カルデアの落ちなし意味なしのぐだぐだ短編集   作:御手洗団子

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逸話の話と、お酒は二十歳になってから。

「いやぁ、拙者ここではドラゴンスレイヤーとは言われているものの、生前は文字通り振るしか能の無い田舎者であったゆえ、実は討ち合いは以前召喚された聖杯戦争が初めてなのだ」

 

ここはおなじみカルデア食堂、つい最近深夜で謎の爆発があり食堂の半分が焦げ付いており、現在改築中である。

席にすわり、茶菓子と共にお茶を飲んでいるのは緋色の雅な陣羽織に身を包み、華がある美男だが鋭い武人の目を持っている。 どこかいつも飄々とした花鳥風月を愛する流浪人、佐々木小次郎である。

 

「へぇ、それであの腕前というのは見事というしかありませんね。 その長い刀はどこから?」

 

「あぁ、これは山奥で出会った老人から譲り受けたもの。 まさに剣聖と呼べる御仁だった」

 

「日ノ本の山奥は一体どうなっているのか誰も疑問に思わないんじゃろうか……」

 

小次郎のほかにも、沖田総司、織田信長や坂田金時(ゴールデン)や源頼光など日本出身のサーヴァントが周りに座っていた。 みなそれぞれ茶菓子やお茶を飲んだりして、各々会話を楽しんでいる。

それもそのはず今日は信長の主催の天正十年だよ! 日ノ本出身全員集合の会であり。 ほぼすべての日本サーヴァントが集まっており、マスターも一応日本出身として招待されている。

 

「______??」

 

「ばっ大将、此処でその話題はヤバい!」

 

「まぁ、母の刀が気になるのですか? うふふ、これは安綱。 人が作りうる最上の武器、我が天網恢恢の雷に耐えうる唯一の刀。 それ、そこのちんけな虫を切り潰したことでついた名が童子切りです。 中々有名な刀だとは思いますが……」

 

「その名をうちの前でだすいうことは、この場でその牛乳(うしちち)ごと首もぎりとってもええっちゅうことやなぁ?」

 

「酒呑! 待て! しばし待てまだこのしゅーくりーむが食い終わってぬああああ!?」

 

二人の放つ、濃過ぎる殺気にシュークリームが耐えられず爆発する。 慌てて金時が止めに入るが、それは自らを差し出す御神供と同じ。 嫁姑に挟まれる夫のベリーハードモードである。 しかしマスターが止めに入ると、その身がいろいろと危ない。 マスターは金時のように二人から逃げられる力が無いのだ。 マスターは金時の様な力が無いことを悔いるが、無くて良かったとも心の底から思っている。

 

旦那様(ますたぁ)、私の逸話は勿論……ご存じですよね?」

 

いつの間にか、マスターの背後に回っている清姫。 さっきまで貴女向こうで玉藻さんと談笑していませんでした? 恋する乙女のスピードは韋駄天をしばし凌駕する。

 

「_______……」

 

「ふふ、嬉しい。 私もマスターの事なら何でも知っていますよ?」

 

それって、どういう、意味で。 マスターが聞き出そうと後ろを向いたとき、清姫は向こうの方で玉藻と談笑していた。 焔色の接吻を習得してからなんだか清姫が妖怪じみてきているような気がする。

 

「______?」

 

気を取り直して次は沖田総司の所へ話を聞きに行く、かの新撰組一番隊隊長、日本人なら誰でも知っているであろう新撰組にいた本人から話を聞けるのだ。 歴史家からすれば涎が出る話であろう。

 

「一番強かった相手? うーん稽古では斉藤さんか永倉さんが強かったですかねー、 土方さんはああ見えて指揮官寄りと言いますか人を操る方が上手かったですね、時々聞かされる俳句は下手でしたけど……」

 

「_______!!」

 

マスターも男であり日本出である。 なんだかロマンあふれる話に目が輝き始め、もっと話をとせがみ始めた。

 

「わわ、なんだかマスター今日はぐいぐい来ますね、沖田さん的には嫌いじゃありませんよ? 敵? 敵は勿論薩長の奴らです!!」

 

「お前、薩長ほんとに嫌いなんじゃのう」

 

「そもそも剣術が気に入りません、なんですかあの即死ゲー、沖田さんじゃなかったら死んでましたよ。 というか何人か切られましたけど。 」

 

「_____?」

 

「え? そうですねーまず猿声に怯むと速攻切られて死にます、次に防御すると刀ごと切られて死にます、籠手で受け止めようとしても切られます。 逃げると追いかけられて切られます。 その代り一発でも避けると相手が死にます」

