運転手さんの通報で警察や消防が駆けつけ、とりあえず事態は一段落した。パーティーの参加者に怪我人はいなかったし、運転手さんとフローラも戻ってきた。
俺達はヨルベルトさんが用意してくれた部屋で、それぞれ休むこととなったのだが・・・
「え、俺の部屋が無い?」
「あぁ、すまない・・・」
申し訳なさそうな表情のユリス。嘘やん・・・
「え、何?王族による庶民イジメ?」
「違うわ!」
「天霧くん達にはここに到着してから、それぞれ個室を使ってもらっていてね。勿論七瀬くんの個室も用意していたんだけど・・・先ほどの襲撃で、いくつか部屋がダメになってしまったんだ」
ヨルベルトさんが説明してくれる。なるほど、つまり・・・
「・・・ダメになった部屋の中に、俺に用意されていた個室があったと?」
「そういうことなんだ」
何てこった・・・どうやら俺は、部屋に関してよほど運が無いらしい。
「くっ・・・世界は俺を拒絶しているというのかっ・・・!」
「いや、大袈裟すぎません?」
綺凛のツッコミ。ヨルベルトさんが申し訳なさそうな表情になる。
「悪いね、こんなことになってしまって・・・」
「いえ、ヒルベルトさんのせいじゃないですから」
「ヨルベルトさんね」
再び綾斗のツッコミが入る。
「じゃあ、誰かの部屋にお邪魔させてもらうしかないか・・・クローディア、良いか?」
「えっ?」
俺の突然の指名に、クローディアが驚いた表情になる。
「わ、私ですか?」
「え、そんな驚く?これでも俺、学園じゃお前と一緒に住んでるじゃん」
「そ、それはそうですが・・・」
「はい、決まりな」
「いや、それで良いのか・・・?」
呆れた表情のユリス。
「彼女のことは大丈夫なのか?」
「大丈夫。俺とクローディアの同居の件は、アイツも知ってるから」
そんなこんなで、俺はクローディアの部屋にお邪魔することになった。部屋はとても広く、二人で使っても全然余裕があるくらいだった。
流石だな・・・
「おぉ、ベッドもメッチャ大きいな。二人で寝ても余裕じゃん」
「七瀬、本当によろしいのですか・・・?」
気遣わしげに見てくるクローディア。
「《戦律の魔女》と交際することになった以上、私と一緒に寝たりするのは色々とマズいのでは・・・」
「・・・俺が今さら、お前を一人にできるとでも?」
「・・・っ」
クローディアは《パン=ドラ》の代償で、眠る度に悪夢を見せられている。だからこそこれまで、寝る時はクローディアを一人にしないようにしてきたのだ。
「修行する為とはいえ、四ヶ月もお前を一人にしちまったからな・・・ゴメン」
「良いんですよ。私も賛成したんですから」
微笑むクローディア。優しいな、コイツは・・・
「・・・実はな、シルヴィには話してあるんだ。俺がお前と一緒に暮らしてることも、俺が毎晩お前と一緒に寝てることもな」
「えっ・・・?」
「あぁ、勿論《パン=ドラ》の代償については話してない。クローディアも伏せておきたいだろうし。クローディアが寝ている時によくうなされてるから、落ち着かせる為に一緒に寝てるって説明しておいた。今さら一人になんてしたくないし、今後も同じようにしたいって頼みもした」
「彼女は何と・・・?」
「そういう理由なら良いってさ。俺のことを信じてくれるって」
ホント、できた彼女を持ったわ・・・
「まぁもしクローディアに手を出したら・・・アレをちょん切るとは言われたけど」
「・・・案外彼女も怖いですね」
「まぁな・・・そんなわけだから、気にしなくて大丈夫だ」
「そうですか・・・何だか少しホッとしました」
気が抜けたように笑うクローディア。
「私も七瀬が側にいてくださると安心できますし、有り難いです。七瀬が《戦律の魔女》と交際することになった時、今まで通りにはいかないだろうと思ったもので・・・」
「俺がお前から離れるなんて有り得ない。前もそう言っただろ」
「フフッ、そうでしたね」
クローディアはクスクス笑うと、ベッドの上に腰掛けた。
「・・・聞かないんですか?襲撃された件について」
「あ、バレてた?」
「これでも七瀬と一緒に暮らしてますので。雰囲気で何となく分かりますよ」
そう、俺はクローディアに聞きたいことがあったのだ。
「・・・綾斗達の話じゃ、あの獣を召喚したのは老人だったそうだな。綾斗達がクローディアのチームに参加するかどうかを聞いた後、獣を召喚して襲ってきたんだとか」
「えぇ、そのようですね」
「老人はこうも言ったそうだな。綾斗達がクローディアのチームに参加すると、困る人がいると。クローディア、お前ひょっとして・・・心当たりがあるんじゃないのか?」
俺の言葉に、クローディアが深く溜め息をついた。
「・・・あくまでも推測ですが、老人を雇って襲撃をさせたのは・・・恐らく私の父だと思われます」
