ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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第11話 反撃準備

「おおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

右に左に体を動かす、そうする度に自分に足りないものが解る気がした

 

「オラオラオラ!かかって来いよ!」

 

力が足りないなら腕を振るえばいい、器用が足りないなら《スキル》を使えばいい

 

「ガッ!・・・チッ、クソが!」

 

耐久が足りないなら攻撃を受ければいい、敏捷が足りないなら速く動けばいい、魔力が足りないなら魔法を使えばいい

 

「まだまだぁ、俺の力はこんなもんじゃねぇぞ!」

 

聞こえる聞こえる足りないものが、教えてくれる、背中の熱が・・・

 

「テメェら全員ブッ倒してやるから覚悟しやがれ!」

 

『『『『『『『『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』』』』』』』』』』』

 

 

場所はダンジョン37階層にある大型空間、通称闘技場(コロシアム)。黒い少年、黒鐘 色(くろがね しき)はたった一人で100体以上のモンスターの群れと激闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇな」

 

「え、ええ」

 

目の前の光景を唖然と見ながら、ベートとリオンは呟いた。時にはを飛び、時には駆け抜け、時には暴風を起こしモンスターを足止めする。縦横無尽に動きながら戦っているその光景は、人の戦いなんてものではなく、まるで色自身がモンスターになって戦っているかの様に見えた。

 

「ここに来て5日目になりますが、初日とは全く違う動きですね」

 

「ああ、ていうかあんな動き普通の人間じゃできねぇよ、ほれ、見てみろ、今なんて空中で直角に曲がってんぞ」

 

その姿を見てリオンの顔は引きつった、初日の頃はまだ人の動きをしていたのだ、普通に拳を振りぬき、蹴りを放ち、電撃を放つ、しかし、やはり37階層の『バーバリアン』や『オブシディアン・ソルジャー』には歯が立たず、吹き飛ばされては慌てて万能薬(エリクサー)を使っていた。もうやめようと止めたのだが、色は言う事を聞かず、それから何度も闘技場(コロシアム)に突っ込んでった。

 

変化があったのは次の日から、色の戦い方が劇的に変化した。まず手を地面に置いて、両手両足を使い、獣の様な戦い方になった、次に風を操っているのだが、それも攻撃には使わず、自身を浮かべたり、空を飛んだり、目くらましに砂埃を起こしたりするだけ、そしてこれが一番重要な事。

 

「よく避けてやがんな」

 

「ええ、まるで後ろに目でも付いているかの様です」

 

初日は素早いモンスターの攻撃に反応できずにボロボロになっていたのに、2日目には掠る程度に、3日目には殆ど躱せるようにまでなっていたのだ、それも正面からの攻撃だけじゃなく、死角からの攻撃まで避けれるようになっていた。そして5日目、その動きは最早、人の動きとは思えない程に不規則で、非常識なものになっている

 

「魔法の応用と言われてましたけど、本当にそんな事が可能なのでしょうか?」

 

「俺が知るかよ、あいつが人間かどうかも怪しくなってきてんだぞ。おいおい、なんであんな体制からの攻撃で『バーバリアン』を倒せるほどの威力になんだよ」

 

目を移すと明らかに体制を崩しながら放たれた裏拳が『バーバリアン』の魔石を打ち砕いていた。

 

「おっと、もうこんな時間だ、そろそろご飯作らなきゃ」

 

「あ、私も手伝います」

 

そうやって見ている内に、ミィシャとレフィーヤが外の時間が解る特殊な魔道具を見て、昼食を作るためにルームの片隅に向かっていった。

 

「それにしても、やはりおかしい、どうして色さんの所にだけモンスターが寄って来て、私たちの所には一切来ないのでしょうか?」

 

ダンジョンに入り、全速力で下層を目指している時から問題は起きていた。モンスターが異常な程、群れて襲って来たのだ、もしこの場にベートが居なかったら全滅していたと思えるぐらいに。そしてこの階層に来てからは、異常の質が変わった、モンスターは群れているが、襲うのは色だけという、あり得ない事態が起きていた。

