ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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もうすぐ原作12巻発売だ!やったぜ!!


第34話 VSロキ・ファミリア

「おい、大丈夫かアンタら?ってエライ怪我してんじゃねぇか!?リリ、回復薬(ポーション)渡してやれ」

 

あなたは知っていますか?あの時自分達がどれだけ救われたかを

 

「はぁ、わかりました……ちょっ!?渡し過ぎでは!?」

 

「いいじゃん別に今まで俺ら使ってねぇんだし。あぁ?遠慮すんなって、いいから貰っとけ」

 

あなたは知っていますか?あの時自分達がどれだけ感謝したかを

 

「そんなに何回も頭下げなくていいって。じゃああれだ、今度俺達がピンチになったら助けてくれ」

 

「クロっちって、意外とお人好しなのな」

 

あなたは知っていますか?あの時自分達がどれだけ涙を流したかを

 

「ほら、行くよ色」

 

「あいよ、アンタらも気を付けてな」

 

あなたは知っていますか?あの時自分達がどれだけ恩を感じたかを――――

 

雲一つ無い澄んだ夜空の下、『残雪 』『虎鉄 』『地残』ヴェルフによって新たに鍛え直された三本の刀を携えた彼女は、空に浮かぶ満月を真っ直ぐに見つめる。

 

「タケミカヅチ様。このヤマト・命、明日こそは色殿から貰い受けた大恩、必ずや返して見せます」

 

周りには誰も居ない、これは誓いだ。彼女が最も敬愛する男神に立てる絶対の誓い。

 

「――――この命に代えても、必ず」

 

月を見上げるその背中には、特殊なゴライアス(暴走したウィーネ)を数時間止めたことにより、【タケミカヅチ・ファミリア】に居た頃よりも更に昇華した【ステイタス】が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ間もなく始まります!!!オラリオの未来を賭けた世紀の一戦【ロキ・ファミリア】VS【ヘスティア・ファミリア】!!実況はギルドのふわふわピンク担当!!ミィシャ・フロットでお送りしまーす!!』

 

バベルの頂上で魔石製品の拡声器を片手にノリノリで声を響かせたピンク髪の女性は、オラリオ上空に映されている巨大な『鏡』を満足げに見てから視線を隣に移した

『解説はこの方!!大衆の主!!ガネーシャ様!!!の、眷族(ファミリア)の一人!!イブリ・アチャーさん!!!!』

 

『――――俺がイブリ・アチャーだ!!ってあれ!?ガネーシャ様は!?』

 

居ると思っていた自身の主神が居ないことに狼狽するイブリ。しかし、オラリオの住人達はガネーシャの事など誰も口にしないほどの盛り上がりを見せている。

 

「さぁ張った張った!!!都市最強と危険領域(ブラックホール)!!どちらに賭けるか早く決めないともうすぐ締め切りだよ!!」

 

「【ヘスティア・ファミリア】だ!!アイツらはアポロンを降してイシュタルを飲み込んだ格上の殺し(シリアルキラー)だぞ!!今回も勝つに決まってる!!」

 

「馬鹿を言うんじゃない!!【ロキ・ファミリア】は未踏達領域の59階層まで足を進めたファミリアだよ?あんなぽっと出のファミリアに負けるものか!!」

 

「うーん、難しい。普通ならロキの所に傾くんだが、この前の一方的な蹂躙(ワンサイド・デスゲーム)を見せられちゃなぁ。しかしお前らもヘスティアの所に賭けていいなのか?化物(モンスター)と共存するかも知れないんだぞ?」

 

「そん時はそん時ですよ。それにアイツら(異端視)も悪い奴等じゃないっぽいんですよね。俺、このまえ落とした財布拾って貰ったっすから」

 

「おい、てめぇ何時から賛成派になったんだ!どんなに良いことしようと化物は化物に決まってる!!モルド、お前もそう思うだろ!?」

 

「…………」

 

「モルド、まさかお前まで……」

 

「そんなんじゃねぇ、ただ―――」

 

『ここで、今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)のルールに付いておさらいしましょう!!まず各自』

 

『ちょっとギルドのおねーさん!!ガネーシャ様はどこ行ったの!?』

 

