あべ☆こべ   作:カンさん

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第二十七話「イベントは準備の時の方が大変で楽しい」

 

「バースデーパーティーのお誘いですか? もちろん行くデス!」

 

 キョウは、自分とこなた、ひより三人の誕生日会にいずみとパティを誘うために教室へと来ていた。

 かがみから是非とも噂の若瀬いずみを連れて来いと圧が……ではなく、友達を誘いなさいと笑顔で言われた為、こうしてキョウはいずみを招待しに来た。

 ついでにいずみと仲が良く、最近転校してきて交流相手が少ないであろうパティも誘う。本人の気質からその辺りの心配は無さそうだが……。

 

 なお、オタクトークによって早くも一般人との隔たりが起きている事をキョウは知らない。

 

「当然行くけど……」

 

 行く気満々のパティに対して、いずみは難しそうな顔をする。

 しかしそれも無理もない。明らかにキョウの姉たちが待ち構えているのだ。わざわざ名指しで参加を促してくる所が怖い。そしてキョウがその辺の事を理解してなさそうなのが怖い。

 

「もしかして都合が悪い?」

 

 それなら仕方ない、と思いつつも一番の友達が来れないと思うと少しだけ表情を暗くさせるキョウ。

 彼としてはいずみにも来てもらって、ゆたかやみなみ、こなたたちと仲良くなって欲しいと思っているのだが……。

 

 シュン……っとなったキョウを見たいずみは、胸を抑えて悶え苦しみそうになっていた。

 好きな人の曇り顔からしか得られない栄養素がある事を最近履修したいずみ。その道はまぁまぁヤバいぞ。戻れなくなる。

 いずみの性癖が曲がりかけている事は置いておいて。

 彼女としてもキョウには笑顔で居てほしいので、悩んでいた表情を引っ込めて微笑みながら彼に言った。

 

「是非とも行かせてください!」

「本当? 無理していない?」

「ううん。楽しみだよ?」

 

 いずみのその言葉に、パァ……ッと表情を明るくさせるキョウ。

 その光景に彼らの話に耳を傾けていたクラスメイト含めて、いずみたちは絆された。可愛い男の子の笑顔はガンに効くらしい。医学的な立証はないし、これからもない。

 

「ありがとう! あ、授業が始まるから帰るねっ」

「うん。ばいばーい」

「またオ話しましょうネ!」

 

 嬉しそうに教室から去っていくキョウを見送る二人。

 彼がいなくなった後、いずみは「さて……」と悟りきった顔をすると。

 

「遺書でも書くか……」

「ワオクレイジー! いきなりどうしたのデスカ、イズミン!?」

 

 パティは知らない……超絶ブラコンに実質呼び出しされているいずみに、割と未来がないことが……。

 そしてクラスメイト達はそれを察しているが為に、キョウの誕生日会に参加したい気持ちよりも、最強のセコムに目を付けられる恐怖から逃れる選択肢を取った。

 ちなみにいずみを助けるつもりは髪の毛一本も無い。

 

 

第二十七話「イベントは準備の時の方が大変で楽しい」

 

 

 

 誕生日会はこなたの家で行われる事となった。

 その飾り付けは泉家の両親とゆたかとゆいが行い、みなみとひよりも飾り付けの作成の手伝いを買って出た。ひよりは主役の一人の為、しなくて良いと言われるも……。

 

「確かにそうっスけど、私も柊くんの事をお祝いしたいし」

 

 そうして彼女はみなみと一緒に誕生日会の準備に取り掛かり、それと並行しつつ個人でもプレゼントを用意していた。

 

 その話を聞いたキョウはこなたと話し合い、自分たちも準備を手伝うことにした。

 しかし会場である泉家の飾り付けの準備は既に人数があるので、当日の料理の献立を考える事にした。

 

 放課後、調理担当となったつかさ、こなた、キョウは話し合いを始める。

 

「とりあえずケーキはいちごで良いかな?」

「私は大丈夫~」

「ボクも田村さんも大丈夫」

 

 誕生日会の主役のケーキは決まった。

 あと残るのは……。

 

「結構な人数が居るから、好みの調査したけど」

「割と魚介系が苦手な人が多いネ!」

「お肉中心にしましょうか」

 

 参加者の好きな食べ物、嫌いな食べ物リストを見ての発言に、こなたは意外そうな顔をする。

 

「キョウくんはお肉大丈夫なの? ほら男子って肉より野菜が好きじゃん?」

 

 そういえばそうだったな、とキョウはこの世界の男性の趣味嗜好を思い出す。

 貞操観念が逆転した結果、この世界の男性は肉よりも野菜や果物を好む。油物が苦手だったり、ダイエットに積極的だったりと前世の女性に似た何かを感じる。

 尤も個人差はあり、男性でも肉が好きな人は居るし、キョウも野菜よりも肉が好きである。

 

 ちなみにこの世界の男性はお菓子は別腹と食べ過ぎて体重の増減に一喜一憂する悲しき生き物だ。

 

「全然好きですよ。いつも家族と取り合いになってます」

 

