とある科学のレベル4.5   作:島根

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再びこの場所に戻って参りました。自分自身正直すっかり書く気力も余裕もなくなり野放し状態にしていましたが、今日を以て再スタートを切ります。よろしくお願いします。


「収容所」

学園都市における統括理事会の暴虐。それらの根源となっている治外法権を撤廃し、一矢報いようとした御坂。しかし結果は散々なものだった。事前に計画をアレイスターに予測された上で、身柄を拘束。

こうして今は統括理事会直轄の厳重に警備が施された収容所に収監されているわけである。

 

「しっかしそれにしても大きな収容所ね。まるで前世紀の要塞ね」

 

連行されながら入口ゲートに入る御坂達 3 人。御坂が要塞と呼ぶのも無理はない。この収容所は車で入ることができるのは収容所近くを通る一般道路までで、そこから先は人がすれ違うのがやっとの幅の通路しかない。この収容所は周囲を幅 20~30m の堀に囲まれていて、通路というのはその堀の上にまたがる橋のことを言っている。橋を渡ったすぐ先には監視塔と呼ばれている高さ10mほどの塔がそびえ、その脇には 2 階建ての長屋という言い方が一番しっくりくるような横に長い建物が、堀に平行する形で建っている。長屋と言えば聞こえはいいが、その 2 階部分の窓からは何十にもわたって銃座が備えられていて、収容所を出入りする者に対して大きくにらみをきかしている。御坂は第一印象で要塞と言ったが、どちらかというと戦国時代における城の類いに近い印象を受ける者の方が多いだろう。警備の影響により堀にかかる橋こそ小さなものだが、その橋を渡った先には縦横 200m ちょうど真上から見ると正方形の形をした広大な土地が広がっていた。ここの場合はさらに土地の上にあまり木々や建物などといった障害物が極端に少ない為、見た目よりもさらに広いように感じられた。

 

「着いたぞ、今日からここがお前らの寝る場所だ。まあ、せいぜい 3人で仲良く反省会でもやって楽しめや」

 

そうこうしている内に地下にある独房に到着した。どこの収容所でも看守の囚人に対する態度はいいとは言えない。今回御坂達を永田町からこの収容所まで連行してきた今の看守にも同様のことが言える。しかしこの看守には少なからず囚人にたいする優しさがあったのか、それとも他に理由があったのか。次の一言は完全にイレギュラーなものだった。

 

「まあこれは俺の独り言みたいなもんだが、ここに収容された奴で極刑になった奴は一人もいねえから安心しな」

 

そう言うと何事もなかったかのようにそそくさと御坂達の前から去っていった。

 

「今の話聞いたかよ? つまり俺達は殺されはしないってことだよな? はあー よかった。命だけ助かれば俺の経験上どうにでもなる」

 

素直に喜びを表す上条。その一方で二人の表情は懐疑的だ。

「そんなこと言ったって、その話が本当だっていう保障はどこにもないし… まあ嘘だっていう確信も持てないのだけれど」

 

「あの看守もしかしたら相当悪趣味な人かもよー? 収監当日にそう言っておきながら二日目には処刑が決まっているって話だったら? その処刑にあの看守が立会人になってたら?」

 

「それはアンタの考え過ぎよ」

 

実際のところ看守の言った話は本当だった。しかし御坂と食峰は今までの立場上人の言葉をそのまま受け止めることができない。ついつい言葉の裏に隠された思惑だとかその人の真意にばかり考えが及ぶ。二人は良くも悪くも頭が良すぎたのだ。今回ばかりは上条の反応の方が正しかった。

 

「でも結局のところいくら極刑にされないって言ってもここから出られなければ何の意味もないわよね」

 

確かに殺されないというのは絶対条件ではあったが、だからといって一生ここにいてもよいかと問われたら絶対に「はい」とは言えない。食峰の能力こそあれば、看守を操り監視カメラや警備システムへの操作を加え脱獄することなどたやすいこと。だがこの 3 人の中で唯一の能力者である食峰の右腕には、能力を行使できないようにする能力セーバーと呼ばれる腕輪が嵌められていた。

「まあ、はなっから上手くいく計画だとは思っていなかったけど、まさかここまであっけなく終わっちゃうなんて… 本当私達ってバカだったわよね。」

 

そう言って自分を卑下する御坂。その姿には今更ながらかつてのレベル 5 の面影はない。彼女自身能力に頼って生きてきたわけではなかったが、自分を構成するものとして能力が占める割合が彼女の場合は余りにも大き過ぎた。

 

「何言ってんだよ、御坂。お前がそんな調子だったらこの先上手くいくものも上手くいかなくなるだろ?少しは前向きに考えてみろよ」

 

しかしこの男は違った。異能の右手を宿しているとはいえその能力値は 0。確かに上条自身能力に対する憧れだとか自分が無能力者ということに対する劣等感もある。しかし所詮能力はテストと点数と同様で、ただの数字の大小によってその人の優劣を判断する 1 つの材料に過ぎない。そういう風に割り切れるようになってからは、能力開発以外のことに対しても積極的に取り組むようになった。レベル 0、無能力者というレッテル。しかしそれは同時に失うものはないと捉えることもできる。彼の心の中に吹いている風は常に追い風だ。しかしいくら彼が前向きな心の持ち主であるとはいえ、この状況を打開できるのかと問われればそれはまた別の話である。

 

「このままもしかすると、死ぬまで一生この収容所の中に閉じ込められるのかもしれないわね。ㇷㇷ、常盤台の超電磁砲改め、収容所の超電磁砲」

 

「御坂さんっさあー。いい加減さっきから悲劇のヒロインぶるのやめてもらえるかしら? 捕らえられたのは何もあなただけじゃないのよ?本当あなたはいつまで経っても子供よねえ。」

 

「何よ食峰。そんなことあんたに言われなくても分かってるわよ。この状況が嘆かずにいられないでいると思う?」

 

食峰の言い分も分かる。しかしこの場では御坂という火に油を注いでいるということに過ぎない。一方で御坂の方も言い方こそ感情的で投げやりなものだが、確かにこの状況を打開できる方法は皆無に等しかった。

 

「こんな時黒子がいればな… すぐに助けにきてくれるに」

 

「やめろ、その話は。御坂現実を受け止めろよ! 白井はもうこの世にはいないんだ」

 

「そんなこと分かってるわよ。今のはほんの冗談よ」

 

少なくとも上条と食峰の二人にはとても冗談のようには思えなかったが。この際冗談ということにしておこう。これ以上白井の話をするのは、御坂にとってまた二人にとって良くないものであるということは目に見えていた。しかし 3 人はまだ知らない… 白井黒子が生きているということを。


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