“異世界“から生きる 【凍結】   作:アストラ9

1 / 7
 
 どうも。作者です。

 ん、この作者の名前見た事が……? とか思った人、残念、私でした。またしても新作投下しています。

 今回は"異世界に生きる"という神ゲーと胸を張って言える作品を土台にした作品となっています。そこはご了承ください。

 では本編、どうぞ。




プロローグ

 

 

 ———この世界にドラゴンはいても、勇者はいない———

 

 

 これは俺の魂に刻まれている、唯一の掟だ。

 

 俺が最初に物ごごろ着いたのは"16"歳の事だ。……分かっている、16で物ごごろがつくのがおかしい事は。だが不思議とあの頃は疑問にすら思っていなかった。そういうものなんだ、これが普通なんだと、そんな風にずっと思っていた。

 俺のいるこの「異世界」では市長こそが絶対の存在だ。そんな事すら練りこまれていた。あの時、「選定者」に言われるまで気付かなかったとは、ある意味滑稽ではあるが。

 

 俺が最初に意識を得た時、俺は旅人の服装、つまりは体全体が入る大きな外套を羽織って街のど真ん中に立っていた。自分が何処にいるのか、周辺には何があるのか、自分が何をすれば良いのかなど、さっぱり分からなかった。

 

 その時、一体何を思ったのか覚えてはいないが、俺はふらっと街に程近い砂漠地帯へと向かっていた。恐らく、外に出れば何か分かるんじゃないかと、思っていたんだと思う。

 

 ——だが結局、何も分からなかった。それどころか命すら落としてしまった。

 

 砂漠に出て最初に出会ったのは、巨大なナメクジだ。俺が寝転がれば全長幅が同じくらいの大きさのナメクジが俺に襲いかかってきたのだ。全高は俺の腰あたりまであったな。

 

 当然俺は必死に抵抗した。武器も何も持っていない俺は素手で応戦していた。ナメクジの肌がヌルヌルであまり攻撃が通らなかったのだが、何とか討伐する事に成功。気が付けば俺はボロボロになっていて、辺りは真っ暗だった。

 

 俺は急いで街まで走った。さっきの様な化け物がまた襲いかかってきたら、今の俺では確実にヤられてしまうと思ったからだ。事実、その時の俺の拳は既に真っ赤に腫れていた。

 

 だが結局、街までにつく事は無かった。帰還途中に突然ハゲタカに襲われたのだ。

 

 そのハゲタカは、先ほどのナメクジの何倍も強かった。大きさは先ほどより小さいが、それ故に速く、空を飛ぶ。そしてその鋭い爪と牙による攻撃で俺の身はいつしか傷だらけになっていた。そして、最終的には……。

 

 その後の事は分からない。そのまま死体は炭化してしまったのか、ハゲタカに啄まれたのか、はたまたナメクジに溶かされたのか分からない。が、唯一言えるのは俺が次に来た時には既に無くなっていたって事だけだ。何があったのかが俺には分からない。

 

 次に俺が目を覚ましたのは、真っ白い空間の中だった。

 真っ白いのは空間だけじゃない。俺自身の姿も透けていた。最初は気が狂いそうだったが、今ではもう慣れたものだ。

 

 その空間には俺以外には誰もいなかった。いや、いたのかもしれないが、その時周りは全て真っ白だったので分からない。

 

 そんな空間の中、唯一色がついてある物があった。俺の目の前に浮かんでいる"10枚のカード"の事だ。

 

 このカードにはどれも、不思議な感覚を覚えた。なんというか、ぼーっとするのだ。言葉には出来ないのだが。

 

 そのカードを一枚手に取ってみる。いや、手などというものは見えない。朧げな手の様な透明の何かがカードを取ったのだ。

 

 俺の意思で動いたソレによって取ったそのカードは、「旅人」だった。これが何を意味するのか、当時の俺には分からなかったが、今の俺には何となくわかる。これが俺自身なのだと。

 

 カードを手に取るともう片方の手のような何かにサイコロが握られた。突如現れたソレに驚きはしたものの、俺はサイコロを振った。これが何故現れたのか分からないが、サイコロが現れた事には意味がある。何故か、そう思っていた。

 

 サイコロを振るとカードの前に羊紙が現れた。その紙には、

 

 

「 【職業】 旅人

  【年齢】 18 歳

  【生命力】 27

  【攻撃力】 7

  【防御力】 8

  【運】   6

 

   【ダイスを振る】 【異世界へ——】   」

 

 

 という物が書かれていた。勿論当時の俺に意味がわかる訳も無く、何故か目に止まった【異世界へ——】という文字を押していた。その瞬間瞳に眩い閃光が走り、俺は不覚にも目を閉じてしまった。

 

 

 次に目を開くとそこは、あの街のど真ん中だった。またここか、一体何なんだ、と思っていた。だがその時、俺は先ほどとは違う、決定的な違いを見つけた。その時の俺は、こう思っていた事だろう。

 

 

 ——レベルと……魂?

