ファンタシースターポータブル オリジナルストーリーズ   作:きりの

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9話 序章

「だから、悪かったって!」

「死ぬとこだったんだよ!?」

「そんなこと言ったって、いい加減に説明したエミリアだって悪いじゃないか!」

「ネロがちゃんと聞いてなかったのが悪いんじゃん!旧文明人がどーのこーのとかわけのわからないこと言ってさ!」

「そんなに言うなら自分で操縦すればよかったじゃないか!」

「なによー!!女の子にやらせる気!?あんたって身長ばっかりでかくて全っ然男らしくないよね~~!」

「それは今関係ないじゃないか!……はぁ、もうやめよう。二人とも無事だったんだからそれでいいじゃないか。」

 惑星モトゥブ、「クロウドッグ」と呼ばれる地方。エミリアとネロはその目的地に辿り着いていた……のだが。その道のりは宇宙船を自動操縦に切り替えられなかったことに起因する紆余曲折により散々なものだった。小惑星に衝突しかけた時等は死を覚悟した。ちなみに無事に辿り着けたのは、すんでのところで切り替えに成功した自動操縦(オートパイロット)の功績だ。そんな訳でエミリアは使えない運転手の方に絶賛クレーム中なのである。確かに操縦技術に期待などしていない。だが、切り替え方はちゃんと教えたしマニュアルだって渡したのだ。であれば快適とまではいかなくても、安全がある程度保障された航路が約束されていたはずなのだ。目の前に小惑星が急速で迫ることも、迷って別のコロニーに着陸しかけることも無かったはずなのだ。だいたい!!

「その態度は何なの!?全然謝る気ないじゃん!納得できないんですけど!!」

「そんな、ちゃんと謝ってるじゃないか!これ以上僕にどうしろと!?」

『うるっせぇぞお前ら!!!到着したならとっとと仕事に取り掛かりやがれ!!!!』

 突如通信機から響くクラウチの怒鳴り声。やむなく一時休戦した二人は渋々船を降りるのだった。

 

「惑星モトゥブ」と聞いて多くのヒトが真っ先に思い浮かべるのは、「環境の厳しさ」、特に砂漠だろう。

 しかしエミリア達が降り立ったこのクロウドッグ地方は、特徴的な草木の生い茂る、蒸し暑い熱帯雨林に覆われている。もちろん決して安全を意味するものではない。シティからも距離のあるこの地には、豊かな自然の中で育った、これまた特徴的で力の強い原生生物達がわんさかいるのだ。本来なら、ヒトがあまり寄り付かない場所なのだが……

「おっさんはへんぴな場所って言ってたけど、そのわりには観光プラント並に船が多いじゃん。」

 船から降りたエミリアの一番の感想はそれだった。エミリア達が降り立ったのはどちらかというと岩場の目立つ開けた場所だったのだが、既にそこを埋め尽くさんとばかりに先客がいたのだ。形も色も様々な船たち。統一感の無いその様から思い浮かぶ目的といえば観光くらいのものだが、そんなに人気な場所だっただろうか?

「こんないっぱいのなかからワレリーってヒト、探し出せるのかなぁ?」

 不快な暑さに袖をまくりながらうんざりして言う。ネロの方は色々の船が珍しいのかきょろきょろ見回し、

「随分あるね。両手じゃ数えきれない。手分けして片っ端から当たろうか。」

 なんて言う。あーそーですか。やる気はあるんですか。暑さのせいか、はたまた取り掛からなければならない仕事の先が見えないせいか、航路の一件はどうでもよくなっていた。しかし内容にうんざりする横で、変にやる気を見せられても文句を言わずにはいられないエミリアなのだった。

「ていうか、なんであたしたちがおっさんの貸したものの取り立てをしなきゃならないのよ……」

「仕方ないよ。僕達もまだ下っ端だし……」

「でもいくらなんでも私的過ぎない?経費だけじゃなくて、依頼まで私物化しはじめてるよあのおっさん。誰か、ガツンと言ってくれないかなぁ……」

「それもそうだとは思うけどね……なら、僕から言ってみようか?」

「べつに、止めはしないけど、効果ないと思うよ。あたしも言ったことあるけど、まったく聞いてくれなかったもん。」

 いや、むしろあたしが言ったから、だろうか?それも仕方がないのかもしれない。クラウチにしてみればエミリアはお荷物にすぎないのだから。「ガキのお守りを押し付けた」と言い放ったクラウチの顔が蘇って更にどんよりしてくるエミリアなのだった。

「あーあ、どうしたらあのおっさんは、あたしの話を聞いてくれるようになるんだろ……?」

「……この依頼を成功させてみる、とか?」

「えぇ?そんなことであのおっさんが、急に態度変えたりすると思う?それに、あたしは戦うのとか苦手だし、調査とかも……キライだしさ。」

 って、なんの話をしてるんだ、あたし。なんだか言い訳ばかり浮かんできて埒が開かない。

「それより、ワレリーってヒトを探さないと、またおっさんがうるさいだろうし……依頼をこなさないと、話すも何もないよね。」

 手分けしますかー、なんて話していると、

 

「おい、お前達。こんなところで何してるんだ?」

 いきなり話しかけられ、エミリアは少し飛び上がってしまった。

 話しかけてきたのは、エミリアより小柄な獣人(ビースト)の少年だった。否、少年ではない。ビーストという人種の身体的な特徴と言われて、肌の色や筋肉の分厚い体格を挙げるヒトもいるだろうが、それは他の人種のヒトでも備えている可能性があるわけで、見分ける部分として最も有力なのは、獣のような形の耳や鼻だったりする。そんな獣人(ビースト)という人種には小獣人(リトルビースト)という種類が存在する。大人になっても身長が150程度にしかならないというものだ。小柄でないとできない作業に対応するために生まれたとかなんとか。エミリアも一度子供と間違えて怒られたことがある。

