年末まであっという間なんだろうなぁ・・・
翌日。
「七瀬えええええっ!」
「七瀬さあああああんっ!」
「グッジョブ!」
「うおっ!?」
ユリス・綺凛・紗夜が病室になだれ込んできて、ベッドに座っていた俺に思いっきり抱きついてきた。
お、重い・・・
「優勝だぞ優勝!私達が《獅鷲星武祭》を制したんだ!」
「七瀬さんのおかげです!何とお礼を言ったら良いか!」
「流石は七瀬、頼りになる!」
興奮状態のユリスと綺凛。紗夜もいつになくテンションが上がっていた。
「皆、とりあえず落ち着こうよ」
「そうですよ。七瀬は病み上がりなんですから」
綾斗とクローディアが苦笑しながらやってくる。
「七瀬、身体の調子はどう?」
「もう大丈夫だよ。午後には退院して良いってさ」
「本当ですか?それは良かったです」
そんなやり取りをしていると、病室のドアがノックされた。
「どうぞ~」
返事をすると、静かにドアが開かれた。
現れたのは・・・
「やぁ七瀬、失礼するよ」
「お、アーネスト」
穏やかな笑みを浮かべ、アーネストが入ってくる。その後ろから、ランスロットの面々も入ってきた。
「大勢でお邪魔してすまないね。三咲が七瀬のお見舞いに行くというから、少し挨拶しようと思って」
「全然構わないよ。わざわざありがとな」
感謝の言葉を口にすると、レティシアが前に進み出てきた。
「七瀬・・・今回は私の完敗ですわ」
悔しそうな表情のレティシア。
「開始早々に瞬殺されるなんて・・・私もまだまだ未熟ですわね」
「それを言ったら俺もだぜ、レティ」
ケヴィンさんが苦笑している。
「まさか一撃で倒されるとはな・・・《黒盾》の名が泣くぜ」
「俺が二人を倒せたのは、あくまでも意表を突けたからだよ」
首を横に振る俺。
「真正面から対峙したら苦戦すると思ったから、ああいう戦法で攻めただけ・・・二人が未熟だったとか、そういう話じゃないさ」
「七瀬・・・」
「レティシアやケヴィンさんと戦えて良かったよ。ありがとう」
その言葉に、二人が揃って顔を見合わせる。そして・・・
「フフッ、七瀬は本当に変わってますわね」
「全くだ。三咲が溺愛するのも分かる気がするな」
笑い出す二人。どうやら少しは気が晴れたようだ。
「《疾風刃雷》」
ライオネルさんが、綺凛に手を差し出す。
「見事な覚悟だった。感服したよ」
「こちらこそ。お見事でした」
笑顔で握手に応じる綺凛。
自らを犠牲にしてまで、チームを守ろうとする心・・・そういった芯の強さで言うと、この二人は似てるかもな。
「沙々宮さん、素晴らしい射撃でした。私の腕では及びませんでしたね」
「いや、お前の腕前も凄かった。敵ながら感心してしまったほど」
お互いを称え合うパーシヴァルと紗夜。二人とも無表情ではあるが、相手の腕前を尊敬していることが窺える。
「《千見の盟主》も、最後の攻撃はお見事でした」
「フフッ、紗夜のおかげですよ」
「クローディア、重い・・・」
パーシヴァルに褒められ、笑顔で紗夜に抱きつくクローディア。
紗夜も口では文句を言うものの、表情は満更でもなさそうだった。
「天霧くん」
アーネストが綾斗へ笑みを向ける。
「君と戦えて良かった。本当に楽しかったよ」
「こちらこそ」
握手を交わす二人。
「自らを解放して戦えたおかげで、だいぶスッキリしたよ。これでまた十年くらいは我慢出来るんじゃないかな」
「ガラードワースにいる間くらい、我慢しなくて良いんじゃないか?もう《白濾の魔剣》に縛られることもないんだし」
俺の言葉に、アーネストが驚きの表情を浮かべる。
「七瀬、どうしてそれを・・・?」
「あれだけ好き勝手に暴れたら、《白濾の魔剣》に見限られるに決まってるだろ。現にお前は今、《白濾の魔剣》を帯剣してないしな」
「・・・気付いてたか」
苦笑するアーネスト。
「《白濾の魔剣》は、エリオットに譲ろうと思ってる。生徒会長の椅子と共にね」
「エリオかぁ・・・」
確かに相応しいとは思うけど、アイツ真面目だからなぁ・・・
プレッシャーに押し潰されないと良いんだけど・・・
「エリオを生徒会長にするなら、ノエルを生徒会に入れるべきだと思うな。ノエルならエリオを支えられるだろうし、エリオもノエルが側にいた方が心強いだろ」
「僕もそう思うよ。近々エリオットやノエルと話をする予定だ」
