それでは今回もよろしくお願いします。
12月。
1年の終わりが近くなり、街はそこはかとなく慌ただしさを見せる。雲がかかった空は今にも雪を降らせそうなくらいにどんよりとしていた。
絵里さんと付き合いだした俺は、その事を奉仕部のメンバーにさり気なく報告した。ちなみにこの二人への先日の修学旅行での誤解はちゃんと解いてある。
「そっかぁ~!おめでとう、ヒッキー!」
「おめでとう。これでもう、これまでみたいな事は出来なくなるわね」
「おい。これまでのは……多分……何かの間違いだ」
「それで、今日はどうかしたの?まさかノロケに来ただけではないのでしょう?」
「……依頼がある」
そう。俺にはやらなければならない事がある。
この学校内に蔓延する悪い噂の駆除だ。
……いや、事実といえば事実なのか。
しかし、最近になってから、俺が城廻先輩に告白したなんて噂もある。どうしてこうなった。お陰で、城廻先輩は目が合う度に逃げられるので、結構なダメージである。
俺の話を聞いた雪ノ下は、目を伏せ、冷たい声音でぼそっと言った。
「なるほど、彼女ができたから、過去の女を捨てたいという訳ね」
「お前、話聞いてた?誰とも何もしてねーよ。まあ、俺が悪い部分が多くをしめてるんだが……」
「なら、あなたが一人でやるべきではないかしら」
「まあ、確かにそうだよな……」
「ゆきのん、違うよ!こうなってるのはヒッキーのせいだけじゃないよ!だって……私も悪いもん!」
「今さらになって言うのね。あなたも……ずるいわ」
「いや、待て。そういう話をしに来たんじゃねえよ」
そう、俺はただ安心したいのだ。安らぎを得たいのだ。
彼女がいる身で、あまり変な噂が立ちすぎるというのも、絵里さんに申し訳ない。
「俺は……俺は……」
雪ノ下の目を見て、心を込めて言った。
「平穏が欲しいっ……」
「…………」
ゴミを見るような目で見られた気がするが、今は気にしてなどいられない。
「ゆ、ゆきのん、ヒッキーもこう言ってる事だし……」
「あ、あなたも自分の噂をさり気なく消そうとしてるわね。あなたってやっぱり……ずるいわ」
「さ、ヒッキー、どうするか考えよー!」
「ああ」
「…………」
話し合いの結果、これまでの悪評を消すには、言葉だけでは足りないという結論になり、俺自身の良い評判を作り出す事になった。もちろん、中身のあるしっかりしたものだ。というわけで、学業の面で高みを目指す事になった。雪ノ下曰く『私ほどでなくていいから、葉山君を追い越しなさい』との事だ。……総合学年2位かよ。数学を真面目にやるのは、かなりしんどい事になるだろうが、腹をくくるしかないようだ。
他にもいくつか命じられたのだが、それは後ほど語る事にしよう。
「は、八幡……これっていい話なのかしら?そうでもないのかしら?」
「いや、俺にもよくわからないですね……」
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