「クローディアのお父さん・・・?」
首を傾げる俺。クローディアのお父さんって確か・・・
「《銀河》の最高幹部である、クローディアのお母さんの補佐をやってるんだっけ?」
「えぇ。といっても、今回の件は父が個人的にやっていることでしょう。《銀河》は関与していないと思います」
「・・・読めないな。何でクローディアのお父さんが、クローディアの邪魔をしようとするんだ?」
「父は私を愛してくれているのですよ」
「は・・・?」
キョトンとする俺を見て、クローディアが面白そうに笑う。
「七瀬には以前言いましたよね?私にはどうしても叶えたい願いがあると」
「あぁ、それはまだ秘密だって言われたな」
「フフッ、まだお教えするわけにはいきませんが・・・《銀河》はどうしても、それを叶えさせたくないんですよ」
「《銀河》が叶えさせたくない願い・・・?」
おいおいマジか・・・それを叶えようとしているってことは・・・
「クローディア、お前・・・《銀河》と敵対するつもりか?」
「そうなりますね」
アッサリと首を縦に振るクローディア。
「私は次の《獅鷲星武祭》で優勝して、その願いを叶えるつもりです。いくら《銀河》でも、優勝者の願いは邪魔できませんから」
「でも逆に言うと、優勝するまでは《銀河》から狙われるってことだろ?アイツら容赦無いし、本気で殺しに来るぞ」
「ですから父は私を《獅鷲星武祭》に出場させない為に、手荒な手段に打って出たんでしょう。何度も説得されましたが、私の意思は変わりませんでしたから」
「・・・なるほど。確かに愛されてんな、お前」
まぁこういう手段はどうかと思うが、それほど切羽詰まっているんだろうな・・・
「《銀河》は今、本気で私を始末すべきかどうか検討している段階でしょう。まだその段階で留まっているうちに、父は事態を収めたいんでしょうね」
「・・・クローディア、一つ聞かせてくれ」
俺はクローディアを見つめた。
「お前の叶えたい願いっていうのは・・・例え《銀河》を敵に回してでも、例え自分の命を危険に晒してでも、絶対に叶えないといけない願いなのか?」
「えぇ、そうです」
クローディアが即答する。
「私は願いを叶える為に、これまで何年も準備を重ねてきました。この願いだけは、誰が何と言おうと諦めるわけにはいかないんです」
「クローディア・・・」
クローディアの目は、真剣そのものだった。相当な覚悟で臨んでいるんだろう。
なら、俺の答えも決まりだな・・・
「・・・分かった。そこまで言うなら、俺はもう何も言わない。お前が願いを叶える為に、全力で力を貸すよ」
「・・・よろしいのですか?《銀河》を敵に回すかもしれませんよ?」
「生憎、《統合企業財体》に良い印象は持ってないからな。向こうが敵に回るっていうなら、遠慮なく叩き潰す」
「七瀬・・・」
「ま、いざとなったら界龍に拾ってもらおうぜ。星露からはいつでも来いって言われてるし、《万有天羅》の庇護下なら《銀河》も迂闊に手出し出来ないだろ」
「・・・フフッ、それも良いかもしれませんね」
笑うクローディア。
「ただ・・・綾斗達を誘うなら、事前にしっかり説明しろよ?」
「えぇ、分かっています。それで断られたとしても、責めるつもりはありません」
「それなら良い。まぁとりあえず、今すべきなのは・・・老人を捕まえることか」
「ですね。恐らくまた襲ってくるでしょうし、対策を練らないと」
「ま、その辺は明日考えよう。とりあえず、風呂に入って寝ようぜ。先入ってこいよ」
「あら、お風呂は一緒に入ってくれないんですか?」
「今までも別々だっただろうが!」
「フフッ、冗談ですよ」
クローディアが楽しそうに笑う。勘弁してくれ・・・
「では、お先にいただきますね」
「おう、ごゆっくり~」
クローディアが浴室へ向かう。と、ふと足を止めた。
「・・・七瀬」
「ん?どうした?」
俺が尋ねると、クローディアが俺を見て優しく微笑んだ。
「前にも言いましたが・・・やはり私は、七瀬と出会えて良かったです。いつも私の味方でいてくださって、本当にありがとうございます」
「・・・どういたしまして」
ストレートな感謝の言葉に、思わず照れて顔を背けてしまう。そんな俺を見て、クローディアはクスクス笑っているのだった。
どうも~、ムッティです。
く~らや~みに~、堕~ち~る~ま~ち~並み~♪
シャノン「前回の続きを歌わなくて良いよ!?」
あ、そう?
シャノン「どんだけ超電磁砲を引きずるの・・・」
ちなみに私は佐天さんが好きです。
シャノン「いや、聞いてないけど」
冷たいなぁ・・・シャ/ノンにするよ?
シャノン「怖っ!?怖いよ作者っち!?」
それではまた次回!
次回、シャノンがシャ/ノンになります。
シャノン「止めてええええええええええっ!?」