“異世界“から生きる 【凍結】   作:アストラ9

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メイドとは?

 

 さて、と。

 スバルのこの様子を見るに、二人はただの知り合いって訳じゃ無さそうだ。最低でも、知人以上、って所だな。

 

 だが、もしも本当に知人以上の関係ならば、何故彼女はスバルを狙っていたんだ? あの目は普通の目では無かった。何かを警戒して、危険を取り除こうという、焦りが見えた。

 

 人間は、いつの時代も不安の種をすぐに摘み取ろうとするものだ。前に、とある富豪がある密売組織から身を隠してくれと依頼があった。その際に言われたのが、

 

「私の身を守る為なら、奴らは殺してもいい。ああ、そうだ。何なら殺した数に応じて追加報酬を払ってもいいぞ」

 

 この言葉にイラっときた俺は、その場でそいつの首を刎ねてやった。人の命は、天秤に掛けて良いものではない。いや、それは全ての生命に言える事だな。それをこれっぽっちの金で同等の価値としようなんて、虫のいい話はないんだよ。

 

 ……話が逸れた。戻るとしようか。

 纏めてみるとつまりは、彼らは知人以上の関係だったが、彼らの間に何かが起こり、青髪女はスバルに身の危険、またはそれに準する感情を持った。それは殺意にまで発展し、今、実力行使をしようとしていた……っと、こんな感じだろう。

 

 だが、その何かとは何だ? そもそもスバルの何処に彼女が殺意を抱く程の要素がある? そもそも彼女は誰で、どうやって知り合ったんだ? 

 ま、ここら辺は今、(スバル)が話してくれるだろう。流石に命の恩人相手に嘘はつけないだろう。

 スバルの方を見やる。

 

「で、どうなんだ、スバル。彼女は何者なんだ?」

 

「え、えっとだな、か、彼女は……」

 

 それだけ言って顔を逸らした。

 ふむ、喋る気はない、という事か。いや、それとも喋りたくても喋れない……?

 

「ああ、そうだ! 彼女はロズワール邸のメイドなんだ。それで、俺は彼女に3日の間、世話になっていたんだよ」

 

 突如思い出したかのように焦って喋り出す。

 ふむ、ロズワール邸というのは分からないが、彼女はメイドだったのか。……そもそもメイドとは何だろうか。

 いや、今はそれはどうでもいい。それよりも、3日。この3日の間に、スバルは彼女に殺意を抱かれる程の何かをしたという訳だ。

 つまりそれは、長期間の間で積み重ねられた殺意ということではないという事を意味する。余程な事をやらかさない事には、ここまで発展はしないだろう。

 これを聞き出す必要があるな。

 

「ほう、3日間、彼女に世話になっていた、と」

 

「ああ、そうなんだよ。凄いんだぜ、レムは家事料理全般に至って高性能なんだよ。どんな完璧超人だっての」

 

 そんな事嬉々と喋り出すスバル。その顔には、笑顔が浮かんでいた。相当彼女に思い入れがあったらしい。

 更に、スバルは彼女、レムの名前を知っていた。メイドというのが何か知らないが、恐らく何かの職業なのだろう。

 そんなただ仕事をしている人間と、3日しか経たずに名前を聞き出し、嬉々と仕事の内容を喋り出す? もしもコレが本当の話なら、彼の行動範囲は広く、素早いという事になる。確かコレが発展すると、"すとーかー"という奴になると、酒場のマスターから聞いた事がある。

 確かソレは、ターゲットにした人間を、相手に気付かれないギリギリの所まで追い回し、後をつけ、相手の秘密を全て暴こうとする事が目的だと聞いた。

 これに当てはめると、彼は彼女の"すとーかー"だという事になる。そんな隠密行動が好きそうな奴には見えないが……人は見た目によらないという事なんだろうな。

 

「ふむふむ、つまりスバルはレムの"すとーかー"という事だな」

 

「そうそう、俺はレムのストーカー……って違うわッ! なんでレムの仕事っぷりを説明しただけでストーカー扱いされなきゃならないんだよ!」

 

 ふむ、彼は容疑を否認しているようだ。

 だがな、スバル。お前の話には色々と不透明な所が多いんだよ。

 

「そうか、ならば教えてやろう。お前の怪しい所を。

 そもそも何故、3日しか一緒に居ない相手の情報をそれだけ知っている? 普通、3日間だけしか会った事が無いならば浅い情報しか知らない筈じゃないか?