 

「別にいいじゃねぇか、ギルドの女守る必要もねぇし、鴉の奴もそれを望んでたんだろ?」

 

「え、ええ、確かにそうですが」

 

リオンは思い出す、この階層に来るまでの事を

 

 

 

 

 

「んだこれぇ!こんなモンスターの群れ方見た事ねぇぞ!」

 

「クッ!流石に数が多い!」

 

30階層に差し掛かったあたり、色率いるパーティは、数えることも馬鹿らしくなるほどの『ブラッドサウルス』の群れに遭遇していた

 

「ひぃぃぃ!やっぱり来なきゃよかったぁ!」

 

「ちょっ、ミィシャさん!?詠唱が出来ないので掴まないでください!?」

 

ベートとリオンが『ブラットサウルス』の群れに突っ込み、レフィーヤが詠唱する、最早何回行われたのかも解らない程、繰返されてきた行動に、もちろん色も参加していた。

 

『グガァァァァ』

 

「ベクトルパンチ!」

 

『ギャッ!』

 

その光景は階層主(ゴライアス)との戦いを見て居なければ目を疑っていただろう、30階層のモンスターの突進をLv.2になったばかりの人間がはじき返しているのだから。

 

「テメェ、本当にLv.2なんだろうな?」

 

「Lv.2ですって、それより早く次の階層に行きましょう、此処のモンスターじゃ足りません」

 

ベートにされた質問にあっさりと答え、『ブラットサウルス』を全滅した後、色はパーティの皆にさらに下に行くことを告げる

 

「まだ、下に行くんですか?」

 

「すみません、せめて俺の《スキル》を突破出来るぐらいのモンスターじゃないと意味がないので」

 

そう言いながら走り出す色のスピードは、やはりLv.2とは思えないぐらい速かった。

 

「チッ!しゃぁねぇ、行くぞ女」

 

「ちょっ待って!心の準備がぁぁぁぁ!」

 

「それじゃあ行きましょうか、ウィリディスさん」

 

「は、はい、よろしくお願いします。」

 

色を追いかける為、ベートはミィシャを担ぎ、リオンがレフィーヤを背負う。これが、敏捷が足りないレフィーヤと神の眷属ではないミィシャを入れたパーティの、最速の行動方法だった。そしてたどり着いた37階層、『白宮殿(ホワイトパレス)』で色は始めて『バーバリアン』から攻撃を貰い、そしてその時言われたのだ「ここから先は俺一人で戦わせてください」と・・・

 

 

 

 

 

「なぁエルフ、テメェ鴉の事どう思う」

 

「ヘッ!?い、いきなり何を?」

 

闘技場(コロシアム)で戦っている色から全く視線を外さずに問い掛けてくるベートに、リオンは酷く動揺しながら答えた。

 

「そ、それは、大切な人だとは思ってますよ?って、いえいえ別に深い意味は無くてですね!え、えーとなんて言うべきで「アイズが」・・・へっ?」

 

「アイズがあいつに言った事、お前は聞いたか?」

 

「ええ、貴方は冒険者を侮辱している、貴方を私は認めない、でしたか、その他にも色々言われた事は色さんから聞いています」

 

ベートの顔は色に向けられている、しかしその瞳の奥にはきっと違う存在が居るのだろうと、リオンは思った。

 

「アイツは、アイズはそんな事を言うような女じゃねぇんだ、確かに鴉の野郎の戦い方は無茶苦茶だし、意味が解んねぇ力もってっけど・・・」

 

そこでベートが言葉を切らした、疑問に思ったリオンが振り向くと、料理を作っていた二人がこっちに向かって手を降っていた。狼人(フェアウルフ)の聴覚で二人の声が聞こえたらしい

 

「ローガさん?」

 

「チッ、なんでもねぇ」

 

それだけ言い残し、ベートは色を呼ぶために、闘技場(コロッセオ)の中に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

「モグモグ、ほふふへふふふ?」

 

「飯飲み込んでから喋れや鴉」

 

「はい色君、水だよ」

 

