「ふぅ……」
「どした?」
「いえ、ちょっと……ううん、何でもないわ」
物憂げに溜息を吐く絵里は、今日はアンニュイな気分なの、とばかりにテーブルに突っ伏す。普段のやたらテンションMAXなポンコツが鳴りを潜めるだけで、こんなにも美人度が上がるとは……やっぱ普段の言動って大事なのね。
とはいえ、自分の彼女が悩んでいるのを放っておくわけにはいかない。
俺は彼女に寄り添い、声をかけた。
「絵里……どうかしたのか?」
「ありがとう。本当に何でもないのよ」
「前も言ったが、そう言って本当に何でもなかった奴を俺は知らない」
「八幡……」
「まあ、無理にとは言わんが、話せるなら話してくれ。俺は……絵里の、彼氏だから……」
絵里は頬をぽっと赤らめ、上目遣いにこちらを見上げてくる。だが、彼女より俺が顔を真っ赤にしている可能性が非常に高い。我ながら恥ずかしいことを口にした。こういうのは未だに慣れない。
こちらの気恥ずかしさを感じ取ったのか、絵里はクスッと微笑み、俺の手を握り、口を開いた。
「実はね……」
「ああ……」
「次のコスプレが思い浮かばないの「おやすみ」ちょっと、逃げないでよ!」
はあ……長い前振りだったぜ……。
絵里は頭を抱えながら呻く。
「やばいチカ……八幡のためのコスプレネタが思い浮かばないチカ……」
「ちょっと何言ってるのかわかんないんですけど」
「何でわかんないのよ!」
ガバッと抱きついてくる絵里に、台詞と行動が合ってないというツッコミは一旦置いといて、とりあえず頭を撫でておく。
「まあ、別に気にすんな。やっぱりそのままが一番だし」
「だって……インパクトがなきゃ忘れられるじゃない」
「……何の話かさっぱりなんだが……」
「ほら、ことり編はあと10話以内には終わっちゃうし、花丸ちゃん編が終わったら、次は千歌ちゃん編か鞠莉ちゃん編が始まっちゃうし……」
メタいメタいメタいメタいメタい!!!
「どんどん時間が流れていく中で、いかに私という存在を強烈にアピールするかが大事なのよ」
「はあ……」
「というわけで八幡」
「な、何でしょうか?」
この先の展開は容易に想像がつく。
「今からデートに行くわよ」
「……何故?」
「チッカチカにしてやんよ」
「もう夜7時なんですけど……」
「チッカチカにしてやんよ」
「わ、わかったから……あんま遠くは無理だけど」
「チッカチカに……えっ、本当に!?」
「ああ。亜理沙も高坂妹のところに泊まりに行ってるし、たまにはいいだろ」
「じゃあ、早く出かける準備するわよ!」
「はいはい」
一人だったら、こんな時間から出かけるなんて、面倒くさいだけだが、彼女とならつい何かに期待し、つい出かけてしまう。
その何かに気づく日はいつのことやら……今はただ彼女と過ごす時間にただ感謝しながら、その笑顔を見つめていたい。
きっと、それはこの世で一番素敵なことだから。