ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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うーん、中々書くのが難しい話だ


第33話 交渉

「キャハッキャハッギャハハッハハハアアアアアア!!!!!」

 

「ベル殿!?リリ殿は戻ったのにどうして正気に戻らないのですか!?」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

「クソッ、ふざけろ!!アイツ腕飛ばされる前にウィーネの紅石抜き取りやがった!?」

 

「ベル様!!ウィーネ様!!ど、どちらから対処すれば!?」

 

人造迷宮(クノッソス)の道中、ディックスに紅石を抜き取られゴライアスに変貌したウィーネと、呪詛(カース)が解けたにもかかわらず暴走が止まらないベル。【ヘスティア・ファミリア】の団員達は、圧倒的な潜在能力(ポテンシャル)を持つ二人の怪物に、今にも襲われようとしていた。

 

「キャハハハハハハハハハ!!!!」

 

『ゴオオオオオオオオオオ!!!!』

 

「く、くるぞッ!!」

 

振るわれる豪腕と消えた兎に、ヴェルフの咆哮が飛ぶ。混乱の中それでも身構える団員達。

 

そして――――――――

 

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

「ギャ!?」

 

『オッ!?』

 

怪物の二人は突如響き渡った轟音に止められた。ヴェルフ、命、春姫の三人も驚き、音のした方を見ると、そこには小人族(パルゥム)の少女が最硬金属(オリハルコン)製の扉を力づくで破壊している姿がこの場にいる全員の眼に映る。まるで時が止まったような静寂が、一瞬だけ訪れた

 

「春姫さん!!貴方はこのファミリアの頭脳でしょう!!!!自分の役割を全うしなさい!!!!!」

 

「!?」

 

最硬金属(オリハルコン)を破壊した反動で巨槌を手落とした少女は、腕から吹き出る血液を高級回復薬(ハイ・ポーション)で洗い流しながら狐人(ルナール)の少女に叫んだ。

 

その声で再び時が動く、凶声を上げながら前屈みになるベルと咆哮を上げ突っ込んでくるウィーネ、その二人に毛先が栗立つような危機感を感じた狐人(ルナール)の少女は、自身の背負うバックパックからあるものを取り出した。

 

「は、春姫殿それはッ!?」

 

「ま、待てッ!?」

 

ヴェルフと命の焦る声が飛ぶ。春姫は二人の声を無視して、バックパックから出した筒状の黒い武器、《炎刀・虚空(えんとう こくう) 》襲ってくる怪物に構えた。

 

「魔砲【フレイム・ブラスト】!!!」

 

「『!?』」

 

キッと睨み付けて放たれた朱光は寸分狂わず暴走した仲間に当たる事なく間をすり抜け、『オブディシアン・ソルジャーの体石』を混ぜ込み『魔法』の効果を減殺させる超硬金属(アダマンタイト)の壁を容易く溶かした。余りの威力に冷や汗を掻きながらまたしても止まる二人、その二人に鋭い獣光が向けられる

 

「次は、当てましょう」

 

 

【挿絵表示】

 

―――ゾクッ

 

銃口を向けられた二人は、《炎刀・虚空(えんとう こくう) 》を構える春姫に潜在的な恐怖を覚えた。それは自然界における弱肉強食、この時の二人は確かに目の前の力も速さも劣っている狐人(ルナール)の少女に食い殺される姿を幻想したのだ。

 

「キャァ!?」

 

『アアアアアア!?』

 

そして逃げた。ベルはリリが開けた大穴の奥へ、ウィーネは扉が開かれている通路の道へ、脇目も降らず逃げ出した。

 

「命様、詠唱をお願いします。ヴェルフ様は(わたくし)と先回りしてウィーネ様をもう一度この部屋まで誘導、リリ様はベル様を追いかけてください」

 

唖然としている団員達に冷静になった春姫が指示を下す。たとえ驚きで体が固まっても数々の修羅場を潜ってきた団員は即座に指示に従い、命の詠唱を筆頭に最低限の装備をするためそれぞれ動き出した

 

「リリ様、恐らくベル様はリリ様の計算通りに先程呪詛(カース)を使われた冒険者様の所に向かっている筈です。その為にわざわざあの扉に大穴を空けたのでしょう?」

 

