「えーっと、トレーニングルームってここだよな・・・?」
何故か入り口の側の壁に、巨大な穴が空いていた。アイツら、一体どんな訓練してんの・・・?
恐る恐る覗いてみると、紗夜が褐色の肌をした女性と睨み合っていた。ユリス・綾斗・クローディア・レスターもいる。あと、制服の上から白衣をまとった女の子が一人。何やら険悪な雰囲気である。
と、その女の子が俺に気付いた。
「おーっ!《覇王》くんじゃなーい!?」
皆が振り向く前にダッシュで逃げようとしたが、逃げようとした先の壁が勢いよく砕けた。
うっそーん・・・
「・・・七瀬、何で逃げる」
「沙々宮!これ以上ここを壊すな!」
「何箇所壊そうが同じこと」
「直すこちらの身にもなって下さいな・・・」
「七瀬、出てきた方が良いよ」
「このちんちくりん、今凄く機嫌が悪いしな。何するか分かんねーぞ」
「誰がちんちくりんか」
「《覇王》くーん!お話しよー!」
・・・ハァ、仕方ないな。諦めて壁の穴から中に入る俺。
「七瀬、何で逃げた?」
「だって険悪な雰囲気だったし。ってか紗夜、それヘルネクラウムじゃないよな?」
「うん、三十九式煌型光線砲ウォルフドーラ」
「そんなもん人に向けて撃つなアホ!」
「うきゅっ!?」
思いっきり拳骨をかます。涙目で頭を抑える紗夜。
「ご、ごめんなさい・・・」
「よろしい。で、この二人は一体・・・?」
褐色の女性と、白衣を着た女の子を見る俺。今気付いたが、胸にアルルカントの校章を付けている。
「こちらはアルルカントのカミラ・パレートさんと、エルネスタ・キューネさんです。ちょうど我が学園を案内していたところでして」
説明してくれるクローディア。
「星導館とアルルカントが、共同で新型の煌式武装を開発することになったんです。お二人はその計画の代表責任者でして、今日は正式な契約を結ぶためにいらして下さったんですよ」
「なるほど・・・サイラスの一件での貸しか」
呆れる俺。要はアルルカントの技術をいただこうというわけだ。近いうちに分かるってこういうことな・・・
「いやー、《覇王》くんにも会えるなんて嬉しいなー!」
テンションの高い白衣の女の子・・・エルネスタさん。
「あたしの人形ちゃん達の相手を、素手でやっちゃうなんて凄いねー!」
「あの人形、アンタが作ったのか?良く出来た人形だったけど、顔が欲しかったなぁ」
「あー、あたしも作りたかったんだけどねぇ・・・顔が無いってやっぱり寂しいよねー」
「ホントそれなー」
「いや、何で話が盛り上がっているのだ!?」
ユリスのツッコミ。
「七瀬、ソイツらは敵だぞ!?一連の事件の黒幕なんだぞ!?」
「蒸し返しても仕方ないだろ。アルルカントから技術を貰う代わりに、今回のことは内密にする・・・そう決まった以上、俺達が何を言ったって無駄だ」
「そ、それは・・・そうかもしれんが・・・」
「・・・あっさりしているな。彼女達のように、敵意を向けてくると思ったのだが」
褐色の女性・・・カミラさんが驚いたように言う。俺は苦笑した。
「うちの生徒会長が丸く収めようとしてんだから、俺がそれを邪魔する必要も無いだろうよ。俺はクローディアを信頼してるんだ」
「な、七瀬・・・」
頬を赤く染めているクローディア。カミラさんが笑みを浮かべる。
「なるほど・・・面白いな、君は。うちの生徒会長も賞賛していたよ」
「あぁ、左近さん?ひょっとして、あの案件を持ち出させたのって・・・」
「はーい、あたしでーす!」
無邪気に笑うエルネスタさん。
「《覇王》くんが話し合いを提案してくれたんでしょ?ありがとう、助かったよー!」
「その《覇王》くんっていうの止めてくれ。普通に七瀬で良いから」
「そう?じゃあ七瀬くんで!あたしのこともエルネスタで良いよー!」
「私のこともカミラで良い。まぁ色々あったが、よろしく頼むよ七瀬」
「おう、よろしく」
握手を交わす俺とカミラ。と、紗夜がずいっと前に出てきた。
「私は全然よろしくない。先ほどの発言を撤回してもらう」
「先ほども言った通り、撤回するつもりはない」
睨み合う両者。そういや、この二人は最初から険悪だったな・・・
「何かあったのか・・・?」
「この女が、お父さんの作った銃を侮辱した」
紗夜がカミラを睨みながら言う。お父さんの作った銃・・・?
