カルデアの一室、他の部屋と違いちゃぶ台に、やかんに炬燵、畳も敷かれてまるで日本にあるごく普通の和室を再現されているこの部屋はあるサーヴァント達の寝室になっていた。
これまた何処から持ち込まれたのか古いテレビにはどうやってつないでいるのか最新ゲーム機器が繋がれており、そこの住人であるサーヴァントはくつろぎながらゲームに夢中になっていた。
「のう、人斬り」
そんなサーヴァントをこたつに入って同じようにだらけてみかんを剥きながら見ていたサーヴァントがふと何を思いついた様に口にする。
「なんですか、今ちょっと空に落ちるのに忙しいんですけど」
「ゲームしてるだけなんじゃが……マスター日本に帰ったんじゃろ?」
「そうですよー、ご両親に顔を見せてくるらしいですよ。 おっ、タリスマンげっとー」
「それで、こっちからも何人か調査で出て行ったんじゃよな」
「そうですねー。 学者さんや聖杯戦争に参加経験のあるサーヴァントが選ばれてましたね、あと日本出身とかも」
「それなんじゃが……可笑しくないか?」
「何がですか? マスターだって色々あるんですから帰ってくるのは遅くなるって……」
「いや、なんで儂呼ばれてないのじゃ!? ワシ日本出身で聖杯戦争にも参加したんじゃが!?」
「そりゃノッブがロクなことしないってマスター達から思われているんでしょ。 ぷぷー信用がないって辛いですねー」
「それ、思いっきりブーメラン刺さってるんじゃが」
「ちが、ちーがーいーまーす! 私はマスターが留守中のカルデアを任されているだけなんですー。 日々治安を維持するため陣羽織来て悪即斬に励んでいるんですー!」
「普通に忘れられて置いて行かれたんじゃろ」
「……ちーがーいまーす! カルデアから出(るの)禁(止)を受けているノッブとは違って何時でも行けるんですー! ただ何時でも行けるから行かないだけなんですー!」
「お主は声をかけられなくて居残り! ワシはそもそも出られないので居残り! そこに何の違いもありゃしねぇじゃろうが!」
「違うのです!!」
「是非もないよネ!!」
カルデアの夜は更けていく……
「あの子、早く帰ってこねぇかなぁ……」
「あれー? 先輩、あの子が居なくてもしかして寂しいんですか?」
「堅物女史と一緒にするんじゃない。 ただな、色々と面倒事が多すぎるんだよ……」
「なっ、なんでそこで私が出てくる!?」
「ううむ、力のある常識人が大勢調査に向かってしまったからな……いや、彼を追って問題児も着いて行ってしまったが……」
「若干、カルデアにも問題児が、いや訂正しよう、多く問題児が存在しているがな。 今この食堂を見てわかる様に」
「なーんでエミヤさん達連れていっちゃったかなぁ……」
お馴染みカルデア食堂にて、カルデア職員の四人は他の職員から強い要望により設置された中華テーブルに座りながら、物が飛び交っている食堂を溜息をつくながら見つめていた。
人理保障機関カルデアの食堂は、人理崩壊後はあのレフ・ライノールのテロによって二十人数名にまでカルデアの職員は減少しておりその食堂を利用するのは、休憩時の職員かサーヴァントたちであった。 幾らーサーヴァント達が入ろうと、広い食堂にはそれでも寂しく見えたこともあったものだが、人理定礎を完了した後は外から増員が送られてきたこともあり、食堂は毎日満員の賑わいを見せていた。
だが今回は賑わっているというよりか騒がしくなっていると表現する方が正しい状況になっていた。
いたるところには「食堂に自由を」、「マスターの早期帰還求ム」、「カルデアのおかんを取り戻せ」、「でもエリチャンだけは勘弁な!」 などと言った旗を持ち、厨房の中で何やらメガホンで演説をしている職員たちの姿があった。
厨房の入り口前では機動服を来た職員たちと、サーヴァントたちが結託して守りを固めており、そこを突破しようと何人もの職員が押しかけている状況であり、外からはいろんな食材や調味料が飛び交っていた。
人呼んで「食の解放前線」と名乗っているこのメンバーは厨房内に立てこもり食材を人質にしてマスター達の早期帰還を訴えており、今日で丸一日立てこもっている状態である。
こんな状況になったのは、カルデア唯一のマスターが日本に帰省したことから始まる。
マスターが帰省する際、冬木の調査のためにダ・ヴィンチちゃんが連れて行ったサーヴァントは十数人に上り、それに無許可の密入国者、王のお供として着いてきた騎士達を含めるとかなりの数になるのだが、その中にはカルデアのおかんことエミヤも同行していた。