「まぁ、昔そういう事をよくやってましたので。それで?見つけた後どうすれば良いですか?」

 

「見つけ次第リヴェラの町の方角に誘導して下さい。そろそろ色様も人造迷宮(クノッソス)に入られた頃だと思いますので出来たら合流を」

 

「ははっ、あの状態のベル様をリリ一人でですか?無茶苦茶言いますね」

 

苦笑いをするリリに、春姫はバックパックから取り出した二属性回復薬(デュアル・ポーション)等、回復系のアイテムを手渡しながら自身の考えを喋りだす。

 

「ウィーネ様を元の状態に戻したら(わたくし)達も直ぐに合流に向かいますよ。それに、多分ですがあの状態のベル様は少なくとも(わたくし)達を殺す事はない筈です」

 

「その根拠は?」

 

「勘です」

 

「ふ、ふふふ勘ですか」

 

「くくっ、頼もしいな」

 

その言葉にリリやヴェルフだけじゃなく、詠唱している命も笑った。馬鹿にする笑いではない、信頼の笑みだ。想定外の事ばかり起こる【ヘスティア・ファミリア】の迷宮探索では、この第六感こそが重要であることを団員達は理解していた。取り分けその中でも春姫のそれは、命の重力魔法の弱所を見切るなんて馬鹿げた事が出来るほどに逸脱している、リリから参謀を任された彼女は伊達ではないのだ。

 

「皆様準備は整いましたね。それでは、命様はこの部屋の何処かにウィーネ様の紅石があると思いますので、何時でも魔法を使えるようにしながら探し出して下さい」

 

「了解です」

 

「リリ様はベル様をリヴェラの町の方角、色様の所まで誘導をお願いします。あの人なら今のベル様を何とかしてくれる筈です」

 

「わかりました」

 

「ヴェルフ様は(わたくし)と共にウィーネ様を誘拐します。それと最低限の魔剣の使用を許可しましょう。超硬金属(アダマンタイト)を軽々と破壊したあの鱗の前ではヴェルフ様の魔剣でも傷つける事は難しいと思います故、誘導には持ってこいですね」

 

「複雑だなチクショウ。それで、もし紅石が壊れていたらどうする?見た限り見つからねぇが……」

 

渋い顔をしながらヴェルフが見渡した部屋の中は、逃げる為に暴れたウィーネと虚砲の砲撃により、悲惨な事になっていた。先程から詠唱をしていた命も探しているのだが、一向に見つからないため最悪の事態を連想させる

 

「その時も……色様に任せましょう。異世界の膨大な知識なら、きっと暴走したウィーネ様を元の姿に戻せる方法があるはず」

 

「まぁ、大丈夫でしょう。何だかんだ言って結局何とかしてしまうのが色さんですからね」

 

「あぁ、確かにそうだな。何も無い所に風呂場作ろうって言い出す奴だもんな」

 

「無茶苦茶ですからね、色殿は。ヘスティア様の借金二億ヴァリスだって直ぐに返しましたし」

 

共通して思い浮かべるのは黒髪黒目の少年、そこで四人の視線が絡まり、笑みが溢れた。

 

「さて、それじゃあ行動開始ですね。皆様ご武運を」

 

「はい」

 

「応」

 

「任せてください」

 

こうして【ヘスティア・ファミリア】の団員達は、団長と副団長が不在の中、人造迷宮(クノッソス)で行動を始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)、黄昏の館は。とある人物の来訪によって騒然としていた。

 

「お、おいあれ」

 

「まさか……」

 

「生きてたん、ですか?」

 

その人物の名は狂った帽子屋(マッドハッター)、黒鐘 色。今回、クキュロプスの羽帽子とは違い普通の羽帽子を被ってる彼は、顔が割れているにも関わらずポケットに手を突っ込みながらやけに堂々と黄昏の館内を歩いてる。

 

「てめぇ!!生きてやがったのか糞鴉!!!」

 

周りのどよめきがピタッ止まるような大声を出したのはベート・ローガだ。そのまま大股で色に向かって足を進める彼は、色を先導していた小人族(パルゥム)の団長、フィン・ディムナに止められた。

 

「ベート、すまないが彼は君に構っている余裕はないんだ。これから大事な話があるからね」

 

「あぁ!!フィンてめぇ!!なに言って」

 