『イブリさーん?今いい所なんですから邪魔しないでくださーい。……の事バラしちゃってもいいんですかー?』

 

『うぇ!?なんでそのことを知って』

 

『実はこのイブリさん!!ふ――』

 

『ごめんなさい!!すいませんでした!!もう邪魔しないので好きなだけ説明して下さい』

 

『はい、ありがとうございまーす。それじゃあ争奪戦のルールを説明しますね。まず、両陣営にはファミリアの紋章が刻まれた旗をそれぞれ用意して貰います。その旗はギルドが指定した部屋に分かりやすいように立て掛けといて下さい。そして、その旗を指定した部屋から先に持ち出した(奪った)方の勝ちになりまーす』

 

『なるほど、それで争奪戦ってわけか。しかしミィシャさん、今回の戦う場所(ステージ)人造迷宮(クノッソス)っていう、大昔のイカれた工匠がダイダロス通りの地下に張り巡らした迷宮だ。その規模はダンジョン20階層分以上って聞いたんだが、そんなに大きかったらお互い見つからずに何日も迷ってしまうんじゃないんですか?』

 

『イブリさんの乗りがよくて助かりまーす。そうなんですぅ実はこの迷宮、1000年も掛けてダイダロス通りの地下に拡大されたっていう大規模な物なんですよね。ですから、今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)では少しだけルールが付け加えられてます』

 

『と、いいますと?』

 

『まず、各陣営にはギルドから人造迷宮(クノッソス)三階層分の地図が普及されています。その地図には各陣営の線引きがされてあって、戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まるまで各陣営はその線から先に進む事を禁じられてます。つまりは、その範囲全てがスタートラインって事ですね』

 

『ほぅほぅ。その地図ってもしかして、お互いの旗の場所も書かれてたり?』

 

『ご名答で~す!!これにより二つの陣営が迷子になる事なくスムーズに潰し合う事が出来るって訳ですね!!』

 

『あ、あのミィシャさん?ちょっと口調が………』

 

『あ、因みにただ今ダイダロス通り及び貧困街(スラム)付近は、万が一に備えてギルド主導で住民の避難は済ませておりま~す!!これからもし、近づこう何てバカな人間がいた場合、遠慮なくブタ箱にぶちこむので覚悟していてくださ~い!!!』

 

『ミィシャさん!?口調!!可愛い笑顔だけど口調が下品になってる!!』

 

慌てるイブリの声に、言葉をかき消されたモルドが顔をしかめた。

 

「はいはい、もう締め切るよ!!!」

 

「ちょっ!?ま、待ってくれ後少し!!」

 

「チッ、うるせぇな。それでお前はどう思ってるんだよ………どうしたモルド?そんな顔して」

 

「いや、お前らはすげぇなと思ってよ。俺なんて、たった数日でこんな大事(おおごと)になったからか、現実感が全く無いぜ」

 

「あん?どういう意味だそりゃ?」

 

「………なんでもねぇ。おい!!俺は兎に10万だ!!!!」

 

何かを振り払うように叫んだ冒険者の声を聞き付けた商人により会話は中断される。オラリオに住む全ての人々の頭上には、迷宮の中の陣営を映す鏡とミィシャとイブリの声が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迷宮の各所に張り巡らされた拡声器(スピーカー)から始まりの鐘の音が鳴り響き、戦いの火蓋は切って落とされた。鳴り響くその音を合図に異端児(ゼノス)達はギルドによって予め決められていた(ライン)より先に走りだし、作戦により決められた道順(ルート)を進出する。

 

「いよいよだな、リド。覚悟はできているか?」

 

「当たり前だろ?ここにいる全員、覚悟なんてとうの昔に出来ている。お前もそうだろラーニェ」

 

「ふふ、あぁその通りだ」

 

少しだけ微笑んだラーニェが後ろを振り向いた、釣られてリドも後ろを振り向くと、先行していた二人の後ろから真剣な眼差しで追い付いてくる五十匹ばかりの異端児(ゼノス)の姿がそこにあった。

 

「信じられるか?オレっち達があの人達と出会ってからまだ半月にも満たねぇんだぞ?」

 

