捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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逢いたい気持ち ♯2

 

「おい」

 一人で川辺に佇む葉山に声をかける。その哀愁漂う表情は京都の街に溶け込んでいて、こんな場所でも『みんなの葉山隼人』は健在だった。

 葉山はゆっくりこちらを振り向き、小さく微笑む。

「君はすごいな周りの評価なんかに左右されずに、周りを変えていく」

「…………」

 あれ、そんな大層な事したっけ?

「いや、さっぱり分からないんだけど」

「結衣はしっかりと自分を主張するようになった。相模さんも……変わったよ」

「おい、今相模の所、適当にごまかしただろ」

「…………」

 こいつ、クールにスルーしやがった!

「君には頼みたくなかったんだが……」

 葉山が悔しそうな表情で目を伏せる。その目は俺より向こう……遠い過去を見ているようだった。頭の中に一瞬だけ雪ノ下がちらついたが、それを口に出す事はしなかった。俺は京都の街を焦がす落陽に目を向け、これから起こる事に思いを馳せながら、葉山に背を向けた。

「お互い様だよ、馬鹿野郎……」

 

「は、八幡が……何をするのかしら」

「う~ん、今の会話だけやと、ようわからんね~」

「お姉ちゃん、あんまり怪しい行動はやめようよ」

「甘いわ亜里沙。そんな事だから未だに亜里沙編が始まらないのよ」

「言ってはいけない事を……」

「そんな事言ったらあかんよ……にこっち編なんて……」

「ア、アンタ達さっきから何を意味不明な事を言ってんのよ!」

「にこっち……ドンマイ」

「にこ……元気を出して」

「にこ先輩、元気出してください」

「何なのよ一体!」

 

 夜になり、約束の時間が訪れた。

 関係者一同は緊張の面持ちで、この場に臨んでいた。葉山グループの男子達も、さっきまでの無責任な囃し立てはなく、固唾をのんで見守っている。

 これはただの作戦だ。

 自分がこれからやろうとしている事に対し、必死に言い訳を捻り出している。一ヶ月前ならなんてこともなかったのかもしれない。しかし、今は……

「あ、姫菜来たよ!」

 由比ヶ浜の声に前を向くと、もう既に二人が向かい合っていた。それを見て、体が自然と動き出す。

 俺は奉仕部の二人と隠れていた場所から飛び出した。

「ヒッキー!」

「比企谷君?」

 全速力で駆け出し戸部に並ぶ。打ち合わせにない出来事に戸部は驚き、海老名さんは俺の意図に気づいたようだ。よし、何も考えるな。ただ、機械的に告白して終わるだけだ。

 絵里さんの顔が何度もちらつくが、心の奥底に仕舞い込んだ。

 そして、俺が二人の気を引いたその瞬間……突然、後頭部に衝撃がきた。

 





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