「紗夜の銃って、紗夜のお父さんが作ったものなのか!?」
「そう。お父さんが私の為に作ってくれた銃」
マジかよ・・・道理で独創的な銃だと思ったら・・・
「で、カミラがそれを侮辱したと?」
「侮辱したつもりはない。実用的な銃とは言い難いと言っただけだ」
淡々としているカミラ。
「実はこの沙々宮紗夜の父・・・沙々宮創一氏は、私が所属している《獅子派》に在籍していたことがあってね」
「え、マジで!?紗夜のお父さんって、アルルカントのOBなのか!?」
「あぁ。だが、沙々宮教授は異端すぎた。その異端さ故にアルルカントを、そして我らが《獅子派》を放逐された方なんだ。私は《獅子派》の代表として、彼の歪さを認めるわけにはいかない」
紗夜を睨むカミラ。
「武器武装は力だ。力は個人では無く、大衆にこそ与えられるべきもの・・・それこそが《獅子派》の基本思想なんだよ」
「・・・個人の為ではなく、皆が使えるような武器武装を開発すべきってことか?」
「そうだ」
なるほど・・・紗夜の為に作られた銃というのは、カミラの思想には反するだろうな。その銃を作ったのが、異端視されて追放された先輩というなら尚更だ。
「どうしても撤回させたいなら・・・ここのルールに従うほかないな」
カミラの言葉に、紗夜が驚く。
「つまり決闘しろと・・・?」
「まさか。だが私達は、次の《鳳凰星武祭》にエントリーしている」
「にゃははっ!そっちが参加するなら、何処かで当たるかもねー!」
笑うエルネスタ。あー、なるほどな・・・
「あ、七瀬くんは余計なこと言っちゃダメよ?口止めされてるでしょ?」
「最初から《鳳凰星武祭》出場が目的で、左近さんにあの案件を持ち出させたのか?」
「そういうこと!優勝して、望みを叶えてもらうんだ♪」
「・・・エルネスタが叶えたい望みは、何となく予想がつくよ」
「あ、やっぱり?分かっちゃう?」
楽しげなエルネスタ。クローディアとカミラ以外、何のことかさっぱり分からないという顔をしている。
「さて、そろそろ行きましょうか」
「あぁ、そうだな」
クローディアの言葉に応じるカミラ。
「では七瀬、また会おう」
「七瀬くん!またねー!」
「おう、またなー」
クローディア・カミラ・エルネスタが、トレーニングルームを出て行く。
と、紗夜が悔しそうに拳を握りしめていた。俯く紗夜の頭に、ポンッと手を置く俺。
「・・・紗夜のお父さんはさ、間違ってないよ」
「え・・・?」
驚いて俺を見る紗夜。俺は紗夜に微笑んだ。
「誰にだって大切な人はいる。大切な娘の為だけに銃を作ることの何が悪い?異端でもないし歪でもない、普通のことだよ」
「七瀬・・・」
「だからカミラに認めさせたいなら・・・戦うべきだ。お父さんの作ってくれた銃で」
「・・・うん。そうする」
力強く頷く紗夜なのだった。
*****
「六花園会議に参加しただと!?」
驚愕しているユリス。俺達は、トレーニングルームで雑談していた。
「あぁ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないぞ!?」
「お前凄いな・・・」
呆れているレスター。
「レスター、身体はもう大丈夫なのか?」
「あぁ、もう何ともない。もっとも、ランディはもう少しかかりそうだがな」
「そっか・・・」
《鳳凰星武祭》を辞退することになるぐらいだもんな・・・重傷だったんだろう。
「ゴメンな、もっと早くサイラスを捕まえられていたら・・・」
「お前のせいじゃねぇよ。ずっとサイラスと一緒にいたのに、気付けなかった俺が悪いんだ。お前には感謝してる。助けてくれてありがとな」
「レスター・・・」
レスターは笑うと、大きく伸びをした。
「さて・・・ランディが《鳳凰星武祭》に出れない以上、俺も《鳳凰星武祭》には出れねぇし・・・どうすっかな」
「それなら提案がある」
手を挙げる紗夜。
「あん?どうした沙々宮?」
「私とタッグを組もう」
「ハァッ!?」
驚くレスター。
「マクフェイルは《鳳凰星武祭》に出たい。私も《鳳凰星武祭》に出る理由が出来た。利害が一致している」
「いや、そうだけどよ・・・お前と連携とか不安しかねーわ」
「問題ない、これから練習する。さっきみたいなことにはならないはず」
平然と言う紗夜に、苦笑している綾斗とユリス。
「え、何かあったの?」
「実はさっき、紗夜とレスターにタッグを組んでもらって戦ってたんだ。俺達には、タッグ戦の経験が足りないからね」
「ところが、沙々宮の光線砲がレスターを巻き込みかけてな。ギリギリで避けたが、壁に穴が空いてしまったというわけだ」
「あー・・・あの穴はそういうことだったのか・・・」
そりゃ連携に不安も感じるわな・・・
「ま、新しいタッグパートナーと登録し直しても良いとは言われてるけどよ・・・」
「なら、何の問題も無い。よろしく、マクフェイル」
「・・・しゃあねぇな。出るからには優勝すんぞ」
「勿論そのつもり」
拳を打ちつけ合う二人。おー、新しいタッグが誕生したな。
・・・あれ?