「信じられないだろうな、半月前の私達ならば。地上で生活する為に都市最強(ロキ・ファミリア)と戦争する事になったなんて誰が信じるものか」

 

「シカシ我々ハコウシテココニイル、全テアノ御方ノオ陰ダ」

 

後ろから近づいてきたグロスが二人の間に割って入り、ニッと笑った。普段なら見せない石竜(ガーゴイル)の表情に驚く二人だか、直ぐに釣られて同じように口元を弓形にする。

 

「ちげぇねぇ。あの日見た朝日も夕焼けも人々との触れ合いも全部色様から貰った物だ、だからあの方に受けた恩をこの戦争で少しでも返さなきゃならねぇ」

 

「その通りだ。化物(モンスター)である私達の為に二度も命を賭けてくれたあの御方に、勝利を――」

 

「「「「「「「「勝利を!!!!!」」」」」」」

 

異形の者達は研ぎ澄まされた聴覚で三人の会話を聞き付け、声を合わせて勝利を叫んだ。まるで人間の様にその瞳の奥には『崇拝』の二文字が浮かんでいる。

 

それは常に自分(ゼノス)達と対等の関係を望んでいた色本人の前では決して見せない色の瞳だ。彼等の色に対しての感情は、既に信頼などという生易しい物とは一線を画していた。

 

「皆すごいね、わたしも頑張らなくちゃ!」

 

「えぇ、何が起きよウトこの戦いに勝利シます。貴方ノお兄様を二度も殺させハしまセン!!」

 

「全部終わった後にいっぱい『恩返し』しようね、ウィーネ」

 

「うん!!」

 

竜女(ウィーヴル)歌人鳥(セイレーン)半人半鳥(ハーピィ)が、全ての異端児(ゼノス)が自分達を導いてくれた聖者に対して浸透仕切っている。もし彼に死ねと命令されたら進んでその首を差し出す程に

 

「黒鐘 色、我々ノ救世主ヨ、何時カ必ズ受ケタ恩ヲオ返シマス。ソノ為二我々ハ、コノ戦争デ負ケル訳ニハイカナイノダ!!!」

 

「行くぞ皆ぁああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」」」

 

加速する異端児(ゼノス)達の目の前には、救世主(黒鐘色)の作戦通りに【ロキ・ファミリア】の冒険者達が慌てて武器を構えている姿がそこに有った。完全に虚を突かれた【ロキ・ファミリア】と勢いに乗る異端児(ゼノス)達の戦いが幕を開ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてここの位置がわかったんすか!?」

 

「ラウル不味い!?あっち側からも来てる!!」

 

「挟まれた!?」

 

開戦直後、ラウル達【ロキ・ファミリア】の中堅所は咆哮を挙げる異端児(ゼノス)達の奇襲に慌てふためいていた。無理もない事だ、彼らの団長からこの戦いに置いて一番大切なのが相手より先に向こうの位置を探る事だと教えられていたのだから。しかし蓋を開けてみれば、真っ先に此方側の居場所が特定され奇襲を受けている、偵察を命じられてたラウル達は訳も分からず自分達より圧倒的に数の多い異端児(ゼノス)達と交戦する事になる。

 

「うわああああああ!!」

 

「オオオオオオオオ!!」

 

ガーゴイルの鉄爪とラウルの短剣が火花を散らす。それを合図に20数名ばかりの【ロキ・ファミリア】の団員達と50程いる異端児(ゼノス)の集団との戦争が始まった。

 

「―――――――――ッ!!!」

 

「ウガアアアアアア!!!」

 

「クソッくそおおおおおおおお!!!」

 

「怯むなぁあああああ!!!」

 

「いくよッ!!!!」

 

「負けまセン!!」

 

「このッ化物がああああああああ!!!」

 

片手剣が振るわれ、超音波が放たれ、宙から鉄羽(ナイフ)が降り注ぎ、盾が弾け、矢が放たれる。一瞬で血みどろの戦場になった迷宮の部屋(ルーム)は、まるで計られたように翼の生えた異端児(ゼノス)でも戦いやすい程の大きさだった。

 

「だ、だめだ!!このままじゃ!?」

 

「ラ、ラウルどうしよ!?」

 

