Plains Walker -次元世界遊歩道中- 作:sasandra
一撃。巨大な熊が振り下ろした攻撃は地面に陥没を穿つほどの威力だった。土砂が舞い上がりって土煙がおこり、小石がパラパラ落ちる。しばらく、誰も動こうともしなかった。やがて、グレーがのっそりと黒くて太い手をどける。土煙もおさまり始めたようだ。狼がどうなったか見極めようとして目をこらす。いくらなんでも、あの攻撃を受けて生きているとは思い難いが……
「何もない……」
ひび割れたクレーターの中心には、影も形も見られなかった。狼は押し潰された筈なのに、血しぶきや、死骸のかけらも見当たらない。いや、実際あったらあったで、見るも絶えないグロテスクな光景になってたのであろうが……
「まさか……」
ラルフさんがつぶやき、注意深く陥没した箇所へ近づいていく。グレーは、また淡い緑色に輝き元の小さな体躯へ戻っていく。俺と比すれば元の体長でも十分大きいけれど……
「光が2つ……?」
土煙が完全におさまり、はっきりと観察する事ができるようになった。陥没地点の中心には、人の手のひら大の光が2つ漂っていた。1つは白色をしていて、もうひとつは白色になったかと思えば、数秒の周期で緑色に変化して、また元の色に変化している。2つの光は双子星のように、クルクルと回りながらラルフさんの顔ほどまで浮き上がり、突然俺に向かってきた。
「ワタルッ……」
怪我をしていた上に、完全に不意をつかれ微動だにする事もできなかった。2つの光は俺の体の中に入ってきた。直後、何かが満たされる達成感が込み上げてくる。そう、コレが一体なんなのかはわからないが、「失っていたものを取り戻す事ができた」という事を感覚的に理解した。
同時に、先ほど俺の中に感じた力が歓喜しているような、暖かい躍動感を感じる。長い間分かたれた者達が久しく再会できたかのように。
自分でもこのような感覚を味わうとは思わず、余韻に浸ってしまった。
「おい」
そこに、ドスのきいた低い声がかけられる。見れば、ラルフさんが鋭い視線をこちらに向けている。狼の返り血を浴びたのか、顔についている赤い血しぶきが凄みを際立たせている。今まで「頼れる兄貴」だったラルフさんの突然の豹変ぶりに、不思議な感覚はどこかに吹き飛んでしまった。
「答えろ……何が、一体どうなっている」
「え……そんな事言われても何がなんだか……」
少しずつだが、ゆっくりと歩み寄ってきて、右手に持っていたまだ血まみれの剣を横に勢いよく振り払って血をきってから、俺の首筋にあててくる。辛うじて手をついて身を起こしている俺には、剣を突き付けてきた主を見上げる事しかできない。
「あれが放たれたときに感じた魔力のざわつき……あんときの感覚を忘れたわけじゃねぇ! なんでお前があの【呪文】を使えるんだ!」
「え……」
どうやら、俺が半ば無意識的にグレーに唱えてしまった【呪文】の事を言っているようだった。
(そんな事を言われたって、こっちとしても無我夢中で【不退転の意志】を唱えちまって……)
(えっ……!? 【不退転の意志】!?)
