夫だよ。別にそんな遠くにはいかねえし」
「そう。じゃあ、集合時間は守るのよ」
「おう、そっちもな」
「それと、絵里ちゃんへのプレゼントなんだから、ちゃんとした物選ぶのよ」
「うん、そこが一番心配だよ。お兄ちゃんだし」
「…………」
仕方ねえな。あとでその認識を改めさせてやろう。
「……わからん」
意気込んだはいいが、果たして何を渡せば最大限喜んでもらえるのだろうか。
正直に言うと、絵里の場合何でも喜んでくれそうだから、だからこそ判断に困る。
多分、そこの露店で売っているような髑髏の指輪を買ったって……
「わあ♪この指輪、とってもオシャカルトじゃない!」
とか言って喜びそうだ。自信過剰とかではなく、そういう優しい人なのだ。だからこそ、最大級のプレゼントをしたい。
さて、どうしたものか……。
考えている内に、誰かが背中にぶつかってきた。
「ごめんなサイ…………!」
「いや、こちらこそ……」
慌てて振り返ると、そこにはモデルばりの美女がいた。
顔立ちからして外国人なのは間違いないが、カタコトの日本語が少し微笑ましい。多分年上だろうか。
それ以外に気になる事といえば、その頬がやたらに赤く、目が少し潤んでいる事くらいだ。……この感じはどっかで見たことあるような……。
「あの……お名前と……レンラクサキヲ……」
「え?あ、いや……」
いきなりな展開に、絵里と初めて出会った時の事を思い出す。そういや、初めて出会ったのも確か……あ。
「ダメデスカ?」
「す、すいません……」
その場を立ち去ろうとすると、腕をがっちりとホールドされた。
「え?あ、ちょっ……」
「素敵な目……デスネ」
またどこかで聞いたような言葉と、甘い香りと感触に戸惑っていると、低めの声が響いた。
「アナスタシアさん、そろそろ……」
スーツ姿に長身の、強面の男が立っていた。どうやらこのお姉さんの連れらしい。
「あ、ワカリマシタ……」
アナスタシアと呼ばれた女性は、俺からパッと離れる。しかし、一体どんな組み合わせなのだろうか。二人はそのまま歩き出した。
その様子を何となく見送っていると、彼女はこちらを振り返り、小さく手を振った。
「それじゃあ、マタネ」
「あ、はい……」
顔が熱くなるのを感じながら、何とか手を振り返す。
そして、その背中が人混みに紛れた頃に、軽く溜息を吐いた。いや、下心など微塵もない。年上の綺麗な女子に話しかけられて緊張するのは、思春期男子からすれば当然の習性で……
「何をしているのかしら、八幡?」
「は?」
そこには般若も真っ青の怒りの形相を浮かべた絵里がいた。
読んでくれた方々、ありがとうございます!