「ッ!?」

 

目に分かるほどの速さで形勢が異端児(ゼノス)達に傾いて行く。絶叫に近い音量で喋り掛けてくるアナキティの声を受けたラウルの脳裏に最悪の事態が過る

 

(もしかしてこれは―――)

 

「ボーとしてんじゃねェぞ!ラウル!!!」

 

「す、すいませんっす!!ベートさん!!!」

 

目の前に迫った曲刀(シミター)を蹴りで弾いた狼人(ウェアウルフ)の青年によって思考の渦に沈んでいたラウルがハッと我に返った。

 

(そうだ、今はそんなことを考えている場合じゃない!!幸いこっちはベートさんも含めた精鋭部隊、目の前の火の粉を払うことに集中するっす)

 

剣をキツく握りしめたラウルは嫌な考えを一旦切り替えようとして

 

木竜(グリーンドラゴン)だぁあああああああ!!!!」

 

全長10M以上の竜が現れた事により、切り替えられなくなってしまった

 

「チッあんな奴まで居やがったのか」

 

(不味い)

 

「おっと、アンタの相手はオレっちだぜ【凶狼(ヴァナルガンド)】。あれから吐くぐらい魔石を食べたからな、油断してると痛ぇ目見るぞ?」

 

(不味い不味い)

 

「上等だ蜥蜴野郎、今すぐ蹴り殺してやる」

 

(不味い不味い不味い不味い不味い!!!!)

 

「べぇえええええええとさぁあああああああん!!!!」

 

「なッ!?耳元で叫んでんじゃねぇぞラウル!!」

 

「そんな事言ってる場合じゃ無いっす!!!木竜(グリーンドラゴン)が移動してる!!速くあの通路の先に行ってください」

 

「お前何言って――ッ」

 

「ガアアアアアアアア!!!」

 

聞き返そうとしたベートはリザードマンの咄嗟の攻撃に声を出すのを止められる。まるでそれ以上会話をさせまいと乱打された曲刀(シミター)を避けていたベートは

 

「こんのおおおおおおお!!!!」

 

「グオゥ!?」

 

横合いからリザードマンに襲いかかったラウルにより、攻撃から解放される。

 

「いいから速く行って!!!ティオナさん達を追いかけてください!!」

 

「馬鹿が!!てめぇじゃソイツの相手は」

 

「行けって言ってるだろ!!!この班の指揮を任されているのはこの俺だ!!!命令に従えぇえええええええええええ!!!」

 

叫ぶラウルは嫌な予感が確信していたことを目の前のリザードマンにより思い知らされた。前回ここに来た時と一緒だ、自分達は完全に罠に嵌められている。

 

「チッ!!ラウル後で覚えておけよ!!!」

 

「行かせねぇ!!」

 

「お前の相手はこっちっすよリザードマン!!!」

 

「邪魔だぁああああ!!!」

 

「ぐあっ!!」

 

リザードマンの前に飛び出したラウルが腹に一撃を入れられ、なす統べなく宙に浮いた

 

(あぁ、いくらなんでもこれはないっす)

 

腹部の一撃をギリギリ短剣で防いだラウルは体を宙に浮かしながらも、自分の考えが妄想であって欲しいと切に願った

 

(でも、この仮説が一番正しいと思うんすよ)

 

ラウルが必死になってベートを向かわせた通路は、この階層唯一の敵の旗の元にたどり着ける道だ。複雑な迷宮だが、そういう道の束が一つになっている部分がポツポツとある事を、地図を暗記していたラウルは理解していた。そんなラウルだからこそ、この異常事態に直ぐ様対応できたのだ

 

(団長今回の敵は異端児(ゼノス)と【ヘスティア・ファミリア】、それと――)

 

思えばこの奇襲はおかしい事ばかりだ。補足されたスピード、異端児(ゼノス)に有利な地形、唯一の通路に立ちふさがる木竜(グリーンドラゴン)、そして――――

 

(ギルドっす)

 

挟み撃ちにされた事

 

これら全てが可能なのが、人造迷宮(クノッソス)の地図を書き出し、現在もリアルタイムで戦いの様子を見られるギルドの人間だ。恐らくなんらかの方法で敵側にこちらの動向を伝達(リーク)しているのだろう。主神(ロキ)も言っていたではないか、ギルドの長(ウラノス)は怪しいと

 

(早くこの事を団長に伝えないと!!)