その際にカルデア食堂の総料理長を務めるエミヤは今や百人近い職員が利用している食堂の指揮に穴が開くことを心配したが、職員たちは心配ないと笑顔でエミヤを見送った。 なんせ料理が出来るサーヴァントはエミヤだけではなかったし、エミヤが開講した料理教室を受講した職員たちが交代制で調理をすることになっていたからだ。
実際、最初の一週間はさほど問題なかった。 カルデアに残ったブーディカや頼光に加え、タマモキャットやエミヤの料理講座を受講した職員たちが交代制で調理を務めたこともあり、少々効率が落ちるだけで食堂は何ともなく稼動していた。
しかし次の週に移ると、マスターに構ってもらえないことに気付いたタマモキャットが不貞寝してたことに加え、頼光の姿が見えなくなり、残されたバーサーカーたちのお世話にブーディカが手を離せなくなったために、職員たちだけでカルデア職員全員分の料理を用意しなければいけなくなった。 供給が追い付かなくなり、次第に料理を受け取るのに行列ができ始め、それを解消するために整理券が配布されたが、またそれを受け取るために行列ができるという悪循環に職員の不満は堪る一方であり、それを解消するために料理が出来るサーヴァント達にも交代制で料理当番が回るようになったが、それが事態を大いに悪化させることになった。
簡単に言うと現代的な料理を作れるサーヴァントが少なすぎたのである。
ある日の看護婦の料理は見た目的にも、味的にも問題ないのだが妙に薬臭いそれは食堂を病院の様な匂いに上書きし、また消毒を徹底された食堂は、徹夜明けで入浴する暇がなかった職員が食堂に入った瞬間、看護婦から頭から消毒液に突っ込まれる自体が多々発生することになった。
ある日では某研究員が疲れている職員たちを見て、良かれと思って入れた栄養剤が効果を発揮しすぎて、肌が青色になったり、女性が男性に、男性が女性になったり、髪の毛が異常に伸びたり、奇声を上げながら三メートル以上飛び跳ねたりと異常すぎる事態となり、職員たちは対応に追われ、更に疲労する結果となった。
そして極めつけは、元気を出してもらおうと彼女らなりに頑張ろうとしたドラゴン娘三人衆が厨房に潜入しその金星的料理の腕をふるった結果、カルデアの約四割の職員が緊急治療室に担ぎ込まれたことをきっかけについに暴動が発生、「食の解放前線」が結成され厨房を占拠したのである。
「考え直せー! いまならまだ間に合う! カルデアのおかんだってこんなこと望んじゃあいないはずだ!」
「煩い! 俺の親友はエリちゃんの料理を食っちまって口からエーテルを今も吐きだし続けているんだ! 第五架空要素を吐き出すってあの料理は一体何で出来ているんだ畜生ー!」
「馬鹿野郎! そんなこと言うからそのエリちゃん落ち込んで段ボール被っちゃってるんじゃねーか! 慰めるためにエリちゃんの料理を食すことになるマスター君の気持ちを考えてみろ!」
「ちょっと! 誰ですかトマトを投げようとした愚か者は! ここはスペインですか!」
「ぬぅぅぅぅぅん! なめこだけは! なめこだけは守り抜きますっ! これはムァスタァァァァ! と! 私が丹精込めて作ったなめこなのです!」
「あいたっ!? だれぞ吾に豆投げた人間は! 節分か!? 節分のつもりか!? 」
そんなこんなで食堂は混乱の極みに達しており、サーヴァントを巻き込みつつさらに戦火を拡大させつつあった。
ここにエミヤがいれば一喝の元、調理場を指揮して混乱を収められるのだが生憎遠い日本に出張中であり、最後の頼みのマスターもまた同じくして日本である。
テーブルの職員四人はいなくなってから分かるその人の苦労という物を栄養価は高いが味気のない非常食と共に噛みしめながら溜息をついた。
「まぁ、なんだ。 この暴動も皆腹減って馬鹿らしく思ってくるだろ。 投げ捨てすぎて冷蔵庫空っぽになってなきゃいいけどな」
「元々は、旨い飯を取り戻すために蜂起したというのに、そうなったら皮肉なことだな」
「皮肉……肉……あぁーお肉が食べたいです……金星的極赤料理じゃなくて……」
「贅沢を言うな、全く……この非常食があるだけでも有難いと……おお?」
