なんか書けたので投稿。
「はぁ……酷いじゃないっすかユウ先輩」
「くはははっ、誰がタダで助けてやるっつったよ。それともこわーい女性方に叩きのめされる方が良かったか?」
「それでも……くっそぉ……俺の小遣いぃ…………」
アレから悠々とコーヒーでブレイクタイムと洒落込んでいた剣道女子高生達だったが、ふと慌ただしく学校にとんぼ返りした。何でも着替えやら荷物やらがそのまんまなんだと。そんなわけで女子高生達が店から完全に離れたのを見計らってトイレから出てきた一の字がブツクサ言ってるわけだ。
ケーキセット×4で税込み3240円は高校生の財布にゃすこーしキツかったかもしんねえがそれはそれだ。アホやった自分を恨みな。
「まあ、なんか食わせてやっから機嫌直せよイチの字。そこそこ良い時間だし腹減ってんだろ?」
「あー、そんじゃ家で親が飯作ってくれてると思うんで軽いやつお願いします」
「それもそうか。んじゃ、サンドイッチでも作るからそれ食ってけ」
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「さて、良い時間だし今日はもう閉めるか…………イチの字は飯大丈夫かね?」
あの後飯があるっつってたクセにガッツリと(サンドイッチ三人前)食っていった後輩が帰るのを見届けると、今日はもう閉めようと店仕舞いを始める。
今日はあんまし客入りは良くなかったが、まあそういう時もあるわな。
店仕舞いを初めて30分。時間は6時前を指したころ。
「さて、後は立札だけっと『カランコロンカン♪』…………ん? 白猫じゃねえか。どしたよ?」
閉店間際で店にやってきたのは白猫っていう渾名で呼んでる銀髪の女の子だった。
確か塔城小猫って名前で、イチの字が通ってる駒王学園高等部の1年だった筈だ。何故渾名が白猫かって?なんか食ってる所を見てると店先に寄ってきたちまっこい猫に餌付けしてる気分になるからだな。しかしこのちまっこい体の何処にキロ単位の食い物が入るんだろうな? しかもそんだけ食って縦にも横にも大きく…………
「ユウさん。何か失礼な事を考えてませんか」
「んや、気のせいだろ」
「…………そうですか」
おーおー怖い怖い、良い勘してるじゃねえか白猫。悪かったからそんなこえー顔すんなって。
「…………ところでまだ大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思ったから来たんだろ? ならソイツに応えてやんのが俺の仕事だ」
生憎今日はもう店仕舞いなんだ、なんて言うのも無粋だし、今日の実入りが良かった訳でもねえから客自体は大歓迎だからな。
内心でそう呟きながらも貴重なお得意様をもてなす為に、緩めていたエプロンを締め直した。
「そうですか…………ありがとうございます」
「ほら、いつまでも突っ立ってないで適当なとこに座んな。見ての通り店閉める所だったから碌なもん出せねえけど何かしら食わせてやっから」
つったものの、イチの字がサンドイッチをかなり食ってったもんだから食パンは心許ねえし、というかコイツだとまず足りねえ…………なら飯物か? 炊いた米はそこそこの量はあるが…………
「…………あ。そういやカレー作ってたな」
考え込む事数秒、今日の晩飯やら明日の朝飯にするつもりで作ってたカレーの存在を思い出した。結構な量は作ってるからコイツ相手でも満足させられんだろ。
「カレーですか? メニューには無いですよね?」
「カレーは鍋が痛みやすいから長期間鍋に入れたくねえんだよ。だからメニューにしてねえのさ」
「そうなんですか」
「まあなんだ。ユーイチ印のカレーライス、コーヒー付きで1杯税抜700円だ。今出せるマトモなもんはこれくらいだが、これで構わねえ「いただきます」……せめて最後まで言わせろよ」
はぁ、どんだけ腹減ってんだよ。食い気だけじゃなくて少しはレディーらしく慎みってもんを「また失礼な事考えてませんか」いやいや、事実は真っ直ぐ捉えようぜ白猫よ。食欲全開で飯を前に目ぇギラつかせてるのがレディーらしいってんなら良いんだがな?
「…………ユウさんは意地悪ですね」
まあな。実際これから出すのは俺の晩飯兼明日の朝飯なわけだからな。多少の文句くらいは勘弁しろ。
「ところで思考を読まれてるのには反応無しですか?」
「別に読まれた所で困る様なもんでもねえし、喋る手間が省けるなって程度だな」
むしろ口に出す手間が省けて楽で良いくらいだ。そこん所、お前さんはどう思うよ?
「…………ユウさんは変わってますね」
そいつはよく言われる。言われすぎて誰に言われたかなんて覚えちゃ居ないがな。
「隣、邪魔すんぞ」
そう断って隣の席にカレーを盛った皿と共に座ると白猫はジィーっとこちらを見つめてくる。
…………そのまま知らんフリしてても良いっちゃ良いんだが、あんまし見られてっと美味い飯も不味くなるな。
「なんか言いたげだな?」
「…………えっと、営業中じゃないんですか?」
「お前が食いだしたら俺が手ぇつける前に鍋ン中空にすんだろうが。せめて俺にも一食くらいは食わせろよ」
こっちだって作った飯を食いっぱぐれるのは面白くねえんだよ。それにもう店は閉めちまうつもりだったんだから何の問題もねえしな
「ほれ、そんなどうでもいい事よか目の前の皿に集中してろ。お前の腹を満たしきれるかは保証しねえけどな」
「…………そうですね。それじゃあユウさん、おかわりをお願いします」
「……………………厨房の中にある鍋と炊飯器から自分でよそえ」
毎度ながら、コイツは味わって食うって言葉を知らねえのか。そんながっつかなくても誰も取らねえってのにな。
手に持った皿に山盛りに盛って戻ってきた白猫を横目に、内心でそう呟いた俺は悪くない。
「それはそうと白猫。それ2人前分な」
「…………分かりました」
ったく、油断も隙もねえな。
ちなみに余談だが、俺が一杯食いきる前に鍋いっぱいに作っておいたカレーとまとめて炊いておいた5合にも及ぶ量の米はこのちまっこい高校生に根こそぎ食い尽くされた。いつもながらどんな胃袋してやがんだかな。
もうちっと食っときたかったんだが予想以上に早かった。俺もまだまだって事かね?
…………しゃーねえ、店閉めたら何か食いに出るか。嘆息混じりにそう呟いていると白猫がクイクイと袖を引っ張ってくる。何処で覚えたか知らねえが上目遣いとはあざといな?
「ユウさん。今日のカレー、また食べたいです」
「また今度な。とりあえず9杯分で6904円だ」
そう言われたからにはまた作んねえと。手間掛かるからメニューに載せねえのは譲らねえがな。
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見ているだけでも伝わってくる疲労感を漂わせ、憔悴しきった目を声を掛けてきた中年の男に向ける少年。声を掛けられた少年は訳がわからないといった様子で口を開く。
━━━━━誘拐?
━━━━━張っ倒すぞクソガキ。
そんな締まらないやり取りを経て、少年と男は出会った。
読んでいただきありがとうございます。