どうも。作者です。
お気に入りが6件になってました。ありがとうございます。
そうそう、評価を幾つか頂いたので、その中の一つの声に対しここで返信を。
「異世界に生きる」の世界の説明で一話使いましたが、これは本作での話の根本となる部分、舞台の説明はしなきゃいけないなー、と思ってやった事です。まあ真ん中と後半は全部省きましたが、なんとなくコレで「異世界に生きる」をプレイしていなかった人にも世界観は分かったんじゃないかなー、と思います。
言い訳をする訳ではありませんが、そういう事だったって事は伝えておきます。
ではこんなくだらない話はここら辺で。
本編、どうぞ。
それがどうだろうか。彼はコンビニで食品を買った直後に現代日本とは思えないヨーロッパ風の街に出ていた。普通ならばここで発狂しそうなものだが、彼はこの状況を狂乱の如くテンションが最高潮に達していた。その姿からは心から望んでいた物が手に入ったかのように、無邪気だった。
——だが、世界は彼に優しくはなかった。
世界は彼の望んでいた超能力など与えなかった。筋力が増強する訳でもなく、魔法が使える訳もない。世界はただ彼に厳しかった。
しかし世界が唯一彼に与えた物がある。それが所謂【死に戻り】という異能だ。これは自分自身が死ねば世界はリセットされ、何度でもやり直せるというある意味最も上位に位置する能力である。
だがその発生条件はとても厳しい。何故ならば"一度死ななければならない"からだ。
死。それは人生の内で一度しか味わえない、究極に最悪で、究極に気持チイイものの事。その際のアドレナリンは性欲発散時の200倍とも言われる。
コレだけ聞けば『死』とはとても気持ちのいい物だと言えるだろう。人生の中で最高の快楽を味わえるのだから。
だが世の中、そんなに甘くは無い。飴が有ればムチがあるというものだ。
確かに『死』は気持チイイ。確かにそれは事実だろう。だが……それ以外の症状がないと、果たして言えるのだろうか。
だんじて否である。この世はギブアンドテイク、弱肉強食。美味いものだけを食えるわけが無いのだ。
最高の快楽と共に身体に襲い掛かる物がある。それはどれも、身体の宿主からすれば迷惑極まりないものばかり。
痛み、痒み、熱、寒気、吐き気、目眩、身体の硬直、急激な心拍数の上昇、頭痛。その他大勢の症状が身体に襲い掛かってくるのだ。
故に人は『死』を恐れる。快楽を得られるのは一瞬ではない。"一瞬のうちも一瞬だけ"だ。その後は様々な悪性の症状が身体を貪り、侵食していく。多くの人にとって最後に残るのは後悔の念のみだろう。
そんな物をナツキ・スバルという少年は何度も経験している。いや、今後もしていく事になるだろう。それが『魔女』に気に入られた者の、末路なのだから。
そして今も尚、死は彼の事を狙っていた。いや、正確には彼だけではなく、この場に居る全員なのだが。
「ふふふ、噂通り……いえ、噂以上なのね、貴方は」
「ご期待の答えられるかどうか」
露出の激しい女性「エルザ」が赤髪の青年を褒め称える。赤髪も青年「ラインハルト」はそれに対して顔色一つ変えずに軽く返した。
「その腰の剣は使わないのかしら? 伝説の切れ味、味わってみたいのだけれど」
そう言ってラインハルトの腰元の大剣を指差す。
「この剣は抜くべきとき以外は抜けないようになっている。鞘から刀身が出ていないということは、そのときではないということです」
その回答にエルザはやれやれと言った反応を示す。しかし本気で参っているわけでは無さそうだ。
ラインハルトは床に落ちている錆びついた大剣を拾って彼女に宣言する、この大剣で相手をさせて貰うと。
この大剣は元々盗品の一つだ。盗品である為整備などろくにされておらず、そもそもの話質も良く無い。そんな剣で相手をすると言われれば相手は大抵、バカにされていると取るものだ。
だが不思議と、彼が言うとそうは聞こえない。恐らくその外見の効果も相まって、皮肉にすら聞こえないのだろう。
両者は武器を構えた。
「では、いざ——」
「ええ、ああ、素敵だわ。いいわ、楽しませて頂戴!」
そうして、決闘の幕は開かれた。そして両者が動き出してその獲物同士が火花を散ら……す事は無かった。
——理由は、両者の間に突如、人が現れたからだった。
なんの前ぶれも無く、突如現れたそれはフードを深く被っており、表情は見えない。だがフードから見える口元は、笑っているようにも見えた。
そして、フードの男は周りを見渡して、一言。
「……なんだ、ここは」
「なんだ、ここは」
俺はいつ来たのか知らないが、木造の酒場? に来ていた。しかも半壊の。……うむ、どういう事だろうか。俺は市役所の部屋の扉を開けただけなのだが。何故こんな所に居るんだ?