 

もしこの仮説が正しいのなら不味すぎる。動向を監視されていると言うことは作戦が筒抜けだと言う事だ。つまりはフィンが下したティオネとティオナの奇襲作戦もバレている可能性も高い。一番最悪な未来は先行している二人が待ち伏せされ各個撃破されてしまう事、警戒していた一番強いモンスター(黒いミノタウロス)がこの場に居ない事実が、ラウルの仮説を確信に変えていく。

 

「グッ………皆聞くっす!!!今から――」

 

地面に不格好ながら着地して仲間に指示を出そうとしたラウル・ノールドは、自分の仮説より事態が深刻になっていることを思い知らされた。

 

「なんすか、これ。他の仲間はどこに行ったんすか!?」

 

【ロキ・ファミリア】に敵対しているのはギルドよりも更に恐ろしい怪物なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「色、状況はどうなってる?」

 

『うーん、【ハイ・ノービス】の部隊は上手い事嵌めれたんだがベート君に突破された』

 

「うわぁ、不味いねそれ。あの二人には伝えてあるの?」

 

『一応、出来る限りの情報は伝えたぞ。でも時間制限はグッと縮まったと思ってくれ』

 

「了解」

 

手甲に付いている眼晶(オルクス)から色の声を聞き終えたベルは、走るスピードを落とさず現状を後方の仲間に伝えた。

 

「なるほど、【凶狼(ヴァナルガンド)】が………狼人(ウェアウルフ)のあの人なら臭いで直ぐに追い付きそうですね」

 

「うん、だからもう少しスピードを上げようと思うんだけど皆大丈夫?」

 

「余裕だぜ、心配なんかすんなベル」

 

「大丈夫ですよベル殿、自分達はあの地獄を生き抜いた同志ではないですか」

 

「あはは、そうですね命さん。――――あれやりきったんだよなぁ、僕達」

 

一瞬遠い目をしたベルが一気に加速する、後ろの仲間達もそれに合わせて脚を速めた。

 

現在【ヘスティア・ファミリア】が居る場所は、ギルドから提供された人造迷宮(クノッソス)の地図には書かれていない場所、四階層目だった。今回のルールには確かに地図が普及されているが、その中でだけで戦えとは言われていない。そう、ベル達は色のレーダーの先導の元、地図外からの奇襲を行おうとしているのだ。

 

『おっしゃ、もう直ぐ目的地(ポイント)に到着するぜ。命ちゃん『魔法』の用意をしてね』

 

「了解です。【掛けまくも畏(かしこ)き――】」

 

息をする様な気軽さで平行詠唱を始めた命の足元には普段とは違う変化が生じられる。

 

「【いかなるものも打ち破る我が武神(かみ)よ、尊き天よりの導きよ】」

 

それは昇華(ランクアップ)した事により発現したとあるアビリティによる変化、魔方陣(マジックサークル)

 

「【卑小のこの身に巍然(ぎぜん)たる御身の神力(しんりょく)を】」

 

しかしその魔方陣はエルフが使う様な複雑な紋様では無かった

 

「【救え浄化の光、破邪の刃。払え平定の太刀、征伐の霊剣(れいおう)。今ここに、我が命(な)において招来する】」

 

命の足元に展開されたのは、白の勾玉と黒の勾玉が均等に混ざり有った不思議な形

 

「【天より降(いた)り、地を統(す)べよ――神武闘征(しんぶとうせい)】」

 

天と地 光と闇 白と黒 陰と陽 表と裏

 

「【フツノミタマ】!!」

 

それ即ち太極なり

 

「ゼァアアアアアアアアアアアッ!!」

 

太極の魔法円(マジックサークル)を足元に光らせた命は、莫大な魔力を乗せた深紫の光剣を眼下に現れた小人族(パルゥム)ただ一人に叩き落とした。

 

『よっしゃ!!ナイス命ちゃん、ドンピシャだ!ベル、リリ、ヴェルフ!!今の内に突っ込めぇ!!』

 

