それでは今回もよろしくお願いします。
「ふぅー……」
熱めの湯に浸かり、眉間の辺りを指で揉む。大して効果は無いとしても、そうでもしないと、この疲れは消え去ってくれそうにはなかった。
「お兄ちゃん、お疲れだね」
「おう……」
ドア越しに話しかけてくる小町に、殊更疲れを強調して返事をした。
かなり面倒な事になっている。
相模の『皆も文化祭を楽しもう』発言により、文化祭実が自分のクラスを手伝うようになり、それに比例して、こちらの仕事が増えている。はっきり言って、文化祭実行委員会の運営は破綻寸前だった。
まともな点を上げるとすれば、普段体育でペアを組む材木座が手伝ってくれている事だ。武士の情けとかなんとか言っていたが、大方クラスで手持ち無沙汰なんだろう。さり気なく小声で『我も此奴についていけば、コスプレしてくれる彼女が……!』とか言ってたし。そんな上手い話はない。仕方ないから、文化祭が終わったら絵里さんに頼み込んで、セイバーのコスプレをしてもらい、『問おう。貴方が私のマスターか』と言ってもらおう。あれ?これって結構なご褒美のような……やっぱり俺だけに言ってもらおう。いや、ここで借りを作ると後々……
「八幡君、疲れてるみたいね。背中、流そうか?」
「いえ、大丈夫です」
「遠慮しなくていいのよ」
「いえ、お構いなく。……てか、いつからいたんですか?」
「八幡君が私でいやらしい妄想をする前からよ」
「し、してませんよ。何の事ですかね」
「問おう。いやらしい妄想はしてないのか」
「はい、すいません」
「もう、仕方ないんだから……」
「いや、そんな事言いながら、さり気なく入ってくるの止めてもらえます?」
「大丈夫よ。小町ちゃん公認だから」
「流石にそれだけでは……」
「あとカマクラちゃんも認めてくれたわ」
「絶対に嘘ですよね」
体にバスタオルを巻いた絵里さんが無駄のない動作で湯船に入り、体を寄せてきた。風呂場の湿った空気と甘い香りが混ざり合い、上手く思考回路が働かなくなる。
「ねえ、八幡君」
「は、はい?」
「タオルの下……見たい?」
絵里さんはタオルに手をかけた。
「…………っ!」
夢だった。どうやら湯船で寝てしまっていたらしい。湯船で寝るというのもアレだが、何より内容がやばすぎる。
「…………」
隣のぽっかり一人分空いたスペースに誰もいない事を確認してから、のろのろと風呂から上がった。のぼせ気味の体を冷ますのに30分くらいかかった。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「変装の準備よ」
「……捕まらないでね」
読んでくれた方々、ありがとうございます!