咄嗟に右手が、カーゴパンツの右後にある尻ポケットにのびる。こっちに来たときにそこに入っていた物を紛失していたのは確認済みだったので、何もポケットには入っていない。しかし、こっちに来る前には、そこには俺のデッキの1つが入っていたのだ。
【不退転の意志】は確かに触った方のポケットに入れていたデッキの1枚だった。それを俺はさっき、グレーに向かって唱えた。マジックのゲーム用語的に言えば「プレイ」したのだ。
「オマエ、輝石が使えないだろ。だったら俺と同じように《呪われてる》ってわけでもなさそうだな」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「ああ!?」
「確かに、俺はさっき呪文を使いました」
「それはわかってるっつってんだよっ!!」
さっきよりも大きい、俺の小さい肝っ玉をさらに縮こませる罵声によって、俺の冷静はたやすく吹き飛んだ。
「だ、だ、だだだから俺にも突然のこと過ぎてなにがなんだか……」
「さっさと吐けこの野郎!!」
「ひっ」
ちゃきりと剣から音が鳴り、首筋に突き付けられた感覚が強くなった。首をめいいっぱいのけぞって、少しでも切れないように抵抗する。もしかしたら首皮が切れてしまって血が流れているかもしれない。あの狼のアタックをもろに受けてしまったこの体には、今の体勢はかなりきつい。体中に鉄をねじ込まれたかのような鈍痛が再びわきおこる。
「わ、わ、わかりましたから、剣を……剣を下ろしてください」
「テメェ……そう言って何かする気だろ」
「何にもしませんってば、剣を突き付けられた状態じゃ、説明できることも説明できません」
「……ッチ。グレー、こっち来い」
「ウォフ」
グレーがのっそりと俺に近寄って、真後ろに陣取ったあと、やっと剣が引かれた。ラルフさんは右手に剣を握ったまま、一歩離れた所から睨みつけてくる。
「変な気を起こしたら、グレーがすぐに叩き潰す」
ちらりと後ろを見やると、真っ黒な塊が目と鼻の先に仁王立ちしていた。心なしか、あの狼と同じく、グレーの体表に白い何かがまとわりついているように見える。そして、存在感が前に比べて増しているように思えた。吸い込まれそうな真っ黒な目でこちらをにらみつけ、口をガパリと開けて「ガフッ」と吠えた。「動けるもんなら動いてみろ」と言ってるように見えた。
「か、体中痛くて動くだけつらいだけですってば…… ええと、何から話せばいいものか……」
まずは、俺が趣味で遊んでいたトレーディングカードゲームの事から説明しなければならないだろう。
マジック・ザ・ギャザリング――通称、マジック。
某米国発祥のトレーディングカードゲームの名前である。
トレーディングカードゲームとは、トランプに代表されるようなカードゲームに、収集を意図されるように作られたトレーディングカードの要素を混ぜ合わせた物だ。
「トランプ? カードゲーム? 一体何の事だ?」
「いえ、言葉が悪かったです。こう……」
気だるく両手を持ち上げ、親指と人差し指を直角に伸ばし、長方形をつくるようにくっつける。よく、景色を切り取って眺めたい時にする仕草だ。
「こんな長方形の薄っぺらい札を使った遊びを何か知りませんか?」
「っ? デリーチってやつが良く酒場でやられてるが……数十枚の札で役を揃えて競うルールだが……その類か?」
「はい。そういう札遊びの1つだと思ってください」
「札遊び」の言葉を聞いた瞬間、ラルフさんの顔がしかめられたような気がしたが、すぐに凍てついたような表情に戻る。冷静に、そして淡々と事実を見極めようとしているようだ。俺が少しでもふざけた行動でもとろうものなら、グレーの鉄拳が振り下ろされて、俺の背骨がひしゃげてしまうだろう。
「トレーディングカードっていうのは……所謂、収集目的で販売される札の事です。お金持ちの人で宝石とか骨董品を集めている人っていないですか? 宝石や骨董品のように、いろいろな種類の札をつくる事で、人々の所有欲を刺激して、お金を稼ごうという事が目的の商品です」
「ああ、それならなんとなくわかるぜ……アイツみたいなやつの事なんざ理解したくはないがな……」
後の方はボソッとつぶやいてたのか、あまりはっきり聞こえなかった。
「続けます……」
マジック・ザ・ギャザリングを遊ぶ人間――普通、プレイヤーと呼ばれる――は、1万を超す膨大な種類のカードの中から好きなものをひとまとめしたカードの束――これをデッキと言う――を作り、互いに競いあって勝負を決する。
