Plains Walker -次元世界遊歩道中-   作:sasandra

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またもや説明回。思ったより進みが遅いなあ。


016:浄化の儀式と災厄の流星 その5

 隊長に急かされ、ヴァンを援護に回そうとするが、全方向から《魔物》が攻め寄せていて、どこに回せばいいのかすぐには判断がつきかねた。ラルフさんが天使を切り捨てる時には、狼や人のような《魔物》が見えたが、それ以外にも目を疑うような多種多様な《魔物》が広場に押し寄せていた。ここは落ち着いて状況を把握するのが優先すべきことだろう。

 最初の《魔物》は、教会を真正面にとらえる方向からやってきたようだ。いまは、教会を背後に控える俺の左手から右手にかけて騎士達が立ちはだかって、《魔物》の侵入を防いでいた。右手には、一度横目で垣間見た、赤い体毛をした狼がいた。 大きさは【番狼】を少し大きくしたくらいであり、【番狼】と比べると、よくRPGで見るカラーリングが変わった雑魚敵の【番狼】バージョン、というような印象を受ける。赤い狼は一匹だけだったが、俊敏に騎士達と間を取って、致命的な一撃を受けないようにうまく攻撃をかわしている。

 少し左手に離れた、教会から真正面にあたる位置には、一人の体の大きい女性が、複数人の騎士に取り囲まれていた。白い布の薄着に身を包んでいて、惜しげもなくその豊満な肢体をさらしている。右手には若干湾曲した剣を持ち、反対側には胴を隠せるほどの盾を装備していて、軽快な動きが得意そうな戦士に見える。 頭の装飾品や肩当てには赤や緑の明るい色をした石がちりばめられていて、どこぞの民族衣装を身につけているように感じた。この女性を取り囲む騎士達は、相手に圧倒されているのか、負傷している騎士が多い。あまり悠長に眺めているわけにはいかないだろう。

 その隣、教会から見て左手前方には、人の像を模した石の塊が騎士達に襲いかかっていた。人の四肢に相当する石と、頭と接合した胴にあたる石が宙に浮いている。ドミトリの《守護者》のように関節部分には何も存在しない空間が占めているが、各部分は連結しているかのように連動して動いている。だが、下半身に関しては、下にいくほど形が失われていて、足にあたる部分などは石のつぶてが多数ばらばらと浮いているだけであった。反対に上の部分は頭に近づくほど精巧に作られており、指は五指がはっきりと形作られていた。顔に至っては、誰かの顔の型を取ってきて石膏で固めたか思ってしまう程、本物の人間の顔と相違ないほどに作りこまれている。目や口を閉ざした無表情な石像が、人間に襲いかかっている様は違和感を感じさせる不気味な光景であった。

 首を大きく右に向けてみれば、何やら細くしなやかな体躯をした恐竜のような見慣れない《魔物》が存在していた。《恐竜》とは言ったが、その大きさは人間を少し大きくしたくらいであり、後ろ足2本で立つ姿からは、ティラノサウルスのような肉食の恐竜に属する生物のように見える。しかし、動く様子を見れば、恐竜らしいというよりかは、むしろ人間に近い生物なのではないかと疑ってしまうような《魔物》だった。そう思わせる要因の中で最たるものは、その《魔物》は衣服らしきものを身に付けていて、さらに手に槍が握られている点である。前のめりの姿勢で扱いにくいかと思いきや、かなり手慣れた様子である。図鑑で恐竜が絶滅していなかったら人間のように進化するだろうというコラムを見たことがあるが、あの《魔物》はその頁に載っていた恐竜をそのまま現実にひっぱりだしてきたかのようだった。

 トカゲ人間型の《魔物》がいる反対側を振り返って見てみれば、馬が大きく前足を振り上げて、騎士達を威嚇しているのが目に入った。不思議なのが、馬の頭にあたるところが上に伸びているところか。だが、ちらりとその先を追ったとたんに驚きの声を漏らしてしまった。

 

「んなっ……んだ、アレ?」

 