「ングング、ぷはぁ、ありがとうミィシャさん。こほん、今日で最終日でいいですか?」

 

ミィシャさんから貰った水で口の中にあったサンドイッチを飲み、ここまで付き合ってくれた皆に確認する。

 

「そうですね、後五時間ほどで帰らないと少し危ないかもしれません」

 

レフィーヤがそう言って視線を移した方向を見ると、時間を測るための砂時計型の魔道具の砂が残り少なくなっていた

 

「よし、それじゃあ最後の追い込みと行きますか!」

 

そう言って立ち上がった俺だが、リオンさんに肩を押さえつけられ止められる。あの、動けないんですが?

 

「色さん、貴方は少し戦いすぎです、今日ぐらいは体を休められては?」

 

「そうですよ、初日からずっと戦ってるか、寝てるかじゃないですか。帰るときに倒れられたら、こっちが困るんですから今日ぐらいはキチンと体を休ませて下さい」

 

困ったように言ってくるリオンさんに、すかさずレフィーヤが同意する。俺としては【ロキ・ファミリア】から支給された万能薬(エリクサー)やマインドポーションを惜しげもなく使っているので、まだまだ戦えると思うのだが、両脇をガッチリホールドされ、厳しい視線を送ってくる女子達に逆らえる訳もなく、渋々上げていた腰を下ろした。

 

「それじゃ、何します?」

 

「黙って寝とけ、糞鴉」

 

ベートさんが周囲を警戒しながら、ぶっきらぼうにそう言ってくる、この数日一緒にいて解ったのだが、この人は凄く自分の気持ちを伝えるのが苦手みたいだ

 

「えーそれじゃ、つまらないじゃないですか。あ、そう言えば、どうしてミィシャさんはダンジョンに着いてこようと思ったんですか?」

 

「うぇ!?わたし?」

 

今まで戦うのに必死で聞けなかった事を聞いてみようと思ったのだが、ミィシャさんは持っていたサンドイッチを落としそうになっていた、どうして動揺してるのだろうか?因みにベートさんも気になっていたいなのか、目を瞑り、黙認するポーズをとっている

 

「え、えーとほら、地上でまた【アポロン・ファミリア】に捕まったら危ないからだよ」

 

「えっ!?【アポロン・ファミリア】ってギルド局員のミィシャさんにまで危害を加えたんですか!?それって重罪じゃないんですか?」

 

「へっ!?・・・えっ、えーと・・・あの時は私服だったし、私がギルド局員って解らなかったんじゃないかな?」

 

あははー、とひきつった笑みを浮かべるミィシャさんにレフィーヤが、それでも今から報告すれば、と食いつこうとするが、意外にもそれを止めたのはベートさんだった。

 

「おい、女」

 

「えっ、どうしたんですか?ベートさん?」

 

言葉を途中で止められたレフィーヤは、ベートさんに困惑の表情を浮かべた、何故なら、ベートさんがミィシャさんに少しだけ殺気を放っていたからだ。

 

「ちょっ!ベートさん!?」

 

立ち上がり、止めるよう言おうとした俺は、横から出されたリオンさんの腕に止められた

 

「リオンさん?」

 

「・・・・」

 

無言で横に首を降るリオンさんに俺は更に困惑する

 

「な、何ですか?」

 

おそらく、初めての殺気に若干震えながら声を出したミィシャさんに、ベートさんは少しずつ近づき、眉間にシワを寄せて見下ろしながら喋り出す

 

「てめぇ、【アポロン・ファミリア】と繋がってんじゃねぇだろうな?」

 

「何言ってるんですか!?そんなわけないでしょ!」

 

「いえ、色さん、実際に彼女は怪しい、話を聞いた限りでは、あまりにも出来すぎている」

 

言い返そうとする俺に、目を細めながらリオンさんは説明する。ギルドの職務を理由に俺を連れ出した事、そして狙い済ましたように人気のない所で襲われた事、捕らわれたのも俺の隙を作り出す演技では無いのか。

 