「同じ絵柄の札を揃えたりして、役でも競うのか? 一万も種類があったんじゃ揃うどころじゃ…」
「いえ、そういう遊び方ではないです。勝敗を決めるのは簡単な事ですよ。相手を倒せばいいんです」
正確には、ゲーム開始時にプレイヤーが持っている持ち点20点が、先に0になった方が負け、相手の持ち点を0に追い込んだ方が勝ちだ。この持ち点をライフポイント、もしくは単純にライフと呼ばれる。
「ライフ……このゲームが作られた国の言葉では《命》という意味があります。このゲームは決闘を模しているんですよ。つまりは、2人のプレイヤー同士の殺し合い……ライフが0になった方が負け、要は相手に殺されるって事です」
ラルフさんの表情が険しくなった。さっきの言葉だけでは非常に野蛮な遊びに聞こえてしまうせいなのかもしれない。
「もちろん。ただの遊びです。別に相手を負かした、相手に負かされたといったからって実際に殺し殺されるわけではありませんよ」
勝敗はライフポイントの有無で決するから、当然、デッキの中身には相手のライフポイントを減らす手段が詰まっているという事になる。マジックの最大の魅力は、その手段そのもの、すなわちカードにある。
「プレイヤー達は物語に登場する魔法使いになって、色々な呪文を駆使して相手を倒すんです。とても恐ろしい怪物を召喚したり、想像を絶するような威力がこもった攻撃呪文を唱えたりして……」
カードひとつひとつが、魔法使い達が唱える呪文なのだ。プレイヤーは万を超える種類のカードの中から好みのカードを選び出して呪文書をつくる。自分と同じく、魔法を使いこなす敵を倒すための呪文書を。万を超える魔法の中から、選りすぐりの呪文達がひとつにまとめられ、魔法使いの手の中に。それが集う魔法、マジック・ザ・ギャザリングなのだ。
「それで……?」
ラルフさんの視線がだんだんと鋭くなってるような気がした。殺気を視線に込めてこちらを凝視しているかのようだ。
「は、はい。それで俺はその札遊び……マジック・ザ・ギャザリングを遊んでいたんです。いつものようにカードショップ……札を売ってるお店ですね……そこで遊び友達と遊んで……そう、ちょうどその中の一人が結婚して止めるっていうから、その人の持ってたカードをたっぷりもらったんです。持てるだけ一杯、リュックや袋、ポケットまで一杯にしてホクホク顔でウチまで帰っていたら――穴に吸い込まれました」
「はぁ? 穴に吸い込まれただぁ? お前、またふざけたことを……」
またもや喉元に剣を突き付けられそうになり、あわてて両手を前に出して勘弁のポーズをする。
「ほ、本当です。歩いてたら突然ブラックホールみたいな……いや、黒くて丸い何かが現れて、猛烈な勢いで吸い込まれたんです。その後はもう何がなんだか…… 気がついたら草原の中に寝転がってました」
「そんな話信じられると思ってるのか」
「だってこれが本当のことなんですから仕方ないじゃないですか。むしろ、何がどうなってるのかこちらが聞きたいくらいですっ!」
突然の転移、戦闘の緊張、脅された状態での尋問。待ったなしの目まぐるしい環境の変化にこちらが逆切れしそうになる。先まで凶器を突き付けられた相手であっても、だ。
少しラルフさんは意表をつかれたのか、質問内容を変えてきた。
「……っち、じゃぁ質問を変えるけどよぉ。お前さっき、魔法の事を『物語の中の出来事』だの言ったり、《輝石》も存在しないだの、まるで『魔法』そのものが使えないような言い回ししてたじゃねぇか。もしかして、お前が来たところには魔法という物がないのか?」
「正確には、想像の産物であるだけで、現実には一切存在しません」
「っか!それこそ信じられねぇなぁ。現に、お前はグレーに対して《魔法》を使った。あれはどう説明するんだ」
「っ! それだっ!!……へぶぁ」
脇へのけていた重要な事実を指摘されたのに気付いて叫んだ直後、背後から巨大な質量の何かに押さえつけられた。大質量の、のしかかりに胸がぺしゃんこにされてしまいそうだ。肺の空気が全て押し出されてしまいそうである。
「グレー、少し手加減してやれ。そうでないと話せなくて尋問もできやしねぇ。ま、魔法行使可能な人間を、好きなようにしゃべらせられる状態にしていた俺も気が緩みすぎだったが……」
「ウォフ」
体重をかけていたのを軽くしたのか、先ほどよりかは幾分かマシになった。
「さっきみたいに突然叫ぶ事はもうしない方がいいと思うぜ。次は、グレーのかぎ爪でお前の喉を掻っ捌く。これは最後の警告だ。話すにしても、その口をもう少し慎重に動かす事をお勧めするぜ」
「は、い……気を付けます」