「ティオネ、頼んだ」

 

「は~い!」

 

愛する団長に命令された女戦士(アマゾネス)は、俊足の狼人(ウェアウルフ)を難なく捕らえ、そのまま拘束する。

 

「な!?こらっ!!話せバカゾネス!!」

 

「馬鹿はどっちよ!!大人しく団長の言うことを聞いてなさい!!!」

 

暴れる狼人(ウェアウルフ)の青年に、黒い少年は少しも視線を寄越さず小人族(パルゥム)の後ろを歩き、館の奥に入っていく。その後方から盛大な舌打ちが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【―――許可する】

 

ギルド本部の方角から重々しく響き渡る神威のこもった宣言を感じた二柱の女神はパチンッと指を鳴らした。すると【ロキ・ファミリア】の団員達から、いやオラリオの住人全てから困惑と畏怖の声が漏れる。理由は迷宮都市の上空、夜空の星々を隠すほどの大きさの巨大な『鏡』が出現したからだ。その壮絶な光景に、とある美の女神は面白そうに口許を緩め、とあるウェイトレスは唖然と口を開き、とある帽子を被った男は憎らしそうに顔を歪めた。

 

「いやぁ、皆ごめんな。いきなり驚いたと思うけど、今からする話は今後のオラリオに関わってくる重大な話やから、こういう措置を取らしてもらったんや。堪忍してや」

 

『鏡』に映るのは赤髪糸目の女神、ロキだ。陽気な声で喋る女神は少しだけ身を引いて、その部屋の中に居る全ての人物を映した。

 

「ここに居るんは、今世間を騒がしている喋るモンスターの頭、狂った帽子屋(マッドハッター)や。正体聞いたら皆驚くで~、何とその正体は、死んだと思われていた黒鐘 色!!やったっちゅうわけやな。どや、驚いたやろ」

 

そこに映っている映像には確かに、黒鐘 色がソファーに座っている姿が映されていた。その隣には女神ヘスティアが、コーヒーカップが四つ置かれた机を挟んで対面にはフィンの姿も確認できる。つまりはこの四人だけで話が進められる訳だ。

 

「それじゃあ早速始めよか。オラリオの今後を決める重大な話を………な」

 

そう言うとロキはフィンの隣に座り、ヘスティアに向けて薄目を開ける。対面に座る赤神にフンッと鼻を鳴らしたヘスティアはカップに入っている紅茶を一口含んだ。

 

「今回、ボクは口を挟まないよ。全て色君に一任しているんだ。口を開く時は君が嘘を付いた時だけだぜ、フィン・ディムナ」

 

牽制、ヘスティアはその為だけにここにいるのだ。嘘を見抜ける神が居ることで交渉に不純物を混ぜないために。

 

「大丈夫ですよヘスティア様。嘘は言いません、嘘はね」

 

「ふーんそうかい。『嘘は』言わないんだね」

 

意味深な笑いを浮かべながらフィンがコーヒーカップを浮かせ、ヘスティアの長いツインテールがウネウネと動く。

 

「落ち着けよヘスティア。とりあえず此方の要件を手短に言わしてもらいますね」

 

「おう言うてみい。散々手ぇ焼かされた異端児(ゼノス)の首領が、都市最強クラスのファミリアの所までわざわざ足運んだんや。生半可な要件やないんやろ?」

 

「まぁそうですかね。……要件は二つです。一つ、異端児(ゼノス)達の安全の確保。二つ、異端児(ゼノス)達の居住区の設立。とりあえずその二つを約束して下さい」

 

一つ目は予想の範囲内だったのだろう。しかし二つ目を聞いた時、ピクリとフィンの眉が動いた。

 

「本気かい君は?そんな事が出来るわけないだろう?大体僕らが認めても街の住人が認めない筈だ」

 

「それはどうでしょうか?現に異端児(ゼノス)賛成派だって出来てるんですよ?不可能では無い筈です」

 

勇者と怪物の視線がかち合い、火花を散らすのが幻想出来た。二人は少しだけソファーから背中を離す。

 

「怪物趣味、と言う言葉を君は知っているかい?怪物に心を奪われた者の総称さ。彼らにとっては確かに、君の考えは素晴らしい物に思えるかもしれない。しかし、それとは逆の人種も居るんだ。モンスターがこの街に住み着く事で夜も寝られない人間が居るの事を君は考えた事があるのか?」

