「実は、引っ越しをしまして」
そう言うと、大和は一枚の写真を出した。
そこには、「鈴蘭寮」と書かれた看板の横に大和が写っていた。
それを見て、声をあげたのは鳳翔だ。
「まあ」
「分かりますか? 鳳翔さん」
「どういうことだ?」
「ここ、私がこちらでお世話になる前に住んでいた寮です」
鳳翔がここに来る前に住んでいた場所。
「お前、寮に住んでいたのか」
「えぇ、ここは艦娘の自立を促す場所でもあるんです。でも、どうしてここに?」
「大和も自立しないとなぁと思いまして。それに、そろそろお相手を探さないといけませんし」
「相手を見つけるのと、ここに住むのにどういう関係があるんだ?」
「この寮に住んでいると、海軍からイベントの参加要請とかが受けられて、そこで出会いを見つける人もいるそうですよ」
「お前もそこに期待してるという訳か」
「そんなところです。大和の部屋は、前に鳳翔さんが使っていたところなんですよ」
「あそこは日当たりもいいから、良い部屋を貰えましたね。そう言えば、「提督」はお元気ですか?」
「ん?」
「あ、いや、提督じゃなくて……えーっと、寮の管理人の事です。「提督」って呼ばれてるんです」
「元気ですよ。怒ると怖いですけど、ちょっとカッコイイ方ですね」
「早速候補が見つかったと言う訳だ」
「まだまだですよ。それに、あの人は恋愛とか興味無さそうでしたし」
「確かに、周りが艦娘ばかりでも「提督」が動じたところ、見たことないですね」
「そういう人だから、艦娘ばかりの寮の管理人をやってられるんだろうな」
「確かにそうかもしれませんね」
しかし、艦娘ばかりの寮か。
響もいずれは自立するためにそこに入るのかもしれないのか……。
「それで、クリスマスの件ですけど、寮のみんなでパーティーするみたいなので、前に誘ってもらったのですが……」
「ああ、そっちの方を優先した方がいいだろう。こっちの事は気にするな」
「すみません……」
そう言うと、大和は響用のプレゼントを置いて、帰っていった。
「大和ちゃん、いい人が見つかればいいですね」
「そうだな」
俺を忘れるくらい、良い恋をして欲しい。
そう思った。
さて、クリスマスまであと数日と迫った今日。
俺は鳳翔と共に買い物に出かけていた。
響のプレゼントを買う為だ。
「響ちゃんのプレゼント、目星はついているんですか?」
「それが……ありすぎるんだよ」
響が欲しそうにしていたリストを鳳翔に渡す。
「おもちゃにゲーム、犬に猫にハムスター……それと、弟と妹と……その他色々……」
「どれが一番欲しいものなのか分からん……」
「確かに難しいですね」
「お前は分かっているんだろ? こっそり教えてくれ」
「うーん……なんて言えばいいんでしょうか……。物というか……生き物とかそう言うものじゃなくてですね……?」
「物じゃなくて生き物じゃなくて……。食べ物か?」
「そういうことじゃなくて……もっとこう……見えないモノです」
「見えないモノ……。見えないのにあげられるものなのか……」
こっちは真剣に悩んでいるのに、鳳翔は苦笑いをするばかりだった。
「とにかく、お店を回ってみましょう。提督がこれだと思うものでいいんですよ」
「うーん……」
しばらく店を見て回る。
クリスマスが近いという事もあってか、子供を連れて歩く親達は、サンタクロースに変身していた。
「こうして親の気持ちになって気づくが、親は子供の反応を見て、プレゼントを決めているんだな。目が必死だ」
「赤くないサンタさんがたくさんですね」
そう言うと、鳳翔は嬉しそうに笑った。
「ご機嫌だな」
「私たち、夫婦らしい事してるなぁと思いまして」
「もう夫婦なんだから、当然だろ」
「そうですけど、なんだかはしゃいじゃいます」
鳳翔は俺の手を取ると、そのままそっと寄り添った。
「はしゃぎ過ぎだ」
「夫婦らしい事、ですよ?」
「カップルならまだしも、夫婦はそんなにべったりしないだろ」
「……意地悪ですね」
そうムクれた顔が愛らしくて、思わず笑ってしまった。
「まあ、新婚って事で言えば、アリなのかもな」
