学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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毎日気温が35℃以上・・・

これだから夏は嫌なんだ・・・


通過点

 作戦会議終了後、俺は会場の外のベンチに座っていた。

 

 試合開始まで少し時間があったので、外の空気が吸いたくなったのだが・・・

 

 「・・・思ったより寒いな」

 

 「当然でしょう」

 

 後ろから声がする。振り向くと、私服姿の三咲姉が立っていた。

 

 「今は秋の終わり・・・もうじき冬なんですから。暖かくしないと風邪をひきますよ?」

 

 そう言って、着ていたコートを俺に掛けてくれる三咲姉。

 

 暖かいな・・・

 

 「試合、観に来てくれたの?」

 

 「えぇ。明日の決勝に備えて、今日は休養日になりましたから」

 

 俺の隣に座りながら言う三咲姉。

 

 「九美と戦えなかったのは残念ですが・・・チームとしては、今日を休養に充てられるのは大きいですね」

 

 「決勝に向けて、しっかりコンディションを整えられるしな。俺達が勝っても黄龍が勝っても、今日の試合での疲弊は免れない。つまり明日の決勝は、コンディションの面でランスロットが優位に立てるわけだ」

 

 「その通りです。だからと言って、油断など一切しませんけどね」

 

 不敵な笑みを浮かべる三咲姉。

 

 やれやれ、厄介なことこの上ないな・・・

 

 「・・・まぁ、今はランスロットのことを考えても仕方ないか。まずは黄龍を倒すことに集中しないとな」

 

 「フフッ、その意気です。八重も強くなっているようですし、楽しみですね」

 

 「八重には悪いけど、兄として負けるわけにはいかないからな。絶対に勝つよ」

 

 「それを言うなら、私は姉として負けられませんね」

 

 立ち上がる三咲姉。

 

 「七瀬が相手でも、八重が相手でも・・・私は負けません。優勝するのは我々です」

 

 「いつまでも最強チームの座を守れると思うなよ」

 

 俺も立ち上がり、三咲姉を見据える。

 

 「優勝するのは俺達だ。首洗って待っとけ」

 

 「えぇ、期待しています」

 

 三咲姉はそう言うと、俺の肩を軽く叩いて会場へと向かっていった。

 

 「七瀬さ~ん!」

 

 三咲姉の背中を見送っていると、綺凛が小走りでやってきた。

 

 「そろそろ時間ですよ。控え室に戻りましょう」

 

 「おう、了解」

 

 「あれ?そのコートどうしたんですか?」

 

 「あぁ、これは・・・激励の証、かな」

 

 「はい?」

 

 首を傾げている綺凛。俺は笑いながら、綺凛の頭を撫でた。

 

 「何でもないよ。行こうぜ」

 

 「はいっ」

 

 歩き出す俺達。

 

 と、綺凛の表情がいつもより硬い気がした。

 

 「綺凛、ひょっとして緊張してる?」

 

 「・・・分かりますか?」

 

 少しバツが悪そうな綺凛。

 

 「実は、色々と考えてしまって・・・この戦いは、私だけのものではありませんから」

 

 「・・・まぁな」

 

 チーム戦というのは、メンバーの思いも背負って戦わないといけない。

 

 その重みは、自分一人で戦う時とは比べ物にならないからな・・・

 

 「確かに一人だけのものじゃないけど・・・だからこそ、一人で背負う必要はないぞ」

 

 綺凛の手を握る俺。

 

 「《鳳凰星武祭》の時、綺凛も言ってくれただろ。『一人で背負うな』って」

 

 「あっ・・・」

 

 「お前の側には、五人も仲間がいるんだ。気負いすぎんなよ」

 

 「・・・ありがとうございます」

 

 俺の手を握り返してくる綺凛。

 

 「《鳳凰星武祭》では、準々決勝で負けてしまいましたけど・・・今回はそこを超えて、準決勝まできましたね」

 

 「ここもあくまで通過点だ。優勝まで突っ走るぞ」

 

 「はいっ!」

 

 笑顔を見せる綺凛なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 『今回の《獅鷲星武祭》も、遂に準決勝までやってまいりました!』

 

 シリウスドームに、実況の梁瀬さんの声が響き渡る。

 

 『決勝でチーム・ランスロットと対戦することになるのは、チーム・エンフィールドなのか!?それともチーム・黄龍なのか!?注目の一戦です!』

 

 大歓声が降り注ぐ中、俺達はステージの中央へと歩みを進める。

 

 そこには既に、チーム・黄龍の面々がスタンバイしていた。

 

 「おっ、来たね」

 

 ニヤリと笑うセシリー。

 

 「遅いじゃないか。こっちは早く戦いたくてウズウズしてんのにさ」

 

 「やかましいわ、このルーズボラ女」

 

 「何その新しい罵倒ワード!?」

 

 ルーズでズボラな女、略してルーズボラ女・・・セシリーにピッタリだと思う。

 

 「お前の二つ名、今日から《ルーズボラ女》で良いんじゃね?」

 

 「嫌だよ!?何でそんなカッコ悪い二つ名を名乗らなきゃいけないのさ!?」

 

 「いえ、セシリーにはピッタリだと思います」

 

 「虎峰!?」

 

 ショックを受けているセシリー。

 

 ってか、虎峰が足に着けてるのって・・・

 

