それでは今回もよろしくお願いします。
「さて……説明してもらいましょうか」
「う、海未。どうしたの?もしかして……怒ってるの?」
「当たり前です!何を考えているのですか!私達は仮にもスクールアイドルなのですよ!公衆の面前で、キ、キ、キスなど!誰かに見られたらどうするのですか!貴方だけはまともだと思っていたのに……」
園田さんは耳まで真っ赤にしながら絵里さんを叱りつける。そういや学校では猫を何匹もかぶっているんだっけか。喫茶店で音ノ木坂の生徒から話しかけられていたが、別人が降臨していた。ガヴちゃんも真っ青の変わり様だった。
園田さんのあまりの剣幕に、絵里さんはしゅんとして頭を下げる。
「ごめんなさい……」
「…………」
素直に謝る絵里さんに、園田さんは何を言おうか迷っているようだ。
まあ、あれだ。今回に関しては俺も当事者だ。何も言わずにいるのも居心地が悪い。
「あー、その……」
「何でしょうか?」
ギロリと向けられた鋭い視線に体の芯から縮み上がりそうだ。怖っ!こいつ本当にアイドルかよ!防御力下がったじゃねーか!
「いや、その……今回は俺も悪かった。普段からこんな事をやってるわけじゃ……」
言っている内に、これまでの事が思い出される。
これまでの数回は、今日よりダントツでヤバイ奴ばかりじゃん……校門前とか観覧車とか。
自然と口が回らなくなる。
「な……い……」
「どうしたのですか?もっとハキハキと喋りなさい」
すると、絵里さんが割って入ってきた。
「海未は私達のお付き合いに……反対?」
「……私は交際に反対しているわけではありません。しかし、高校生である以上は節度ある交際を心がけて欲しいのです」
確かにその通りだ。反論の余地など全くない。むしろ俺もその方が……いや、正式な付き合いではないけど。
絵里さんはいきなり立ち上がり、はっきりとした声で告げた。
「わかったわ!彼から外で求められても、ちゃんと断るから!」
おい。後で覚えてろよ。
「……わかりました」
いいのかよ。こっちはいいけど。
意外とあっさり全てが丸く納まろうとしたその時。
高坂さんがいらぬ一言を呟いた。
「海未ちゃん……もしかして羨ましいの?」
「はぁ!?」
驚愕に顔を歪める園田さんを余所に、今度はエレン先生が口を開く。
「ねえ、比企谷君。これが日本で言うシュラバ?彼女もアナタの事がスキナノ?」
「はあぁ!?」
止めて!二人共黙って!園田さん凄い怖い顔してるから!ほら、右手で幻想どころか現実までぶっ壊しちゃいそうだから!
「二人共、な、何をバカな……ふざけた事を言わないでください!」
「そうだよ!海未ちゃんは公園で抱き合ってるカップルを見たら、恥ずかしがって目を背けちゃうくらいピュアなんだから!」
「こ、ことりまで!」
「そういえばコンビニのエッチな本のコーナーの前は絶対に行かんよね」
「作詞でも恋愛系の歌詞は書いていないわね」
「た、確かに!μ'sにはアイドルの王道であるラブソングがありません!」
「あ、え、そ、そんな事は……うぅ」
止めたげて!園田さんのHPはゼロだから!
「仕方ないじゃない。海未にはまだ恋愛経験がないから」
「なさそうだにゃ~」
……な、何なんだ。皆薮蛇すぎんだろ。それどころか藪鬼だぞこれ。
「…………」
園田さんが俯き、何も言わなくなった。それと同時に辺りが静まり返り、張り詰めたような緊張感で息苦しくなる。
やがて彼女はゆらりと立ち上がり、その顔を上げた。
「貴方達……覚悟はいいですね」
その後の事は思い出したくもない。
読んでくれた方々、ありがとうございます!