捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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BEAUTIFUL DREAMER ♯5

「八幡君」

「……はい」

 隣に座った絵里さんからどす黒いオーラをバシバシ浴びせられながら、何とか返事をする。や、やべえ……怖い。怖すぎる。

 体感温度はやたらに低く、何故か外の景色が非常に恋しい。金髪美女二人と相席できる幸福などを噛み締める余裕もなかった。恐らく傍目から見たら修羅場なのだろう。ウエイトレスさんの視線が冷たい。

 さらに、背後からμ'sメンバーの視線を感じるのは気のせいじゃないだろう。

「ねえ、絵里ちゃんの恋人かな?修羅場かな!?」

「だとしたら、あの方は浮気を……な、なんてハレンチな!」

「ふ、二人共、落ち着いて……」

「にこちゃんと希は知ってたの?」

「さあ、どうやろね~」

「ぐっ……」

「うーん、怪しいにゃ~」

「り、凛ちゃん!ダメだよ、そんな事言っちゃ」

 皆さん、そういう話は本人の聞こえない所でやってね。うっかりダメージ喰らう時があるから気をつけようね。

 とりあえず最初から説明しようと、口を開きかけると、先にエレン先生が絵里さんに話しかけた。

「もしかしてヒキガヤ君の彼女?」

「いいえ、私は八幡の妻です!」

 楽しそうな感じで聞くエレン先生に、絵里さんはキッパリと返した。ここまでくれば、ある種の尊敬の念を覚える。納得はしないけど。

「妻…………エエェーーーー!?」

「いや、違いますから。素で驚かないでください」

 この際、さり気なく呼び捨てになっちゃってるのはスルーしよう。どうせ年上だし。

「ア、アナタ達は高校生デショウ?」

「それはそれ、これはこれです!!」

「ほ、本当ナノ?」

「証拠を見せます!」

 そう高らかに宣言すると、俺の顔を強引に引き寄せ、火照った唇を重ねてきた。

「……!?」

「……んん……んく」

「Oh!」

「えぇ~!!?」

「え、絵里、何をしているのですか!?」

「わぁ~……」

「絵里ちゃん!?」

「キ、キスしてるにゃ!!」

「ちょっ……イミワカンナイ!!」

「はぁ、何やってんのよ」

「あらら、どうしようか?」

 せめて東條さんだけでも助けてくれと思いながらも、体の力が抜け、どうしようもない。手を握ってくる強さの分、責められているような気がした。

 座席に押し倒され、むせ返るような甘い香りに包まれながら、何とか意識を保とうと必死になった。

 視界の端でウエイトレスさんが顔を赤くしているのが見えたが、今はどうでもよかった。

 

「えぇ!?浮気じゃない!?」

「エエ、本当よ。私が頼んで案内してもらったノヨ」

「言ってくれればよかったのに……」

 ジト目で見られる。

「聞いてくれればよかったのに……」

 ジト目で返す。

「うぐっ……ごめんなさい」

「いえ、その……俺も……言わなかったから……」

「いいえ、その……いつも、ごめんなさい。みっともない所ばかり見せて……」

「それ嫌味ですか?そんだけハイスペックでみっともないなら、俺とかどうなるんですかね?」

「それもそうね……」

「いや、そこは納得するんですか」

「そうよ、そんな少しダメ人間で、とても優しいあなたが好きなんだから」

「……本当にダメ人間になったらどうするんだっての」

「何か言った?」

「いえ、別に……」

「それよりどうしよう……もう8回目じゃない。こうなったら寝ている時に……」

「聞こえてますから……」

「絵里」

 突然会話に割り込むように、黒髪ロングの……園田さんだったか……が会話に割り込んできた。表情こそ笑顔だが、目が笑っていない。

「話……聞かせてくれますよね?」




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