何故自分は天狗という立場で人を助けるのか何度思い出そうとしたことか。
心の闇に沈んだ記憶は浮かび上がることなく記憶の底に溜まり続けている。
そんな毎日が永遠に続くと思っていたある日のこと。人間を襲っていた妖怪を気絶させて人間に大丈夫かと話しかける。
「ひっ…殺さないでくれええええええええええええ!」
叫びながら人間は逃げていく。まぁ こんなものか。小さく吐息を漏らすと妖怪がうめき声をあげた。
「何だ。もう目覚めたのか。悪いが俺は行かせてもらう」
その場を去ろうと後ろを向いた時ーー
キィィィィィン!
「!?何を…した…」
意識が急速に遠のく。視界が狭まっていくなかその妖怪は言った。
「願いを叶えてやる」
俺の意識は記憶の闇に沈んだ。
「うーん…待ってよお…zzz」
とある山。後に妖怪の山となるそこの中にある住まい。天狗が住むと言われる土地の一角にある家で一人の幼い天狗がひっそりと寝息をたてていた。
「白-… おい白!」
「ふへ!?なぁんだお父さんかぁ…ビックリするからやめてっていっつも言ってるよね?」
「はは 悪いな 父さんもう出掛けるからな。大人しくしてろよ?」
「また人間のどころ?お父さん本当に物好きだよね 気を付けてね…」
父と息子のありきたりな会話
天狗のやり取りと知らなければ普通の人間と錯覚しそうな会話。
白は鴉天狗でありその父親は山伏と呼ばれる人間を助けている鴉天狗である。
歴史にある山伏を助ける天狗とは彼をさすと言っても過言ではないかも知れない。
白は父親が出掛けてから部屋を出て外へと出た。山の麓を見ようと近くにある大木に腰掛けてのんびりとそこを眺めた。
いつも通りの風景だ。人間は忙しく働いている。
「この風景も飽きたなぁ…」
誰にも聞こえない。それこそ耳元でも聞こえないぐらいの声でそう呟く。
次の瞬間驚かされて木から落ちるなんて誰が思ったか。
「はーく!」
「うわあああ!」
木から落ちる。痛い。
「あはははは!びびりすぎー」
「文…痛いじゃん いきなり驚かすなんて…やめてよ…」
「ごめんごめん!でもこれは写真に撮っておこ!」
「ちょ…待って!」
抑制も虚しく写真を撮られた。文のお宝である白黒カメラ。未来め…なんでコイツに渡すんだ…。
「なんで写真撮るの!?恥ずかしいじゃん!」
「あ!怒った!逃げろ!」
必死に追いかける。文のカメラで写真を撮ってもすぐには写真も出て来ない。今なら近所に恥を晒されずに済む。しかし文は素早い。追い付けないかも知れない…
「あはは!追いついてごらーん!」
鬼ごっこか…面倒だなぁ…