遊悟には幸と不幸が同時に訪れた。
不幸とは自身の力の通用しない相手が現れたこと。
そして幸いにも倒れた場所が街の中心に近い場所であったこと。
倒れていた少年を見ていた者がいた。
「こんなに弱っちいのがこの次元の『因子』だなんてねぇ」
クスリと笑う。
「でも見守っていく価値はありそうだねぇ。「バタフライ・エフェクト」って知ってるかい?
遠方での蝶の羽ばたきが、巨大な竜巻を引き起こしてしまうって説さ。
コイツの頑張りが因子になってこの次元に大変なことを起こすみたいだよ。
まぁでもぉ、コイツなんかが『覇王の因子』なわけが無いし、
『運命の振り子』を見つけ出すことなんかさ、できるはず無いんだよねぇ」
少女は遊悟を足で小突く。
「君にある『覇王の因子』はやっぱり君にしか無いんだよぉ。ねぇ「ユーリ」?」
少女が振り返ると、「ユーリ」と呼ばれた少年は少し考え込むような体勢になる。
少しすると2人の元に煉が現れた。
煉「「リズ」…だったか?会うのは二度目になるな」
リズと呼ばれた少女が煉を見つめる。
リズ「あれれぇ?誰だったけぇ?なんで私の名前知ってるのぉ?」
わざとらしく煉を煽った。
煉「貴様らのディスクは住民登録ができていない。
かと言って貴様らのような風貌の人間、
リズ「正解正解だぁいせいかぁい。これで満足?私達はこの世界の人間じゃあないよ」
煉「信じがたいが、この世界とは別の世界、「次元」なるモノが存在するようだ。
そして貴様らはここに宣戦布告しに来た、といったところか?」
『そうだよ』
「ユーリ」と呼ばれた少年が口を開いた。
ユーリ『僕達はその精鋭。この次元に戦争を仕掛けに来たんだ』
ユーリは少し長い前髪を弄りながらそう言い放った。
煉「ここ最近、国全体で多くの失踪事件が起こっている。
しかし
被害者の
あとはそこに行きつく方法を見つけるだけ、というところまで捜査は進んでいる。」
ユーリ『へぇ、早いもんだ。素直に関心したよ』
リズ「まぁ、だからどうしたって話だけどね」
煉「その次元を渡る方法を知っているヤツが目の前にいる…」
煉の不審な動きに2人は退き彼から距離を取った。
ユーリ『危ないな。手枷かい?ソレは』
煉は舌打ちした。初めて使うそれは新開発された、拘束用の枷であった。
対象の
一定以上離れると対象のディスクを強制的に爆破させるというシロモノだった。
ユーリ『悪いけど君のことも警戒させてもらうよ。鬼瓦煉』
リズ「この前の決着付けるのもアリだけどぉ、ユーリが言うならしょうがないかぁ」
じゃあね、と少女は手を振った。と同時に、二人の少年少女は目の前で消えてしまった。
煉は振り返る。そして見下す。
「コレ」には奴等となんらかの繋がりがある。
このままのさばらせておくつもりであったが、どうやら泳がせておく意義があるようだ。
ならば野垂れ死にさせず、近くにある施設の前にでも捨てておけばよいだろう。
どうにしろここで死なないのであれば俺とコレはまた闘うことになる。
WRDCでな…
煉の顔には笑みが漏れていた。
何かを企む邪悪な笑みであった。
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遊悟「ありがとうございます!いやー助かったぜ!」
パンを齧りながら礼を言った。
遊悟が目を覚ましたのは富裕都市に近い場所の孤児院だった。
カレンと名乗る老婆は笑いながら言った。
カレン「お礼を言うならあの子達に言いなよ」
そう言って窓の外を見た。
外にはD・ホイールに群がる子供達がいた。
カレン「あの子達があんたを拾ってきたんだよ。
あんたもバイクもひどくボロボロだったんだから」
そうだった。俺は負けた。
自分の
遊悟「さぁてと、D・ホイールを直さなきゃな…」
カレン「あんたも身体治さないとなんだよ」
忠告を無視して遊悟はD・ホイールの方へと向かった。
D・ホイールにセットしてあったデッキを子供達が触っていた。
遊悟「こらこら、デッキは
「遊悟の命助けたのあたし達なんだよー」
もっともな事を言われた。
「それに俺達、遊悟のデッキを強くしてたんだ!」
遊悟「何?デッキを弄ったのか?」
遊悟が自分のデッキを奪い確認した。
無くなったカードは無く、むしろ増えていた。
遊悟「おいおい、これは…もしかしてお前らのカードか?
