捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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GLOBAL COMMUNICATION ♯4

 由比ヶ浜は俺の手を引き、すたすた歩いていく。人目を避けるための行動がかえって人目を集めているが、最早お構いなしのようだ。

 やがて、階段下の人目につかないスペースへ辿り着く。

 

「ふう……な、何かごめんね?」

「……いや、いい。それよか、何だ?」

 

 こんな場所まで連れてきたのなら、何か人前では言いづらい用があるんじゃなかろうか。カツアゲとかじゃないよね?ね?

 

「あ、うん。ちょっとヒッキーに聞きたいことが……」

 

 そう言って、由比ヶ浜は胸の前で左手をきゅっと握りしめ、俯いた。俺はこの気まずい間を埋める為に、鞄を掛け直した。

 やがて由比ヶ浜が顔を上げる。

 

「あの……ヒッキーって……やっぱりあの金髪の人と付き合ってるの!?」

「…………」

 

 正直答えづらい質問だ。

 まさかガールフレンド(仮)なんて言うわけにもいかない。 

 それ以外になんて言えば……

 

「……あー、まあ、あれだ。色々あんだよ」

 

 結局それしか言えなかった。

 そんな曖昧模糊とした言葉に、由比ヶ浜はふむと考え込むように頷く。

 

「付き合ってるなら付き合ってるって言うよね……」

 

 何かボソボソと独り言を呟いているが、こちらには聞こえない。

 

「よし!」

 

 いきなり意気込んだ由比ヶ浜に、驚いて飛び退いてしまう。

 

「ど、どうした?」

 

 由比ヶ浜は俺の問いには答えず、いきなり駆けだして行った。

 

「…………」

 

 どうして俺の周りには、俺の話を聞かない奴が多いのか……。

 

 *******

 

「むう……やはり何か感じるわね」

「エリチ、どうしたん?」

「う~ん、八幡君の周りに希以外の良からぬ気配が……」

「エ、エリチはウチの事を何と思っとるん?」

「それはさておき」

「おいとくんかい!」

「電話してみようかしら。いいえ、いけないわ絵里。そう安々と夫……いえ、旦那……いえ、恋人の浮気を疑うなんて」

「エリチ、全部口に出とるよ」

「あら、いけない」

 

 希に言われて口を慌てて両手で閉じる。……あまり意味のない行動だったわ。

 

『先日、熱愛が発覚したアイドルグループSのMさんがグループ脱退を発表しました』

 

 ショーウインドウの内側から、こちらに向けられて備えつけられたテレビが、最新のゴシップを流している。

 アイドルグループという単語に反応して、にこと花陽が立ち止まり、ニュースを食い入るように見始めた。

 

「はあ、もったいないわね。せっかく売れ始めたのに……」

「仕方ないですよね……アイドルですもんね……」

 

 あれ?何故かしら?ギクリとしてしまったわ。

 

「そういえばスクールアイドルも恋愛禁止なのかなぁ?」

 

 穂乃果が首を傾げながら呟く。

 

「当たり前でしょ!私達はアイドルなのよ」

「そ、そうですよ!やっぱりいけません!」

「それに……高校生で恋愛なんて……早過ぎます!」

「そ、そうかなあ?」

 

 反対意見が多数のようね。ことり、頑張って!!

 

「ま、私はどっちでもいいけど……」

「真姫ちゃんは声かけづらいから大丈夫にゃ~」

「し、失礼ね!ナンパくらいされた事あるわよ!」

 

 わ、私だってあるわよ!

 

「エリチはどう思うん?」

 

 希がニヤニヤしながら聞いてくる。くっ、この借りは希編で必ず……!

 

 私は咳払いをして、頭の中から言葉を引きずり出した。

 

「そうね、私は……こだわる必要はないと思うわ」

 

 やっぱり皆キョトンとしている。

 

「ア、アンタ何言ってんのよ!」

「そうですよ、絵里!」

「高校生活は一度きりなのよ。私は……で、出会いを大切にしてもらいたいわ……うん、青春だもの。アオハライドしなきゃ」

『…………怪しい』

 

 私は学校に着くまで、皆の疑惑の視線に晒された。

 


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