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それでは今回もよろしくお願いします。
文化祭当日。
開催までに間に合わなくなる危険性があったが、何とかなった。うん、きつかった。正直に言えば、このまま間に合わずに中止にでもなってくれて構わないのだが、奉仕部部長の雪ノ下が相模から依頼を受けている以上、仮部員の俺としては、逃げるのも後味が悪い。
幸い、前回の会議で皮肉をぶつけてみたら、委員会が再び機能しだした。反感は買ったものの好感度など最初からないようなものだ。
とりあえず、開会式で相模が色々と躓いた事以外は、無事に運営出来ている。
「ヒッキー、お疲れ!」
「あ、ああ」
由比ヶ浜から飲み物をパスされ、何とか落とさずに受け取る。
「私、受付やっとくからヒッキー遊んできていいよ」
「そんな体力残ってねーし、そこまで見たいものもねーよ」
「あー、ヒッキーらしいね……」
「ほっとけ」
「あれ?何か向こう騒がしいね」
由比ヶ浜の視線を辿った先には、ちょっとした人だかりが出来ている。全て女子のようだ。黄色い歓声が何とも恨めしい。
「芸能人でも来てるのかな?」
「さあ、どうだかな」
ぼんやり見ていると、人だかりをかき分けるように、その中心となっている人物が姿を現す。
「ごめんよ。通してもらえるかな?」
そいつはかなりのイケメンだった。
口調はやたら気障ったらしいが、それが様になる整った顔立ち。背は特別高くはないが、足は長く、葉山と比べても差し支えないレベル。
そして、一番印象的なのはその美しい金髪碧眼。
「「…………」」
何やってんだ…………絵里さん。
そう、それは間違いなくポンコツ可愛いエリーチカこと絢瀬絵里だ。金髪碧眼だからってだけじゃない。なんかこう、わかってしまう。あれは間違いなく絵里さんだ。髪を上手く帽子の中に纏め、胸にさらしをまいているのか、スタイルを誤魔化しているが、顔立ちと歩き方とかがそこそこ一緒にいたせいで、気づいてしまった。
「あれ、絢瀬さん?」
「ああ、間違いない」
由比ヶ浜も気づいたようだ。確かめるようにしっかりと見ている。
すると、向こうが俺達に気づいた。
「ちょっといいかしら……いいかな?」
さっそくボロを出しかけながら、気取った立ち振る舞いで話しかけてくる。
「はあ、何でしょうか?」
「このクラスは何をやっているのかな?」
「演劇……ですね。今は上映中なので、待ってもらう事になりますけど……」
「そう、じゃあ文化祭を案内してもらえるかな?」
「お断りします」
「そっか、ありがとう!」
「え、いや、ちょっ……」
絵里さんは男装している事を早くも忘れたのか、普通に腕を組んできた。いつもの感触がない事が何故か寂しい。
「きゃ~っ!」
「カ、カメラ準備しないと!」
「ひ、比企谷君が隼人君以外の男子と!ぶはぁっ!」
嫌な声援を浴びながら、俺と絵里さんはそそくさとその場を後にした。
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