ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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ここまで書くのに時間かかったなぁ




第37話 風神と雷神

もしかして俺って最強じゃね?

 

それが、初めて【ランクアップ】した時の感想だ

 

だってしょうがないだろ?推奨Lv.4の巨人をLv.1の俺が一人で倒して更に【ランクアップ】までしたんだから。

 

そんなの誰だって多少の全能感に包まれると思うし、それに加えて俺には【一方通行(アクセラレータ)】っていう最強チート能力と、追加であの超電磁砲(レールガン)の能力まで発現したんだぜ?

 

ちょっとぐらい調子に乗るだろ、普通?

 

それに、あの時の俺はこの世界の強さの常識をあんまり実感してなかったし、たとえあの巨人よりも強そうな小人族(パルゥム)が出て来ても、全力だしたら負ける事はねぇだろ、なんて思ってたりもした。

 

そう思えば、あの事が無かったら俺はここまで強さに固執して無かったのかもしんねぇな。

 

Lv.3になった時だって、わざわざ危険な37階層に突っ込んで行かなくてもベート君に対人戦をちょこっと教えて貰うだけで【アポロン・ファミリア】なんて軽く捻れただろうし。

 

探知速度を上げるレーダーだって、Lv.2の団員より遥かに格上を想定して考えたものだし

 

あの早朝訓練だって考えも付かなかっただろうし

 

フリュネ師匠にだって出会って無かった筈だ

 

だからまぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生で初めて心の底からキライになった女だが

 

天狗の鼻を折ってくれた事だけは、少しだけ感謝してやるよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれ?俺は何を………痛ッ)

 

痛みで意識が覚醒する。眼下に映った金髪が、気絶したエルフの少女を丁重に部屋の外まで運んでいるのを見て、何が起きたのか思い出した

 

(そうか………俺は)

 

魔法は全て切り裂かれた。

 

用意した魔剣は当たらなかった。

 

イケロスの所から押収した呪道具(カースウェポン)は触れる前に叩き折られた。

 

この時の為に練っていた【ロキ・ファミリア】を操ったコンビネーションは無意味だった。

 

途中から体力が無くなるのを覚悟で参戦したが、一分も持たなかった。

 

そしてこの現状は、つまり

 

(――――負けたのか)

 

それも現状の俺が考えうる限りの

 

”どんな手でも”使った上での完全敗北だ。

 

「………ははっ………ふふふ………くくっ……くはははははははははっはっはっはっはっ!!!」

 

もう笑うしかねぇわ

 

ラスボスっていうよりバグだろ、コイツ。どうやったら倒せんの?ゲームで言ったら絶対に倒せないエネミーだぜ、絶対。ていうか【一方通行(アクセラレータ)】と【御坂美琴(エレクトロマスター)】と【食蜂操祈(メンタルアウト)】を持ってる異世界人なんて普通だったら主人公クラスの人間を、最終決戦っぽい場所で傷一つ付けずに一方的にボコボコにするって逆に空気読めてないんじゃないんですかー?まぁ、初対面の時にいきなり顔面殴られた時点でコイツが空気読めない何て事分かってましたけどね!!それにしても表情変わらねぇな、今まで散々ボコボコにしといて無表情で睨み付けてくる顔しか見せないってどうなの?生まれてから笑った事無いんじゃねぇの?ちょっとぐらい笑ったら可愛げ………無いわー、逆にここまでボロクソにされてその上笑われたらぶちギレる自信があるね、ていうか毎回キレてたけどね。生まれてこの方ここまでキレたのお前だけだよ、書状でもやりたいぐらいだね。それと俺から喧嘩吹っ掛けたのもお前だけだし、どんな手を使っても倒したいって思ったのもお前だけだから、喜んでいいぞ、近所で優しいと評判な俺にここまで憎まれるってそうそうある事じゃねぇから、ネス湖でネッシー見つけるよりも希少な事だから。どうしても許して欲しかったら土下座でもして欲しいもんですな、アイツがそんな事するなんて天変地異が起こってもあり得ないだろうけどな!!おっと、そんなどうでもいい事を考えてたら操っていた【ロキ・ファミリア】の団員達を気絶させて外に放り出す作業が終了したらしい。攻撃してきたからって自分のファミリアを容赦なく峰打して気絶させるってちょっと酷すぎるんじゃないんですかね?血も涙も無いんじゃないんですかね?本当に人間なんですかね?………てまだその顔なのかよ、ふざけんなよ、お前の完全勝利だろぉが、少しは喜べよ、嬉しそうにしろよ、睨んでくんなよ、その表情苛つくんだよ、毎度毎度顔合わせる度に無表情になりやがって、泣いてみろよ、笑ってみろよ、驚いてみろよ、出来ねぇのか?出来ねぇんだろ?だったら俺がその無表情ぶっ壊してやるよ

 

「《チート》持ち舐めんじゃねぇぞ、糞女」

 

眼下で睨み付けてくる金髪を盛大に嘲笑ってやりながら、痛みで動かし難い右腕をポケットの中に突っ込んだ。

 

【イケロス・ファミリア】と戦った時から心の隅でずっと考えてた事がある。それは、暴走した異端児(ゼノス)達を【御坂美琴(エレクトロマスター)】で操ろうとした時、どうして魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を起こしたのかだ。

 

考察していくと、俺の『魔法』は根本的におかしい。

 

まず、誰にも『魔力』が感知出来ない。

 

それは、街の人間を操ったり、【御坂美琴(エレクトロマスター)】で広範囲にレーダーを展開していたにもかかわらず、『魔力』の流れによる違和感を誰一人として感じてなかったので確定だろう。

 

次に、【ステイタス】に記入されている名前や効果だ。

 

御坂美琴(エレクトロマスター)

・電気を自在に発生させる事ができる。

 

どうして使用者の名前が使われているのか?