ダメだぜ、自分のカードは大事にしろよな」
「このカード達を連れて行って欲しいんだ!」
「みんなで決めたんだ!遊悟には大会で優勝して貰いたいんだ!」
「遊悟は
遊悟「ならなおさらこのままにしておけないな!」
子供たちが遊悟を睨み付ける。
遊悟「デッキのバランスが悪い。1人3枚づつだ!」
子供達が喜んだ。
遊悟は少し照れくさく、鼻の下を擦った。
遊悟は孤児院出身だった。
普段は幼馴染と養母と共に年長者として孤児院の子供達の世話をしている。
「遊悟」という名はその養母「
その子供たちからもその名で親しまれている。
自身の出身地の孤児院と同じ呼ばれ方をされて、安心したような少し懐かしい気分になれた。
子供たちのカードはお世辞にも強いとは言えないカードだった。
しかし遊悟はそのカード達をデッキに組み入れた。
遊悟「強くならなきゃな。俺もコイツらと一緒に…」
ボロボロに壊されたD・ホイールと新しくなったデッキを見て決意した。
遊悟「俺はデュエル・チャンピオンになるぜ!絶対だ!約束する!」
遊悟は子供達とオーと意気込んだ。
遊悟「こうしちゃいられねえ!婆さん、近くにジャンク屋はねえかな?」
夢へと意気込む少年を覚ますすべは無かった。
カレン「もう止めないさ…少し歩いた所にあるよ」
よっしゃーと走って教えて貰ったジャンク屋へと向かった。
ジャンク屋で補修用のパーツを漁っていると、
店主らしき人物が話し掛けて来た。
店主「兄ちゃん風薙遊悟だな?新聞で見たよ。こんな所に何の用だい?」
遊悟「D・ホイールを直したいんだ。壊れちまってさぁ」
店主「ならタダでいいぜ。WRDCに出場する選手のD・ホイールに使われるんだ。
ただしその代わりにうちの店のステッカー貼ってくれや。店の良い宣伝になる」
遊悟「おぉ、サンキュー!直したらステッカーも貼っておくよ!」
タダと聞いてめぼしいジャンクをいくらか持って急いで帰る。
長年連れ添って来たパートナーを早く直してやりたいのだ。
ジャンク屋から孤児院へと戻ると、
孤児院の前に高級そうな黒い車が数台とスーツ姿の数人の男達がカレンと話していた。
「
カレン「ここは
立ち退く訳にはいかないね!」
「
金は用意してやってたんだ!こうなりゃ実力行使だ!」
遊悟「やめねえか!」
カレンに手を上げた男達の拳を遊悟が受け止めた。
遊悟「老い先短い婆さんに手を上げるとは何事だ!」
カレン「口が悪いね、あんたは」
「ほう、これはこれは誰かと思えば」
髭面のガタイの良い男が黒いスーツをかき分け前に出た。
遊悟「なんだオッサン!
オッサン「オッサンだと!まだ28だ俺は!」
遊悟「俺より10以上離れてるじゃねえか!オッサンだよオッサン」
オッサン「オッサンじゃねえ!竜造寺と呼べ!」
黒いスーツの男達がざわつきだした。
「こいつ!風薙遊悟か!」
遊悟「へえ、俺も有名になったもんだな。
竜造寺「そりゃ有名さ。
こんな所で何してんだか知らないが、お前には関係ない事だろうがどっか行け!」
遊悟「関係あるさ。見ず知らずの俺なんかを看護してくれた恩がある!
俺と
竜造寺「面白い。
だが俺が勝ったらお前のデッキとD・ホイールを貰う!俺のデッキと
竜造寺はスーツの男達に指示し自身の
遊悟「いいぜ!俺が負けたら好きなだけなんでも持って行きやがれ!」
遊悟はD・ホイールから
「そんな!デッキまで持ってかれたら!」
「WRDCに出られなくなっちまうじゃねえかよ!」
孤児院の子供たちは喚いた。
竜造寺「こう言ってるようだがどうする?いまならやめにしてやっていいんだぜ?」
遊悟「大丈夫だ!」
遊悟は子供たちに微笑んだ。
遊悟「このデッキには、お前らのカードも入ってるんだ。お前らのカードを信じてやれ」
遊悟はいつものことのように子供たちに優しく微笑みかける。
子供たちは頷いた。子供の信頼は裏切れる物じゃない。
「頑張ってね、遊悟。あたし達のカード」
スタンディング・デュエルが始まった。
『デュエル!!』
竜造寺「先行は貰うぜ!俺は永続魔法「未来融合-フューチャー・フュージョン」を発動!