 やけに首が長いと思ってたら、馬の頭にあたる部分には人間の上半身が生えていた。人間の上半身に、馬の胴体。記憶を探るとすぐに該当する存在を思い出した。もしかして、ケンタウルスっていうやつなのだろうか。そのケンタウルスは全体的に緑がかった体躯をしていて、人間にあたる部分の腕には、鞭のように使われそうな武器を持っている。先端に球形のものがじゃらじゃらとりつけられており、降り下ろされたらとても痛そうだ。頭髪や長く伸びたもじゃもじゃな髭も濃い緑に染まっていて、白目をむいた厳つい顔つきで騎士たちを睥睨している。胴体から上だけを見れば騎士達を激しくしかりつけている偉そうなオッサンに見える。しかし、下半身とのギャップが激しすぎて、馬の部分を再び目にいれると、そのような印象にさえ違和感を禁じ得なかった。

 

「あなた、何ボーッとしてるの」

 

 ニーナさんに声をかけられて、俺は《魔物》の姿に見入っていたのに気づいた。少し前まで近くにいた、ラルフさんやニーナさんは迎撃の援護に散ってしまっていた。アルバート隊長ですら、広場真正面から襲ってきた《魔物》に対する後詰めに少し前にでてしまっていて、ドミトリだけが結界のそばに控えている。隊長の背を追った時に、はからずもこちらを振り返った隊長と目があった。彼は何も言いはしなかったが、ギロリとにらまれてしまった。言わんとしていることは嫌すぎるほどに伝わってくる。今ならナエさんの慌てぶりも理解できる。

 

「主……」

 

 ヴァンは律儀に俺の指令を待ってくれている。今はなんとか《魔物》と騎士達の膠着状態が続いているが、楽観的な考えは捨てた方がいいだろう。まだ《魔物》の方に増援が来ないとも限らない。そう考えると、ヴァンはなるべく温存しといた方が無難だろう。ただでさえ、呪文やマナを欠いている今、呪文ひとつ唱えることの重要性が高まっている。特に、今は一度に扱えるマナの数の関係上、一度呪文を唱えてしまったら、マナが回復するまでの間、何もできなくなってしまう。せめてもう1つ、余分にマナが使えたら、今は飼い殺しするはめになってる呪文を、使うことができるのに……

思わず握る拳に力が入ってしまっていたが、落ち着いて何の呪文を行使するか思考する。現状、唯一の戦力であるヴァンを温存させるように、という条件がつくと、自然に使うべき候補はしぼられてくる。既に【蜘蛛の陰影】は使ってしまったから……

使う呪文を決めると、意識を内に向け、《声》から目的のものをひっぱりだす。初めはこの感覚に戸惑ったものだが、もはや息をするように自然なものとして慣れてしまった。

 

「【天上の鎧】」

 

リンクを通じて平地から白マナを呼び寄せる。【蜘蛛の陰影】のときのように、呪文による変化はヴァン自身に現れた。にわかに白いオーラがヴァンの胴体を包んだ後、白い線が何かの形をヴァンを覆うように描き始めた。それは、俺がいる結界が張られるときと様子が酷似していた。もっとも、線が形作ろうとしているものは、今の方が規模が小さく、より詳細で複雑であった。やがて、白い線によって現実に現れたのは鎧であった。ヴァンは既に、相当に使いこまれているであろう、年期の入った鎧を着てはいたが、呪文によって作られた鎧は、それをさらに覆う形でヴァンに装備されている。全体的に白みがかった白濁色をしていて、時たま半透明になったり、濁ったりして、靄のように色がうつろいでいる。鎧の縁は、CGのワイヤーフレームのように白い直線で構成されており、その鎧がこの世ならざるものでできていることを伺わせた。ヴァンは呪文の効力を確かめるように、白い鎧の感触を手で確かめたり、腕を回したりして確認をしている。

 

「ふむ。さきの呪文と変わらず、見事な仕上がり」

 

ヴァンの様子を見るに、白く輝く鎧が動きを阻害しているようなことはなさそうだ。むしろ、呪文をかける前後で動きは変わっていないようにさえ思えた。無事に呪文が効力を発揮していることに安心していると、広場のすみから大きな声が上がった。何事かと、広場右手の方を見ると、なにやら小柄な体躯をした青い姿が、騎士達の間を抜けてこちらに迫ってくる。

 

「気を付けろ、一匹抜けた。早いぞ!」

 

ある騎士から警告が飛ぶ。そいつはまるで雪山でスノーボードをやっているかのように、広場の上を滑って侵入を果たしてきた。スノーボードのような細長い板切れに乗っかって姿勢を保っている様は、見る誰もがスノーボーダーのようだと言われれば納得するだろう。ただ、背丈が大人より一回り小さい点を除外すれば、という断りは入るであろうが……