それにどうやら先客の方は取り込み中らしい。赤髪の奴と露出が激しい女が争っている、俺を間に挟んで。夫婦喧嘩だろうか……目の前の女と目があってしまった。
「あらあら、貴方は私の邪魔をする気なのね」
「……」
何処か不真面目なその女を再び見つめる。ふむ、あの際どい服装、武具から見るにどうやら奴は機動性重視の致命傷狙いだな。すれ違いざまに切り裂かれるのに注意すれば死ぬ事はないだろう。……真っ直ぐ向かってきているんだが。避けられるだろうか?
「お、おい! 逃げろ‼︎」
緑色の面白い服を着た男に声を投げかけられる。なんだろうか、まさか俺がこの女に負けると思っているのだろうか? だとしたら……凄く不愉快だ。誰がこんな露出狂にやられるものか。
「ラインハルト! アイツを…!」
「ご心配には及ばない。最低限の装備は所持してきている」
緑服の叫びを遮って俺は手元のナイフを見せる。
どちらも10Gのナイフとシャツ。普通にデュランダルとディヴァイン持って来れば良かったんだがな。まあ最低限縛りしてたから仕方がないよな。うん。
風をきる音が聞こえた。
「——ねえ、貴方の腸は何色?」
目の前に先程の女が現れ、その短剣を俺に突きつけながら問う。いや、突きつけるというよりは斬りつける、斬りつけたという方が正しい。というか……
その短剣をナイフで受け止めながら話しかける。
「危ないじゃないか、お嬢さん。人に刃物を斬りつけちゃいけないって習わなかったのか?」
「! ……あら、それは失礼。私、真逆の事しか教えられていないの」
「へー。ま、俺も似た様なもんだけど…な!」
「……!」
彼女の短剣を一瞬だけ流して即座にローキックを叩き込む。脇腹に丁度叩き込れた方はなんとも言い難い表情を顔に出している。
脇腹を抑えながら露出狂が口を開く。
「あなた……何者? ラインハルトに加えて貴方みたいのがいるなんて、聞いていないわ」
「ああ、そうだな。俺も聞いていない。そもそもここがどこだかも分からない。
ラインハルトなんてのも知らない。ついでに言えば自分が何なのかも分からない。教えてくれないか、俺は何の為に生きているのか」
その問いに答える様な事はしない。彼女は俺の質問を無視して早々と赤髪の青年に斬りかかっていた。残念だ。
しかし……意外に行けるもんだな、旅人だけでも。最高初期ステレベルマだったとしても、旅人だからな、俺。
「まあいいか。後はあいつらの戦いでも観戦していよう」
俺はその場に座り、胡座をかく。
先程の女は烈火の如く連撃を赤髪に叩きつけている。そのスピードは相当なもので、見ている側からすれば赤髪の劣勢だと見えるだろう。
——だが、劣勢なのは女の方だ。彼女の斬撃はどれも赤髪にはかすりすらせずに交わされてしまっている。このまま攻撃し続けたとしても、恐らく彼女の体力が尽きるのが結末だろう。
そして女は一瞬で赤髪から距離を離した。結構飛ぶな、とか思っていると彼女はその手からカトラスのような短剣を投げた。
さて、どう避けるものかな、と思っていたのだが、結果は俺が思っていた物は全く違っていた。短剣が赤髪に近づいた瞬間、避けるように軌道が逸れたのだ。
ふむ、どう言う事だろうか。剣の方から避けるなんてのは通常あり得ない。それこそ、人知の超えた何かが……ああ、そうか。
「奴に周りに漂う
さっき剣が避ける時、奴の周りに漂うアレの一つが光ったのが不思議だった。だったのだが……アレが奴に力を与えている何かだと言うなれば、話は早い。奴は恐らく"精霊"という奴なのだろう。
なんだか見覚えがあると思っていたが、ユグドラシルにもたまに出現していた奴の成体かなんかなのだろう。ユグドラシルに居たアレよりも力が強大だ。
「……まあ、"神龍"には遠く及ばないが」
確かに赤髪の周りに漂うアレや、あっちの銀髪の少女から感じられる奴らから強大な力を感じるが、神龍ほどでは無い。恐らく『剣聖』のジョブに就けば撃破も可能だろう。
ふと対戦の方を見る。……ふむ、そうこうしている間にあっちはどうやら決着がつきそうだな。赤髪の周りにナニカが集まっている。
「アストレア家剣撃を——」
そう赤髪が呟いた次の瞬間、世界が揺れた。そこで俺の意識は途切れてしまっている。
次に目を覚ますとそこは、例の真っ白い空間だった。
今回も例の如くささっとカードを選ぶ……所で手が止まった。おかしいのだ、そのカードの数が。
いつもならば10枚きっかりの筈、ついでに言うならばそれぞれのジョブ名も表に書いてある。
——だが目の前には11枚のカード、そして『???』と書かれた謎のカードがある。今までには無かった事例だった。