デッキの5体のドラゴンを墓地へ送り、2ターン後に「
遊悟「ファイブ・ゴッドだと!?」
デュエルモンスターズの中でも最大にして最上級、攻守5000を誇るレアモンスターである。
竜造寺「
さらに「アレキサンドライドラゴン」召喚!カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
遊悟「目先のモンスターでも攻撃力2000…大口叩くだけのことはあるな!
俺のターン!俺はモンスターを伏せる!カードを2枚伏せターン終了!」
竜造寺「お前は口ほどにも無いようだなぁ!俺のターン、ドロー!
「アレキサンドライドラゴン」を生け贄に、「クリスタル・ドラゴン」召喚!
そして永続
水晶を秘めた美しい竜の透明めいて輝く閃光が遊悟のモンスターを襲った。
遊悟「させるか!リバース発動、「トーテムポール」!3回まで攻撃を無効にする!」
竜造寺「ケッ、その場しのぎが!ターンエンド!」
遊悟「俺のターン、俺は「調和の宝札」を発動!
手札からチューナー、「ワンショット・ロケット」を墓地へ送り2枚ドロー!
場の「トップ・ランナー」をリリースし、手札から「サルベージ・ウォリアー」を召喚!
「サルベージ・ウォリアー」の効果!墓地から「ワンショット・ロケット」を引き上げる!」
「僕達のモンスター達だ!」
観ていた子供達が歓喜の声を上げる。
竜造寺「なにぃ?てめぇガキのカードなんか使ってやがんのかぁ!」
遊悟「あぁ、そうだぜ!あいつらの期待に応えなきゃな!」
レベル5のサルベージ・ウォリアーにレベル2のワンショット・ロケットをチューニング!
シンクロ召喚!出でよ、クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!
竜造寺「な、馬鹿な!?「クリアウィング」だとぉ!?」
噂にしか聞かないような幻のカードじゃねえか!
それをなんでこんなガキが持っていやがるんだ!
竜造寺「クックク…決めたぜ…てめぇが負ければ、その「クリアウィング」を!
俺の物にしてやるぜ!ハッハハハ!」
遊悟「だからぁ、俺に勝ったらなんでもやるって言っただろうがよ!
装備魔法「ロケット・パイルダー」と「ジャンク・アタック」をクリアウィングに装備!
行け!クリスタル・ドラゴンを攻撃!「ヘルブレス・バースト」!」
竜造寺「迎え討て!「クリスタル・バースト」!」
2体の竜の炎がぶつかり合う。
拮抗した力は弾け、2体の竜は煙に包まれる。
煙から現れたのはクリアウィングであった。
遊悟「「ロケット・パイルダー」を装備したモンスターは戦闘で破壊されない!」
竜造寺「そんなことだろうと思ったぜ!
遊悟「まだだ!「ジャンク・アタック」の効果!
戦闘破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!行けぇ!」
クリアウィングは竜造寺にブレスを叩き付ける。
竜造寺とその取り巻きを小さな竜巻が襲った。
竜造寺「ちぃ、小癪な真似を…」
竜造寺 LP4000→2750
竜造寺「やってくれるぜ…俺のターン!俺のスタンバイフェイズに
最強にして絶対の力を誇る!大いなる神の竜!
ここに降臨せよ!
五つ首の巨竜がその威光を見せる。
遊悟「これがファイブ・ゴッド…初めて見るぜ!」
ゾクリと来る威圧感に思わず震える。
竜造寺「
バトル!
遊悟「「トーテムポール」で攻撃は無効だ!」
竜造寺「これからだぜ!速攻魔法「融合解除」!
出でよ、2体の「ダークストーム・ドラゴン」と3体の「ヘルカイザー・ドラゴン」!」
竜造寺「さぁ、トーテムポールで防げるのはあと1回までだぜ!
さぁやれ!「ダークストーム・ドラゴン」!」
闇のブレスがトーテムポールを破壊する。
遊悟「ちぃ!面白くなってきたじゃあねぇか!」
竜造寺「もう攻撃を止めることはできないぜ!行け、4体のドラゴンども!」
遊悟「ぐあぁ」
遊悟 LP4000→2100
4体の竜の同時攻撃はクリアウィングと遊悟に襲い掛かる。
遊悟「へへっ、耐えきったぜ!」
竜造寺「甘い、まだ俺のバトルは終わってねぇぞ!