 

「考えてますよそれぐらい。だからこその居住区の確立でしょう?恐がる人が居るからこそ、住み分けようって提案してるんですよ?」

 

「ふふ、少し頭が足りてないんじゃないのかな黒鐘君?翼を持ったモンスターが居住区を出ない保証が何処にある?その不安を君は払拭出来るのか?」

 

「はは、ちっちぇ頭だからそんな事も解からないんですかね?何の為に俺がこんな所に足を運んだと思ってるんですか?」

 

ドス黒い何かがその部屋に充満してるような気さえする中で、言葉を区切った色は紅茶をズズッと飲み、喉を潤した

 

「居住区の管理を貴殿方【ロキ・ファミリア】にお願いしたいのです。都市最強ファミリアなんだから簡単でしょう?」

 

そんな無茶苦茶を笑顔で言った切った色に、フィンが言葉を投げ返そうとする。しかし、一人の()物が言葉を区切った

 

「いい加減にせぇよ、糞ガキ」

 

都市最強ファミリアの主神が、その細い眼を開けて、無礼を働く黒い怪物を殺しそうな程の殺気を乗せて睨み付ける。

 

「弱小ファミリア風情が、交渉のつもりか?今ここでお前らプチッと潰してもええんやぞ?こら」

 

しかし色は並大抵の冒険者でも気絶するぐらいのそれを受けても平然としていた、ここからが本番なのだからビビる訳にはいかないのだ。

 

「てめぇらこそ立場をわきまえろよ?最強風情の雑魚共が。ここで俺が指を鳴らすだけでオラリオの八割が一瞬で壊滅するぜ?」

 

「!?」

 

「あぁん?どういう意味や、糞ガキィ?」

 

驚くロキに親指を押さえるフィン。ヘスティアは宣言通り無言を貫いている。

 

「この街の至る所に潜伏させてる異端児(ゼノス)達を一斉に暴れさせたらどうなるかわかりますよね~?ちっこい勇者様?」

 

「狂ってるね、君」

 

三日月の笑みを浮かべる色に、フィンは吐き捨てた。

 

目の前の男は話をしに来た訳ではない、交渉しに来た訳でもない、脅しに来たのだ。要件を飲まなければこの街を滅ぼすと、堂々と民衆の前で宣言したその姿は、正しく魔王

 

「理解したなら、この契約書にサインしな。誓いの書っつって魂さえも束縛される違約不可能の契約書だ。例え神でさえ、この契約を破る事はできねぇ」

 

魔王は悪魔の契約を二人に突き付けた。紙面には様々な取り決めが書かれており、その全てが異端児(ゼノス)に有利に働くものだ。その紙を手に持った二人は

 

ビリィ

 

「お断りだ」

 

「お断りや」

 

破り捨てた。当たり前だ、魔王の前に座っているのは勇者なのだから。ここでフィンとロキが膝を屈する事等あり得ない

 

「………へぇ、じゃあオラリオが滅びても」

 

「好きにするといいさ」

 

「ッ!?」

 

色は、まさかそんな事を言われるとは思ってなかったかの様に驚いた。初めて見せた魔王の驚愕にフィンの口が嘲笑に歪む

 

「街で異端児(ゼノス)が暴れる?オラリオを滅ぼす?そんな事を僕達がさせる訳ないだろ?対策はしっかり打ってあるさ。嘘だと思うならその指を鳴らしたらどうだい?」

 

「な……に…」

 

ヘスティアは無言、つまりは今から異端児(ゼノス)が暴れても何とか出来る自信が【ロキ・ファミリア】にはあるのだ。それを聞いて愕然とした色は――――変わらない笑みをフィンに向ける

 

「はっ、どの道俺達には後退の二文字は無いんだ。救えるもんなら救ってみろ勇者様。サイン一つ書くだけで救えた、罪もない一般人を傷付けたのはお前だぜ?」

 

「残念だよ黒鐘 色。交渉決裂だ」

 

勇者は槍を取り出し、魔王は指を掲げた。一触即発の中

 

「待つんだ」

 

「待てや」

 

お互いの主神が神威を放つ

 