 

「なんじゃそのクソゲー」

 

「本当にそんな感じなんですって! ですから強者が出てきた時は皆で囲んで棒で叩いてましたね、永倉さんの反照・龍飛剣か斉藤さんの牙突・一閃ぐらいじゃないと勝てない相手もいましたし」

 

「なんじゃその後半のなんとかに剣心に出てきそうな技名は」

 

「_______?」

 

「ぬ? 三千世界と書いて三段撃ちもなかなか? ふふん、カッコいいじゃろう」

 

マスターはどっちもどっちと言いたかったのであろうが、なかなかのポジティブ思考である第六天魔王は、無い胸を反らして自慢する。

 

「てか、ワシにも聞かぬか! 戦国時代といったワシ! ワシといったら戦国時代であろう!」

 

そりゃ日本史のポピュラー中のポピュラーの織田信長を聞いて大正時代を思い浮かべる人はいないだろう。 え? 大正時代にいた? はは、そんな馬鹿な。

 

「_______」

 

「なになに? 教科書で腐るほど見たからいりません? ……そーかそーか! それほど有名になっちゃってるかワシ! 良い良い許す!」

 

何かひとりでに納得しながら笑うポジティブ天魔王。 というかマスターにしてみれば有名なあの織田信長が女性だった時点でもはやそのとき歴史が動いたというかあっちから歴史が動いてきた並の衝撃である。

 

「主殿! 私の逸話はどうでしょうか!」

 

と、話を聞きつけ素早くマスターの駆けつけた影が一つ。 彼女こそマスターが召喚時に驚いたサーヴァントランクのトップ5に入る人物であり、天才的な格好と天才的な戦闘力でマスターに天災と首を運んでくる天才。 名を牛若丸。 あの日本人なら知らない方が少ないぐらいに有名な人物源義経その人である。 ……その人であるが、マスターが思っていたイメージと違いすぎたため_主に服装が_最初の頃は狸が化けているんではないかと思っていた時もある。

兄上大好きっ子であり、マスター大好きっ子である彼女は自らの逸話を主に聞いてもらって感心してもらおうと、まるであるはずもない尻尾を振るような勢いでマスターに迫ってきた。

 

「私の逸話は一つ一つが宝具に昇華されるほど有名な物ばかり、きっと主殿の好奇心も満たされるはずです!」

 

「いや、義経殿もあまりにも有名なためマスター殿も大体の話は知っているのでは……」

 

「黙れ、主殿に私の逸話を知ってもらい、おお、凄いな牛若丸はこれからも期待しているぞ、そら褒美に頭を撫でてやろうよーしよーし。としてもらうのだ」

 

「いやですから」

 

「黙れ、主殿との身長差は頭を撫でられるのに丁度良い差なのだと玉藻殿も言っていた」

 

牛若丸の部下に対する冷徹さを一身に受けとめる武蔵坊弁慶、カルデアの中でもなかなかの苦労人である。 口が裂けても言えないがどちらかと言うと幼少期のマスターは源義経よりかその忠義の部下である武蔵坊弁慶に憧れていた時期があった。 本物の前では言えないが。 言ったら牛若丸が弁慶の首を一息に跳ねようとする光景がありありと浮かぶからだ。

 

「______?」

 

「む? 拙僧から義経殿の話をですか? そうですなぁ、あれは屋島の戦いの事でござったな。 一隻の平家の船がこちらを挑発してきた時でござった……」

 

「_____!」

 

マスターが反応する、屋島の戦いの時に那須与一が船上の扇を一発で打ち抜いた逸話だ。 しかしそれは那須与一の逸話であり、牛若丸の逸話ではないはずだ。 もしや牛若丸も扇を打ち抜いたのだろうか?

 

「いえ、違いまする。 その時の扇を打ち抜くように命じたのが義経殿でござる。 無理だと辞退しようとする那須与一殿へ、『撃たぬのであればその場で腹を切れ。 撃つのであれば一発で射よ。 それ以外は腹を切れ』と言い放ちまして、結果生死をかけた与一殿の一射は見事命中、敵もあっぱれと船内から出てきたところを容赦なく討ち抜き始めたのが義経殿で……」

 

「そうか、そんなに首から下が無くなりたいか」

 

頼光に負けぬとも劣らぬ殺気を放ちながら刀を抜く牛若丸、首から上ではなく首から下と言うあたり本気である。 ミンチにでもするのであろうか。

 

「_______!!」

 