 

 

 レベル。聞き慣れない言葉である。レベルというのは何を意味する言葉なのだろう、そんな疑問が生まれていた。

 

 魂というのは分かる。人や動物の意識の大部分を構成する、物体ではない何か。そんな物だと聞いた事がある。

 

 だが、その魂とレベルとやらが俺の視界に映り続けるのは意味が分からない。首を左右に振ってみても、走ってみても、一回転してみても消えない。これは新手の嫌がらせだろうか。

 

 だがそんな事を気にしても仕方ない。そう思い俺は街を散策することにした。

 

 街を散策してから数時間、俺はいつの間にかゴミ箱を漁っていた。何十年と。

 

 俺は今、一体何をやっているのだろうか。心の何処かで確かにそう思う俺がいた。だが、ゴミ箱を漁る事を辞められなかった。ゴミ箱漁りが楽しすぎたのだ。

 

 通りすがりの酔っ払いに笑われた、赤ん坊の泣き声がうるさかった、カラスに突かれた。偶には銃砲の流れ弾が飛んできたりもした。

 

 それでもゴミ箱漁りを辞められなかった。それだけの不運に見舞われたとしても、ゴミ箱を漁る事で得られるメリットが大き過ぎたのだ。

 

 大体見つかるのは数G(ゴールド)足らずの小銭や、ちょっとだけ丈夫そうなシャツ、ナイフ程度だ。まあそれでもゴミ箱漁るだけで手に入れているのだから収穫と言えば収穫だが。

 

 だがそんな小物よりも大きな収穫がある。それが「エリクサー」と言った超薬や、何十年分もの大金だ。

 

 エリクサー。切り傷や打撲などの小規模の怪我から腕が千切れたり不治の病などの重い症状の怪我を一瞬でかき消す、正に神秘の代物。そんな高価な物がゴミ箱から拾えるのだ。

 

 その他にも1000Gが手に入った事もある。1000G、その人生の中で真面目に働いたとして、1000G手に入るには200年働かねばならない。200年、途方も無い数字である。

 

 それだけの代物がゴミ箱を漁るだけで手に入るのだ。漁ってメリットが無いわけではない。まあ、酔っ払いに大笑いされたのには流石に心に来たが、今ではただの雑音にしか聞こえない。もう慣れたものさ。

 

 結局2回目の人生はゴミ箱を漁るだけで終わってしまった。が、その際に見つかった3000Gを市役所に持って行って「引退」する事で発展度が得られたので良しとする。漁っている時にレベルが上がってて良かった。

 

 「引退」。引退とは市役所で市長に話しかけると出来る行動の一つだ。話しかけると市長から引退するかどうかの提案をされる。

 

 引退する際一定のレベルを達している場合、その所持金に応じた発展度が上昇する。発展度が上昇すると各家が裕福になったり、仕事の賃金が上がるという。また高レベルならば「魂」も得られるらしい。

 

 「引退」した後目を覚ますとそこはあの真っ白い空間だった。

 

 今回も前回と同じようのカードを手に取る。今回は前回と違い手に取る前からカードに旅人と書いてあったのが気になった。

 

 そしてサイコロを振る。今度は23歳からスタートのようだ。まあ、あまり関係は無いだろう。そう思いさっさと俺は「異世界」へと降り立った。

 

 今回の人生では冒険に出てみよう、そう決意した。前回の人生は碌な物では無かったからな。

 

 今度はちゃんと真面目に働き、武器と防具を買う事にした。最初に目を覚ました際には手ぶらで砂漠に行ったからな。結果俺は死ぬ事になってしまった。

 

 「異世界」に降り立ってから俺はまず、「仕事紹介所」で紹介された所で働いた。荷物を運ぶ運送系の仕事を請け負ったが、結構な肉体労働だった。お陰でレベルが5まで上がったよ。