 それなのにお前は、まるで今まで全てを見てきたかのようにそれを語る。何故だ? お前と彼女は3日の付き合いなのだろう? 普通ならば3日だけで女が男を信用するなど、難しい話ではないのか?」

 

「うっ…それは……」

 

「更に言うならば、何故たったの3日の付き合いなのに、命を狙われるようになっている? お前は彼女に何かをしたのか? 彼女の知人に、何かをしたのか?

 はっきり言わせて貰うが、俺はお前を疑っている。嘘は言っていないとしても、俺に何か、隠しているのだろう?」

 

 すると今度は彼の顔が真っ青になる。

 さてと、ラストスパートを掛けるか。

 立ち上がり、デュランダルの穂先をスバルの頭に突き付ける。

 

「良いか、よく聞け。俺はお前をいつでも殺す事ができる。やろうと思えば、今この瞬間にでも殺せるんだ。

 ついでに言えば、俺は馬鹿にされるのを嫌っている。もしも嘘をついて俺に殺されると言う事になればそれは、楽には死ねない事を意味する。

 ねちねち、ぐさぐさと苦しみながら死ぬ事になるだろう。

 それが嫌なら、今すぐ全てを話せ」

 

「……分かった。実は……」

 

 そう言って語り出そうとする彼の表情は暗かった。そしてその暗い視線の先は、左側を向いていた。

 俺はコレが何か、知っている。くだらない九割の情報を吐き出して、重要な一割の情報を守ろうとする者の顔だ。

 どうやら、俺相手に隠し事を通す気でいるらしいな、コイツ。

 仕方ない、畳み掛けるとしよう。もしもコレでダメなら、実力行使だ。

 俺はレムの所まで歩き出す。

 

「仕方ない。スバルが全てを話す気がないなら、彼女に聞くしかないな。……身体、特に内臓に、な」

 

「……!! ちょ、ちょっと待ってくれよ! 彼女は関係ないだろ⁉︎」

 

「関係なくはないだろう? お前を追い回していた張本人だ。何かしらの情報は持っているだろう」

 

「だ、だからって……!」

 

「煩いな、お前にはもう、用はない」

 

 そして、レムという少女の前に辿り着いた。少女の顔を覗いて見る。

 ほう、確かに可憐な少女だ。透き通った青髪に整った丸顔の顔立ち。肌はもちもちしていそうで、実に可愛らしい。

 だが、それだけだ。俺にとってはただの、人間にしか過ぎん。どうせ、居なくなる。それがこの世の常だ。

 チラリとスバルを見やる。

 スバルを口を半開きにしたまま、此方を見続けている。その顔には、恐怖の文字が浮かんで居た。

 手に握るデュランダルを掲げる。

 

「さて、と。それじゃあ早速彼女に聞き出すとするかな。……じゃあ、良い夢を。また今度、会うとしよう」

 

 そして、手に握る大剣を振り落とし彼女の身体を真っ二つに解体——

 

 

「……す、全てを話すから!!! 頼むから、待ってくれぇぇぇえ!!!!」

 

 

 ——する前に、スバルの声によって振り下ろしとどまる。その位置は、少女との距離僅か数センチであった。

 

 さて、やっとスバルの言質を取れた。これを取るためにコレだけの芝居を打ってやったんだ。面白い情報じゃなかったら怒るぞ。

 まあ、とりあえず聞くだけ聞いてみよう。話はそれからだ。

 俺は必至の表情のスバルの元へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、先ほどスバルから情報を聞き出す、と言って居たが、実際に情報は得られなかった

