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それでは今回もよろしくお願いします。
「お誕生日おめでと~う!亜里沙ちゃん!」
小町の祝いの言葉に続き、クラッカーの音が破裂する。景気のいい音に、場の空気が一層明るくなった。それと同時に、久しぶりに聞いたクラッカーの音にビクッと体が跳ねてしまった。誰も気づいていないのが幸いだが、結構恥ずかしい。
「亜里沙、おめでとう!」
絢瀬さんが亜里沙の頭を優しく撫でる。亜里沙が絢瀬さんを怒る場面ばかり目撃しているせいで普段は忘れがちだが、やはり亜里沙の『姉』である。
他のメンバーもそれぞれ祝いの言葉を送るのに混じって、俺も無難に『おめでとう』とだけ呟く。くっ!これが経験値の差か。
それでも絢瀬姉妹にはしっかり聞こえていたらしく、極上の笑顔を返してくる。
そして亜里沙が立ち上がった。
「皆さん、ありがとうございます!」
その目の端には小さな煌めきが咲いていた。
プレゼントも渡し終え、再びまったりとした時間が流れ始めた頃、絢瀬さんがポツリと呟いた。
「何かやりたいわね」
……碌でもない案しか出て来なさそうなので、止めようとしたら東條さんに先手を打たれた。
「ポッキーゲームとかいいんやない?」
ニヤニヤしながらこっちを見たので、何が狙いかは一目瞭然だ。
「それある!」
絢瀬さん……まだ登場してない人のセリフを取らないでください。
つーか、そんなアホな大学生ノリのゲームは死んでも御免だ。野球拳や一気飲み対決程ではないが、どちらにしろしょうもない。
「ちょ……何言ってんのよ!やるわけないでしょ!」
「安心して。にこっちはウチとやから」
「それはそれで恐いんだけど……」
東條さんが手をワシワシさせながら矢澤さんに近づいていく。少しゆるゆりな展開を期待してしまうが、それどころではない。
「じゃあ、俺は洗い物でも……」
「ん~」
スタンバイO.K.
そう言わんばかりに絢瀬さんはポッキーを加え、目を閉じていた。もちろんこちらを向いている。
「じゃ、小町達は後片付けをしよっか」
「うん、そうだね」
シスターズはささっと台所へと逃げていった。
そして隣では東條さんが矢澤さんに……何も言うまい。
「んっ、んっ」
絢瀬さんがくちばしのようにポッキーを突き出してくる。しかもご丁寧にチョコのついた方をこちらに向けてるときた。
「んんん~」
おそらく『はやく~』と言ったのだろうか。目を開け、俺の肩に手を置き、膝の上に乗っかってきた。
さっきより距離が近くなったせいで、ポッキーを加える唇がやけにこちらの緊張感を煽る。青い目はやたらとにこやかに俺を見据えていた。
「…………」
途端にスイッチが入ったようにポッキーを囓ってしまう。そのまま絢瀬さんの肩に手を置き、ゆっくりと距離を詰める。
「「…………」」
真ん中くらいで止まり、至近距離で目と目が合う。
数時間前と同じ状況で、吐息が混ざり合い、口元が生温かい。
そして、さっきよりふわふわとした気分で体が自然と距離を詰めようとした、が……
「~~!!」
変な呻き声を上げた絢瀬さんがポッキーを折って、俺から顔を背けた。
「え?何?わ、私、どうしたの?」
さっきとは比べ物にならないくらいに耳まで真っ赤になり、ブツブツと何か呟いている。とはいえこっちも膝の上に乗られた時点で顔が熱くなり、思考回路は狂いっぱなしだ。今はポッキーを咥えたまま、肩透かしを喰らったような間抜けな面をしている事だろう。
「エ、エリチカお部屋行ってくる!」
ドタバタとリビングを出て行く絢瀬さんの背中を、そのまま見送る事しか出来なかった。
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