 その《魔物》はちょうど、小学生くらいの体躯をしていて、全体的に真っ青な体躯をしている。だが、小振りな姿には不釣り合いなほどに醜悪な顔つきをしていた。口からは汚ならしい歯が不並びにのぞき、しわしわだらけの顔の両端から、これまたしわだらけの大きく尖った耳がつきでている。にやついた表情からは、板に乗って滑っている事が楽しいのか、それとも騎士達の包囲を抜いて、獲物に襲いかかれることを喜んでいるのかはわからなかった。不思議なことに、《魔物》が乗っている板からは雪の奔流が発生して、板そのものを前へと押しやっているかのようだ。このスピードならほどなくこちらに達してしまうだろう。

 無言でそばに佇んでいたドミトリと鎧モドキが前へ出ようとするが、何者かに制されたのかすぐに立ち止まった。ドミトリは何かを言おうとして、一瞬こちらを見たが、俺がうなずくと、また元の位置に控えた。様子をうかがうつもりのようだ。

 そのドミトリを手で制した当人であるヴァンは、抜刀しつつも既に青い姿をした醜悪な青い子供の《魔物》に向けて走り出していた。《魔物》は変わらず高い速度を維持したまま、ヴァンへ一直線に向かってくる。ヴァンと青い《魔物》が交差する瞬間、ヴァンが姿勢を低くしてさらに加速した。不思議なことに、その瞬間から《魔物》の動きが緩慢になった。いや、何故かはわからないが、ヴァンの動きだけが普通通りで、急に周りの存在すべての動きがスローモーションになったように感じた。ヴァンは剣をまるで鈍器のように、青い《魔物》に思い切り叩きつけた。《魔物》は力強いその攻撃に抵抗することはできず、小さな体はされるがままに地面にたたきつけられた。板切れは《魔物》が離れた瞬間から雪の噴出が止まり、当初の勢いのまま、地面を転がって結界の台座にぶつかって粉々に砕けちった。

 

「今のは……一体? あの《守護者》の動きが、一瞬だけ急に早くなったような……」

 

後ろのニーナさんから疑問が漏れているが、当然、俺にはヴァンの先ほどの不自然な動きについて、心当たりがあった。だが、今は説明しているより一気に畳み掛けた方がよさそうな状況だ。いとも簡単に驚異をはねのけたヴァンは、騎士達の注意を集めるだけにとどまらず、槍を持ったトカゲ人間に警戒感を植え付けたようだった。無防備な騎士に攻撃がいってしまっては今の包囲など軽く崩れさってしまうだろう。

 

青い《魔物》が黒い泡に覆われつつあるのを一瞥し、トカゲ人間に指をさし、ヴァンに突撃を下す。

 

「ヴァン。そいつも一気にやっちまえ」

「御意」

 

ヴァンは俺の命令に阿吽の呼吸のように答え、弓から放たれた矢のように一直線にトカゲ人間へ向かって飛び出した。やつとの距離はそれなりに離れていたが、間髪いれず、次の行動に移れたおかげか、トカゲ人間の注意をヴァンに固定させることができたようだ。しかし、反対に騎士達は状況に追い付けていないようで、事の推移にも関わらず、ポカンと棒立ちになってしまっている。トカゲ人間は「ギャアス」と、空を飛んでいたドラゴンとは比べて、だいぶ小さな鳴き声を出すと、騎士達の間を抜けてヴァンに接近する。手に槍をかまえ、ゆったりと、だが確実に大地を踏みしめて歩を進め、着実に獲物を迎えようとしているようだった。その動きからは「俺は簡単には倒せないぞ」と堂々と主張しているかのようだった。

 

「何ボーッとしてるの!」

 

先ほど俺に浴びせられた言葉が、同じくニーナさんからの口から発せられる。しかし今回はトカゲ人間を迎撃していた騎士達に向けられた言葉だった。騎士達が茫然としていたことに気づいたときには、トカゲ人間は既に広場の中ほどに侵入を果たしており、騎士たちが手を届かせるには不可能な位置にいた。《魔物》の前を遮るのは最早ヴァンのみである。ドミトリが控えてはいるものの、彼は明らかに後衛向きであり、彼だけを頼みにするのはいささか不安が残る。何がなんでもヴァンにトカゲ人間を倒してもらわねばならない状況になってしまった。だが、俺にはヴァンが勝つであろうという勝算があった。結界の中にいる人達から、迫る《魔物》に怯えて悲鳴が上がるが、その時は不思議と悲鳴を聞いても、俺の自信は揺らぐことがなかった。