 「・・・使うんだな、《通天足》」

 

 「えぇ」

 

 頷く虎峰。

 

 『拳士は道具に頼ることを良しとしない』という考えの虎峰は、日々己の身体を唯一の武器として磨き上げていた。

 

 その虎峰が、《通天足》という道具を使ってこの試合に臨もうとしている・・・勝利への執念を見た気がした。

 

 「・・・負けないからな」

 

 「それはこっちのセリフです」

 

 お互いの拳を合わせる。一方・・・

 

 「久しぶりだね、《叢雲》。それに《華焔の魔女》」

 

 沈雲と沈華が、綾斗とユリスに向き合っていた。

 

 「《鳳凰星武祭》では負けてしまったけど、今回は負けないよ」

 

 「絶対に勝ってみせるわ」

 

 二人の真っ直ぐな視線に、綾斗とユリスが面食らっている。

 

 「・・・君達、何かあったの?」

 

 「もっとこう・・・意地悪く絡まれるかと思ったのだが・・・」

 

 「ハハッ、まぁそう思うだろうね」

 

 苦笑する沈雲。

 

 「自分達が優位な状況で、ひたすら相手を嬲る・・・それが如何に無様で愚かしいことか、身をもって知ったからね。七瀬がいなかったら、あの時どうなってたことか・・・」

 

 あぁ、二人がリンチされてた時か・・・そんなこともあったっけか・・・

 

 「それにそんな戦い方じゃ、いつまで経っても成長できないもの。七瀬にどんどん差をつけられて、そのことをようやく実感したわ」

 

 溜め息をつく沈華。

 

 「だからこそ私達も、今日まで必死に特訓を重ねてきた。あの時の私達とは違う。だから七瀬・・・」

 

 沈華が俺を見据える。

 

 「個人としては、私も沈雲もアンタに遠く及ばないけど・・・チームとしてアンタ達に負けるつもりは無いわ。この試合、勝つのは私達だからね」

 

 「寝言は寝てから言えや痴女」

 

 「だから痴女じゃないわよ!?」

 

 「そんないやらしく胸の谷間を強調しやがって」

 

 「強調してないから!そういう服なんだから仕方ないでしょ!?」

 

 「隣のセシリーに謝った方が良いぞ」

 

 「七瀬!?それじゃ私が貧乳みたいじゃん!?」

 

 「あ、ウォン師姉・・・申し訳ありません」

 

 「沈華!?アンタ喧嘩売ってんの!?」

 

 「やかましいぞセシリー」

 

 「あたっ!?」

 

 暁彗がセシリーの頭を小突く。そして俺の方を見た。

 

 「・・・師父の期待に応える為、俺は負けられん。手加減はせんぞ、七瀬」

 

 「手加減なんかしたら、強制的に坊主にしてやるよ・・・セシリーを」

 

 「何で私!?」

 

 「・・・手加減しても良いかもしれん」

 

 「大師兄!?」

 

 悲鳴を上げるセシリー。と、八重が前に進み出てくる。

 

 「・・・お兄様」

 

 「八重・・・」

 

 視線がぶつかる。ここまで来た以上、特に言うべきことはない。

 

 あえて言葉をかけるとするなら・・・

 

 「・・・お互いベストを尽くそうぜ」

 

 「っ・・・はいっ!」

 

 それだけ言葉を交わすと、俺達は所定の位置へと戻った。

 

 「まさかあの双子が、揃って改心しているとはな・・・」

 

 唖然としているユリス。

 

 「七瀬、お前何をしたんだ?」

 

 「色々あったんだよ。なぁ、クローディア?」

 

 「えぇ、色々ありましたね」

 

 クスクス笑っているクローディア。

 

 「あの時は、根は悪くない方々だと思いましたが・・・本当に変わりましたね」

 

 「性格の悪さは変わってないけどな」

 

 とはいえ、もう以前のように人を見下したりすることはない。

 

 だからこそ、こうして戦うとなると厄介なんだけどな・・・

 

 「気を付けろよ、クローディア。本当に《鳳凰星武祭》の時とは違うぞ」

 

 「えぇ、承知しています」

 

 頷くクローディア。俺は皆を見渡した。

 

 「アイツらは強い。それでも・・・俺達は負けられない。絶対勝つぞ」

 

 「「「「「応ッ!」」」」」

 

 改めて、全員の心が一つになる。

 

 『さぁ、いよいよ試合が始まります!勝つのはどちらのチームなのでしょうか!?』

 

 梁瀬さんの声と共に、機械音声が試合開始を告げるのだった。

 

 『《獅鷲星武祭》準決勝、試合開始!』




どうも~、ムッティです。

シャノン「いよいよ黄龍戦が始まるね」

果たして七瀬達は勝てるのか・・・

そしてセシリーは坊主になるのか・・・

シャノン「それはマジで止めたげて!?」

まぁ冗談はさておき・・・

『刀藤綺凛の兄の日常記』の作者である綺凛・凛綺さんが、再び毎日投稿を始められました!

本編の方も再開したので、皆さん是非チェックしてみて下さい!

シャノン「主人公の綺優くんだけじゃなくて、周りの登場人物達も続々と人間を卒業してる感じだよね」

ホントそれな。

まさにThe Asterisk Warが始まる予感・・・

これからの展開が楽しみです。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」
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