握り返した手は、とても冷たかった。
「この手が温まるまで、離しちゃダメです」
「分かったよ」
少し困った顔をしたが、満更でもない自分がいた。
それを分かっているのか、鳳翔はそのまま寄り添って歩き出した。
「一通り見たな」
「どうですか? 決まりましたか?」
「候補はいくつか決めた。後はこの中から……」
そう言って顔をあげた時、見たことある奴が誰かと歩いていた。
あちらもこっちに気が付いたようで、手を振って近づいて来た。
「久しぶりだな。元気にしていたか?」
「そっちこそ、元気だったか?」
固い握手を交わす。
「提督?」
「ああ、すまない。こいつは海軍の同期で、提督としても活躍した奴で――」
そこまで言うと、同期の隣に居た女が鳳翔を見て驚いた顔をした。
「鳳翔さん!?」
「あら、大井さん」
大井。
「大井って、あの雷巡の大井か?」
何度か見かけたことはある。
しかし、随分と雰囲気が変わっていて気が付かなかった。
「そちらがお話ししていた提督さんですか?」
「え、えぇ……」
そう言えば鳳翔から聞いていた。
大井が提督を好きで、相談に来ていたと。
そして、この前付き合うことが出来たんだと。
「なるほど。その提督がお前だったのか」
ふと大井の方を見ると、なんだか分の悪そうな顔をしていた。
「わ、私たち急いでるのよね? ほ、ほら、行くわよ! 全く……だから遠出にしようって言ったのに……!」
そう言って、同期の手を引いてどこかへ行ってしまった。
「大井さん、恥ずかしかったのかもしれませんね。知り合いに、デレデレしている自分の姿、見られたくないでしょうから」
あの大井がデレデレ……。
俺の同期を何人も泣かせたあの大井がか……。
「恋と言うものは恐ろしいものだな……」
「?」
それから一時間ほど悩んだ末、響のプレゼントを決め、購入した。
「喜んでくれるといいが……」
「大丈夫ですよ。一生懸命選んだのですから」
そうは言っても、あいつの欲しいものじゃなかったらという不安があった。
コレジャナイとか、微妙な顔をされたら、とてもショックだ。
「相手は響ちゃんですから。私のような、小さいころに我が儘だった子供とは違いますし」
「今も時々我が儘だがな……」
「何か言いましたか?」
「いや……」
「懐かしいなぁ……。一度だけ、両親を困らせたことがあるんです」
そう言うと、鳳翔は思いだすように目を閉じて語りだした。
…………あれは、クリスマスの事でした。
…………「はい、クリスマスプレゼントよ」
…………私はとても欲しいものがあって、それを期待していたんです。
…………でも……。
…………「…………」
…………「どうしたの?」
…………「これじゃない……」
…………「え?」
…………「私が欲しいの……これじゃない!」
…………好きなキャラクターの玩具、それが私の欲しかったもの。
…………でも、渡されたのは違うキャラクターの玩具で……。
…………今思えば、知らないと間違えてしまうかもしれません。
…………「でも、これも可愛いじゃない」
…………「違うもん! こんなのいらない!」
…………そう騒いでいると、父が出て来て……。
…………「どうしたんだ……?」
…………「あなた……。クリスマスプレゼント……欲しかったのと違ったらしくて……」
…………「これじゃないもん! 私が欲しかったのは――の玩具だもん!」
…………「どうしましょう……」
…………「――……放っておけ。そんなにそれが欲しいなら、自分で買うんだな」
…………そう言って、父はどこかへ出かけてしまいました。
…………そんな父の態度に、私は怒りと悲しみでずーっと泣いてました。
…………「うわぁぁぁぁん!」
…………「ごめんね……」
…………そうこうしてる内に泣き疲れて寝ちゃって、目が覚めた頃には空はすっかり暗くなっていました。
…………「お腹空いたでしょう? 夕飯にしましょう」
…………母は気を遣ってくれたのか、私の好物ばかり作ってくれていました。
…………「……お父さんは?」
…………「帰りが遅くなるって電話があったわ。先に食べてましょう」