「大体ギルド職員ならどんな事情があろうと、この事を真っ先にギルドに報告すべきだ、それもせずに、わざわざ危険なダンジョンに着いて来たのは【アポロン・ファミリア】に色さんの情報を渡すためでは無いのですか?大方色さんの《スキル》の全容を相手が知っていたのもギルド局員の貴方が情報をリークしていたのなら説明できます。さぁどうなんですか?今までわざと泳がしていましたが、観念して全て吐きなさい」

 

そう言ってリオンさんはミィシャさんに木刀を突き付けた、ベートさんの方を見ると、言いたいことを全部言われたからか頬が若干ひきつっている。レフィーヤはずっとオロオロしていた。そして長い沈黙の後、ミィシャさんの口が動く

 

「ご・・・」

 

「「「ご?」」」

 

「ごめんなざい〜、だっでじぎぐんがボロボロになっで、グスッぞれでもダンジョンいぐっでいうがら!ヒック、心配だったんだもん!うわぁぁぁぁぁぁん!」

 

「え、えーと・・・ええ?」

 

「お、おい」

 

謝りながら泣き出したミィシャさんに、リオンさんだけではなく、鋭い目で睨んでいたベートさんも困惑の声を上げた、リオンさんの話は確かに的を得ていたのかもしれないが、まぁ時間が無くて、詳しい説明をしなかった俺が悪いのだ、今からミィシャに掛かっている疑いを晴らすとしましょうか。

 

「あー、リオンさん、一応俺の《スキル》の能力がバレてたのはですね、うちの神様が神会(デナトゥス)で、アポロンに話したからなので、ミィシャさんは関係ありませんし、人気の無い所を進んでたのは俺の個人的な事情なので、多分教会からずっと付けられてただけじゃ無いのかなーって思うのですが?」

 

そう、あの時の俺は二日酔いの中、あの二つ名を連呼されるのを嫌がり、ミィシャさんを連れて、わざわざ人の少ない道からギルドに行こうとしていたのだ、それにベル達が襲われた時は問答無用で魔法を撃たれたと聞いたし、もしかしたら、俺の時もそうする予定だったのが、ミィシャさんが居たことで逆に警戒して、あの路地裏で襲撃する事になったのかもしれない。

 

「それに、ミィシャさんが【アポロン・ファミリア】と繋がっていない証拠もあります」

 

「し、証拠ですか?」

 

リオンさんは誤解だと思い始めたのか、冷や汗をかきながら俺の言葉に耳を傾ける

 

「書置きですよ、恥ずかしながら俺はこの間まで文字が書けなかったんですよね、それを知っているミィシャさんが仲間なら、わざわざ俺が書置きを置いたように見せる訳が無いじゃないですか」

 

「えっと、そうなのですか?でもですね・・・えっと・・・う、疑ってすいませんでした!」

 

俺の話を聞いたリオンさんは、レフィーヤに泣きながら慰めてもらっているミィシャさんに、地面に顔が当たるんじゃないかという勢いでお辞儀した。

 

「ほら、リオンさんも謝ったんですから、ベートさんも謝って下さい」

 

「・・・悪かったな」

 

ボソッと呟かれた言葉に苦笑いする。どうやら誤解は解けたようだ

 

「ミィシャさん、誤解が解けましたよー」

 

レフィーヤとに抱き着いているミィシャさんに声を掛けに行くと、泣きすぎて腫れた目で此方を見て来た

 

「じぎぐぅん」

 

「はいはい、怖かったですね」

 

きっと始めて来たダンジョンにストレスなども感じていたのだろう、抱き着いて来るミィシャさんの頭を撫でることにする。わんわん泣き出したミィシャさんをリオンさんとベートさんの二人は気まずそうに見ていた。

 

「これで一件落着ですね、それじゃあ、色さんはゆっくり休ん・・・で」

 

締めようとするレフィーヤの言葉が固まった、視線は俺達の後ろ側、闘技場(コロッセオ)の方に固定されている

 

「どうしたんだよ、レフィー・・・ヤ」

 

「は?」

 

「おいおい」

 

