ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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感性が多少狂ったベル視点が多いです。


沢山のお気に入りありがとうございます。

PC壊れてスマホ投稿で若干遅くなりますが。これからも見ていてくれたら幸いです。


第23話 この素晴らしい白兎にファミリアを!

人気のない裏道で全身からプスプスと煙を出して倒れているドワーフとエルフの二人を手を鳴らしながら僕は見下ろした。

 

「ベル君強!?て、ドルムルさんにルヴィスさん!?」

 

ストーカー被害にあっているエイナさんにボディーガードを頼まれたのだが。どうやら僕が瞬殺した二人はエイナさんの知り合いだったらしい。

 

気絶している二人を縄で縛りながら話を聞くと。この二人はエイナさんに、お世話になっているLv.3の冒険者みたいだ。しかし日々のダンジョン探索や色達との模擬戦で気配に対して鋭敏になっている僕には少し甘く感じた。あれだけ視線に殺気を乗せていたら奇襲してくれ、と言っているようなものだ。

 

「それでどうしますか?ギルドに突き出しますか?」

 

「そ、そうね。そうしましょう」

 

顔色を悪くしたエイナさんが申し訳なさそうに、そう言ってくる。知り合いがストーカーだった事が、かなりショックだったのかもしれない。

 

さて

 

「エイナさん、少しだけ待っててくれませんか?」

 

「え?うん、いいけど・・・」

 

戸惑うエイナさんを残して僕は一飛びで屋根の上に跳躍、逃げようとしている二つの人影を掴んだ。

 

「ちゃあんと気づいてましたよ。貴方達の愉悦を含んだ視線も」

 

「「!?」」

 

その後、二柱の神様を退屈しのぎにストーカーに仕立てあげられた二人に引き渡し、この事件は一件落着した。

 

その次の日

 

「ごめんベル君。今からあの二人尾行するからついてきて」

 

「はい?」

 

何故かエイナさんがストーカーになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は黒髪と桃髪を揺らしながら、オラリオの西方面へ向かっている。

 

ただし色がミィシャさんをお姫様抱っこしながら疾走している為、尾行は困難を極めた。

 

「あの、大丈夫ですか?エイナさん」

 

「だ、大丈夫。大丈夫よベル君」

 

勿論、あの二人を尾行するには、それに追い付くスピードが必要になってくる為、只今僕はエイナさんをおぶりながら追いかけているのだ。

 

お姫様抱っこ?しないよ?

 

「どうやら二人は此処に入った見たいですね」

 

「え、ええ。そうね」

 

乱れた髪を整えながらエイナさんが見上げた先には最近出来たらしいカフェっぽいのが建っていた。

 

中に入ると落ち着いた音楽とコーヒーの香りが僕とエイナさんを包んだ。何処に座ってもいいらしいので二人をギリギリ視界に捉えられる所に腰を落ち着かせる。

 

「それで、どうして色とミィシャさんを尾行する事になったんですか?」

 

水が入ったコップを置いたウェイトレスに取り敢えず飲み物を二人分注文して、待っている間にいきなりだったので聞けなかった事をエイナさんに聞くと。

 

「えっと、それはね」

 

珍しく僕から視線を逸らしながらポツポツと話してくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は僕ら【ヘスティア・ファミリア】がちょうど長期休暇に入った頃。

 

ギルドではある話題で持ちきりだったらしい

 

その話題と言うのが、ミィシャさんに男が出来たのではないか、という噂だ。

 

理由としては朝早くに来て仕事を異常な程早く終わらして帰ったり、ギルドのトップの人に不定期な休みを入れて貰ってたり。

 

しかしそれだけでは彼氏が出来たかどうかには繋がらないだろう。だから今まではギルドの人達は何にも言わなかったらしいのだが。ある事が判明したのを切欠にその噂が浮上した。

 

それは、ミィシャさんが休みを貰う日は必ず【ヘスティア・ファミリア】の休息日と被っているという事だ。

 

僕らが長期休暇を取る日程と被せるようにミィシャさんも休みを取ったのだから、あのファミリアの誰かと付き合っているのは確定らしい。

 

そして今日、その付き合っている相手を確かめる為、追い掛けていたら黒鐘 色と一緒にいる所に出くわし、偶々近くにいた僕が尾行(ストーカー)の片棒を担ぐことになったのだ。