「そ、そんな天才だなんて皆の前で言われると恥ずかしゅうございます。 あぁ、頭まで……! 牛若は幸せ者です……」

 

とりあえず、そんなグロテスクな光景を見たくないマスターは、とりあえず褒めながら牛若丸の頭を撫でる。 撫でられた牛若丸は嬉しそうに目を細め、今にも蕩けそうな顔をしている。 なんだかその時の顔が頼光さんの愛が暴走しているときにそっくりでやっぱり子孫なんだなぁと、しみじみと感じるマスターであった。

 

 

「そういや、オレっちの逸話とか余り知られてねーよな……」

 

しばらく牛若丸を撫で続けた後、金時の逸話を聞きに来たマスターであったが、どうも金時もその逸話の事で悩んでいた。 確かに金時といえば金太郎、つまり彼の幼少期が有名であり彼が頼光の元で活躍していた坂田金時の逸話はあまり知られていない。

 

「何処を見ても、クマとタイマン張ったとか、背丈より高い黄金喰い(まさかり)担いでいたとかばっかだしよぉ……あんまし記憶に残ってねェのかぁ……何も残せてなかったってか……?」

 

そのまま落ち込んでいく金時、金時君はこう見えて結構繊細なとこがあるんです。

 

「_______!」

 

「_______今が一番カッコいい……か。 あんがとよ大将、そうだな、オレはアンタの記憶に残ればそれでイイ。 ゴールデンにハートに届いたぜ。 さすが俺たちの大将だ、アンタの一言で悩んでいたこと一瞬で消えやがった、ったくオレっちが馬鹿みてぇだ」

 

本当に五秒前まで悩んでいたことがウソみたいに消えてなくなった金時。 時にはたったの一言が人の悩みを吹き飛ばすことがある。 ユウジョウ!

 

「ほんなら旦那はん、一つ面白い出来事、おしえてやろか? ふぅー……」

 

「________!?」

 

気配も無しに、いつの間にか後ろから姿を現し、マスターの耳に息を吹きかける酒呑童子。 なんだか今日は後ろを取られる事が多い。 こういう男の友情シーンをあえてぶち壊しにするのが鬼である、金時も露骨に嫌な顔をする。

 

「ある時な、あの牛女の名前を騙って好き放題しとる連中がおった。 うちらからしたら枯れた細枝の様な連中やったけど、名乗りだけは中々聞きごたえのある連中でね。 そんである日その偽物に丁度通りかかった小僧がその連中の名乗りを聞いて、たまらずぽんっと飛び出してこういうた」

 

「ばっ、やめ!」

 

「我こそが丹波國大江山の酒呑童子を熱狂させし坂田金時なり、とな。 ほーん、夢中にさせられたんやねぇ、うちが小僧に。 まぁ間違ってはおらんけど……あんときは驚いたなぁ……」

 

「______?」

 

「しら、知らねぇよ! そんな昔の事覚えちゃいねぇっつの!」

 

「なんや、赤くなって。 ホント愛い奴やね……」

 

口に手を当てながら笑う酒呑童子、ゴールデンもおちょくられっぱなしである。 さすが鬼と言ったところか、若干一名弾けたシュークリームを悲しそうに見つめ続けている鬼もいるけど。

 

「先ほどから楽しそうですね。 虫風情が……!」

 

「おっと!」

 

これまた影もなく登場した頼光が童子切りを酒呑童子に向けて一閃、凄まじい速さと共に繰り出されるその横なぎは、当たれば鬼ともいえどその首は軽く飛ぶだろう。 これが金時だけならば、金時が介入することで丸くは収まらないが、正十二面体ぐらいには収まる。 だが今回はマスターもその場にいた、頼光からすれば鬼が愛する息子二人を拐している図である、当然怒りも二倍である。

 

「おっと、子供離れが出来ない牛女が気づいたみたいやね。 旦那はんか小僧かどちらか一人にしたらいかがどす?」

 

「親が愛する子供を一人しか持ってはいけないという道理はありません」

 

「はん、子供が自分を愛すると思っとったらいかんなぁ……自分がどう思われてるか、考えたことあるん?」

 

「ほざきましたね、ちっぽけな虫が!」

 

殺意がさらに膨らむ、これ以上続くと流石に殺し合いに発展しかねない。 だが煽るだけ煽って自分は戦う気が無いのか、酒の入った器を床に零すと、そのまま茨木童子を連れて食堂を飛び出した。

 

「今日は、気分じゃあらへんし。 旦那はんを巻き込みたくないしなぁ、精々楽しみや、いくで茨木」

 