その視線を追った俺達も固まった、何故ならそこには

 

『オオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

37階層に君臨する『迷宮の孤王(モンスターレックス)』。ウダイオスの漆黒の巨体がモンスター犇めく闘技場(コロッセオ)の中心に存在していたからだ。

 

「えっと、色さん?これも一人で?」

 

「あ、無理です。というわけでミィシャさん離れて貰えます?」

 

「ブクブクブク」

 

「ミィシャさぁぁぁぁん!」

 

「ほっとけ、気絶しているだけだ」

 

「このルームの出入り口に置いたモンスター避けは、今までしっかり機能していたので寝かして置いても安全かと、それよりも今は『迷宮の孤王(モンスターレックス)』に集中しましょう、明らかに此方に狙いを定めている」

 

「しっかりしろよレフィーヤ、言っとくが雑魚を庇ってる余裕はねぇぞ」

 

「色さん、申し訳ありませんが休憩は無くなりそうです。ウィリディスさん、大丈夫ですか?」

 

「は、はい!大丈夫です、私はつよい、私はつよい」

 

「俺が一番 Lv.低いんだけど誰も心配してくれない件について・・・よし!それじゃあ行きますか」

 

「はい」

 

「ええ」

 

「チッ」

 

『ルゥオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 

俺の掛け声とともにミィシャさん以外の全員が闘技場(コロッセオ)の中心で雄たけびを上げるウダイオスに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、よく無事でいられましたね」

 

「マジで死ぬかと思ったけどな、無事に帰って来られてよかったぜ」

 

「さ、流石は色殿ですね」

 

揺れる馬車の中、久しぶりに集まった俺達、怪物進撃(デス・パレード)+αは、それぞれの今までの近状について語り合っていた

 

「それにしても、まさか命ちゃんまで【ヘスティア・ファミリア】に入ってくれるとは思わなかったぜ」

 

「命ちゃ・・・い、いえ、あの時千草の命を救って貰ったのですから、そのご恩に報いることは当たり前の事です」

 

そう言って頭を下げてくる命ちゃんに苦笑いで「気にしなくていいよ~」と返した、あれは助けたと言うより、何時もみたいに群れで来たモンスターを倒しただけだ、感謝されるのはいいが『改宗(コンバージョン)』までしてくれたとなると、なんか重い気がする

 

「リリもヴェルフも【ヘスティア・ファミリア】に『改宗(コンバージョン)』しくれてよかったな、ベル」

 

「うん、本当に皆ありがとう」

 

「気にしないでください、ベル様」

 

「そうですよ、ベル殿」

 

「全くだ、ほら、約束してた短剣(ナイフ)だ。一代目より切れ味は抜群だ、保証する」

 

「ありがとう」

 

「なぁヴェルフ、俺にも今度何か作ってくれよ」

 

「いいぞ、何でも言ってくれ」

 

「それじゃあ、馬車に乗っている間に作戦を決めたいと思いますので、各自、自分の【ステイタス】と出来ることを教えて貰っていいですか?」

 

リリの言葉を受けた皆はそれぞれの【ステイタス】など他に、自身の出来る事等の情報を交換していく

 

「ヴェルフ殿、例の物は?」

 

「五本用意してある」

 

「あの短い期間でよくそんなに作れましたね」

 

「いや、少し思うところがあってな、中層に帰ってから作り続けてたんだ。まさしく功を成したってやつだな」

 

「まてまて、例の物ってなんだよ、俺は何も聞いてないぞ?」

 

「ああ、そう言えば色にヴェルフが魔剣を作れる事を教えてなかったっけ」

 

「魔剣!?ヴェルフって魔剣作れるのか?」

 

「応、と言っても・・・いや、何でもねぇ。リリスケ作戦は?」

 

その言葉で、この場にいる全員が小さな小人族(パルゥム)に向き直った。

 

「そうですね、まず、【ヘスティア・ファミリア】の全力はこんな所で出さなくてもいいと、リリは考えています」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「色様は新しい魔法は使わない様に、リリも魔法を使いません。ベル様も出来る限りでいいので手加減を、魔剣はリリと命様で使います」