 

理不尽である。

 

「えと、何でエイナさんが尾行しているんですか?それに色とミィシャさんが付き合っていても別にいいじゃないですか」

 

「それは・・・・・じゃんけんに負けて・・・」

 

「・・・」

 

目を逸らしながら話すエイナさんを僕はジッと見つめた。そうしている内にウェイトレスさんが二人分のコーヒーを置いて他の席に向かっていく。

 

「成る程、話は解りました。僕に出来ることなら強力しますよ」

 

「本当!ありがとうベル君」

 

安心したように微笑んだ後コーヒーを飲むエイナさんに

 

「それで、色は何がしたいの?」

 

僕もコーヒーを飲みながら、そう質問した。

 

「・・・えっと。なんでバレた?」

 

「エイナさんは左手利きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これからやる事の内容を聞いた僕が向かった先はとあるカジノだ。慣れない燕尾服を着て向かった店の前には既に【イシュタル・ファミリア】の人達が到着していた。

 

「お久しぶりです。アイシャさん」

 

「お、久しぶりだね【リトル・ルーキー】。前の遠征以来じゃないか」

 

見知ったアマゾネスの女性に声を掛けると向こうも笑みを作り返してきた。

 

この人は春姫さんを助ける時に、手助けしてくれた人で、前の遠征の時にも色々面倒見てくれたアマゾネスだ。ただ非常にスキンシップが多いのが少しだけ困りものだったりする。

 

「アタイには挨拶はないのかい【リトルルーキー】」

 

「ひっ!?」

 

女性とは思えない程の野太い声に喉をヒクつかせながら振り向くと。そこには巨躯のアマゾネス、フリュネさんが、はち切れんばかりの真っ赤なドレスを身に纏い、僕の両肩を掴んできた。

 

「おいヒキガエル、御上の団長を食おうってんじゃないだろうね?」

 

「バァカ、アタイはコイツと団長同士の話をするだけさァ。なんだい嫉妬かいアイシャ?」

 

「はん、嫉妬?お前みたいな不細工に誰がするんだ」

 

「ちょっとレベルが上がったからって調子に乗るんじゃないよォ」

 

「ふ、二人ともこんな所で暴れたらダメですよ!?ほら、フリュネさんは僕に用事があるんですよね?向こうで話しましょう!」

 

アイシャさんと睨み合うフリュネさんの背を押して、途中で他のアマゾネスの人達と挨拶しながら、カジノから離れた路地裏まで足を運んだ。

 

遠征に着いていった時もそうだったが、この二人はあまり仲が良くないらしい。そして何故かいつも止める役が僕に回ってくるので、こうして引き離す事が最善の作というのを覚えてしまった。

 

「それで?話ってなんなんですか?」

 

路地裏に連れてきた僕が問い掛けると、フリュネさんは顔を壮絶に歪めて此方を睨んで来た。並みのモンスターでも震え上がりそうな、その形相を一身に受けている僕の心境を察してほしい。

 

「・・・チッ」

 

舌打ち一つすると、赤いドレスが変化する体に合わさるように萎んでいき、フリュネさんが可愛らしい少女の姿に変身した。いや、元の姿に戻ったと言うべきか。

 

「えっと、フリュネさん?」

 

「イシュタル様の命令だよ。あたいの役目は他の連中と違ってあんたと馬鹿弟子の護衛だろう。こっちの方が目立たないからって言われたんだ。全く、何であたいがこんな目に」

 

そう言って銀髪褐色の少女は拗ねるように頬を膨らます。可愛い

「なに笑ってんだい!他の連中にこの姿がバレる前にカジノの中に入るよ!」

 

「は、はい!解りました」

 

手を握られて、そのまま強引にカジノの中に連れられていく。すれ違う人々が完成された少女に目を奪われ、何度も振り返っているのを見て僕は思った。

 

手ぇメッチャ柔らかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーレットというギャンブルを知っているだろうか?