「そういや、《鳳凰星武祭》の出場登録って六月までじゃ・・・?」
「確かにそうだが、予備登録は可能だ。毎年ケガで出場を辞退するペアもいるし、その補充として出られるかもしれん。今回はサイラスのせいで、何組も辞退するハメになっているしな」
「あ、なるほど。レスターも元々登録してたし、その分の枠はあるのか」
ユリスの説明に納得する俺。
「そういうことだ。だが、沙々宮達に負ける気はないぞ」
「こっちも負けるつもりはない」
ユリスの言葉に、不敵な笑みを浮かべる紗夜。
「必ずカミラ・パレート達に勝ってみせる」
「そのことなんだけどよ、おかしくねぇか?」
首を傾げているレスター。
「あの二人、どう見ても研究クラスだろ?それで《鳳凰星武祭》に参加って、正気とは思えねぇぞ」
「研究クラス?」
綾斗の問いに、レスターが説明を始める。
「アルルカントじゃ、煌式武装とかの研究開発を行う学生と、実際に《星武祭》で戦う学生に分かれてんだよ。普通、前者が実戦に出てくることはねぇ」
「へぇ・・・」
と、綾斗が俺を見た。
「そういや七瀬、さっき何の話をしてたの?」
「何が?」
「エルネスタさんが言ってたじゃないか。余計なことは言っちゃダメとか、口止めされてるとか」
「そういや、あの案件とか言ってたな・・・何のことだ?」
綾斗とレスターの質問に、俺は肩をすくめた。
「残念ながら秘密だ。口外禁止らしくてな」
「どういうことだ?」
ユリスが尋ねてくる。
「六花園会議で決まったことは、その上の運営委員会で改めて審議されるらしい。そこで確定して、初めて本決まりってことで発表されるんだそうだ。だからそれまでの間、各学園の生徒会長達は内容を口外しちゃいけないんだとさ」
「なるほど、つまりお前も口外できないということか」
「そういうこと。ま、発表されたらお前らも分かるよ。エルネスタやカミラが自信満々だった理由がな」
「例え自信満々だろうが、私はアイツらには負けない」
紗夜が燃えていた。
「こうしてはいられない。マクフェイル、早速特訓だ」
「やれやれ・・・じゃ、行くわ」
「おう、頑張ってな」
トレーニングルームを出て行く紗夜とレスター。張り切ってんなぁ、紗夜。
「・・・七瀬、ありがとう」
「え・・・?」
綾斗の言葉に、キョトンとする俺。
「ほら、さっき紗夜に言ってくれたじゃないか。紗夜のお父さんは間違ってないって。きっと紗夜、凄く嬉しかったと思うんだ。それに七瀬が背中を押してくれたから、戦うことを決意したんだろうし。だから・・・ありがとう、七瀬」
「・・・良いってことよ。紗夜も大事な友達だしな」
笑う俺なのだった。
こんにちは、ムッティです。
シャノン「ヤッホー!シャノンだよー!」
・・・遂に作者コメに進出してきやがったな。
シャノン「だって出番欲しいんだもん!」
よし、今後の出番を削って・・・
シャノン「止めてえええええっ!」
それではまた次回!