いよいよ《獅鷲星武祭》もクライマックスです。
っていうか毎日暑すぎるんだよおおおおおっ!
夏なんて滅びろおおおおおっ!
作戦会議
《獅鷲星武祭》準決勝当日。俺達チーム・エンフィールドの面々は、控え室に集合していた。
大事な試合の前ではあるが、皆それぞれ気持ちを落ち着かせて・・・
「な、七瀬・・・お、おはようございます・・・」
いないヤツが一人だけいた。
顔を赤く染め、声を震わせながら挨拶してくるクローディア。俺がクローディアへと視線を向けると、恥ずかしそうに顔を背けてしまう。
おいおい・・・
「・・・誰この乙女」
「こんなクローディアは初めて見るな・・・」
ユリスが呆れている。
俺の知ってるクローディアは、こんな乙女チックなキャラじゃないんだけど・・・
「・・・クローディア」
「ひゃいっ!?」
ビクッと身体を震わせるクローディア。
今思いっきり噛んだな・・・
「何でそんなに緊張してるんだよ・・・」
「そ、それは・・・は、話の流れとはいえ七瀬に・・・こ、恋してることを暴露してしまったので・・・!」
これ以上ないほど赤面しているクローディア。完全に涙目である。
「な、七瀬にどんな顔をしたら良いのか・・・じ、自分でも分からなくて・・・!」
「・・・クローディア先輩、案外可愛らしいところありますね」
「クローディアも女だったということか・・・」
「紗夜、その発言は失礼だと思うけど・・・」
綺凛、紗夜、綾斗がヒソヒソ話している。溜め息をつく俺。
「・・・クローディア」
「ひゃいっ!?」
「いや、それ二回目だから。そろそろ慣れてくんない?」
軽くツッコミを入れてから、俺は自分の思いを告げた。
「まず伝えたいのは・・・こんな俺を好きになってくれて、ありがとな。まぁ死のうとしたことはともかく、その気持ちは本当に嬉しかったよ」
それは紛れも無い事実だ。
クローディアは例の夢を見てからずっと、俺のことを想ってくれていたのだから。
嬉しくないわけがない。
「俺もクローディアのことは好きだよ。ただ、それが異性としてなのかって聞かれると・・・自分でもハッキリとは分からない。一緒に住んでたからかもしれないけど、クローディアへの気持ちは少し特別なものだから」
「七瀬・・・」
「だから、本当に申し訳ないんだけど・・・答えを出せるまで、もう少し待ってほしいんだ。ダメかな?」
我ながら本当に情けない話だが、今はまだ答えが出せない。
半端な気持ちのままで回答するのは、クローディアに対して失礼だしな・・・
「・・・私は一向に構いません。ですが、よろしいのですか?七瀬には既に、恋人がいるというのに・・・」
「シルヴィにはちゃんと話したよ。『受け入れるなら、重婚が認められている国に移住しなきゃね』なんて言ってたけど」
勿論シルヴィにも、複雑な思いはあっただろう。それでも笑顔で、『しっかり答えを出せ』と言ってくれたのだ。
本当に感謝してもしきれないな・・・
「俺のシルヴィに対する気持ちは変わらないし、どんな答えであってもシルヴィと別れることは有り得ない。それでも・・・待ってくれるか?」
「・・・勿論です」
微笑むクローディア。
「七瀬の彼女に対する想いが変わらないように、私の七瀬に対する想いも変わりませんから・・・お慕い申し上げております、七瀬」
「っ・・・」
不覚にもドキッとしてしまった。
改めて告白されると、何か照れ臭いな・・・
「・・・必ず答えは出す。待っててくれ」
「えぇ、いつまでも」
「・・・コホンッ!」
場の空気に耐え切れなくなったのか、大きく咳払いをするユリス。
「と、とにかくだ!二人の話がまとまったところで、本題に入るぞ!」
「あらユリス、何故貴女が恥ずかしがっているのですか?」
「う、うるさい!恥ずかしがってなどいない!」
ユリスをからかうクローディア。ようやくいつも通りになったようだ。
「フフッ・・・まぁそれはさておき、確かに話し合わなくてはなりませんね。今日の試合の対戦相手・・・黄龍について」
全員の表情が真剣なものになる。
今まで戦ってきたチームの中で、一番の強敵であることは間違いないからな・・・