 

ルールは簡単だ、回転板(ホイール)に区切られたポケットの何処にボールが入るかの予想、たったこれだけ。しかし、そのたったこれだけが存外人気らしく、数々の博打打ち(ギャンブラー)がルーレットにハマり、運を天に任せ、回転板(ホイール)を転がるボールを一心不乱に見つめている。

 

まぁ、僕には関係ないのだが

 

『うおおおおおおおおおおお!!!!』

 

『なんです、なんですかな!?』

 

『見てくだされあれを!ルーレットのテーブルです!!』

 

僕が指定した色のポケットにボールが入ると観客が沸いた、もう何回も繰り返された事にディーラーの人も頬をひきつっているようだ。

 

『あの、白兎さん次は何処に入れるのですか!?』

 

『そうだ、教えてくだされ!!』

 

「ダメですよ、そういう約束ですから。ね、ディーラーさん?」

 

「え、ええそうですね」

 

ニッコリと笑う僕にディーラーの人はうつむき、冷や汗を掻きながら小さな声で「ありがとうございます」と答える。

 

(それで?エイナさん操ったりカジノでわざわざギャンブルしたり、どうしてこんな回りくどい事してるのさ)

 

ついうっかり数字単体に賭けそうになった指を止め、向こうでディーラーにわざと自分に都合がいいようにイカサマさしている色に心の中で問い掛ける。ポケットに手を突っ込みカードを弄りながら彼はこう答えた

 

(今忙しいから後で)

 

(ぶっとばすぞ)

 

(!?)

 

おっと、態々【食蜂操祈(メンタルアウト)】で回線(パス)を繋いでおいてさっきから肝心な事は一切喋らない副団長につい本音を呟いてしまった。気をつけてなくちゃ

 

(いろ)から横二列(ダブルストリート)の数字に賭けた僕は再度色に問いかける

 

(あのね?いい加減説明してくれなきゃ、僕だって怒るよ?)

 

(いやだから今は無理だって。後で必ず話すから)

 

ボールは勿論当たりのポケットに入り、受け取ったチップを今度は横一列(ストリート)に賭けた。ディーラーは青ざめている

 

(ふーん、そう言うこと言うんだ)

 

(あの?ベルさん?ちょっと声色が怖いなー、なんて)

 

当たったチップを今度は全て線上(スプリット)の数字に賭ける。ディーラーの顔が黄土色になっているが知った事じゃない

 

(ミィシャさんに聞いたんだけど僕には口止めしてるんだって?)

 

(な!?あの人、口滑らしたのか!?)

 

(・・・ミィシャさんには喋って僕には秘密にするんだ)

 

(カマかけたな!?てっ違、本当に今は喋れないんだって!!)

 

チップの山を一点数字(ストレート)に賭け、沸く観客の声を聞きながら心の中で色に呟く

 

(覚えてろよ)

 

(あぁ!!黒服の怖い人がヨンデルワー速くイカナキャー!!)

 

焦ったような心の声と共に切れた回線(パス)にため息を吐いた。目の前のチップの山がせめてもの精神安定剤かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後【イシュタル・ファミリア】の人達と一緒に莫大なお金を手に入れた僕は色から粗方の事情を聞く事になる。

 

「という訳なんだよ」

 

「・・・マジで?」

 

「マジで」

 

思わず頭を抱えた僕はそのままフラフラと本拠(ホーム)の出口に向かった。

 

「ど、どこ行くんだよベル?」

 

「・・・ギルドに報告書出してくる」

「そ、そうか。頑張ってな」

見送ってくれる色に手を振り返しながらドアを閉めた僕は重い足取りを引きずり、ギルドへ向かった。

 

「・・・はぁ」

 

ため息を吐きながら今までは何度も助けてくれた相棒の紫紺のナイフを見つめる。まさか原因が神様のナイフだったなんて、というかこれって

 

「ギルドにどう説明しよう・・・」

 

更に足が重くなるような感じがしたが、何時までも下を向いていても仕方ないと思い、無理矢理に前を向く。すると、視線の先に見知った薄鈍色が見えた。

 

「シルさん?」

 

自然と足が白のワンピースと麦わら帽子を纏った彼女の後ろを追い掛けていく。

 

決してギルドにどう言い訳すればいいか解らなかった訳ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、シルさんを追い掛けていた僕の今の状況を軽く説明しよう。

まず、後ろには教会の子供達が元気な声援を送ってきている。

 

隣にはシルさんが不安そうな表示で此方を見てきている。

 