 

「まてまて」

 

「えっと、リリ殿?」

 

「いいですか、皆さんの【ステイタス】を拝見し、これからの事を考えた結果、重要なのはこれが【ヘスティア・ファミリア】の戦い方だとオラリオの全員に思わせる事です」

 

「えっと、それって・・・」

 

「ですので少し強引に行きたいと思います。そう、真正面から城を落しましょう」

 

「「「「・・・・」」」」

 

そこで笑顔を見せるリリに一同は戦慄した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずいぶん早いじゃないか、ヘスティア」

 

「アポロンか」

 

白亜の巨塔『バベル』30階、ベル達を見送ったヘスティアは誰よりも早く戦争遊戯(ウォーゲーム)を観戦する此処に来ていた、その後ろから今回の仇敵、アポロンに声を掛けられる

 

「話は聞いたよ、随分とボクの眷属を痛めつけてくれたじゃないか」

 

「そうだな、あの時神会(デナトゥス)に参加していてよかったと心から思うよ」

 

怒気を含ませるヘスティアにアポロンは平然とそう返した。

 

「私はね、眷属たちに全力を持って黒鐘 色を捕らえろと命じたんだ、そして我が子達は君から聞いた《スキル》の内容と水晶に映った情報を下に戦略を練り、魔剣、道具、人員・・・万全な状態をもって事に移ったと聞いている、それでも失敗したがね」

 

「そうだよ、あの時知り合いのエルフ君が偶々通りかからなかったら、どうなっていた事やら」

 

ヘスティアはそう言ってアポロンの顔を覗き込み、自身がこれまで勘違いをしていたことに気付いた。今までアポロンが色を狙ったのは例の男色趣味だと思っていたのだ。しかし今のアポロンの表情は狙った獲物を逃したような【悲愛(ファルス)】の名を冠したものでは無く、憎むべき敵を打てなかったような禍々しい表情をしていた。

 

「ヘスティア、私は美の女神とまではいかないが、少なからず観察眼は備えているつもりだ、そして私が見るからに、あんな物はこれ以上オラリオに、いや、この世界に存在すべきではない」

 

「オイ」

 

その言葉を聞いたヘスティアの怒りにより、その小さな体から神威が漏れ出した。並みの眷属なら気絶するほどのレベルのそれを、同じ神のアポロンは、同じように神威を持って対抗する。

 

「これは忠告だ、今すぐあの鴉を捨てろ」

 

「断る、どんなことがあろうと色君はボクの大切な子供だ」

 

拮抗する神威は膨れ上がっていくが、一人の神によって止められた

 

「何やっとるんや、お前らが戦ったら代理戦争の意味ないやろ」

 

「ロキか、まぁいい、どの道この戦争遊戯(ウォーゲーム)で眷属には鴉を殺せと伝えてある。出来なかったとしても君を殺した後にどうとでも出来る、それまでの短い命、大切に使いたまえ」

 

「勝つのはボク達だ、君の方こそ首を洗って待っているんだね!」

 

「なんやなんや、殺すとか殺さんとか物騒やな」

 

歩いて行くアポロンを見送るロキは、神威を収めたヘスティアに向き直り笑顔で話しかけてくる

 

「なぁドチビ、うちのベートとレフィーヤ貸してやった成果でたんか?因みにベートの奴はLv.6になりおったで、おおきにな!」

 

なっはっはっ、と笑いながら肩を叩いて来るロキにヘスティアは鬱陶しそうに青い瞳を細めた

 

「キミがボクに協力するなんて、いったいどういう風の吹き回しだったんだい?」

 

「あん?聞いてへんかったんか?あの子が欲しかった酒、まけてくれたお礼やで?」

 

そう言って笑みを深めてくるロキにヘスティアはジト目で返した

 

「へぇ、ボクはてっきりヴァレン某との事だと思っていたよ」

 

ヘスティアの言葉を聞いたロキは作っていた笑みを消し、ヘスティアに近寄る

 

