捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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RAIN ♯2

「ふぅー……」

 熱めの湯に浸かり、眉間の辺りを指で揉む。大して効果は無いとしても、そうでもしないと、この疲れは消え去ってくれそうにはなかった。

「お兄ちゃん、お疲れだね」

「おう……」

 ドア越しに話しかけてくる小町に、殊更疲れを強調して返事をした。

 かなり面倒な事になっている。

 相模の『皆も文化祭を楽しもう』発言により、文化祭実が自分のクラスを手伝うようになり、それに比例して、こちらの仕事が増えている。はっきり言って、文化祭実行委員会の運営は破綻寸前だった。

 まともな点を上げるとすれば、普段体育でペアを組む材木座が手伝ってくれている事だ。武士の情けとかなんとか言っていたが、大方クラスで手持ち無沙汰なんだろう。さり気なく小声で『我も此奴についていけば、コスプレしてくれる彼女が……!』とか言ってたし。そんな上手い話はない。仕方ないから、文化祭が終わったら絵里さんに頼み込んで、セイバーのコスプレをしてもらい、『問おう。貴方が私のマスターか』と言ってもらおう。あれ?これって結構なご褒美のような……やっぱり俺だけに言ってもらおう。いや、ここで借りを作ると後々……

「八幡君、疲れてるみたいね。背中、流そうか?」

「いえ、大丈夫です」

「遠慮しなくていいのよ」

「いえ、お構いなく。……てか、いつからいたんですか?」

「八幡君が私でいやらしい妄想をする前からよ」

「し、してませんよ。何の事ですかね」

「問おう。いやらしい妄想はしてないのか」

「はい、すいません」

「もう、仕方ないんだから……」

「いや、そんな事言いながら、さり気なく入ってくるの止めてもらえます?」

「大丈夫よ。小町ちゃん公認だから」

「流石にそれだけでは……」

「あとカマクラちゃんも認めてくれたわ」

「絶対に嘘ですよね」

 体にバスタオルを巻いた絵里さんが無駄のない動作で湯船に入り、体を寄せてきた。風呂場の湿った空気と甘い香りが混ざり合い、上手く思考回路が働かなくなる。

「ねえ、八幡君」

「は、はい?」

「タオルの下……見たい?」

 絵里さんはタオルに手をかけた。

「…………っ!」

 夢だった。どうやら湯船で寝てしまっていたらしい。湯船で寝るというのもアレだが、何より内容がやばすぎる。

「…………」

 隣のぽっかり一人分空いたスペースに誰もいない事を確認してから、のろのろと風呂から上がった。のぼせ気味の体を冷ますのに30分くらいかかった。

 

「お姉ちゃん、何してるの?」

「変装の準備よ」

「……捕まらないでね」

 

 




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