と、ふと職員の一人が羽織っている白衣が誰かに引っ張られる感覚を覚えて、白衣の職員は確かめる様に後ろを向く。 これがマスターがカルデアに在籍の時だとなにかと厄介ごとに巻き込まれるのだが、今回はマスターは不在の為その心配もなく職員達は気軽に振り向くことが出来るという複雑な心境と共にだが。
「一体誰、が……? んん?」
しかし振り向くと、人の姿はない。 不思議に思って白衣の職員が白衣を引っ張っている正体を確かめようとすると四人座っているテーブルに一つの影が落ちた。
テーブルの四人が不思議に思いふと見上げてみると、
「んなっ……!?」
「ふぐっ……!?」
「ぴっ……!?」
「なっ、んで、ここに!?」
四人が驚いて声を上げる、四人が見上げる先には一人のサーヴァントが立っていた。 高すぎる身長と、天使の様な金色の羽、それと反するように悪魔の様な巨大な蛇の尻尾が伸びており、薄紫の長い髪は何本か束になって集まると、まるで生きた蛇のように蠢き、目を光らせており、一匹が食べ物と勘違いしたのか白衣に噛みついていた。
「ご、ゴルゴーン……!」
「何時まで経っても食事が出てこないと思ったら、なんだこの騒ぎは?」
天使と悪魔が同居しているような風貌の彼女はゴルゴーンと言う名のサーヴァントであった。 英雄であるペルセウスによって倒された怪物でもある彼女は基本的には召喚は不可能であるが、特殊クラス
根本的に人間とは相容れない存在の彼女は、普段はカルデアの下層にある特定の職員しか立ち入りを許可されていない区域にて自らその身を隔離している。
サーヴァント以外の人間とは例外であるマスターを除いて接触を禁止されているゴルゴーンはレイシフト以外では基本的にはその部屋から動くことは無く、ケツァルから「部屋から出ないと健康的じゃありまセーン!」と部屋から連れ出される以外は本を読んで過ごしている。
食事も基本的に他のサーヴァントが部屋に運んで来る料理を食し、自らが食堂に出向くことはマスターが部屋から連れ出して一緒に食事をする時以外にはありえない事であった。
「あ、貴方はマスター以外との人間の接触は禁じられているはずです! いますぐ……」
「……煩い」
「ぴぃ……」
勇気を出したオペレーター担当の職員がゴルゴーンに向かって警告するが、一瞥もされず髪の毛で構成された蛇の威嚇によって一瞬で黙らせられる。
他の三人の職員たちも恐怖を感じてその場から一歩も動けない、全身の血の気が引き、心臓が凍りつく様な錯覚さえ受ける。
目の前にいる
「(生で見るのは初めてだが、復讐の女神と言う奴は……ここまで凄まじいか……)」
「(彼女が進入禁止エリアから出た瞬間、隔壁が降りるはずなのだが……あっ、霊体化できるんだった。 みんな当たり前に姿を見せてるので忘れていた……)」
「(人間などとは比べ物にも……あの子はどうやってこの怪物と笑い合っているんだ……?)」
その恐怖心とは裏腹にゴルゴーンから職員たちは目を離せない。 それは鼠が猫に睨まれた時のように恐怖心と緊張感で一切の動き、眼球の運動さえも硬直させられていたのだが、もう一つ、人間とはかけ離れた彼女の美しさに見とれていたというのも理由の一つであった。
「おい」
「えっ、ひゃい!?」
食堂で起こっている暴動を見ながら、ゴルゴーンはオペレーターの職員へと声をかける。 先ほど煩いと言われた職員はどう返事をしたらいいのか迷ってしまい変な返事になってしまうがゴルゴーンは一切気にせず自らの尻尾を椅子にして座り始める。 近くにいる白衣の職員は堪ったものではなかった。
「アレは、どこだ?」
「あ、あれって……?」
「私の、
「あ、あの子なら帰省中です……冬木への調査もかねて……」
「帰省、だと? アレは何も……いや、なるほどケツァル・コアトルの奴がいなくなったのも頷ける。 見つかると面倒だと思ったか……」
「は、はい。 ダ・ヴィンチちゃんの提案ですがあの子が此処からいなくなると聞くと必ず着いてくる人たちがいるので……」
「ふん、遠い海の向こうに行けばついて来れないだろうと高を括ったわけか。 そんなことで止められる者達でもあるまいに」
向こうでサーヴァントたちに囲まれ苦労しているマスターを想像して鼻で笑う共に少しばかり不機嫌な顔になるゴルゴーン、なにか気に障ることでも言ってしまったかと職員たちは戦慄する。
「しかし、私に一言も話さずに飛び出していったのは気に食わん。 勝手に持ち主から飛び出していく宝石があるものか」
「ほ、宝石……?」
「何はともあれ、まずは腹ごしらえだな……」
