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「これを……入れていいんですか?」
「そうよ。ふふっ。緊張してるの?固くなっちゃって。可愛いわね♪」
「そりゃ初めてですから」
「そう。いいわ、お姉さんに任せて」
「ちょっ……いきなり弄られるとドバッと出ちゃうじゃないですか!」
「これは大丈夫よ。はやく全部出して♪」
「わ、わかりました」
俺は絢瀬さんの指示に従い、恐る恐る調味料を入れていく。ボルシチを作っているのだが、初めて作るので、自然と体が固くなる。
「「…………」」
何故か小町と絢瀬妹が、顔を赤くしながらこっちをチラチラと見ている。そんなに心配なのだろうか。
買い物から帰ってきてすぐに、俺は絢瀬さんから料理の指導を受ける事になった。一流の専業主夫への第一歩を歩み始めたのだ。違うか?違うな。
絢瀬さんは小町のエプロンをつけ、鼻唄を口ずさみながら、流麗な手つきで食材を一つの料理へと変えていく。…………数日前、プリキュアの恰好をしていた人とは思えん。うっかり惚れそ……失礼、噛みました。
俺は見とれてしまわないように、料理に集中する事にした。
「ごちそうさま!お義姉さん!美味しかったよ♪」
「お口に合ってよかったわ」
「小町ちゃん、お兄ちゃんも頑張ったんだけど……」
それとお義姉さんは止めようね。
「八幡さんもお疲れ様です!」
「お、おう、ありがとう…………絢瀬妹」
「な、何ですか、その呼び方?私の事は亜里沙でいいですよ」
「……わかった。……亜里沙」
すんなりと呼ぶ辺りがあんまり自分らしくない気はしたが、今日くらいはいいかもしれない。絢瀬妹は遭遇率も低いし。天使だし。
「は、八幡君。私は?」
「どうしました、絢瀬さん」
「うぐぅ……」
いや、確かにそのキャラクターも天使なんだけどね。
その後はゲームをしたり(ツイスターゲームは封印)、雑談したりして、それなりに楽しく時間が過ぎていった。普段の自分はもっとパーソナルスペースが広いはずなのだが、それを忘れるくらいのものだった。
しかし、その日の夜。ハプニングが起こる。
夕飯の後、ついうたた寝をしてしまい、寝ぼけていた。
寝ぼけ眼で時計を確認し、8時を過ぎていたから、風呂に入ろうかと思った。ところが…………
「え?」
「は?」
風呂場の扉を開けると、スカートはまだ装着しているが、背中が丸出しの絢瀬さんがいた。
その雪のように儚い白さと程よい弾力のありそうな芸術的な背中に、思わず視線が釘付けになる。
「は、八幡君?」
その言葉で我に返る。
「す、すいません!」
慌てて扉を閉める。脳が一気に覚醒した。
そして呼吸が荒くなっている気がする。
さらに顔が熱い。
「八幡君、もういいわよ!」
ひとまず顔を洗って熱を冷まし、煩悩を退散させよう。
そう思いながら扉を開けた。
「…………」
何故かタオルを巻いただけの絢瀬さんが、ドヤ顔で腰に手を当て、仁王立ちしていた。
「え、あ……はぁ!?」
「さ、いいわよ!」
「な、何がいいんでしゅか!?」
「私に背中を流して欲しいんじゃないの?」
「どこをどう読み取ったらそうなるんでしょうか……」
顔をあらぬ方向に向けながら話しているが、あのタオルの下は…………
観覧車の時のように、何かが爆発するような気持ちになりながら、扉を閉める。
しかし、すぐに半分ほど開かれ、肩を掴まれる。
「観念するチカ。い、一緒に入るチカ」
「い、いや入りませんよ…………」
しかも、あなた少し恥ずかしがってるじゃないですか。
俺は少し勢いをつけて、この場から去る事にした。
「きゃっ!」
俺の肩を強く握っていたせいか、絢瀬さんが脱衣所から飛び出してくる。
「あ、すいませ…………あ」
絢瀬さんの体から、タオルがはらりと落ちると同時に、俺の意識も落ちた。
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