そして目の前には・・・

 

「がんばれー!兄ちゃん!!」

 

「負けるなー!!」

 

「行けー!!!」

 

『ゥォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

「大丈夫ですか、ベルさん?」

 

ねじれ曲がった二本の大角、黒体皮、赤の体毛、そして巨大な体躯。

 

ミノタウロスに似た二足歩行の大型級『バーバリアン』が咆哮を上げながら目の前に立ち塞がっている。

 

どうしてこうなった

 

「あれぐらい余裕ですから、シルさんは少し下がっていてください」

 

不安がらせないように、にこやかに微笑みながら彼女を子供達の元まで下がらせる。その動作に隙を見出だしたのか『バーバリアン』が激しく地下通路の中を走り、角を僕目掛けて突き出してきた。

 

この時ほど【イシュタル・ファミリア】の遠征に着いていった事を感謝した時は無かっただろう。何故なら、目の前の怪物とはもう何度も戦っていて、倒して慣れているのだから。

 

リン!

 

気配を感じた時からずっと発動していた鐘の音が一際大きく鳴り響いた。

 

「シッ!!」

 

『ゴブッ!?』

 

輝く右手でカウンター気味に『バーバリアン』の懐を撃ち抜く、黄色の瞳を見開きながら後ろの壁にめり込んだモンスターを見て、僕は少しだけ眉を寄せた。

 

腕でガードした?

 

普通ならあれで決まっていたのに、まるで冒険者みたいな防ぎ方をされれば誰でも疑問を抱くだろう。しかし今はそんな事を考えている場合では無かった。

 

壁から脱出した『バーバリアン』は低い唸り声を上げ、【英雄願望(アルゴノゥト)】の同時使用(ダブルアクション)で輝いている僕の左腕を警戒しているのだ。

 

今まで見たことの無いモンスターの反応に薄ら寒い感覚を覚える。

 

『ゥ・・・ゴオオオオウ!!!』

 

先に動いたのは『バーバリアン』だ、傷だらけの体を動かし迫ってくる。さっきより速度が若干緩めなのは、やはり【英雄願望(アルゴノゥト)】を警戒しているのだろうか。

 

「甘いよ!!」

 

『ギャン!?』

 

突如伸ばされた長い舌を腰から引き抜いた紫紺のナイフが切り裂さいた。カウンターをさせない為に意表を突いたつもりみたいだが、そんな雑な攻撃を食らうほど僕は弱くはない

 

「ラァ!!!」

 

『グゴッ!?』

 

怯んだ大型級の体に素早く接近し、下から右腕をめり込ませ、浮かせる。そして身動きの取れない空中で蹴りを叩き込まれた『バーバリアン』は吹き飛び、さっきの焼き写しの様に地下通路にめり込んだ。

 

『ァ・・・ァァアアアアアアア!!!!』

 

「さて、これで終わりかな」

 

まるで怯えいるかの様に後退るモンスターに光輝いている左腕を向ける。今まで貯めてきた時間を計算すると恐らく塵も残さず燃え尽き、子供達にグロい所を見せなくてすむだろう。

 

僕は躊躇わず、その魔法を『バーバリアン』に放った。

 

「ファイアボ「まって兄ちゃん!?」・・・?」

 

引っ張られた服の裾を見ると、そこには教会に居た子供の一人、ライが涙目で此方を見てくる。他の子供達も同様に涙目だしシルさんは困り顔だ、どうしたのだろう?

 

「えっと、危ないから下がって「可愛そうだよ!!」・・・は?」

 

「そうだよ!もうやめたげてよお!!」

 

「あの子泣いてるよ!?」

 

この子供達は何を言っているのだろうか?モンスターが泣くこと何てあり得ないのに・・・うん?

 

「えっと、ベルさん?あれ・・・」

 

シルさん解ってます。僕もしっかり見えていますから、そんなに何度も視線を向こうと此方に動かさなくて大丈夫ですよ。

 

「・・・えっと、なにしてんの?君」

 

僕は問い掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土下座している『バーバリアン』に・・・

 

 

 

 

なんだこれ?