「茶番はここまでやドチビ。お前らの本当の落とし処を話せや、脅しなんてうちらに効かんの端からわかっとるやろぉが」

 

「はんっ、さっきも言ったが全部色君に任せているんだ。ボクじゃ無くて色君に質問するといいぜ?」

 

尊大な態度を取るヘスティアに舌打ちを一つ打ったロキは、視線を色に向ける。相変わらず余裕そうな表情でコーヒーカップを傾けた魔王は、オラリオの全ての住人に聴かせるようにハッキリと言い放った。

 

「俺達【ヘスティア・ファミリア】異端児(ゼノス)連合と戦争遊戯(ウォーゲーム)だ、【ロキ・ファミリア】」

 

それは宣戦布告の合図

 

「僕達が負ければさっきの契約書にサインするとして、そちらが賭けるものは?」

 

フィンもそう言われるのを初めから分かっていたかの様に振る舞い

 

「俺と異端児(ゼノス)の命」

 

ヘスティアは無表情になり、ロキは面白そうに目を弓なりに細める。

 

「………いいだろう。君達は先程オラリオを滅ぼそうとした大罪人だ、手加減はしない」

 

「まぁそうなるやろうな。勝った方が正義、シンプルイズベストっちゅうわけや」

 

納得がいったような表情を浮かべる二人に色は続ける

 

「ルールは、争奪戦でどうだ?」

 

「場所は?」

 

フィンに聞かれた色は、指を真下に向けた

 

人造迷宮(クノッソス)

 

「「………」」

 

3拍ほど無言になった部屋の中で、ロキが口を開く

 

「面白いやんけ糞ガキ。ルール追加や」

 

「あぁ?都市最強ファミリアが新参の俺達に怖じ気付いたか?」

 

「逆やボケナス。他派閥の冒険者、誰でも一人助っ人に入れてこいや」

 

「な!?」

 

驚きの声を上げたヘスティアにロキは続ける

 

「当たり前やろドチビ。うちら(強者)お前ら(弱者)を一方的にボコボコにした所で賛成派は納得せえへん。だからこれは対抗措置や」

 

見下す様に喋るロキに、色の眉間に皺が寄る

 

「………てめぇ嘗めてんのか?ちょっと強いからって粋がんなよ糸目ぇ」

 

「真正面から叩き潰したる言うとんねん。頂点(オッタル)でもなんでも呼んできぃ、力の差思い知らしたるわ糞ガキ」

 

「随分な余裕だねロキ、ボクの子供達の通り名を知らないのかい?」

 

危険領域(ブラックホール)だったかな?酷い名前負けだ」

 

「「「「…………」」」」

 

四人の視線がテーブルの上で火花を散らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛ッ」

 

「大丈夫ですか、ベル様?ヴェルフ様もう少し慎重に走ってください!」

 

「無茶言うなリリスケ!大体お前が他の冒険者に見つかる前に急いで帰りましょうって言ったんだろ!?」

 

「どさくさに紛れて運よく人造迷宮(クノッソス)から脱出出来て良かったですね。しかし色殿は大丈夫でしょうか?あの回復薬(ポーション)の類いを見るに殆ど自分達に渡されたのでは?」

 

「大丈夫ですよ命様。あの色様ですよ?そう易々捕まるとは思えません。それにもし捕まったとしても(わたくし)達が必ず救いだします」

 

【ヘスティア・ファミリア】はボロボロになった体を走らせながら自らの本拠(ホーム)に向かっていた。ずっと暴走していたベルは、身体に掛かった負荷が万能薬(エリクサー)一本では回復しきれなかったらしく、ヴェルフに背負われている。

 

「ごめんヴェルフ、ありがとう」

 

「気にすんな。それに礼を言うならクロにだぜ、暴走したお前を元に戻した後、ウィーネも何とかしてくれてるみたいだ」

 

入れ違いで異端児(ゼノス)達と情報を交換していたヴェルフ達は、色がウィーネを探して貧困街(スラム)の方に向かって行った事を聞いていた。

 

「それにしても運が良かったですね、ここまで誰一人とも会わないなんて。もう館に到着しましたよ」

 

右近婆娑羅(ウコンバサラ)人造迷宮(クノッソス)に置いてきて寂しくなった背中を擦りながら、リリはガチャと両扉の片方のドアノブを捻って開けた。

 