 ヴァンは当初の勢いのまま、トカゲ人間に向かう。トカゲ人間は槍を構えて迎えうつ姿勢をとった。ヴァンは剣を持っているのに対して、トカゲ人間は槍を持っている。普通に考えればリーチに優れる槍が有利だろう。当然ながらトカゲ人間もリーチを生かすべく、ヴァンが槍の間合いに入る瞬間を狙って攻撃しようとしたが――その時、青い《魔物》を倒した時と同じような現象がヴァンに起きた。

 

「なっ」

 

 ザーナ司祭の驚きの声をあげる。俺も声こそ出さなかったものの、その光景を目にしたときは少なからず驚いた。ヴァンはまばたきする瞬間に、トカゲ人間に肉薄していたのだ。先ほど、間違いなくヴァンは槍の間合いの境界線上、少なくとも目算でもトカゲ人間の持つ槍が届くギリギリの位置にはいたはずだった。それが、一瞬の間にトカゲ人間の懐に飛び込んだのだ。トカゲ人間はヴァンの瞬間移動じみた接近に完全に不意をつかれた。最早、遠距離の敵を突こうとする体の動きは止められず、ヴァンが自身に向かって振るう剣の軌道を目で追うのが精一杯のようだった。

 ヴァンはトカゲ人間が突こうとしている腕を掻い潜って、目の前を追い払うように剣を振るった。その勢いのまま、トカゲ人間とすれ違い、急ブレーキをかけた。

「ズザザザァ」と地面とブーツがこすれる音が響く。彼は器用に振り向いて急制動をして、トカゲ人間を警戒しつつも、何があっても即応に対応できるように中腰の体勢をしている。しかし、その心配は杞憂だったようだ。

 トカゲ人間は細長く伸びた首の根本から胴体、下半身にかけて大きく切り裂かれていた。ヴァンの勢いが完全に殺され、静止するころには、トカゲ人間は、地面に倒れ付していた。黒い泡がトカゲ人間を包みつつあるので、完全に倒し切れたと判断していいだろう。

 

「今度はいったい何なの? もしかして、あの白い鎧が関係してるのかしら」

 

振り返ると、ニーナさんが詰め寄らんとばかりに俺に疑問を飛ばしてくる。さすがに、ヴァンを空に飛ばすのを見ているだけに、今回のことも俺が唱えた呪文が関係していると予想しているのだろう。

 

「ま、そんなところです」

 

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Ethereal Armor / 天上の鎧 (白)

エンチャント — オーラ(Aura)

 

エンチャント(クリーチャー)

エンチャントされているクリーチャーは、あなたがコントロールするエンチャント1つにつき+1/+1の修整を受けるとともに、先制攻撃を持つ。

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 【天上の鎧】の効果は【蜘蛛の陰影】と同様に、呪文をかけたクリーチャーのパワーアップである。さらに【蜘蛛の陰影】と同じく、特殊能力をクリーチャーに与えうる点でも同じであり、【蜘蛛の陰影】と同列の呪文に相当するだろう。【蜘蛛の陰影】と異なる点は、クリーチャーに与える特殊能力が『先制攻撃』であるという点だ。『先制攻撃』とは『飛行』と同じく、クリーチャー同士の戦いに影響を与える特殊能力である。その効果は、文字通り「先制して相手にダメージを与えることができる」という効果だ。ここで重要なのは「先制できる」という点である。通常、クリーチャー同士の戦いは、一方が他方に自分のパワー分だけのダメージを与え、相手から、相手のパワー分だけのダメージを受けるというように扱うのだが、これらのダメージは自分と相手、双方同時のタイミングで処理される。ダメージが処理された結果、クリーチャーの戦いの勝敗が決するのだ。戦ったクリーチャー同士のパワーが相手を殺しきれない場合は、【巨大化】したグレーとエンチャントされた【番狼】が戦ったときのように、引き分けで終わる。(もっとも、グレーと【番狼】の戦いは俺が介入して、グレーの勝利に終わったが……) また、双方ともに相手を殺すに足るパワーを持っている場合、共倒れで終わる場合もある。

