それでは今回もよろしくお願いします。
「八幡君」
「……はい」
隣に座った絵里さんからどす黒いオーラをバシバシ浴びせられながら、何とか返事をする。や、やべえ……怖い。怖すぎる。
体感温度はやたらに低く、何故か外の景色が非常に恋しい。金髪美女二人と相席できる幸福などを噛み締める余裕もなかった。恐らく傍目から見たら修羅場なのだろう。ウエイトレスさんの視線が冷たい。
さらに、背後からμ'sメンバーの視線を感じるのは気のせいじゃないだろう。
「ねえ、絵里ちゃんの恋人かな?修羅場かな!?」
「だとしたら、あの方は浮気を……な、なんてハレンチな!」
「ふ、二人共、落ち着いて……」
「にこちゃんと希は知ってたの?」
「さあ、どうやろね~」
「ぐっ……」
「うーん、怪しいにゃ~」
「り、凛ちゃん!ダメだよ、そんな事言っちゃ」
皆さん、そういう話は本人の聞こえない所でやってね。うっかりダメージ喰らう時があるから気をつけようね。
とりあえず最初から説明しようと、口を開きかけると、先にエレン先生が絵里さんに話しかけた。
「もしかしてヒキガヤ君の彼女?」
「いいえ、私は八幡の妻です!」
楽しそうな感じで聞くエレン先生に、絵里さんはキッパリと返した。ここまでくれば、ある種の尊敬の念を覚える。納得はしないけど。
「妻…………エエェーーーー!?」
「いや、違いますから。素で驚かないでください」
この際、さり気なく呼び捨てになっちゃってるのはスルーしよう。どうせ年上だし。
「ア、アナタ達は高校生デショウ?」
「それはそれ、これはこれです!!」
「ほ、本当ナノ?」
「証拠を見せます!」
そう高らかに宣言すると、俺の顔を強引に引き寄せ、火照った唇を重ねてきた。
「……!?」
「……んん……んく」
「Oh!」
「えぇ~!!?」
「え、絵里、何をしているのですか!?」
「わぁ~……」
「絵里ちゃん!?」
「キ、キスしてるにゃ!!」
「ちょっ……イミワカンナイ!!」
「はぁ、何やってんのよ」
「あらら、どうしようか?」
せめて東條さんだけでも助けてくれと思いながらも、体の力が抜け、どうしようもない。手を握ってくる強さの分、責められているような気がした。
座席に押し倒され、むせ返るような甘い香りに包まれながら、何とか意識を保とうと必死になった。
視界の端でウエイトレスさんが顔を赤くしているのが見えたが、今はどうでもよかった。
「えぇ!?浮気じゃない!?」
「エエ、本当よ。私が頼んで案内してもらったノヨ」
「言ってくれればよかったのに……」
ジト目で見られる。
「聞いてくれればよかったのに……」
ジト目で返す。
「うぐっ……ごめんなさい」
「いえ、その……俺も……言わなかったから……」
「いいえ、その……いつも、ごめんなさい。みっともない所ばかり見せて……」
「それ嫌味ですか?そんだけハイスペックでみっともないなら、俺とかどうなるんですかね?」
「それもそうね……」
「いや、そこは納得するんですか」
「そうよ、そんな少しダメ人間で、とても優しいあなたが好きなんだから」
「……本当にダメ人間になったらどうするんだっての」
「何か言った?」
「いえ、別に……」
「それよりどうしよう……もう8回目じゃない。こうなったら寝ている時に……」
「聞こえてますから……」
「絵里」
突然会話に割り込むように、黒髪ロングの……園田さんだったか……が会話に割り込んできた。表情こそ笑顔だが、目が笑っていない。
「話……聞かせてくれますよね?」
読んでくれた方々、ありがとうございます!