…………その夜、父は帰って来ませんでした。
…………「先に寝ちゃいましょうね」
…………もうプレゼントの事はどうでも良くなっていて、何故父が帰ってこないのかだけが心配でした。
…………私が我が儘を言ったから、嫌になって帰ってこないのかなって思ったりもしましたね。
…………でも、朝起きる頃には帰ってきていて、布団で寝ていました。
…………「おはようお母さん」
…………「おはよう。ちょっとこっちに来なさい」
…………そう言うと、母は私が欲しかった玩具を渡しました。
…………「これ! 私が欲しかったのだ!」
…………「良かったわね」
…………「ありがとうお母さん!」
…………「お礼なら、お父さんに言いなさい」
…………「え?」
…………「お父さんね、昨日車で遠くまで行って、その玩具を探して回ったのよ。中々見つからなくて大変だったみたいだけど」
…………その当時、私が欲しかった玩具はとても人気で、どこも品切れだったんです。
…………ましてやクリスマス。
…………見つけるのも大変だったでしょうね。
…………「昨日のプレゼント、お父さんが選んだものなのよ。だから、悪い事をしたと思ったんでしょうね」
…………それを聞いて、子供ながらに申し訳ないことをしたと思いました。
…………「お父さんにありがとうしなさい。ね」
…………「うん……」
…………父の部屋に行くと、既に起きていて、畑仕事に行く準備をしていました。
…………「お父さん……」
…………「なんだ……?」
…………「プレゼント……ありがとう……。あと……ごめんなさい……」
…………父は何も言いませんでした。
…………「玩具、大切にするね。昨日貰った玩具も大切にするね」
…………「……そうか」
…………父はそうとだけ言って、畑仕事に出かけていきました。
「親父さん、やっぱり不器用な人だな」
「でも、気持ちは伝わりました。響ちゃんは私のように我が儘じゃないし、提督の気持ちも分かってますから、きっと喜んでくれると思いますよ」
「気持ちか……」
確かに我が儘を言ったりはしないだろうが、それでもやっぱり欲しい物じゃなかったら……。
そんな不安を残したまま、クリスマスを迎えた。
「よっと……」
響は昼間、暁の家でクリスマスパーティーをやるそうで、出かけていた。
その間に鳳翔は料理の準備、俺はクリスマス仕様に居間を飾っていた。
「こうしていると、鎮守府のクリスマスを思い出すな」
「そうですね。駆逐艦達の楽しそうな顔を思い出します」
俺はどちらかと言うと、酒飲み組に絡まれて大変な思いをした事の方を思い出していた。
「あ、そうだ。提督」
「なんだ?」
鳳翔は、何やらプレゼントらしき包みを俺に渡した。
「私からのクリスマスプレゼントです」
中にはマフラーが入っていた。
「手編みですよ」
「ありがとう、鳳翔」
これはありがたい。
しかし……。
「提督?」
「実はな……」
俺も鳳翔にプレゼントがあった。
同じ、マフラーだ。
「市販のやつなんだ……すまん……」
「い、いえ! ありがとうございます! 大切にしますね」
そう言うと、鳳翔は俺の渡したマフラーを首に巻いた。
「似合ってますか?」
「ああ、とても」
鳳翔は鏡の前で何回かポーズを取った。
「お出かけするのが楽しみになっちゃいます」
そう言うと、鳳翔は時計をちらっと見た。
「まだ時間がありますね」
じっと俺の方を見る。
何かを訴えているかのように。
「二人だけのクリスマス……ちょっとだけでいいから……経験したいなぁ……。近くの公園を散歩するくらいでいいんだけどなぁ……」
……なるほど。
「いつもみたいに我が儘言えばよかろうに」
「だって、響ちゃんのプレゼント買った時、私の事我が儘だって言うものですから」
聞こえていたのか。
「私を我が儘にしたくないなら、察してくださいね」
「余計にタチが悪い……」
そう言ってやると、鳳翔は悪戯に笑った。
「それで、どうなんです?」
「分かったよ。俺もこのマフラー、使いたかったしな」
「準備してきます」
二人でいる時の鳳翔は、まるで子供のようだ。