 さて、『先制攻撃』を持つクリーチャーは、このダメージ処理タイミングに変化が生じる。ここまでの説明を聞いた人間ならば予測できるかもしれないが、『先制攻撃』を持つクリーチャーは、自身のパワー分のダメージを、相手に先んじて与えることができる。そして、ダメージが処理された結果、相手に与えたダメージが相手を殺し切るに十分であるならば、相手クリーチャーから手出しされる前に相手を倒すことができるのだ。この効果は、例えるならば、徒手空拳で戦うはずだった二者の一方に、銃器を与えて戦わせることに等しい。こうなった場合の戦いの結果は言うまでもないだろう。『先制攻撃』を持つクリーチャーは相手からの反撃のリスクを負わずに、一方的に相手を倒すことができるのだ。この利点は、パワーに優れるがタフネスが少ない打たれ弱いクリーチャーだとより有効的だ。この能力を持っていれば、通常、相手と相打ってすぐに『場』(戦場)から去ってしまうクリーチャーの生存率を格段に引き上げることができる。

 だが、『先制攻撃』にも穴は存在する。相手クリーチャーも『先制攻撃』を持っていた場合は、ダメージ処理は通常通りに扱われるし、自身のパワーが相手のタフネスを上回っていない場合、最終的に自分もダメージを負う点は通常の戦闘と変わらない。いくら自分が銃を持っていようが、相手も銃を持っていたり、相手が鉄の装甲を持つ戦車だった場合は、銃のアドバンテージも無いに等しいことと同じである。

 

 先ほどのヴァンの戦い方を振り返ると、この『先制攻撃』はちゃんと効果を発揮していたといえるだろう。【蜘蛛の陰影】と同じように、あんなテレポート能力じみた形で発現するとは全く想像していなかったが、過程はどうあれ、結果だけを見れば、相手を一方的に倒したという見方ができる。

 1体目の青いスノーボーダーの《魔物》はおそらく『ゴブリン』や『モグ』に相当するクリーチャーだったのかもしれない。『ゴブリン』は説明も必要ないくらい有名なモンスターであろうし、『モグ』はマジックでは『ゴブリン』と同じように醜悪で矮小なモンスターとして扱われている。双方とも素の能力ではパワーやタフネスが1点や2点がせいぜいのところだ。【天上の鎧】がエンチャントされたヴァンのパワー、タフネスは3/2である。ゴブリンやモグなど、エンチャントしたヴァンの敵ではない。(今後はパワー、タフネスを『X/X』のように『/』で区切って表現する)

 2体目のトカゲ人間のような《魔物》は心当たりがあった。もしかしたら【ヴィーアシーノの戦士】というクリーチャーであったのかもしれない。

 

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Viashino Warrior / ヴィーアシーノの戦士 (3)(赤)

クリーチャー — ヴィーアシーノ(Viashino) 戦士(Warrior)

4/2

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【ヴィーアシーノの戦士】は攻撃力に特化した、いわゆる『頭でっかち』なクリーチャーの代表例ともいえる。(何故か『赤』にはこのような『頭でっかち』クリーチャーが多い)

【ヴィーアシーノの戦士】は特殊能力を何も持たない『バニラ』クリーチャーでもある。もし、ヴァンが何もエンチャントされない状態で、このクリーチャーと戦った場合、

 

4/2 VS 2/1 (ヴィーアシーノの戦士 VS ヴァン(先兵の精鋭))

 

となり、お互いに相手を倒し切る十分なダメージを与えて、相打ちに終わっていただろう。しかし、現実は【天上の鎧】によって『先制攻撃』を得たヴァンが一方的にダメージを与え、ヴァンが生き残る結果となった。この戦いはまさに『先制攻撃』の面目躍如といった所だろう。

 

「ふーん…… そんな能力が、あの鎧には……」

「ワタル殿の呪文は効いたこともないものばかりですな」

 

ニーナさんやザーナ司祭に簡単に説明したが、【蜘蛛の陰影】を唱えたときと同じような反応だ。もっとも、さすがに今ので2発目なので、1発目よりかは衝撃は和らいでいるようだ。

 

「…………」

 

ドミトリは結界の外で無言で佇んでいたが、澄ました態度を取り繕いながらも、こちらの話を食い入るように聞いているのがバレバレであった。

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