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それでは今回もよろしくお願いします。
「おい」
一人で川辺に佇む葉山に声をかける。その哀愁漂う表情は京都の街に溶け込んでいて、こんな場所でも『みんなの葉山隼人』は健在だった。
葉山はゆっくりこちらを振り向き、小さく微笑む。
「君はすごいな周りの評価なんかに左右されずに、周りを変えていく」
「…………」
あれ、そんな大層な事したっけ?
「いや、さっぱり分からないんだけど」
「結衣はしっかりと自分を主張するようになった。相模さんも……変わったよ」
「おい、今相模の所、適当にごまかしただろ」
「…………」
こいつ、クールにスルーしやがった!
「君には頼みたくなかったんだが……」
葉山が悔しそうな表情で目を伏せる。その目は俺より向こう……遠い過去を見ているようだった。頭の中に一瞬だけ雪ノ下がちらついたが、それを口に出す事はしなかった。俺は京都の街を焦がす落陽に目を向け、これから起こる事に思いを馳せながら、葉山に背を向けた。
「お互い様だよ、馬鹿野郎……」
「は、八幡が……何をするのかしら」
「う~ん、今の会話だけやと、ようわからんね~」
「お姉ちゃん、あんまり怪しい行動はやめようよ」
「甘いわ亜里沙。そんな事だから未だに亜里沙編が始まらないのよ」
「言ってはいけない事を……」
「そんな事言ったらあかんよ……にこっち編なんて……」
「ア、アンタ達さっきから何を意味不明な事を言ってんのよ!」
「にこっち……ドンマイ」
「にこ……元気を出して」
「にこ先輩、元気出してください」
「何なのよ一体!」
夜になり、約束の時間が訪れた。
関係者一同は緊張の面持ちで、この場に臨んでいた。葉山グループの男子達も、さっきまでの無責任な囃し立てはなく、固唾をのんで見守っている。
これはただの作戦だ。
自分がこれからやろうとしている事に対し、必死に言い訳を捻り出している。一ヶ月前ならなんてこともなかったのかもしれない。しかし、今は……
「あ、姫菜来たよ!」
由比ヶ浜の声に前を向くと、もう既に二人が向かい合っていた。それを見て、体が自然と動き出す。
俺は奉仕部の二人と隠れていた場所から飛び出した。
「ヒッキー!」
「比企谷君?」
全速力で駆け出し戸部に並ぶ。打ち合わせにない出来事に戸部は驚き、海老名さんは俺の意図に気づいたようだ。よし、何も考えるな。ただ、機械的に告白して終わるだけだ。
絵里さんの顔が何度もちらつくが、心の奥底に仕舞い込んだ。
そして、俺が二人の気を引いたその瞬間……突然、後頭部に衝撃がきた。
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