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・・・』

 

『バーバリアン』は答えず、ただ地下通路の冷たい床に頭を擦り付けている。まるで何時かの僕と神様みたいだ。

 

「あの?・・・顔を上げて下さい。『バーバリアン』さん?」

 

シルさんの言葉に『バーバリアン』は恐る恐る面を上げた。どうやら人の言葉が解る程には知能があるようだ。

 

「・・・・・・君はなんでこんな所にいるの?」

 

『!?・・・ガ、ガウガウガー!!』

僕の言葉に勢いよく反応した『バーバリアン』は地下通路の壁に、鋭い爪で何かを描き始めた。どうやら絵も描けるようだ。

 

「すっごーい!モンスターさん絵、上手だねぇ!!」

 

「貴方は手が器用なモンスターなんだ!!」

 

「えっと。この絵は人間と檻?ですか」

 

「捕まっちゃったの?モンスター?」

 

『ガウディ!!』

 

『バーバリアン』は僕達に元気よく親指を突きだした。

 

「・・・・」

 

僕がここまで冷静なのは恐らく色達とメチャクチャなダンジョン探索をして何事にも動じない心を手に入れていたからだろう。もし普通のダンジョンで普通の探索をして普通のファミリア生活をしていたら、何度か気絶しているかもしれない。

 

「ねぇ、ベルお兄ちゃん。モンスターさんをダンジョンに返して上げて!!」

 

「そうだよ!頼むよ兄ちゃん!!!」

 

「お願い!」

 

「駄目ですか、ベルさん?」

 

「え~」

 

まぁ、幾ら冷静でもこの状況をなんとか出来るわけ無いんだけどね!!どうしろってんだよ!?僕にどうしろってんだよ!?

 

そうして、心の中で一人頭を抱えていると、聞いた事がある声が地下通路内に鳴り響いた。

 

「俺が、ガネーシャだ!!」

 

「はい!?」

 

入ってきたのは【ガネーシャ・ファミリア】の主神、ガネーシャ様だ。ズカズカと僕らの横を何事も無いように通り過ぎ、バーバリアンの元まで・・・ちょっ!?

 

「駄目ですよガネーシャ様!?そいつはモンスターで」

 

「ここに居たのかバーバルちゃん!!」

 

『ガ、ガウ?』

 

「・・・えっと」

 

「ここに居たのかバーバルちゃん!!!!!」

 

『・・・・・・そうか。ガウガウガー!!』

 

「おーよしよし。怖かったなバーバルちゃん!しかし、このガネーシャが来たからにはもう大丈夫だぞ!!」

 

ガネーシャ様と『バーバリアン』は熱い抱擁をしながら涙を流している。ていうか、今アイツ喋ったような・・・

 

「いやーありがとう、ベル・クラネル!!君がうちのファミリアが調教(テイム)したモンスターを見つけてくれたのだな!!感謝する!」

 

「は、はぁ」

 

「それでは行こうか!バーバルちゃん!!」

 

『カバディ!!』

 

勢いに任せて去っていくガネーシャ様とバーバルちゃんを僕達は呆然と見送った。

 

そしてそのまま帰るのかと思ったガネーシャ様が突然振り向き

 

「そうだ!ベル・クラネル、どうやらヘスティアがラキア軍に拐われたらしい。取り敢えずロキがいる北門まで急いで行くといい」

 

「え?あ、はい。わかりました」

 

「それでは、去らばだ!!」

 

へー、ヘスティア様がラキア軍に拐われたんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ

 

「はぁぁあああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

何事にも動じない心なんて無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神様!!!神様は大丈夫なんですか!?」

 

「うおっ!?ビックリした、なんやいったい!?」

 

食い付く様に顔を近づけた白髪の少年に赤髪糸目の女神、ロキは思わず仰け反った。血相を変えて女神に詰め寄るベルの肩を一人の小人族(パルゥム)が掴む。

 

「・・・端的に説明する。ベル・クラネル、よく聞いてくれ」

 

ヘスティアが連れ拐われた、という情報しか無かった少年にフィンは状況概略を伝え、聞き終えたベルは顔を強張らせる。

 

「神様がいる方角はわかりますか?」

 

「わからない。厄介なことに敵は北、西、東、それぞれに部隊をいくつも分けた。まだ追跡隊も出せていない」

 

真剣な表情のベルに、散り散りとなってヘスティアを抱える本隊の行方が知れない、とフィンが冷静沈着に答えた。

 

