捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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逢いたい気持ち

「さあ、京都に着いたわ!」

「お姉ちゃん、落ち着いて」

「はい」

 

 つい大きな声を出してしまい、亜里沙から窘められる。おっといけないわ。いつものかしこい、かわいいエリーチカのキャラが崩壊する所だったわ。

 

「もう既に崩壊してる件について」

「希、心を読まないで」

 

 駅は多くの人では混み合っていて、ひっきりなしに人が出入りしていた。さすがは日本最大の観光都市といったところだ。やっぱり伏見稲荷大社と清水寺は行っておきたいわね。それと龍安寺あたりも……。

 あれこれ考えていると、こちらに対する視線を感じる。

 目をやると、同い年くらいの女子達がいた。楽器のケースらしき物を持っている。部活帰りかしらね。

 

「わぁ~、綺麗な人ですね~」

「モデルさんかなぁ?なんか見た事あるような……」

「そうだねー(私も高校生の間にあのくらいは……)」

「久美子、どうかしたの?」

「いや、何でもないよ」

 

 モ、モデルなんて……もう、正直なんだから!

 つい嬉しくなって、ウインクしてみたら、ちょうど中間地点を人が通り、その人にウインクしてしまった。怪訝そうな目を向けられて気まずいわ。

 

「そういやエリチ。その黒くて細長い鞄は何なん?」

「これ?乙女の嗜みよ」

「な、何なのよ……」

「乙女の嗜みよ」

『怪しすぎる……』

 

 これは……その……秘密兵器です。

 

 *******

 

 いきなり体がぶるりと震える。あれ、おかしいな?今日はまだそこまで寒くないはずなのに。風邪もひいていないはずなんだが。

 

「どうかした?」

「いや、今なんか寒気が……」

「もしかしたら、あなたが泣かせてきた女性達の恨みかもしれないわね」

 

 雪ノ下が気遣いと罵倒の中間で話しかけてくるが、まず反論しておきたい事がある。

 

「人を女たらしみたいに言うんじゃねえよ」

「あら、違うのかしら?」

「一応、これでも品行方正を心がけてるんでな」

「……校門前」

「ぐっ……」

「それと屋上」

「ぐぐっ……」

「品行方正の言葉の意味を間違えてないかしら」

「……お前、そろそろ行かなくていいのか」

「そうね。そろそろ行くわ。じゃあ、また後で」

「ああ」

 

 雪ノ下は颯爽とした足取りで、自分のクラスの集団へと戻っていった。

 その背を眺めていると、視界に少し痛い行動をしている方が目に入る。

 

「ひ、平塚先生!もうそろそろ……」

「ま、まだだ!ペットボトル一杯に、この霊水を!」

 

 もう、誰かもらってやってくれよぉ……。

 

 *******

 

「エリチ、何でさっきから、そんなこそこそしとるん?」

「な、何となくよ!今出くわしても何も出来ないじゃない!」

「あ、比企谷君」

「ぴぎゃあっ!」

「あははっ、冗談やって」

「お姉ちゃん、驚きすぎ」

「はあ、まったく……何やってんだか。ほら、さっさと行くわよ」


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