「しゅーくりーむ、吾のしゅーくりーむ……」

 

「虫が逃がすと……!」

 

「待て! 頼光サマ! あの野郎酒を……!」

 

床に零された酒は床に落ちる前に蒸発し、霧となって部屋を充満させた。 一息吸っただけで、金時の体が赤くなる、ダメージと判断して狂化の段階が上がったのだ。 それほど強力な酒が部屋を充満してしまった。

 

「いけません!」

 

頼光が、マスターを抱きしめる。 豊満すぎる胸に包まれて息が出来なくなる。 ある意味天国だが待っているのは地獄である、

 

「この霧を吸っては、確実に泥酔状態になってしまいます。 幸い私は大丈夫なようですが……」

 

というかマシュの対不浄の加護がついているのでマスターも息を吸って平気なのだが、ある意味頼光の手、いや胸によって死の淵に近づいていた。

 

「そう、私は大丈夫です……ところであなた様は中々しっかりとした体つきをしているのですね……うふふ……」

 

そういいながら、マスターの体をまさぐり始める頼光。 しかも心なしか手つきがいやらしいし、どんどんと下半身の方へと向かって言っている。 完全に部下にセクハラする上司である。

 

「だぁー! 頼光サマあんた自分が酒弱いって知ってるだろうが! とぅ!」

 

「いひゃい!?」

 

後ろから、頼光の頭をチョップする金時、危うく胸のせいで人理が崩壊するところであった。

金時は自ら酔いを狂化ランクアップのダメージ判定に回していることで泥酔化を防いでおり、彼はこの空間で唯一まともなサーヴァントであった。

 

「大将! さっさとここからおわぁ!?」

 

「きんときー! ここで何をやっているのですー? ははさびしいですよー? うふふぎゅー!」

 

驚くべき速さで復活した頼光が次は金時に抱き着いた、ものすごい力で抱きしめ、金時では無かったら全身の骨が砕けているであろう。 本当にあの頼光さんはなんなんだ!?

 

「ぬわーっ! 大将逃げろー! あぁもう抱き着くんじゃねーよガキじゃねーんだから!」

 

金時を助けようと走るマスターだが、誰かに足を掴まれ、その場に倒れ込んでしまう。

 

「主殿ではありませぬか、となるとここは天国でしょうか。 沢山の兄上と、たくさんの主殿がいますー幸せですーいま首を献上いたしますー!」

 

なんだか物騒な事を言いながら足に抱き着いてくる牛若丸。 後ろの方では信長が「猿-! どこじゃー! 茶を持てーい!」と叫びながらうろうろしており、弁慶がなんだか体を肥大化させてマッスルポーズをとっている、控えめに言って地獄であった。

 

「あぁマスターこんなところに。 沖田さん探したんですよー、ひっく! マスターはなんで私の様な人斬りに優しくしてくれるんですかーひっく! そんなに優しくされたら期待してしまいますよ、ひっく。 期待していいんですかー? 人斬り風情が貴方に……ひっく!」

 

「あぁ旦那様(ますたぁ)、触れてくださいまし……この唇の温度も、この胸の柔らかさも全てあなた様のものでございます。 さぁまたあの日のように……!」

 

いつの間にか沖田と清姫から片手ずつ抱きしめられて、ついに身動き一つ出来なくなったマスター。 二人とも顔が赤く、目が蕩けている。 沖田は胸に顔を埋め始め、清姫はマスターの耳を舐め始めている。 _そこが弱点だと知っているのだ_

 

頼みの金時も、頼光から抱きしめられて身動きできない。 誰かが異常を察して助けに来るまであと十分はかかるだろう。 それまでこの天国の様な地獄を耐えねばならぬというのか。

「______」

 

お酒は二十歳になってから……そう呟くマスター、もはや流れに身を任すしかなかった。

 

 

______マスターと金時の明日はどっちだ

 

 




このあとマスターが襲われる直前で、カルデアのおかんが駆けつけて事なきを得ますが、サーヴァントたちは皆二日酔いに苦しんだんだそうな。

今回はあまり出番がなかった他の日本サーヴァントを出したかっただけなのじゃ……ストーリーもあったもんじゃないネ!

外伝清姫がなんだか評価されて嬉しい日々。 これからもちょくちょく他サーヴァント外伝を書いていきますので期待せずにお楽しみしてくれると嬉しいです。 リクエストあったらいつでもくださいね!

誤字脱字の報告毎度毎度のことありがとうございます。 ほんにたすかっちょります。
薩摩のサーヴァントはまだかのう……? それかハンニバル。
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