 こなたの問いに応えながらキョウは普段の食事風景を思い出す。

 自分含めて5人兄弟姉妹の柊家。そこに両親が加わると7人家族だ。

 夕食の献立がすき焼きになった日なんかは、上の姉3人の肉の取り合いが起き、キョウはつかさのお肉の確保で精いっぱいだ。

 そしてそんな弟にジト目で見られて気まずくなり顔を逸らす姉3人、というのが様式美になっている。

 

「酷い時は「名前書いてないから」って冷蔵庫のおやつを取られたりするんですよ」

「かがみお姉ちゃんは取られた事なさそう」

「流石かがみん。強欲の悪魔」

 

 そうなるとつかさは怠惰の悪魔かな、と割と酷い事を考えるキョウであった。

 

 ちなみに後日この事を話すと、百合好き眼鏡女子クラスメイトは「木冬くんは色欲の悪魔設定に!」と大興奮なされていらっしゃったので、絶対零度の目で見下してあげたとかしてないとか。

 

「ターキーレッグ準備しようか」

「なんかクリスマス会みたいだね」

「食べやすいですし、用意も簡単だから良いかなって」

「牛肉のミニステーキも用意しない? お姉ちゃん食べたいって言ってたよ」

「リクエストしてくるとは、流石かがみん食いしん坊」

 

 他にもパスタやピザ、それと出前で寿司などを頼むことになった。

 女性が多いため、お腹が膨れるメニューが必然と多くなっていく。

 参加者から参加費を預かり、その予算内に収める為に試行錯誤する3人。

 

「それにしても、こなたさんの家って何でもありますね。調理器具が」

「うんうん。うちには無い物があって助かるよ~」

「いやー、あははは。実はね」

 

 こなた曰、母であるかなたが「あれを作ってみたい」と調理器具を買っては失敗を繰り返した結果、使われず倉庫の奥底にしまわれたアーティファクトが増え続けたとか……。

 そして家事スキルが高いこなたがそれらを駆使して栄養満点かつ美味しい料理を作っているとの事。

 

「こなたさんは良いお嫁さんになりそうですね」

「ん゛ぐ……まったく、不意打ちは卑怯だよキョウくん……」

「キョウくん???」

 

 素直に賞賛した所、こなたは言葉を詰まらせて顔を赤くさせた。相変わらずアニメやエロゲから出てくるヒーローみたいで、こなたのツボを抑えるその言動に思わず萌えてしまった。しかしキョウは気付かない。

 なお、つかさはキョウの言動に危機感を覚えていた。その言動で中学で清楚ビッチ扱いされた事を覚えていないのだろうか、と思わずため息を吐いた。

 

「昔は男性が家で家事や料理をしていたんですよね?」

「そだねー。でも男児出生率の低下や身体的機能の低下を理由にやらない人が増えてきているらしいよ」

 

 それで家事代行の女性に全てを任せる人が増えているだとか。

 しかしキョウとしてはその感覚が理解できないらしく、難しい表情を浮かべる。

 

「やらなければやらないほど、どんどんできなくなると思うんですけどね。

 社会に出て働かないなら、それなりに役割を果たして欲しいと思うんですが」

「男嫌いの女みたいな考えだねキョウくん。でも男に求められるのは、子どもを作る事だからねぇ。国としてはストレスなく過ごして貰って、種の存続に協力して欲しいんだろうね」

 

 しかしそれすらも拒絶している男性が存在し、結果的に子種を提供するに留まっている人も多い。

 性行為は体力を使う為、その行為に嫌悪感を示す者が居る。

 

「でも浮気したり、昼ドラにハマったりと矛盾してません?」

「普通の男性は感情的な快楽が一番だからねぇ」

 

 対して女性は肉体的快楽を求める。

 比率が傾いている結果、それを満たせない女性が暴走する事も多々ある。

 

「難儀な話です」

「うん……って、何で誕生日会の準備から、こんな話になっているの??」

 

 ちなみにつかさは途中から話に着いていけずボーっとしていた。

 ……いつもかがみやキョウと一緒にテレビ番組やニュースを見ているのに、何故此処までの差ができたのか、キョウは不思議に思った。

 

「そういえば誕生日プレゼントは用意したの?」

「主役がそれを聞きます? 乞食したらダメですよ」

「いや、君も主役! それに私は貰える物は貰うし、それが良い物だったら素直に喜ぶタイプ!」

「相変わらずの強欲ですね。うちの姉と負けず劣らず」

 

 呆れたように言いながらも、キョウはしっかりとこなたとひよりへの誕生日プレゼントを用意している。

 どちらも似た人種だった為、同じ店で買う事ができた。

 ただ、やはり男の子がそういう店に行くのが珍しいのか、たくさんの視線が彼を貫いた。

 こなたの家で漫画やアニメを見ている為、彼自身は違和感は無かったが周囲はそうでもなかった様で……。

 

「私もちゃんと用意しているから、楽しみにしておいてね!」

「おー! ありがとうねつかさ~。うーん、つかさが男の子だったら迷いなくアタックしているのに」

「あははは。こなちゃん変なこと言ってる~」

 