「なぁドチビ、うちのアイズたんが、おかしなことになっとるんやけど、お前なんか知っとるやろ?」

 

「確証はないけど心当たりならあるよ、ボクもその事で君に話さなくちゃいけないと思ってたんだ。ただしこれだけは約束してほしい、この事は他言無用で頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなぁ、レベルアップまでの最適化、その最適化の中にうちのアイズが含まれとるっちゅう訳かい」

 

「多分だけどね、ボクの目から見ても、君の所の『剣姫』はいきなり乱暴を働くような子じゃないってのは解るよ。それなのにいきなり色君に暴力を振るい、そのおかげで色君の【ステイタス】が大幅に伸びている。それとボクやキミ、神が来るとすぐに喧嘩が止まったのは【幻想御手(レベルアッパー)】が能力(ステイタス)を封印されるのを嫌がったからじゃないかな」

 

ロキはその細い目を僅かに開かせた

 

「なんや、ドチビは色君の《スキル》が意志を持っとるって言いたいんか?」

 

神妙にうなずくヘスティアに、ここまで色の《スキル》、【幻想御手(レベルアッパー)】の説明を聞いていたロキは呆れたように肩を竦めた

 

「冗談も大概にせぇよ、確かに水晶の映像を見た限りでは妙にモンスターが群れとったりアイズがおかしくなったりしたけどな、《スキル》に出来ることなんて百歩譲ってそれぐらいまでや、《スキル》が意志を持ってるなんて言い過ぎとちゃうんか?」

 

ヘスティアは俯き、考える素振りを見せた後、ロキに向かって顔を上げた

 

「確かに、考えすぎかもしれないね、でもヴァレン某が【幻想御手(レベルアッパー)】から何かしらの影響を受けて、色君に攻撃をしているのはほぼ確実だと思うよ」

 

「まぁ、Lv.2の子のスキルがLv.6のアイズたんに影響してるちゅうのは嘘くさいけど、今の所それしか説明つかへんな」

 

「うん、それで君にお願いしたいんだけど、出来るだけ『剣姫』を色君に近づけない様に出来ないかい?ダンジョンに行く日程でも教えて貰えれば適当に理由を付けて、ずらそうと思うんだ」

 

「いやや」

 

「なッ!?で、でもキミは色くんの事を案外気に入っているみたいじゃないか、それとも色君が君の所の『剣姫』にボコボコにされるのを黙ってみているというのかい?」

 

必死になるヘスティアにロキは満面の笑顔で近づいていく、その不気味さにヘスティアは思わず後ずさった

 

「そうやドチビ、うちはあの子の事を気に入ってる、こういうのなんて言うんやろな、一目惚れやったか。だってしょうがないやろ?あの子は神ですら見極められへん何かを持っとるんやからな」

 

「そ、それは【幻想御手(レベルアッパー)】の事じゃ「ちゃうやろ。ドチビ」・・・うっ」

 

気付けばヘスティアは壁際に追い詰められていた、そんなヘスティアを逃がさない様にロキは壁に手を付き、話し出す

 

「お前色君を入団させた後に他の神に変な事聞いて回っとったみたいやなぁ」

 

「へ、変な事?」

 

ロキは徐々に顔を近づ得ていき、ヘスティアの耳元で囁いた

 

「・・・異世界について」

 

ビクッ、とヘスティアの肩が揺れた。その反応で満足したのか、ロキはヘスティアから離れ、背を向けて歩き出す

 

「うちは知っての通り退屈が死ぬほど嫌いや、そんであの子がいる限り退屈なんてもんは無縁やって勘が言っとる」

 

そこまで言うとロキは足を止め、顔だけをヘスティアに向けた

 

「近いうちに色君貰いに行くからそん時はよろしくな、ヘスティア」

 

白亜の巨塔『バベル』30階、赤髪の女神の唐突な宣戦布告に、ロリ巨乳の女神は何も返せず、呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告と内容が違った・・・


改めて次回 アポロンファミリアをオーバーk・・・いや、みなまで言うまい
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