「そっか、それなら大丈夫そうだな」
そんなやり取りをしていると・・・
「・・・七瀬」
三咲姉が前に進み出てきた。
「・・・優勝、おめでとうございます」
「・・・ありがとう、三咲姉」
短い言葉のやり取り。そして・・・
「ッ!」
俺の胸に飛び込んでくる三咲姉。俺は三咲姉を受け止め、そっと抱き締めた。
「私は・・・私はっ・・・!」
「大丈夫。言わなくても分かってる」
三咲姉の背中を優しく叩く。
弟が優勝したことを祝福してあげたい・・・でも負けたことが悔しくて、心の底から祝福できない・・・そんな自分に嫌気が差す・・・
三咲姉の性格をよく知っている分、考えていることが手に取るように分かる。
「お疲れ様、三咲姉・・・最後に三咲姉と戦えて、俺は幸せだったよ」
「っ・・・」
涙を流す三咲姉。
「今はゆっくり休みなよ。ずっと突っ走ってきたんだから、少しくらい立ち止まったって良いだろ」
「・・・フフッ、そうかもしれませんね」
涙を拭い、俺から離れる三咲姉。
「ありがとうございます、七瀬・・・お邪魔しました」
三咲姉はクローディア達に一礼すると、そのまま病室を出て行った。
「・・・レティシア、三咲姉を頼んで良いか?側にいてやってほしいんだ」
「了解ですわ。任せて下さいまし」
レティシアはそう言って微笑むと、三咲姉の後を追っていった。
「・・・本当に君達の絆は素晴らしいね」
微笑むアーネスト。
「七瀬と三咲を見習って、僕もソフィアと腹を割って話さないとね」
「なら、早くソフィアの所に行ってこいよ。せっかく治療院に来てるんだから」
「・・・それもそうだね。少し顔を出してくるよ」
「それなら、俺達は仕事を進めておくか」
「だな。アーニーもレティも三咲もいないんじゃ、俺達がやるしかないっしょ」
「そうですね。頑張りましょうか」
「・・・ありがとう、皆」
アーネストは笑みを浮かべると、こちらへと視線を向けた。
「では七瀬、また会おう」
「お邪魔しました、七瀬」
「しっかり身体を休めろよ」
「じゃあな」
「またなアーネスト、パーシヴァル。ケヴィンさんとライオネルさんも、お見舞いありがとうございました」
四人が病室を出て行く。
と、クローディアが持っていた紙袋をテーブルの上に置いた。
「さて、我々だけになったところで・・・やりますか」
「何を?」
首を傾げる俺。クローディアは笑みを浮かべ、紙袋の中からシャンパンを取り出した。
「勝利の乾杯です。昨日は七瀬がいなかったので、今日やろうという話になりまして」
「え、昨日やらなかったのか?」
「当然でしょう。全員揃わないと意味無いですから」
テーブルの上にグラスを並べる綺凛。
並べられた六つのグラスに、クローディアがシャンパンを注いでいく。
「これで良し・・・では七瀬、乾杯の音頭をお願いします」
「いや、それはリーダーがやるべきなんじゃ・・・」
「ほら七瀬、早く早く」
紗夜が催促してくる。他の皆も、じーっと俺の方を見ていた。
「・・・分かったよ」
苦笑しつつ、グラスを手に取る。他の皆も、同じように手に取った。
「えー、じゃあ手短に・・・ありがとな、皆」
俺は感謝の言葉を述べた。
「優勝できたこともそうだけど・・・このメンバーで《獅鷲星武祭》を戦えたことを、心から誇らしく思う。本当に最高のチームだった」
綾斗、綺凛、紗夜、ユリス、クローディア・・・五人のかけがえのない仲間に出会えたことを、本当に幸せに思う。
「これからもよろしくな」
俺は笑みを浮かべると、グラスを高く掲げた。
「それじゃあ、チーム・エンフィールドの《獅鷲星武祭》優勝を祝して!乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
六つのグラスのぶつかる音が響き渡るのだった。
どうも~、ムッティです。
シャノン「もう《龍激聖覇》編も終わる感じかな?」
多分あと2、3話くらいで終わるんじゃないかな?
そしたらオリキャラ紹介をやろうかなと思ってます。
シャノン「話の続きは考えてあるの?」
色々悩みながら考えてるよ。
とりあえず、頑張って書いていきたいと思います。
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」