 今回間違えなかったのは、彼の目つき顔つきもそうだが、醸し出す雰囲気がベテランのそれだったからだろう。特有の黒い肌に緑色の目。尖った耳に猫のような形の鼻。短い金髪はかきあげて後ろに流してある。機能的で動きやすそうな服装から察するに傭兵だろうか。赤いスカーフがちょっぴりおしゃれである。

「僕達、ヒトを探しに来たんですけど……」

 驚くエミリアの横でネロが答える。

「随分と船が集まっているようですが……何かあったのですか?」

「俺たちも来たばっかで周辺を調べてるところだ。どうも、この辺りは誰もいないみたいだけどな。」

「……誰もいない?これだけ船が集まってて、誰もいないの?」

 エミリアも首を傾げる。すると、

 

「だめだよトニオ、こっちには人っ子一人居なかったよ。そっちは……あ、二人見つけたんだ?」

 話しかけてきた男性ビーストのやや後ろから、今度は同じくらいの身長の女性が駆けて来た。訝しむ様子でエミリア達を見ている。こちらも恐らく小獣人(リトルビースト)だろう。だが色は白く黒髪で、あまり獣人(ビースト)っぽくはない。獣のような耳だけが獣人(ビースト)を主張している。やはりこちらもかなり機能的な服装で、額のバンダナがちょっぴりおしゃれだ。髪は上の方でツインテールにしてある。

「残念だが、こいつらは違う。今来たばっかりの同業者だ。ヒトを探しているらしい。」

 頭を掻きながらトニオと呼ばれた男ビーストが答える。どうにも話が見えない。エミリアはとりあえず、今現れた彼女が何者なのか尋ねようと思い、手で示して問う。

「あのー、こちらは……?」

「おっと、そういや自己紹介がまだだったな。俺は『トニオ・リマ』……フリーの傭兵だ。」

 答えたのは男ビーストの方だ。やはりトニオというらしい。

「あたいは『リィナ・リマ』。夫婦で傭兵やってるんだ。」

 こちらはもちろん女ビーストの方。なんとなく察しはついていたが、しかし夫婦で、しかもフリーの傭兵というのはかなり珍しいケースなように思う。……まぁ、エミリアのような歳で傭兵をするのも珍しいには珍しいので、ヒトの事は言えないが。

「あたしたちは、リトルウィングって会社の社員です……一応。あたしはエミリア。こっちはパートナーのネロ。……えっと、あんたたちもヒト探し?」

「俺たちは、文化保護地区の見回りを頼まれてここまで来たんだよ。」

「ぶんかほごちく?」

 ネロが隣で首を傾げる。エミリアにもそれが何を意味するものなのかはわからない。呆れたトニオが溜め息をつく。

「おいおい、そんなことも知らずにここまで来たのか、お前達?」

「駆け出しだから仕方ないんですー!」

「この森の奥の方に『カーシュ族』っていう部族の集落があるの。文化保護地区っていうのは、そういうところへ必要以上にヒトが立ち入らないようにするための制度だよ。」

 むくれるエミリアにサバサバと説明してくれたのはリィナだ。

「なら、ますます誰もいないというのは不自然ですね……船もこんなにたくさん泊まっているのに……」

 聞いていたネロが冷静に分析する。確かに、理由はどうあれ、人気だからこその立ち入り規制である。ましてこれだけの船があって誰もいないというのは不自然でしかない。すると、トニオがニヤリと笑って、

「……なるほど、勘は良いみたいだ。」

 感心の声を漏らす。リィナの方は深刻そうな顔で、

「なんだか気配も異様だし、原生生物もやけに凶暴だった。奥で何かが起きてるのは、間違いなさそうだよ。」

 と見回りの結果を話す。エミリアは何だか嫌な予感がしてきた。行方知れずのヒトを探しに来てみたら、この有様である。となれば件の「ワレリー・ココフ」とその「森の奥の何か」が重なって見えるような気がしてならない。

「なんにせよ、奥に進まなければ見回りもヒト探しもできねえしな。目的も一致してるようだし、しばらく俺達と組まないか?」

 ……そんなことになるような気がした。もちろん、こうなった以上組むべきだろう。あーあ、ただのヒト探しがどんどん大事になってる気がするよ。うんざりしながらエミリアはネロに目配せをして、答えた。

「わかった。一緒に行こ。」

「よし、決まりだな。」

「とりあえず『カーシュ族』の村まで行こう。そこに行けば、何か手がかりがあるかもしれないからね。」

 リィナが方針を提案する。エミリアも賛成だ。目的地も設定せずこんな広大な熱帯雨林を探索するのは無謀だし不可能だろう。だが。

「村って、道はわかるの?」

「カーシュ族は、土地を転々と移動するから、はぐれていた仲間がわかるように森に目印を残してるんだよ。あたいはあらかじめ学んできたから、それをもとに辿ればすぐさ。」

 へー、どんなのだろう、とエミリアは適当に相槌をうつ。それならひとまず安心か。いや、凶暴な原生生物ひしめく熱帯雨林に突入するわけだから、結局エミリアは不安なのだが。

 こうして一行は、リィナが先頭に立つ形で森の中へ入って行ったのだった。

 

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