 いや、彼は情報を伝えようとはして居たみたいなんだが……いざ話して貰おうとすると、急に胸元を抑え初めてな。表情もあまり優れなかったから、ひとまずは止めてやったんだ。

 だが、その時のスバルの表情は非常、非常に悪いものだった。まるで、この世の終わりを見てきたかのような、そんな表情だった。

 

 ここから俺は考えた。

 恐らく、彼自体は話したいのだが、彼に取り憑いている『何か』がそれを妨害している、とな。

  この何かというのは余り予測がついていないが、恐らく、彼の事が気になっている"すとーかー"の類いのものだろう。まあこれの考察はココで辞めておこう。どうせ答えなどでやしない。

 それより、対策だ。情報というのはなんとしてでも手に入れなければならない。まあ俺が世界を回って全て手に入れるというのも良いが、それでは面白くない。

 せっかくの異世界なのだ。楽しんだ方が勝ちだろう。

 と、いう訳でスバルから情報を手に入れる事をなどを考えたりして、楽しんでいるという訳だ。

 で、色々と手段を講じてやって見た。

 スバルを拘束する者を引っ張り出して引き剥がす方法とか、紙に文字を書いて伝えようとするとか、いろいろ。

 だが結局、どれもダメだった。一つ目の奴は、対象を引き剥がそうとするとスバルの『根元』が全て道連れにされるように『根』が張り巡らせれて出来なくて、二つ目の奴は書こうとしただけで胸が締め付けられる。結局失敗だった。

 

 そこで俺は考えた。

 スバルが話せないなら、スバルの表情を俺が読み取ればいい、と。

 情報を喋ろうとして邪魔をされるならそれは、事実だという事に繋がる。何故ならそいつは、スバルにそれを語らせたくないようだからな。

 それを利用する。

 俺がスバルに質問し、それがスバルが言いたい事なら例の奴が邪魔をする。するとスバルが胸を抑える。つまり、そうなれば正解だ。

 もしもスバルがピンピンして入れば、それはハズレという事になる。

 で、コレを行なってみたところ……思った通り、良い結果がとれた。予想通り、正解の時はスバルへの負担が掛かるようだった。

 で、この実験で得た結果が、以下の通り。

 

・スバルは、前世?で一度レムに会っている。

・レムとは職場仲間だった。

・スバルは何度も生き返っている

 

 さて、ここで考察を入れてみよう。

 まず、一番最初に、この中で一番存在がデカい"生き返り"について。

 最初俺は、スバルは俺と同じで転生を繰り返しているのかと思った。俺とスバルは同じ異世界人だ。同じ境遇だとしても不思議はない。

 だがまあ、結論から言えばそれは違った。「お前は転生をした事があるか」という質問に対し普通に、ない、と答えたからだ。つまり、コレは真実か嘘かは分からないが、少なくとも核心に迫るようなものではない、と。

 そこで、「未来へ行った事はあるか」という質問を行なったが、ここでも、ない、という回答が得られた。だがここで、うーん、と一回悩んで居た所を見るに、少し近づいたという事が分かったんだ。

 で、最後に「お前は生き返った事はあるか」という質問をしたんだが……ビンゴだった。スバルは胸元を抑えたのだ。

 つまり、この『生き返り』こそがスバルに関係する"何か"の関連物であり、彼が語れない何かという事だ。

 何故生き返れるのか、という疑問もあるが、それはあえて無視する。

 なにせ俺も似たような状況だしな。あの箱庭を作った魔王にすら感知できない何かが俺に取り憑いているんだ。人の事を言えたことではないだろう。

 と、なるとスバルの前にレムに会った事がある、職場仲間だったというのも理解できる。全て、生き返る前に合った事なのだから。

 

 だが、まだ一つ、疑問が解明されていない。俺の中にずっと引っかかっている疑問。勿論、皆分かっている事だろう。

 そう、それは……

 

「で、結局メイドとはなんなんだ?」

 

 メイドとは何か、である。

 

 

 

 

 

 

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