情けない話だが、と前置きして彼が語ったのは捜索がいかに困難を極めるか、という事だった。話が進みほどベルは俯き、自分の拳を力強く握りしめた

 

「ロキ、フィン。私が追う」

 

次第に震えるベルの肩を横目で窺っていたアイズが、前に歩み出る。

 

常に寡黙な【剣姫】の申し出に、その場に入るものは皆、驚きをあらわにした。

 

「ちょいまち、アイズたん。わざわざうちらがドチビのために出張る必要あらへん。そもそもしらみ潰しになるし・・・」

 

「でも、誰かがいかなきゃいけない」

 

「確かに誰かがいかなあかんな。でもなアイズたん、もしあの子と会ってしまったら我慢できるか?」

 

「それは・・・でも、この中で一番足が速いのは私」

 

ロキの指摘に言い淀むアイズはそれでも食い下がる。都市最強の一角とも言われる第一級冒険者と、その主神が口論になろうとしているのを防いだのは一人の咆哮だった。

 

「ファイアボルトォォオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

掲げられた右腕から突如放たれた緋色の稲妻は雲一つ無い青空を引き裂くかの如く、何処までも何処までも上に昇っていった。

 

「な、なんだあれ?」

 

「いま無詠唱で魔法を打たなかった?」

 

「お、おい。アイツ、世界最速兎(レコード・ホルダー)じゃねぇか!?」

 

「はぁ!?なんでこんな所に【ヘスティア・ファミリア】の団長が!?」

 

「・・・ベル?」

 

ざわつく周りを気にせず、空を向いていた顔を下げたベルは【ロキ・ファミリア】団長、フィン・オディナに紅の瞳を向ける

 

「フィンさん、本当にヘスティア様の場所は見当が全くつきませんか?」

 

「あ、あぁ。申し訳ないが・・・」

 

「そうですか・・・アイズさん、申し訳無いのですが東の方面を捜索してもらっていいですか?僕達は北と西を探します」

 

「う、うん」

 

「という訳でロキ様、アイズさんを少しだけ借ります」

 

「ちょ、ちょいまち!?自分何言うとんのかわかっとるんかい!!」

 

「何がですか?」

 

「何がですか、やあらへん!!今から自分のファミリア集めてヘスティア探す?そんなん何時間掛かるかもわからんのか!!!」

 

何でもないように話すベルにロキはその糸目を開きながら唾を飛ばす。しかし白髪の少年は怖じ気づかず、言葉を返した

 

「ロキ様、お言葉ですが・・・」

 

人差し指を空に向けるベルに釣られてロキも怪訝な表情を浮かべながら空を見た。周りの人間もつられて見上げると、その快晴な空には今一つだけ黒い点模様が浮かんでいる。

 

その黒がドンドン近づいてくるのをわかったロキは自分が勘違いをしていた事を理解した。さっきの魔法は自分の意見を述べるために打ったのでは無いのだ。

 

「あまり僕達を嘗めないで下さい」

 

空から勢いよく落ちてきた一羽の鴉はその背中に複数人の人間を乗せ、激しい轟音と土煙と共に不時着し

 

「ベル!!緊急時用のファイアボルトが見えたから、急いで皆かき集めて来たんだけど何があった!?」

 

一人は心配そうに此方に歩み寄りながら

 

「二億ヴァリス・・・リリの二億ヴァリス・・・」

 

一人は死んだ目で虚空を見ながら

 

「ちょっと色様!!降ろしてください!?(わたくし)には待っている沢山のファンがいるのです!!!」

 

一人はよく分からない事を喚きながら

 

「ほら、やっぱり天罰が下ったじゃないですか。ふふふ、これからもっと凄い地獄がまっているのですね」

一人は地面に向かってブツブツと呟きながら

 

「ク、クロ!?誤解だっていってるだろ!速くこの重いのを外してくれ!!?」

 

一人は仲間の武器に押し潰されながら

 

自分の前に姿を表した、何かもう色々凄いことになっている仲間達(ファミリア)を見たベルはオラリオの方に顔を向けながら

 

ギルドに報告書出しにいくのは大分遅れるだろうな。

 

と、若干現実逃避するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか色々ボカしてるけど次回で大体の説明会かな?
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