「ただいま帰りました」

 

この時

 

「また工房に込もって魔弾作り直さなきゃな」

 

【ヘスティア・ファミリア】は

 

「自分は早くお風呂に入りたいです。血が固まってベトベトで」

 

初めて気づいたのだ

 

「それじゃあ(わたくし)と一緒に入りますか?」

自分達が

 

「あれ、そんな所でなにしてるんですか神様?」

 

何を失ったのか

 

「………色君の………炎が…消えたんだ」

 

床にペタンと座っているヘスティアの言葉の意味が、ベル達には解らなかった。何を言われているのか理解できない

 

「――――色君が、死んだ」

 

理解できなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロキ・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】が戦争遊戯(ウォーゲーム)を行うと宣言してから2日が経った。その間、人造迷宮(クノッソス)の中はスッキリ整備されており、不正が出来ないよう【ガネーシャ・ファミリア】に罠の類いも全て撤去させている。

 

広大な迷宮だが、使う区間がダンジョン数層分であるのと、とある協力者が居たため、スムーズに事が運んだのだ。

 

「よしっ皆、準備はオッケー?」

 

「そりゃ良いけどよ。本当にこのエンブレムを背負わせてもらっていいのか、ベルっち?」

 

「まだそんな事を言ってるんですか、リドさん。貴方は異端児(ゼノス)のリーダーなんですから、いい加減堂々として下さい」

 

「で、でもよぉ」

 

そわそわしているリドの装備の背中には【ヘスティア・ファミリア】のエンブレムが刻まれている。それはリドだけではなく、全ての異端児(ゼノス)が着けている装備の何処かに、必ず白鐘黒鐘のエンブレムが刻まれていた。

 

「我々ニコノ装備ハ勿体無イノデハ?」

 

自分の腕にピッタリと装備出来ている鉄爪を動かしながら聴いてくるのはグロスだ。異端児(ゼノス)達全員に専用武器(オーダーメイド)を作った張本人は、グロスの肩に腕を回し、ニカッと笑った。

 

「気にすんな、俺だってモンスターの装備を作るなんて初めての経験でワクワクしたんだぞ?それに、そんな顔してたら武器が泣く」

 

「武器ガ泣クノカ?」

 

「そうだ。使い手次第で武器も泣くし笑う、覚えとけよ?」

 

「その武器を無駄に凝って作ったせいで、魔弾を製作する時間が無くなった~って泣いてたのは何処の誰でしょうね?」

 

「おい!それは言わない約束だろ!?」

口喧嘩を始めたリリとヴェルフから目を離したグロスは、鉄爪の根元部分に彫られているガーゴイルのマークを見詰めた。他のモンスターの装備にも、自身のモンスターと同様のマークが彫られている。それは各モンスターの事を思い浮かべながら武器を作ったという証だ、グロスは心の中でヴェルフに頭を下げた。

 

「みてみてー、竜華槍(ドラミ)龍大盾(ドラタロウ)すっごくキラキラしてるんだ!!」

 

「ははは~ヴェルフ殿は凄いですね~、自分もまさか人造迷宮(クノッソス)から持ってきた最硬金属(オリハルコン)でウィーネ殿の武器を不壊武器(デュランダル)にするとは思いませんでした」

 

「むむむ、これはもしかしてヴェルフ様が一番の親馬鹿?」

 

「お前ら俺を虐めて楽しいか!?」

 

わいわいガヤガヤするヘスティア陣営。それを暖かい眼差しで見ていたロリ巨乳の女神は自分の真下で【ステイタス】を更新している黒い少年に話し掛ける

 

「ボクは色君を信じてるぜ?」

 

それは信頼に溢れている。更新された【ステイタス】もあの《スキル》のお陰か絶好調だ

 

「その信頼とアイツらの想いに応えたから俺はここにいんだぞ?今更ヘマはしねぇさ」

 

顔は見えないがきっと笑っている。そんな気がしたヘスティアは【ステイタス】のとあるスロットに手を触れた。それは色の背中でずっと熱を発していたレアアビリティ

 

「どうしてこれのランクが上がってるんだい?」

 

「なんか言ったか?」

 

「いや、何でもない。ほら、次はベル君の番だよ!!」

 

