それでは今回もよろしくお願いします。
「とりあえず……今からどうしますか?」
洗い物を片付け、ソファーに座りながら絢瀬さんに尋ねる。
「そうねぇ……」
絢瀬さんは、俺の隣……というか俺に肩を密着させながら座ってくる。もう、あまりにも自然過ぎてツッコむ事すら躊躇われる。この人に俺のツッコミが効いた試しがないので、もう諦めかけてはいるんだけど。
「午後からは雨が降るらしいし……やっぱりツイスターゲームかしらね」
「…………」
果たしてこれはツッコミ待ちなのか?ていうか、俺はそれほどツッコミキャラでもないんだけど。新八じゃねーんだから。
「ほら、八幡君やってみない?」
だあぁぁ!!!本当に持ってきてやがった!
「お姉ちゃん、落ち着いて。飛ばしすぎ」
「うん」
絢瀬さんは大人しくツイスターゲームを鞄に仕舞う。
今後、彼女に対しては手荷物検査が必要かもしれない。
「お兄ちゃん。絵里さんってガンガン来るね」
小町が小声で話しかけてくる。
「ああ……」
「……頑張って!最初で最後のチャンスだよ!」
「おい」
訳のわからない応援メッセージを受け取っていると、絢瀬さんが何か思いついたように手を合わせる。
「じゃあ、八幡君のアルバム見せて!」
「絶対に嫌です」
「絵里さん、これです!」
「ありがと♪」
「私も見た~い♪」
「…………」
強制的にイベント突入してしまった。
俺は溜息を吐きながら、冷蔵庫まで行き、全員分の飲み物を用意する。まあ、すぐに飽きるだろう。
「可愛いわね」
「うん!」
「こんなピュアな頃があったんだねえ」
「あれ?小学生までしかないみたいだけど」
「ああ、それはですね、お兄ちゃんが中学生になったぐらいから極端に写真に写るのを嫌がるようになって」
「そうなの?」
「ええ、まあ……」
飲み物をテーブルに置きながら、自然と苦虫を噛み潰したような顔になる。何でだったか理由はわからない。もしかしたら中二病の影響かもしれない。
「じゃあ、これから作ればいいのよ!」
「何をですか?」
「あなたのアルバムよ!」
「いや、別に俺は……」
絢瀬さんはスマホのカメラを起動させて、俺と肩を組む。最近、胸を押しつけられるのに慣れてきている自分が怖い。
「お姉ちゃん、私が撮るよ!」
「お願いね」
絢瀬妹は絢瀬さんからスマホを受け取ると、少し距離をとり、小さな手で構えた。
「行くよ~、はいチーズ!」
絢瀬妹の合図と共に、また左頬に柔らかな温もりが触れる。
「っ!!」
「「ええっ!?」」
左を向くと、吐息がうっすらとかかるくらいの距離に絢瀬さんの顔がある。空想の世界の海のように綺麗な碧眼が、真っ直ぐに、それでいて柔らかくこちらを見つめている。
「今日から素敵な思い出を残していきましょう♪」
「…………」
何も言えない。
その瞳に不覚にも見とれてしまっていた。
時間が止まるような感覚に、俺は体中を支配されていた。
「あのー、おふたりさーん?」
「あはは……お姉ちゃん、凄い」
読んでくれた方々、ありがとうございます!