あいつのあんな姿を他の奴が見たら、驚くかな。
外はマフラーがいらないくらいの温かさであった。
それでも、俺たちがそれを外すことは無かった。
「今年ももう終わりですね……」
「そうだな」
「提督と住み始めて……結婚して……。そんな事がここ数か月の間に起きて……」
「激動の一年だな」
「こんなに幸せな一年が終わると考えると……なんだか寂しくなっちゃいます……」
鳳翔はそっと俺の手を握った。
「来年は……今年以上に幸せになれるのか不安です……」
「幸せじゃないから不幸という訳ではなかろう」
「そうですけど……」
「俺はお前たちと居れるだけで幸せだと思えるがな」
「提督……」
「当たり前のことかもしれないが、当たり前の事が当たり前のようにあるって言うのは、本当は幸せなことなんじゃないか?」
「……そうですね。そうかもしれません」
「もしかしたら、響に嫌われるかもしれないし、お前が実家に帰ってしまうかもしれないしな」
「それは提督次第ですね。浮気とか浮気とか、浮気とか……」
「するように見えるか?」
「どうでしょう? この前だって、翔鶴さんをいやらしい目で……」
「そんな事は……」
そう話していると、向かいから瑞鶴と翔鶴が歩いて来た。
「噂をすれば」
「提督さん、鳳翔さん。こんにちは」
瑞鶴も翔鶴も、サンタの格好をしている。
「にひひ、似合ってる? 実は、サンタの格好をすればサービスしてくれるお店がたくさんあるんだよ」
「ほう」
「お二人とも、とてもお似合いですよ」
翔鶴の方を見ると、少し恥ずかしそうにしていた。
「瑞鶴、あまり翔鶴をイジメるな」
「い、イジメてないよ! 翔鶴姉から言い出したんだよ?」
「その割には恥ずかしそうだが……」
そう言うと、翔鶴は顔を赤くした。
「ほら」
「違うよ提督さん。翔鶴姉は提督さんに――」
「ず、瑞鶴!」
「俺に……なんだ?」
「な、何でもありません! ほら、行くわよ瑞鶴!」
「照れちゃってー。じゃあね。提督さん、鳳翔さん」
「あ、あぁ……」
逃げるように去っていく翔鶴を瑞鶴が追って、曲がり角で見えなくなった。
「いつも忙しないな、あいつら」
「提督、翔鶴さんは提督の事を異性として意識してるんですよ」
「え!?」
俺の反応を見て、鳳翔はムッとした。
「何ですかその反応は……」
「何って……」
「なんだか嬉しそうです……」
「……やけに突っかかってくるじゃないか」
「別に……」
「瑞鶴だって同じことなのに、翔鶴の事となるとやけにうるさいな」
「どうでしょう……」
「……もしかして、まだ気にしてるのか? 翔鶴と比べてお前の……」
「別に胸の大きさの事なんて……」
「まだ何も言ってないぞ」
「……怒りますよ?」
「勝手に怒って理不尽だぞ。俺は翔鶴がどうこうなんて一言も言ってないだろ」
「分かってます……。分かってますけど……気になっちゃって……。ごめんなさい……」
不貞腐れたような謝罪。
鎮守府に居た時も似たような奴がいたな。
勝手に嫉妬して機嫌が悪くなる奴。
「夫婦になったって言うのに、まだ愛情が足りないのか?」
「夫婦になったからです……。さっきの話……当たり前の事が当たり前のように存在している事が幸せとは言いましたが……やっぱり、特別な事が幸せだという事だってありますし……」
「要するに、もっと特別扱いしろといいたいのか?」
「私の口からは言いません……」
「面倒くさい奴だな……」
だが鳳翔は、戦時中もそうだが、ずーっと色んなことを我慢して来たんだ。
響の前では甘えられないし、皆の前では我が儘を言えない。
むしろ聞く側だったんだ。
俺とこういう関係になって、やっと自分の我が儘を言えるようになった。
俺だけに。
俺だけにしか、こいつは甘えられないんだ。
だったら――。
「…………」
「……我が儘だとは言ったけれど、我が儘を言うなとは言ってないだろ」
「!」
「もっともっと我が儘を言え。俺だけがお前の我が儘を聞いてやれるんだから」
そう言って鳳翔の方を見ると、そこにムッとした顔は無かった。
「他の誰かに我が儘言えるか?」