不思議には思うものの、そのカードを手に取ってみる。そのジョブが何か分からないが、それが何だったとしても俺には関係ない。どうせ元々旅人で行く気だったからな。
そして例の内容不明カードのジョブ名が現れた。ジョブ名は……『精霊使い』
精霊というとアレだろうか、ユグドラシルに居たアレもとい赤髪の周りに漂っていたアレ。アレを使うという事でいいのだろうか。
まあ、どうやって使うかは知らないが、やっている内に慣れるだろう。とりあえず、ダイスを振るぞ。
俺は左手に握られたダイスを振った。結果は……上々の結果だな。生命力と攻撃力が僅かに劣った魔術師と言った所か。精霊とやらの使い道がなければただの下位互換だが、そうならない事を祈る。何気に魂の消費が20と大きいのでな。
さてと、そろそろ行くか。あの「異世界」に……。
——俺は【異世界へ——】を押した。
目がさめるとそこは、いつも通りの「異世界」だった。裕福そうな家族の大群が街中を歩き回っており、その中で軽いローブを羽織って居た俺はある意味浮いて居た。
そのまま留まり続けるのも時間の無駄なので、早速裏通りへと進む。この辺りにはエリクサーを売る商店や共用の大きなゴミ箱が置いてある。ゴミ箱だと侮るなかれ、ここからは偶に1000Gやエリクサーが出てくる事がある。貧困時にはよくお世話になっていたのは印象に残っている。
だが今回はこのゴミ箱が目的ではない。今回は盗賊達が最も得意とする"盗み"を犯す事にする。時間が惜しいのでな。
俺は数々の民家の中から最初に目に付いたオーク樹の家の中に入った。不用心にも鍵はかかっていなかった。やはり発展度が上がっても人の心は変わらないという事か。
俺はキッチンに入り、戸棚を片っ端から開けていく。空っぽという外れが多いのが偶に傷だが、ちょくちょく小銭が手に入っているので良しとする。というよりも『憲兵』がくる前にずらかりたいので、早く出て欲しいのだが。
……その後、戸棚を開けて行っても出なかったのでタンスを開けてみた。すると不運にもそこには50万Gという大金が……! というよりこんな大金をタンスに入れるのもどうかと思うが。
その後、さっさと民家から立ち去り、表の武器屋防具屋で
さてと、準備は整った。まずは軽く小手調べだ。
最初に向かったのはあのトラウマの地、『ザジ荒野』だ。旅人でも初期ステが上から二番目の防御力を達していればダメージが激減するという初心者向けの狩場と言えるだろう。
そんな所に行くのだ。魂20個も消費した【精霊使い】が負ける事はないだろうと思われる。
砂漠に出てから数分、最初に会ったのは初めて俺を殺してくれたあの『ハゲタカ』だった。まずは小手調べに奴が滑降してきた所を殴ってみる。
結果は……予想通りのものだった。ハゲタカは俺に殴られた瞬間に血飛沫を撒き散らしてグチャグチャになった。
——俺はレベルが1上がった。
やはり魔術師程度の力はあったらしい。次は【精霊召喚】という技を使ってみるかな。
ひたすら歩く事十数時間、今度はザジ荒野のボス、「砂の巨人」の所まで来た。「砂の巨人」、戦士や弓士などの戦闘職ならば難なく撃破できる敵だ。魔術師もどきだったら苦戦すら論外だろう。
だが、今回の目的は撃破ではない。撃破だけならばただ殴るだけで終わるだろう。今回奴に挑むのは『精霊』の強さを測るため、それが目的なのだ。
俺は視界の端を見る。そこには俺のレベルやHP、ATKという今の俺の状態が映し出されている。勿論、今使える技なども。
その中の【精霊召喚】を見つめながら、俺は叫ぶ。
「我が僕となるものよ、我は求む、貴官の力を……召喚に応じよ!」
——ジャックフロスト!!
近くのサボテンに雷が落雷し、辺りに閃光が走る。そして、その光が晴れ、落雷地点を見えるようになった時……それはいた。
俺の召喚に応じた精霊、それは……青い帽子を被った雪だるまだった——。
『精霊使い』
分類: 職業
リゼロの『精霊使い』をベースにした『異世界』のジョブの一つ。本作オリジナル。
基本的に召喚者の能力は『魔術師』に劣るが、精霊使いは精霊を現界させる事による同時攻撃・攻撃の幅広さでそれらをカバーする事が可能。
召喚できる精霊は『女神転生』シリーズの『妖精』や『精霊』、『地霊』が対象となる。
魂を20個消費する。
と、いう事で『女神転生』シリーズ要素も入ってしまいました。まあこればかりは仕方ないなー。……そんな目で見ないでください 精霊と言えばメガテンシリーズのしか思い浮かばなかったんです 勘弁してください。