「特徴としては、六人全員が近接戦闘をこなせる攻撃手であるという点が挙げられますね。ですがその分、チームプレーに重きを置いていません。連携よりも個人の判断を優先しているようです」
「だろうな。界龍では各々がそれぞれ腕を磨いてるし、チームを組んで連携プレーなんて基本的にやらないから。沈雲と沈華は別だけど」
あの二人もそれぞれ腕を磨いているが、基本的には二人でタッグを組んでるからな。
まぁ、それぞれ得意とする技の相性が良いっていうのもあるんだろうけど。
「その黎兄妹は、遊撃手のような役割を果たしているようですね。星仙術で有利な環境を作り、他のメンバーは適時それを利用しています。連携とは呼べませんが、サポートはしているといったところでしょう。なのでこの双子は、私が一人で抑えます」
「えっ?クローディア一人で?」
驚いている綾斗。
「確かに、他のメンバーよりは格下かもしれないけど・・・十分に手強い相手だよ?」
「それは承知していますが、この双子の相手は私が適任なんですよ」
「性格の悪さなら負けないもんな」
「あら、想い人にそう言われると傷付きますね」
笑っているクローディア。否定するつもりは無いようだ。
「次に《雷戟千花》ですが・・・ユリス、お願いします」
「あぁ、任された」
頷くユリス。
技の多様性において、ユリスの右に出る者はいないからな。セシリーの術に対抗できるとしたら、ユリスしかいないだろう。
「さて、ここからが悩みどころですね・・・」
ここにきて、クローディアの表情が曇った。
「《天苛武葬》と八重さんを、誰が相手取るか・・・二人とも体術は相当なものですし」
「おまけに一番の強敵・・・《覇軍星君》もいるからな」
ユリスも険しい表情をしている。だが、俺の心は既に決まっていた。
「暁彗は俺が相手をするよ。この中でアイツと戦った経験があるのは、俺だけだしな」
「・・・大丈夫ですか?相当な強敵ですよ?」
「よく知ってるよ。身をもって体験したからな」
心配そうな綺凛に、苦笑しながら返す俺。
「正直に言って、倒せるかどうかは分からない。ただ・・・もう負けるつもりはない」
今回は組み手ではない。正真正銘の真剣勝負・・・負けるわけにはいかないのだ。
「だから綾斗は虎峰、綺凛は八重を頼んだ。紗夜は大変だと思うけど、状況に応じて俺達のサポート・・・特にクローディアを中心に頼む。あの双子を一人で相手にするのは、かなりしんどいと思うから」
「了解。こっちは任せて」
「その代わり、そちらは任せましたよ」
「きっちりサポートするから、安心して戦うといい」
綾斗、綺凛、紗夜が頷いてくれる。これで役割分担は決まったな。
「まぁ、状況によって色々変わることもあるだろうけどな」
「えぇ、そうですね」
クローディアが頷く。
「戦術は今言った通りですが、あくまでも基本です。その時の状況に応じて、それぞれ臨機応変に対応して下さい。では続いて、具体的な連携についてですが・・・」
クローディアが説明を始めた時、俺の端末にメッセージが届いた。チーム・黄龍のメンバー達からだった。
【暁彗:戦えるのを楽しみにしている】
【セシリー:絶対に負けないからね!】
【虎峰:お互い正々堂々と戦いましょう!】
【沈雲:悪いけど勝たせてもらうよ】
【沈華:首洗って待ってなさい!】
そして最後に、八重からのメッセージが届いていた。
【八重:あの日の誓いを果たしてみせます】
あの日の誓い・・・俺より強くなること、か。俺に勝てたら、俺より強いってことだもんな・・・
俺は笑みを浮かべ、全員に同じメッセージを返すのだった。
【勝つのは俺達だ】
どうも~、ムッティです。
シャノン「新章に突入して、いよいよ《獅鷲星武祭》も大詰めだね」
果たして七瀬達は優勝できるのか・・・
そしてシャノンの出番は・・・無いな。
シャノン「断言!?」
ここからどうやって出すのよ?
シャノン「・・・次の章に期待するわ」
諦めがよろしい。
まぁ次の章も分かんないけども。
シャノン「そこは『出す』って言ってよ!?」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「私に出番をくれえええええっ!」