本当に自分が追いつめられているのだという事を痛感させられる。ぞっとする感覚――背筋に悪寒が走る――に苛まれる。
「それで、何が『それ』なんだ?」
「前の戦闘では俺は無意識に魔法を使ってたみたいなんです。ここに来る前はあんな事は絶対にできなかった……あの何とも言えないような感覚は今まで体験したこともなかった」
「お前が魔法を使えなかったという証拠でもあるのか」
「……そんな証拠はありません。信じてもらうほかないです。問題は、俺が使った魔法が、俺の使っていたマジック・ザ・ギャザリングのデッキの中の1枚だという事です」
その言葉を聞いて合点がいったのか、彼は、はっとした顔をする。
「するとお前が言いたいのはこういう事か。札遊びの札を持って帰ってたら、穴に吸い込まれて、気づいたらここに居た。そして、お前が持っていた札が魔法として使えるようになってたと」
「は、はい……」
ラルフさんは、手を顔にあて思案している。自分でもめちゃめちゃな事を言っているという自覚はあるが、本当の事なのでこれ以上は何も言いようがない。
考えの整理ができたのか、ラルフさんは一歩こちらに踏み出し、そして俺を見下ろしながら言う。
「もう一つ聞く。お前がグレーに使った魔法なんだが一体なんだったんだ?」
「あれは【不退転の意志】というカード、いや、呪文です」
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不退転の意志/Indomitable Will (1)(白)
エンチャント — オーラ(Aura)
瞬速
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは+1/+2の修整を受ける。
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マジックのカードにはいくつか種類が存在する。今回使った【不退転の意志】は『エンチャント』と呼ばれる種類のカードだ。さらに詳細に言うなら、『エンチャント』の中の『オーラ』に分類されるカードである。効果は簡単に言えば「魔法の力でパワーアップする」だ。
今回、俺はこれをグレーに唱えてグレーを強くしたのだ。
「あの、妙な盾を浮かべた硬ぇ狼を倒すためか?」
「はい。あの瞬間に『このままでは倒せない』と思いましたから」
「なぜそんな事がわかる? 確かにヤツは防御がべらぼうに硬かった。だが、自分で言うのもアレだが、今まで【巨大化】したグレーが倒せなかったヤツなんかいなかったぜ」
「ええと……なんでかと言われれば……」
そもそも、なぜ俺はあの瞬間、グレーがあの狼を倒しきれないと考えたのだろうか。
思案を続ける思考の隅にひっかかるものがあった。あの瞬間、俺は敵側と味方側の2匹のクリーチャーのパワーとタフネスを比べ、引き分けになると判断したのだ。
『クリーチャー』
それは、魔法使いが対戦相手を攻めたり、相手から身を守るために召喚する魔物を指す言葉だ。
マジック・ザ・ギャザリングにおいては、クリーチャーを用いて攻防する事が最も基本的なゲームの流れとなる。
対戦は、2名のプレイヤーが交互に各自のターンを行う事で進むが、各プレイヤーは毎ターン1回、自分が召喚したクリーチャーを使って相手に攻撃を仕掛ける事ができる。
攻撃を受ける側は、自分のクリーチャーを攻撃してくるクリーチャーにあてがい、攻撃を妨害することで防御を行う。ゲーム内用語では、クリーチャーを用いて相手側の攻撃を妨害する事を『ブロック』すると言う。
攻撃側のクリーチャーが、防御側に『ブロック』された場合、クリーチャー同士の闘いが行われる。この闘いを決する要素が、各クリーチャーの強さを表す2つの数字、すなわちパワーとタフネスだ。
クリーチャーと呼ばれる存在には、必ずパワーとタフネスの2つの数値が設定されている。パワーは攻撃力、タフネスは防御力を示している。
『ブロック』が行われた場合、2匹のクリーチャーは、互いにそれぞれが持つパワーに等しい『ダメージ』を相手に与える。
与えられた『ダメージ』が、そのクリーチャーが持つ『タフネス』よりも多い場合は、『ダメージ』を受けたクリーチャーは死んでしまう。
あの時の状況を振り返ると、【巨大化】したグレーは攻撃クリーチャー。盾の狼は、それをブロックするクリーチャー――厳密には『ブロック』とは言えないが――に当てはめる事ができる。
俺はあの時、この勝負の結果が「互いを倒しきる事ができない引き分け」に終わる事を瞬間的に確信したのだ。