「行くよ皆!!任せました命さん!!」

 

「頼みます!!」

 

「気合い入れろよ!!」

 

重圧の檻に捕らえた敵が行動する前に、ベル達は命を置いて敵陣に突っ込んだ。彼らは知っている、この先に居るのはハイエルフの女性とドワーフの男性の二人だけだと言うことを、そしてその奥の部屋に目的の旗が立て掛けてあることを。

 

「グッ……この魔力と鬼気、昔のリヴェリアを思い出したよ」

 

「悪いが、自分が力尽きるまで付き合って貰うぞ!!フィン・オディナ!!!」

 

力を一点に絞り、限界まで出力を上げた【フツノミタマ】は、Lv.6のフィンでさえ身動きが取れなくなる程に強力な物だ。しかし、その代償は大きい

 

「確かに…………強力な『魔法』だ。でもそんな勢いで精神力(マインド)を注ぎ込んでいたら直ぐに精神疲弊(マインドダウン)を起こす、最悪死ぬよ?」

 

「望む所だ!!!例えこの命尽きようと、色殿を殺させてたまるか!!!!」

 

「ガッ!?」

 

激情した感情に呼応するように【フツノミタマ】の威力が更に増す、ヤマト・命の生命(いのち)を掛けた足止めが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇティオネ、本当にカラス君大丈夫かな?」

 

「はぁ、何回も言わせないで頂戴。団長が悪いようにはしないって言ってたんだから大丈夫よ」

 

「でもさぁ」

 

「団長を信じなさい」

 

ピシャリと言い放ったティオネは、会話は終わりとばかりにティオナの前を無言で走り出す。不満そうに口を尖らせたティオナだが、それ以上反論する事なく黙って後ろを走った。

 

暫く無言のまま、地図を便りに人造迷宮(クノッソス)の人工の道を二人で突き進んでいくと、見知った人影が二人の前に現れる。

 

「………あれは?」

 

狐人(ルナール)ちゃん?」

 

そこに居たのは少し前に双子の姉妹が間違って襲ってしまった狐人(ルナール)の少女だった。仲間とはぐれたのだろうか、一人でいる彼女は此方側に気付くと慌てて逃げてしまった

 

「ティオネ、どうする?」

 

「う~ん、一応捕まえておきましょう。仲間と合流されたら面倒だわ」

 

「了解!」

 

姉の言葉を聞いた妹は、力強く地面を蹴りグングンと必死で逃げている狐人(ルナール)に近付いていく。

 

「ひょえええええええ!!!」

 

「ごめんね狐人(ルナール)ちゃん。大人しく捕まって」

 

そう言いながら、直ぐに追い付いた狐人(ルナール)の首元に手を伸ばすティオナ・ヒリュテは

 

「エグッ!?」

 

知覚外から来た何かに体を真上に吹き飛ばされ、物凄いスピードで天井に叩き付けられた。

 

「な、なにが――――クッ!?」

 

驚愕するティオネにも同様の攻撃が真下から繰り出される。しかし、妹の惨状を目の前で見せ付けられた姉は、その攻撃にギリギリ対応し、何とか防ぎ切った

 

「なんだテメェ…………ぁ!?」

 

怒りを顕にしたティオネは信じられない物を見たかの様に目を見開く。そこに居たのは神々しく光輝く一人の少女、褐色の肌に銀髪を携えたその姿は正しく妖精、いや美の女神だ。もしくはそれ以上の何か――――

 

「ケケケケ、あの一撃を防ぐか。中々やるじゃないかぁティオネ・ヒリュテぇ」

 

片手で自分の何倍もある戦斧を軽々と振り回す小柄な女性の名前は、フリュネ・ジャミール。

 

フリュネの本来の姿を目にしたティオネは、自身より美しすぎる彼女を前に動く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二階建てになっている部屋の上段、そこに胡座を掻いて座っている人物の前には様々な色の水晶が置かれていた

 

『レフィーヤ達は何処に行ったっすか!?』

 

『ケケケケ!!それじゃあ、いくよぉ!!!』

 

『リリ、ヴェルフ、武器を構えて。僕が先行する』

 