「はーい!!」

 

ベル達の【ステイタス】を更新し終えたヘスティアは、何となくそのアビリティの効力が解ったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよだね」

 

「緊張してんのか、ベル?」

 

「当たり前でしょ、相手は都市最強のファミリアだよ?」

 

「負ける気は?」

 

「無い」

 

「即答かよ、流石は我らが団長だな」

 

「茶化さないでよね。色の方こそ緊張してるんじゃないの?」

 

「………まぁ、それなりに」

 

「へ~、色が、珍しいね」

 

「どういう意味!?」

 

「はははははっ――――任せたよ色」

 

「………」

 

「色?」

 

「任せろ、ベル」

 

「うん、任せたよ色」

 

 

 

 

 

 

 

 

VS【ロキ・ファミリア】

 

戦闘形式(カテゴリー)――――争奪戦

 

勝利条件は、敵象徴(エンブレム)の奪取

 

オラリオ史上最高最悪の戦争遊戯(ウォーゲーム)と呼ばれる戦いが、幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒鐘 色

 

 Lv.3

 力:S999

 

 耐久:S999

 

 器用:S999

 

 敏捷:S999

 

 魔力:S999

 

 耐異常:I

 

 祝福:G

 

 《魔法》

 

御坂美琴(エレクトロマスター)

 

・電気を自在に発生させる事ができる。

 

 《呪詛(カース)

 

食蜂操祈(メンタルアウト)

 

・特定の一工程(シングルアクション)による、精神操作

 

・自身のLv以下限定

 

・人類以外には失敗(ファンブル)

 

《スキル》

 

一方通行(アクセラレータ)

 

・範囲内の向き(ベクトル)を自在に操れる

 

・自身のステイタスにより能力増大

 

幻想御手(レベルアッパー)

 

・レベルアップまでの最適化

 

・レベルアップ時の【ステイタス】のブースト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鐘楼の館

 

割れた窓、破壊された家具、そして時折聞こえる啜り泣くような声、【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)は一言で言うと悲惨な事になっている。

 

その中で女神ヘスティアは、黒鐘 色がいかに自分の家族(ファミリア)にとって大切な存在だったのか痛感させられていた

 

「グズッ……ヒックッ……色様ァ……じぎざまぁ…」

 

泣き崩れる春姫

 

「大丈夫ですよ。大丈夫です、大丈夫大丈夫」

 

慰める為に大丈夫しか言わなくなった命

 

カァン、カァン………ガンッ!!ガンッガンッ!!!

 

工房に籠りっきりで出て来ないヴェルフ

 

「嘘ですよ……色さんが死んだ?………そんなの……だってあの人は………強くて頼りになる………だから嘘です…………嘘に決まってます…」

 

膝に顔を埋めブツブツ言っているリリ

 

そして

 

「ぁ…ァ?……ぁああああああああ!!!」

 

「ま、まてベル君!?何してるんだ!!」

 

「色の所ですよ!!ほら、あそこに!!!あそこに色がいます!!!」

 

腰を掴んで止めるヘスティアが見たベルの指差す方向は壁だ。勿論そんな所に色が居る筈もなく、なんの変哲もない壁に必死に手を伸ばしているベルをヘスティアは必死に止めた

 

「前にもそう言いながら壁に突進して頭から血を流したじゃないか!?いい加減現実を見てくれベル君!!!」

 

「現実?現実ってなんですか!!!色は彼処に居るんだ!!!離せ!!!」

 

引き離そうとするベルに食らい付くヘスティア、この二人のやり取りを止める者は、今の【ヘスティア・ファミリア】に存在していない

 

「いいかい!?色君は死んだんだ!!認められない気持ちは解る!!でも、認められなきゃ………認めなきゃ前に………まえにずずめないじゃないがぁ」

 

「ヘス………ティア…様?」

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"じぎぐぅん」

 

「神様……かみ……さまッ」

 

ヘスティアも堪えきれずに泣き出した、ベルと抱き締め合って、二人して子供の様に泣いていた。あの日から【ヘスティア・ファミリア】内で泣いていない者は居ないのだ。そんな本拠(ホーム)に一人の魔術師(メイガス)が訪れる

 

「これは……酷いな。大丈夫か君達………ッ!?」

 