自分でもまさかとは思うが、考えを反芻しながら答える。
「マジックのカードの中には魔物を扱ったカードがあります。あの狼は、俺の考えが正しければ【番狼】だったのではないかと思うんです」
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番狼/Watchwolf (緑)(白)
クリーチャー — 狼(Wolf)
3/3
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「【番狼】のパワーとタフネスは……パワーが力で、タフネスが体力みたいなものだと思ってください。で、その番狼のパワーとタフネスはそれぞれ3点と設定されているんです」
「あれの具体的な強さがわかったということか」
「はい。しかもあの狼には【神聖なる好意】がエンチャントされていました」
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神聖なる好意/Divine Favor (1)(白)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
神聖なる好意が戦場に出たとき、あなたは3点のライフを得る。
エンチャントされているクリーチャーは+1/+3の修整を受ける。
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「あのときの【番狼】のパワーとタフネスは、エンチャントの効果が足されて『4/6』でした。それに対して【巨大化】がかかったグレーのパワーとタフネスは『5/5』。どちらも互いを倒すには攻撃力が足りない状況だったんです」
どちらも俺にとっては良く見慣れたカードだ。それのおかげか、俺にはあの狼の正体を判別することができた。それに何よりも、今も内側に感じる『何か』が俺にそうであると囁くのだ。
「じゃあ、グレーも一体何なのか、お前にはわかったということだ」
ラルフさんを無言で見上げる。指摘された通り、もはや俺はグレーが何であるのか理解している。
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灰色熊/Grizzly Bears (1)(緑)
クリーチャー — 熊(Bear)
2/2
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巨大化/Giant Growth (緑)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+3/+3の修整を受ける。
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『グレー』という名前からして、グレーの正体は薄々感づいてはいた。あの時のグレーは【灰色熊】の素の能力値である『2/2』に【巨大化】の効果が足されて『5/5』であったわけだ。
【巨大化】は【不退転の意志】とは種類が異なるカードであるが、端的な効果自体は同じだ。しかし、【巨大化】で強化された状態でも《狼》を殺しきる事はできない。
「そこで、お前が呪文を唱えて、グレーをさらに強くしたわけか」
【不退転の意志】の強化値――ゲーム的には修正値と言う――は『+1/+2』で、最終的なグレーのパワーとタフネスは『6/7』となった。これならば、グレーのパワーは《狼》のタフネス値『6』と等しくなり、狼を倒す事ができる。
「なるほど……まさかグレーが……」
ラルフさんは俺の言った事を繰り返し確認しているのか、口に手を添えてブツブツ言っている。俺の言った事に衝撃を受けたのか少し、顔色が悪く見える。
「……まぁいい……次の質問だが、狼がいた場所から出た光が――」
「ウォフ」
グレーを見上げると、鼻先を街道の方に向けて耳をピクピクさせている。耳を澄ませてみると、馬を走らせた時に出る足音が複数聞こえてくる。徐々に近づいてくるようだ。
「ちっ」
グレーと同じ方向を向きながら舌うちをひとつして、ラフルさんが剣をおさめる。
「えっ――」
「とりあえず、敵対の意志はなしってことにしといてやる。わざわざ狼を襲わせてこんなケガする事に意味があるとは思えねぇ。さらに、ヤツを倒すのにも一役買った。それに……」
腕を組んで、ニヒるな笑みを浮かべながら彼は続けた。
「こんな状況じゃあ、俺がお前を襲ってるようにしか見えねぇだろ。余計な面倒はもう御免だからな」