「ダークストーム」2体で融合を行う!」
二面性を持つ魂を混じり合わせ、混沌のドラゴンを呼び覚ませ!
融合召喚!出でよ、超合魔獣ラプテノス!
遊悟「融合解除からの新たな融合召喚だと!?」
竜造寺「こいつは場のモンスターを覚醒させる!目覚めよ!「
ヘルカイザー・ドラゴンの瞳に光が宿る。
その光は竜の全身に生気をもたらした。
竜造寺「覚醒した「ヘルカイザー」は2回攻撃できる!追撃だ!」
遊悟 LP2100→700
遊悟「ぐわぁぁ」
「遊悟ぉ!!」
カレン「それ見たことか、傷が開いちまうよ」
少年はむくりと立ち上がり子供たちに手を振った。
遊悟「平気平気!まだライフは残ってるさ!」
竜造寺「いや、もう終わりだ!魔法カード「火竜の火炎弾」、これで終わりだぜ!」
竜から放たれた炎が遊悟に迫る。
遊悟「手札から「ハネワタ」を捨てて効果発動!効果ダメージを0にする!」
羽の生えた小さな天使が火炎弾を受け止めた。
竜造寺「カードを伏せてターンエンド!
「アナザー・フュージョン」で出したラプテノスはターン終了時に破壊される!」
仕留め損ねたか…
だが俺のリバースカードは「聖なるバリア-ミラーフォース-」…
攻撃を仕掛ければヤツの負け、ゲームオーバーってモンさ!
クリアウィングにチェックメイト…もうすぐ俺の物だ!
遊悟「俺のターン…ドロー!そのカード、警戒させてもらうぜ!」
竜造寺「なに?」
遊悟「俺は…あの子供たちに勝たせてやりたいんでね!あいつらのカードの力を借りる!
クリアウィングが輝きを残して遊悟のデッキへと戻った。
その残光に虹を描き、遊悟の墓地から3体のチューナー、
「トップ・ランナー」「ワンショット・ロケット」「ハネワタ」を呼び戻した。
竜造寺「わざわざ上級モンスターを戻してザコモンスターを召喚だと!?
ハッハ、真剣勝負だと思っていたら!笑わせやがって!ふざけるのも大概にしやがれ!!」
遊悟「俺は
これが勝利への道!リバースカード、「チューナーズ・ボム」!」
竜造寺「なに!?そのカードは…!」
最初から伏せていたカード!?最初からこれを狙っていたのか!?
遊悟「これは今まで脅されていた子供たちと婆さんの分だ!くらいやがれ!!」
3体のチューナーたちは強大なドラゴンへと突進していく。
「行けぇ!!」
子供たちの掛け声に応えるようにドラゴンを倒していった。
チューナーたちはドラゴンと共に弾けた。
爆風は竜造寺とスーツの男たちを包んだ。
竜造寺「バカなぁぁぁ」
竜造寺 LP2750→0
Winner 風薙 遊悟
竜造寺は悔し気にダンッと地面を殴りつけた。
竜造寺「クソ!この俺が!
遊悟「約束だ!もうここには近付くんじゃねえぜ!」
「ふざけるな!こんなこと認められるか!!」
実力行使に出ようとした男たちを竜造寺が制止する。
竜造寺「
竜造寺が指示を出すとスーツの男達は引き上げて行った。
遊悟「二流の悪人みたいな事言いやがって…さて、これで世話になった分は返せたかな?」
カレン「馬鹿言うな。まだ足りないねぇ」
遊悟「どうすりゃ全部返せるんだ?」
カレン「子供達のカードでちゃんと大会で優勝して来るんだよ。
この子達の…
遊悟「もちろん、そのつもりだぜ!」
遊悟は自分のD・ホイールの修理作業に入った。
大事な事を忘れていた。
ジャンク屋からステッカーを貰っていなかった。
「遊悟」という名前はいつか創作デュエルで使おうと温めていた名前でした。
なのでアニメと丸被りするのは覚悟していましたが、
まさか4人出てくるとは思ってもいませんでした。
名前を変えようかとも思っていましたが、
「
アニメ見て思ったことは、
ついに実現しなかった「ユーゴvsユーリの真剣勝負」を書こうと思いました。
だいたい1月頃に書くことになるかと思います。
そしてこの小説も20話ほどで完結させようと思っています。