自分のが現れた瞬間音が無くなる部屋

 

マジックアイテムを使い、玄関から音も姿も無く現れた黒衣の魔術師、フェルズは身が無いのにも関わらず、身の凍るような感覚に支配された。その理由は殺気、今まで感じた事の無いほどの殺気が自身に当てられている

 

「お前………れば……色…………んだ」

 

コロサレル

 

汗をかく所が無いのに冷や汗を感じたフェルズは咄嗟に叫ぶ、自身が生き残れる魔法(言葉)

 

「色君は生きている!!!!」

 

その言葉でピタッと喉元で止まった刃の切っ先は五つ。ベル、命、リリ、春姫、ヴェルフ、唖然としている五名に突き付けられた武器をゆっくりと引かれ、フェルズはホッと一息着いた

 

「本当……ですか?」

 

「あ、あぁ、本当だ」

 

「色さんは無事なんです?」

 

「無事だよ、今は傷一つ無い」

 

「で、でも、だって色殿は、ヘスティア様が」

 

「一回死んだけど蘇生させたんだよ」

 

「それじゃあ色様は生きてるんですね!!」

 

「だからそう言っているだろう?」

 

「……ぁ……よ、よかったぁああああああ!!!!!」

 

ヘスティアの安堵の声を筆頭に、各自歓びの叫び声が高鳴り、フェルズは咄嗟に無い耳を抑えた。そして経験則に則りローブで姿を隠す

 

「フェルズ君!!色くんを助けてくれてありがとう!!!!」

 

「「「「「ありがとうございます!!!!!って居ない!?」」」」」

 

フェルズは知っていた、色を助けた事で感極まった者が自分に抱き着いてくる事を。異端児(ゼノス)だけでも自信に全治癒魔法を使うほどのダメージを受けたのだ、リリなどに抱き着かれるとどうなるのか、想像もしたくなかった

 

「とりあえず落ち着いくれて、色君からの手紙を渡す」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

驚く一同は、消えたフェルズからスッと出された手紙に食らい付いた。血眼になって読み漁るその姿は、少し怖い

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

そして、その手紙を読み終えた【ヘスティア・ファミリア】の一同は真顔になった、めっちゃ怖い

 

「これ、リリの目がおかしく無ければ【ロキ・ファミリア】と喧嘩するって書いてあるのですが」

 

「安心しないで下さいリリ殿、自分の目にもそう書かれている様に見えます」

 

異端児(ゼノス)全員分の武器製作?なにそれ怖い」

 

「口調がおかしくなってますよヴェルフ様………(わたくし)ちょっとお花摘みに行ってきます」

 

「相変わらず…………無茶苦茶なんだから」

 

「妥協してない感じが色君らしいって言うか何て言うか」

 

皆で頭を抱える事になった、これからの作戦内容が書かれた文章の最後にはこう書かれている。

 

打倒【ロキ・ファミリア】!!

 

「その、済まないが時間が無いんだ。色君の【ステイタス】を復活させたいので、ヘスティア様だけ来てくれるかな?」

 

「あぁ、わかったよ。それじゃあ皆、一足先に色君に会ってくるけど何か伝える事はあるかい?」

 

そう言ったヘスティアに団員達は、言いたい事は自分で言います、とだけ言った。それを聞いたヘスティアは苦笑いした後、フェルズと共に出ていった

 

「さてと、今からどれぐらい強くなれるか解らないけどやれるだけやってみようか」

 

「はぁ~やるしか無いんですよね。いいですよ、やってやりますよ」

 

「自分は【ミアハ・ファミリア】の所に行って回復薬(ポーション)類を出来るだけ買い込んできますね」

 

「クロが呪詛(カース)を使って、周りを誤魔化すまで待った方が良いんじゃないのか?」

 

「皆様、これをやりましょう!!」

 

皆の集まる視線の先に居るのは、お花を摘みに行っていた春姫だ。その手には皺だらけになった一枚の紙が持たれてる

 

 

 

 

 

『2億ヴァリス返済までのデスマーチの実施』

 

「「「「………………」」」」

 

 

 

 

これは、いずれ最強を欲しいままにする者達の【眷属の物語(ファミリアミィス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、原作より強化されたヘスティアファミリアとロキファミリアの全面戦争、これがやりたかったんや!
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