 

 仕事には20年ついていた。その結果手に入ったのは125G。もうゴミ箱漁り続けた方がいいんじゃないかと思う程少ない賃金だった。くそったれ。

 

 そのなけなしのお金でナイフとコットンシャツを購入。最低限の装備を整えた。その際に使ったのは20G。まあ宿屋代の事を考えると確かにこのくらいが丁度良いのだろう。

 

 その後俺は再び、あのトラウマの地、『ザジ荒野』へと出向いた。

 

 そこには俺をボロボロまで追い詰めたあの巨大ナメクジや、ハゲタカがいる。生半可な覚悟じゃやられてしまう…! そんな意気込みで向かったのだが……正直肩透かし感が否めなかった。

 

 アレだけ苦戦したナメクジは軽く切り裂いただけでノックアウト、更にその戦闘によってレベルがあがったのでハゲタカも楽に殺す事ができた。他にもワームという巨大なムカデのようなモンスターもいたが、ハゲタカも殺せるようになった俺の敵ではなかった。

 

 そしてしばらく辺りを散策している途中、それに出会った。

 

 全長数mはありそうな巨体で佇むソレは、正にここら一体を支配している王とでも良いそうな風貌だった。

 

 それを一言で表すなら「砂の巨人」。身体全てが砂で構成されており、風が吹くたびに身体の一部が持っていかれていた。

 

 そして、俺は奴に挑んだ。勿論、確実に勝てる保証は無かったが、ここで奴を打たないといけない。そんな気がしたんだ。

 

 結果から言えば、俺は奴に勝った。ギリギリの所で奴の体力が尽きたのだ。後少しでも奴が倒れるのが遅かったら俺には何も残らなかったかもしれない。

 

 奴を倒して手に入れたのは戦闘に直結した「レベル」を上げる経験値と経験のみではない。奴から手に入れたのは「魂」という不思議なものだ。

 

 「魂」。形として手に入ったわけではない。俺の左下の文字の「魂」という項目の数字が0から1に変わったのだ。

 

 用途は不明だが、あって困らない物ではない。そう思い俺は今後それを集めていく事にした。まあ、その人生の中で生かせるような代物では無かったんだがな。

 

 だが結局、俺は死んでしまった。巨人を撃破した帰りは夜だったのだが、その時にワームの大群に襲われたのだ。

 

 先の戦闘の影響とその圧倒的な数の暴力に逆らえるはずがなく、俺はすぐに撃沈されてしまった。

 

 なんとも呆気ない人生だったな。そんな事を例の真っ白い部屋で思いながらサイコロを振る事数回、ついに良い目が出た。

 

 3回目の人生スタートに先立ってやっと「魂」の用途やサイコロの意味が分かった。これは次の人生での最初を決める重要なスタートランなのだと。

 

 サイコロ。これを振る事で様々な項目が変動する。年齢、攻撃力、運などといった基本的なものはコレで決まるのだ。コレによって最低値と最高値では天と地ほどの性能差が開く事となる。

 

 「魂」。これは次の人生での職業を決める際の対価となる代物だ。これをどれ程支払うかで上位のジョブへ就けるかが決まる。また後で知る事になるが、金では取引されない武具などの対価にも支払われる。

 

 そういった要素を知った上で、次の人生からは魂を集める事を重視した人生を送る事になった。現在の旅人だけでは力不足過ぎる。

 

 と言うわけで何十回人生を繰り返した頃、魂が50集まった。これだけあれば、最強のジョブで人生を始められる事になる。

 

 その後の人生からは圧倒的に速いスピードで事が進んで行った。

 

 手ぶらでザジ荒野に行って経験値を一切溜めずに「砂の巨人」に挑み、完勝する事や、各ダンジョンをこちらも手ぶらで捜索出来たりもした。旅人だった頃とは段違いだった。

 

 その圧倒的な力に掛かればダンジョンを制覇する事など容易い。その為ダンジョンのアイテム集めも楽だった。

 

 伝説の装備も集め終わると、俺は最強の存在と謳われる神龍に挑んだ。街の門兵にその宮殿に向かうと言うだけで

 

「死ぬ気かぇ……?」

 

 と目を見開きながら言っていたのが印象に残っている。

 

