捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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RAIN ♯3

 

 文化祭当日。

 開催までに間に合わなくなる危険性があったが、何とかなった。うん、きつかった。正直に言えば、このまま間に合わずに中止にでもなってくれて構わないのだが、奉仕部部長の雪ノ下が相模から依頼を受けている以上、仮部員の俺としては、逃げるのも後味が悪い。

 幸い、前回の会議で皮肉をぶつけてみたら、委員会が再び機能しだした。反感は買ったものの好感度など最初からないようなものだ。

 とりあえず、開会式で相模が色々と躓いた事以外は、無事に運営出来ている。

「ヒッキー、お疲れ!」

「あ、ああ」

 由比ヶ浜から飲み物をパスされ、何とか落とさずに受け取る。

「私、受付やっとくからヒッキー遊んできていいよ」

「そんな体力残ってねーし、そこまで見たいものもねーよ」

「あー、ヒッキーらしいね……」

「ほっとけ」

「あれ?何か向こう騒がしいね」

 由比ヶ浜の視線を辿った先には、ちょっとした人だかりが出来ている。全て女子のようだ。黄色い歓声が何とも恨めしい。

「芸能人でも来てるのかな?」

「さあ、どうだかな」

 ぼんやり見ていると、人だかりをかき分けるように、その中心となっている人物が姿を現す。

「ごめんよ。通してもらえるかな?」

 そいつはかなりのイケメンだった。

 口調はやたら気障ったらしいが、それが様になる整った顔立ち。背は特別高くはないが、足は長く、葉山と比べても差し支えないレベル。

 そして、一番印象的なのはその美しい金髪碧眼。

「「…………」」

 何やってんだ…………絵里さん。

 そう、それは間違いなくポンコツ可愛いエリーチカこと絢瀬絵里だ。金髪碧眼だからってだけじゃない。なんかこう、わかってしまう。あれは間違いなく絵里さんだ。髪を上手く帽子の中に纏め、胸にさらしをまいているのか、スタイルを誤魔化しているが、顔立ちと歩き方とかがそこそこ一緒にいたせいで、気づいてしまった。

「あれ、絢瀬さん?」

「ああ、間違いない」

 由比ヶ浜も気づいたようだ。確かめるようにしっかりと見ている。

 すると、向こうが俺達に気づいた。

「ちょっといいかしら……いいかな?」

 さっそくボロを出しかけながら、気取った立ち振る舞いで話しかけてくる。

「はあ、何でしょうか?」

「このクラスは何をやっているのかな?」

「演劇……ですね。今は上映中なので、待ってもらう事になりますけど……」

「そう、じゃあ文化祭を案内してもらえるかな?」

「お断りします」

「そっか、ありがとう!」

「え、いや、ちょっ……」

 絵里さんは男装している事を早くも忘れたのか、普通に腕を組んできた。いつもの感触がない事が何故か寂しい。

「きゃ~っ!」

「カ、カメラ準備しないと!」

「ひ、比企谷君が隼人君以外の男子と!ぶはぁっ!」

 嫌な声援を浴びながら、俺と絵里さんはそそくさとその場を後にした。

 

 

 

 





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