「……言えません」
「俺には言える。そうだろ?」
「……はい」
「お前の我が儘を聞ける俺は特別扱いされてるし、それをどんなことでも叶えて貰えるお前も特別扱いされてるだろ」
「どんなことでも……?」
「どんなことでもだ。他の奴にはさせない事でも、お前のなら叶えてやる」
「じゃあ……ここで裸になってください」
「はぁ!?」
「どんなことでも叶えてくれるんですよね?」
鳳翔はニヤリと笑った。
こいつ……。
「……よし、分かった!」
上着を脱ぐ。
シャツを脱ごうとしたところで、鳳翔が止めた。
「じょ、冗談ですよ!」
「少しは信じてくれたか?」
鳳翔は少し驚いた後、らしからぬ言葉を零した。
「提督は馬鹿です」
「そんな馬鹿の妻だろ。お前は」
「えぇ、そうです。馬鹿夫婦ですね」
鳳翔が笑う。
「何だか馬鹿らしくなっちゃいました。どうして翔鶴さんに嫉妬したんでしょう? こんなにも愛されているのに」
「それだけ我が儘言えるようになった反発が大きいんだろ? 抑えれば抑えるほど、その反発はデカいからな」
「なら、小出しに」
そう言うと、俺の腕に寄り添った。
「これからは、ちゃんと我が儘言います。だから、叶えてくださいね、提督」
「任せておけ」
すれ違った若者が、めんどくさそうに俺たちをチラッと見た。
ああ、分かってるよ。
俺たちは馬鹿夫婦だ。
世間に馬鹿夫婦っぷりを披露し、家に帰るころには「何やってるんだろ私たち……」みたいな空気が流れていた。
そんな空気を変えたのは響だった。
「ほっほっほ、お帰り二人とも」
サンタの格好をした響が居間に居た。
立派な白髭が、しゃべる度にゆらゆらと揺れた。
「どうしたんだその格好」
「プレゼント交換で当たったんだ」
「誰がそんなものを……」
だが、響は嬉しかったのか、ご機嫌だった。
そんなもので機嫌が取れるなんて、あんなにプレゼントに悩んだ俺の苦労を返してくれ……。
「司令官、プレゼントは?」
「サンタがプレゼントをもらうのか?」
「サンタだってたまにはもらう側になりたいはずだよ」
確かに。
鳳翔もそうだったしな。
「ほら、これだ」
「一生懸命選んだ?」
「選んだよ。胃が痛くなる程悩んだのだぞ」
響はチラッと鳳翔を見た。
「えぇ、凄く悩んでいたわ。欲しい物であろうリストまで作ってたんだから」
それを聞いて、響は白髭を外した。
「司令官、ありがとう。これ、とても欲しかったんだ」
「開けても無いのに中身が分かるのか?」
「中身なんて何でもいいんだ。司令官が一生懸命選んでくれたって言うことが、私にとって一番のプレゼントだよ」
そう言うと、響はニコッと笑った。
「響……」
「そう言う事ですよ、提督」
「なるほどな……。見えないモノ……か……」
「ところで、中身は何なんだい?」
「ナスだよ」
そう言ってやると、響の顔が引き攣った。
「な……なるほどね……。あ、ありがとう……司令官……」
それを見て、俺と鳳翔は大いに笑った。
「嘘だよ嘘。お前の気持ちは凄く嬉しいよ。だが、我が儘言える時はちゃんと我が儘を言え。じゃないと、本当にナスになるかもしれんぞ」
「べ、別に私はナスでも……」
「無理すんな。無理したっていい事ないぞ。なあ、鳳翔?」
「そうですね」
「分かったよ司令官。じゃあ、お年玉の時はうんと我が儘言わせてもらうね」
「お、おう……。分かった……任せておけ……」
今度は俺の引き攣った顔を見て、響と鳳翔が笑った。
「我が儘もほどほどが一番だよ、司令官」
これには鳳翔も顔を赤くしていた。
「小出しに、だな」
そう言って、鳳翔に一瞥くれてやると、更に顔を赤くした。
「さ、さて。そろそろお料理を出しましょうね」
鳳翔は台所へ逃げていった。
「司令官」
響は俺を小声で呼んで、手招きをした。
「なんだ?」
「私からもプレゼント」
そう言って、俺の頬にキスをした。
「メリークリスマス、司令官。えへへ」
悪戯に笑って、鳳翔の方へと去っていった。
「見えないモノ、か」
嬉しさと同時に、響が大人になるのを感じて、少しだけ寂しくなった。
――続く。