困惑する職員たちをよそに、暴動が起きている厨房へと向かっていくゴルゴーン。 他の職員たちもゴルゴーンが食堂へと姿を見せたことに気付くと三者三様の驚き方と恐怖心を見せて散り散りになっていった。
サーヴァントたちもまさかの人物に思わず戦闘状態へと入り、みな職員たちを守るために前へと立ちふさがる。 部屋が歪んで見えるほどの緊張感が周りを包み、皆何が起こるかを固唾を飲んで見守る。
「……食事はまだか?」
だがゴルゴーンの言葉によって一気にその緊張感は崩れ去る。 厨房側の守り手であったマルタも、なめこを守ろうと奮闘していたレオニダスも呆気にとられてしまう。
目の前の存在の外見とその口から出た言葉のギャップに皆、いつの間にかいそいそと料理を作る準備を始めていた。 ある者は投げつけた食材を拾い集め、ある者は皿を用意し、ある者は献立を決めはじめる。
なんだか分からないが女神様が、ご飯を欲している。 ただそれだけの認識がサーヴァント以外の人間を料理に駆り立てていた。 なんだかどこかの黒い王様がエミヤにご飯を強請る気持ちが分かったのである。
復讐の女神が今だけは暴動を治めたはらぺこの女神になっていた。
それは、彼女を知るサーヴァントたちに取っては到底信じられない事であった。
「……どうした。 何だ貴様らのその顔は」
カルデアの一室、他の部屋と違いちゃぶ台に、やかんに炬燵、畳も敷かれてまるで日本にあるごく普通の和室を再現されているこの部屋はあるサーヴァント達の寝室になっていた。
これまた何処から持ち込まれたのか古いテレビにはどうやって映っているのか高画質なアニメが流れており、そんなアニメを見ながらあるサーヴァントたちはこたつに入りながらアイスを食べるという究極の贅沢に浸っていた。
「それで、あの暴動どうなったんです?」
「あー、いつの間にか職員たちの料理合戦になってうやむやになったって話じゃったな。 あのドラ娘たちは当分厨房には出入り禁止みたいじゃが」
「ゴルゴーンさんはどうしたんです?」
「チャリン娘の成長版は腹が膨れるとそのまま部屋に帰ってった、職員よりもサーヴァントの方がその姿に動揺したというのもおかしなもんじゃな」
「マスターと接しているうちに丸くなったんでしょうか?」
「そりゃありえんじゃろ。 今回はお腹が空きすぎプラス、マスターの顔を立てて大人しくしてただけじゃろうし」
「なんで、ノッブにそんなこと分かるんです?」
「十七人、あの女神の力に魅入られてゴルゴーンに契約を持ちかけてチェスト本能寺されかけた哀れな魔術師たちの数じゃ」
チェスト本能寺とは織田家にとってぶっ殺せの隠語である。
「十七人……」
「あの女神は根本的に人間など好いてはおらんのよ、むしろ嫌ろうておる。 マスターはそうじゃな、あの女神にとって宝石のような存在になれたからこそ目の前にいることを許されているというわけじゃ」
「つまり、他の魔術師たちが持ちかけた契約は自分から宝石を奪う行為に等しい行為だったと」
「多分じゃけどネ。 まったく神様とは良く分からん考えをしとる、月にしろ太陽にしろ……」
「だから神様なんでしょ、あとチェストは敵性言語なので次使ったら斬りますね」
「是非もないよネ!?」
カルデアの夜が更けていく……
「貴様は私の虜だ、マスター。 我が青い宝石よ、最後は必ずお前という指輪を私の指にはめてみせる……その体から魂まで、全て」
それと同じ頃、カルデアの下層進入禁止区域の一室にて一人の女神が暗い部屋の中で自らの手を蕩けた目で見ていた。 それはまるでその指に指輪がはめられているかのような目で__
__マスターの死後はどっちだ
やっといろんな用事が終わって投稿できました……
隙を見てちょくちょく書いている状態だったので、ちょっと文章構成がバラバラだったり、展開が可笑しかったりしますがゆるして。
今回はマスターがいないカルデア編。 いなくなってわかるおかんのありがたみ、常識人たちは問題児たちの世話に奔走して忙しいったらありません。
ちなみゴルゴーンさんとマスターが食事するときは周りを驚かせないために真夜中にこっそり食堂に入って二人っきりで食事してたりしてます。 なんだか良い雰囲気の為、中々邪魔しに入れないという感じ。(例の人たちは普通に入ってくる)
誤字脱字報告、感想、ありがとうございます。 今回感想のお返事が遅くなってしまっています許して。
今回も楽しんで見て頂けると嬉しく思います。