「はっはっはっはっ!!いやぁ、ここまで作戦通りに進んでると気持ちいいぜ」

 

高笑いを上げる人物の名は黒鐘 色(くろがね しき)。この戦場をレーダーで全て把握し、水晶で指示を出しながら戦況を思いのままに動かしている怪物の救世主、魔王だ。

 

「でも、流石は【ロキ・ファミリア】だな。あの一瞬でベート君を先に行かす判断が出来るか、普通?」

 

両腕を組み合わせ難しい顔を浮かべた魔王は

 

「まぁ全部折り込み済みな訳なんですけどねぇ!!クックックッ……ハーッハッハッハッハッ!!!!」

 

直ぐ様口元を三日月の笑みに歪め、そのまま楽しそうに笑いだす。勝利を確信している笑いは人造迷宮(クノッソス)の隅の方にポツンと存在する一部屋に響き渡った。

 

「はぁ、はぁ………ふぅ…。笑った笑った笑い疲れた、と言う訳で、お前が迷わずこの部屋に真っ直ぐ突っ込んで来るのも想定済み何だよ、金髪ゥ」

 

「…………」

 

見下げた所には彼の言った通りに金色の少女の姿が有った。しかし、何時もなら問答無用で攻撃を始める彼女は、剣を抜く事もなく無言のまま佇んでいる。

 

「そんな顔するなよ金髪。何回もボコボコにされてる俺がこんな大事な場面で何の策も無くお前と戦う訳無いだろ?」

 

視線で人を殺せるなら殺しているであろう程の殺気を放って来るアイズに対して、色は小馬鹿にするように鼻を鳴した。

 

「フンッ、そんな殺気を放ってもお前は指一本動かせねぇよなぁ?あぁそうそう、こういう時の代名詞言っときますか」

 

彼は横に居た人物の首元に手を掛け

 

「動いてみろ、仲間を殺す」

 

アイズ・ヴァレンシュタインを脅迫した。

 

そう、黒鐘 色は【ロキ・ファミリア】のLv.3以下全ての団員を洗脳済みだった。故に相手側の作戦も全てが筒抜け、先手も取れるし待ち伏せも出来る。そしてアイズを取り囲むのは洗脳された【ロキ・ファミリア】の全団員、その全てが人質として敵としてアイズの前に立ち塞がっているのだ。

 

「防御も攻撃もするなよ?――――やれ、レフィーヤ」

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

色に首元を押さえられている人物、洗脳されたレフィーヤ・ウィリディスは一切の躊躇も迷いも無く、憧れのアイズ・ヴァレンシュタインに光の『魔法』放った。

 

白色の閃光が一直線に無防備な剣姫に突き刺さり――――切り裂かれる

 

「な!?………てめぇ!!仲間がどうなってもいいのか!?」

 

狼狽する魔王に抜刀した剣姫は迷う事なく次の言葉を言い放った

 

「ゴミ虫に人を殺せる度胸なんてないよ」

 

色の誤算があるとしたらただ一つ

 

もう既に、アイズ・ヴァレンシュタインの瞳の奥は黒金色に染まり切っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの戦場で激しい火花が散らされる中

 

「――――」

 

ただ一人、漆黒の怪物はその時が来るのを静かに待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマト・命

 

 Lv.2→Lv.3

 

 力 :D581→I0

 

 耐久:B760→I0

 

 器用:A885→I0

 

 敏捷:D542→I0

 

 魔力:S999→I0

 

 耐異常:I

 魔導:I

 

 《魔法》

 

【フツノミタマ】

 

・重圧魔法。

 

・一定領域内における重力結界。

 

《スキル》

 

八咫黒烏(ヤタノクロガラス)

 

・効果範囲内における敵影探知。隠蔽無効。

 

・モンスター専用。遭遇経験のある同種のみ効果を発揮。

 

任意発動(アクティブトリガー)

 

八咫白烏(ヤタノシロガラス)

 

・効果範囲内における眷属探知。隠蔽無効。

 

・同恩恵を持つ者のみ効果を発揮。

 

任意発動(アクティブトリガー)

 

 

 

 

 

 




さぁて、どの戦闘シーンから書いていきましょうかねぇ
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