 いつものじゃれ合いに、つかさとキョウは苦笑していた。

 

「……ふむ」

 

 しかしふと、キョウはこなたとつかさがイチャイチャしている所をイメージした。

 以前こなたの部屋で、彼女の父そうじろうの好む漫画が紛れ込んでおりそれを読んでしまったのだ。

 それは女の子同士が恋愛をする漫画で、前世でそういうのがあるのを知っていたし、嗜んでいた。

 

 だから、まぁ、目の前で可愛い女の子同士の絡み合いを見ると、そういう妄想をするのは必然であり……。

 

「……」

「あの……キョウくん? 流石に冗談だからね? それとナマモノを、しかも本人を前に妄想するのは辞めよう??? しかも実の姉でさ?」

「ナマモノ? モウソウ?」

 

 自分が引き摺り込んで、成長させた身としては強く言えないが、着実に腐男子としての道を歩んでいる事実に複雑な気持ちを抱くこなたであった。

 

 なお、この事がバレればこなたは粛清されるだろう。

 誰にかはお察しである。

 

「あっ、献立決まったから買い出し班に伝えてくるね?」

「うん、よろしく~」

 

 携帯を片手に教室から去っていくつかさ。

 買い出し班はかがみとみゆきだが、今は別件で学校に居ない。思っていたよりも量が増えた為、ヘルプが必要かどうかを聞く必要がある。その確認はつかさに頼んだが……少し心配だなと思いつつ、こなたとキョウは見送った。

 

「最近家のパソコンでアニメを見ているんですが」

「うんうん」

「配信サイトのアカウントを家族で共有しているのですが……」

「あっ……」

 

 こなたが察した通り、割とディープなアニメを見ているキョウの事を家族が心配しているらしい。かがみが説明して事なきを得たが……。

 

「まぁ、理解されにくい世界だよ」

「いや、というよりもですね」

「ん?」

「父と母が、ボクが見ているアニメを見ているらしくて……」

「……わーお」

 

 気付いた時、すごく驚いたのをキョウは今でも覚えている。

 

「ちなみにどんなのを見ているの?」

「母はジャン〇系作品を見てますね。多分分かりやすいから」

 

 そっち系の趣味嗜好に興味があるとは思っていなかった為、キョウは5度見くらいした。居間にある共有パソコンの前で母が「スマ――っシュ!!」と叫びながら技を繰り出す女の子を見ていたのを5度見した。

 

「仕事一筋って思っていたから余計に……」

「意外な一面ってびっくりするよね……ちなみにお父さんは?」

 

 理解を示しつつも、次の話題へと移るべく質問したこなただったが……キョウは押し黙った。

 あれ? 聞いたらダメだった? と思っていると。

 

「なろう異世界系……ですね」

「え? マジ?」

「はい。しかもチーレム系を見ているようで……その、なんて言ったら」

 

 5度見どころか、その場で停止してしまった事を彼は忘れないだろう。

 キョウは異世界に転生もしくは転移して、チートを使って無双して、男の子たちに好かれてハーレムを築く。

 正直言ってキツかった。そして親がそれを見てるのもキツかった。

 

「父親に、面白い作品薦めた方が良いですかね……」

「多分手遅れだから、そっとしておきなよ」

 

 自分は布教が成功したが、キョウは事故っているな、とこなたは苦笑する。

 

「そういえば最近はどんなの見てるのキョウくんは?」

「『お姉ちゃんはおねむです』『リリベル・リコイル』『ソロ・ザ・ロック』とかですね」

「なるほどー。それが見終わったらまたオススメ教えるね?」

 

 ちなみにオススメする予定の作品は、勇者一行のエルフの魔法使いの男の子が旅をするアニメや、薬の知識が豊富な男の子が主人公のアニメ、さらに男女比が同じという異世界で彼氏100人を愛す女の子が主人公のアニメを薦める予定だった。

 

「お願いします。あ、それとあの作品見ましたよ。呪いのやつ。また一期ですけど」

「あー、あれね。好きなキャラは居るの?」

「六条さと子とハチミンですね。最強で顔が良くて性格の悪い子ってのが結構ツボでした。あとハチミンはブラック務めながらも、結局は優しいところが好きです。主人公との絡みも良いですね。原作追おうかな」

 

 こなたは、やべーなこれと思いつつもネタバレをしなかった。

 オタクにとっては絶対にしてはいけない行為だ。

 別に絶望に咽び泣く所を見たい訳ではない。無いったらない。

 

「今後も彼女たちの活躍が楽しみです」

「――うん! アニメと原作見たら、ぜひ感想聞かせてね!」

 

 後日、アニメ二期を見ていたキョウは絶叫してかがみが駆けつけて、原作を読み進めてさらに絶叫してつかさが駆けつけて、彼はあまりにもあんまりな展開に一日寝込んだ。

 そしてその翌日、昼休憩時間の時にこなたの教室に駆けこんだとかしていないとか。

 

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