 確かに宮殿のモンスターは全て強かった。下位の伝説装備がないと歩き回る事すら難しかった。神龍なんてエリクサーを3本も使ってやっと勝てたぐらい強かった。

 

 ——だが、勝てた。伝説の存在であっても、勝つ事が出来たのだ。

 

 そして俺は帰還しようとした。何もかもを終え、「引退」でもしようかと思っていた時、それは現れた。

 

 「選定者」。彼は神龍の宮殿にて門番をしており、彼を倒さなければ宮殿内に入る事もままならなかった。それ故にある意味顔見知りだった。

 

 彼は俺に教えてくれた。この世界の真実を。

 

 その真実が何かを説明するのもいいが、それは後でも出来る。今は省略させて貰おう。

 

 その真実を知った俺は、彼から受け取った毒薬を市長に盛る事にした。彼こそがこの世界を作り出した元凶の最強の手下であり、それ故に勝てないから、と。

 

 そして毒を盛り、彼女を毒殺した。その後市長の部屋の隅の方にある隠し階段を降り、俺は目にした。引退した冒険者達の末路を

 

 俺はそれを見た瞬間、なんとも言い難い殺意を覚えた。この世界を作り出した奴は俺たちの事をオモチャか何かと勘違いしているのか、と。

 

 その後俺はその元凶との戦闘を繰り広げる事となる。エリクサーは最大まで持ち、装備も最強、初期ステータスも全部最大値をとっている。万全の状態で挑んでいた。

 

 ——だが、勝てなかった。

 

 奴の一撃は俺のHPの1/3以上を削り、俺の攻撃はなんとでもないように耐えきる。エリクサーを使ってもすぐに全て空になる。ギリギリの戦闘すら無理だった。

 

 そして俺は死んだ。この異世界を作り出した奴と戦ったのだ。その後また生き返る事は無理なのでは、という不安が拭いきれなかった。

 

 だが不思議な事にもう一度次の人生を生きる事は出来た。普通に転生が出来たのだ。

 

 更に不可解なのが、(元凶)があの戦闘を覚えていなかった事だ。俺は奴に戦いを再び挑んだ。もう一度やれば変わる、そう信じて。

 

 だが結局負けてしまった。俺は死ぬ間際に叫んだんだ、「また負けたが、次は必ず……!」とな。

 

 それに対して奴は、"また"という言葉の意味が分からないという趣旨を死にかけの俺に伝えた。前回の戦闘の事など覚えて居なかったのだ。

 

 そして、俺は仮説を立てて見た。恐らくあの世界は、"俺が生まれ変わる度にリセットされている"と。

 

 そうすれば俺の死体が次の人生で見つからないのも、奴が前回の戦闘を覚えていないのも納得出来る。まあ、発展度がそのままだったり、魂を持ち越したりと例外的な部分もあるが、大まかに言えば恐らく合っているはずだ。

 

 そうなると話は速い。後は発展度を上げたり、魂を収集する事でもしよう。そう目標を設定し、何十回と転生した。

 

 だがその目標は案外速く終わってしまった。発展度は1万超えた辺りから成長しなくなり、魂も既に3500集まってしまった。まあ発展度とか魂を懲りないで上げ続けていたらいつしか上限が壊れてしまったんだがな。今では一年働くだけで8万G手に入るようになってしまっている。上げすぎだな。

 

 そんな訳でいつもの様に市役所の市長の部屋に向かって引退でもしようと思っていた時、それはあった。

 

 市長の部屋の前廊下、そこから繋がる部屋の一部が、奇妙なのだ。前来た時には市長の部屋以外は2部屋しかなかった。それなのに今では4つ。訳が分からない。増設なんてしたのか?

 

 まあいい。分からないならば確かめるだけだ。今までと何も変わらない、情報は自分で得るものなのだ。

 

 そんな考えから、俺は扉を開いた。

 

 そして俺はこの後後悔する事となる。いや、狂喜と言うべきか。新しい世界への扉を開いたのだから。

 

 そう、これが俺の本当の意味での"異世界"の発見までに至った経歴である。今では懐かしい話だが、古い話でもある。なぜならこの頃はまだ、システムに縛られていたのだから……。

 

 

 

 




 
 因みに発展度を手っ取り早く集めるには、ある程度発展度あげてからの50年労働ルーレットが一番手っ取り早いです。発展度が1000とか3000上がったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。