 

この場合『超電磁砲(レールガン)』か『電撃使い(エレクトロマスター)』、【食蜂操祈(メンタルアウト)】だって『心理掌握(メンタルアウト)』が普通なのではないのだろうか?

 

効果の方も、ベルの『速攻魔法』やリリの『変身魔法』みたいに、『――魔法』って付いてない。ヘスティア曰く、『魔法』の詳細情報には必ず付いている物らしい。しかし俺の『魔法』には、電気を自在に発生させる事ができる、という一文だけ。

 

そして最後の疑問、俺の『魔法』は成長していない。

 

命ちゃんやベルの『魔法』は【ステイタス】の『魔力』が伸びる度に威力が上がっていってるのに、【御坂美琴(エレクトロマスター)】は【ステイタス】が伸びてもLv.が上がっても、一向に威力も範囲も変わっていないのだ。

 

結論を言おう

 

つまり、【御坂美琴(エレクトロマスター)】と【食蜂操祈(メンタルアウト)】は、根本的に『魔法』や『呪詛(カース)』では無い。

 

それじゃあなんなんだって?そりゃ勿論、『超能力』だ。

 

俺の仮説はこうだ、【御坂美琴(エレクトロマスター)】と【食蜂操祈(メンタルアウト)】は、御坂美琴と食蜂操祈という二人の超能力者の『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を、俺の『魔力』を使って行使するという物なのだろう。

 

だかこそ、初めて『魔法』を使った時も、黒い『ゴライアス』を吹き飛ばす程の威力を出せたし。『呪詛(カース)』だって最初から万全に扱える。

 

異端児(ゼノス)達が暴走した時に魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を起こしたのは都城 王土の【人心支配】が御坂美琴では使えないから。又は、都城 王土という御坂美琴ではない人物の能力を使用しようとした、からなのだろう。

 

もし、この仮説が正しければ、面白い事が出来る

 

「「…………」」

 

金髪と睨み合いながら、リモコンを頭に押し当てた

 

操るのは、オラリオの八割に【食蜂操祈(メンタルアウト)】で植え付けて置いた保険

 

ホストは俺に設定し、共感覚性を利用して使用者の『脳波に合わせて調律する』

 

そうする事で複数の人間の脳を繋げ、擬似的な『幻想御手(レベルアッパー)』を再現。

 

大丈夫、俺の考え通りに行けば、そういう状況を用意するだけで能力が勝手に進化していく筈だ。

 

共感覚性をさせる為の音声ファイルの代わりは、あれでいいか。

 

さて、準備は整った。

 

いくぜ――――――アイズ・ヴァレンシュタイン

 

今度こそブッ飛ばしてやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イシュタル・ファミリア】の本拠(ホーム)女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)を観戦する為に巨大な神殿のバルコニーに集まっていた黒鐘 色のファンクラブ達は、大鏡に映されているボロボロになった色を固唾を飲んで見つめていた

 

「嘘………色くんが」

 

「しょうがないよ、だって相手はあの【剣姫】だもん」

 

「でも……でも!!あの色くんだよ!?こんな簡単にッ」

 

「狼狽えるな!!」

 

「「「!?」」」

 

娼婦達は声の主の方向を向いた。そこには、玉座に座る己の主神の姿が――――

 

「私の見込んだ男だ、あの程度でやられる訳が無いだろう」

 

威風堂々と言い放った美神に娼婦達(ファンクラブ)は何度も頷き、血まみれの色に大声で声援(エール)を送り始めた

 

「あのさ、イシュタル様」

 

「なんだ」

 

「そこまで言うんなら、さっきから握っている私の手を離してくれるかい?」

 

「………もう少しだけ」

 

先程とは違い、震えた声で小さく言う美神。アイシャは小さなため息を付き、空いている方の手で額を押さえた

 

「ねぇねぇアイシャ」

 

「ん?なんだいレナ?」

 

そんなアイシャに声を掛けたのは、さっきから懇意にしている狼人(ウェアウルフ)が出ないと騒いでいたアマゾネスの少女、レナ・タリーだ。不思議そうに首を傾けながら聞いてくる少女は、アイシャに疑問を溢した

 

「さっきから変な音しない?」

 

「変な音?」

 

「うん、なんていうか――――大きな鐘の音が聞こえるんだよね」

 

その疑問に対する答えは、声援がより大きな歓声に変わった事により、かき消される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なに………あれ)

 

アイズ・ヴァレンシュタインは今まで憎らしく思っていた黒の少年に、初めて困惑の視線を向ける。

 

否、そこにいるのは最早、黒の少年等ではない

 

アイズは見た、黒の少年がよく分からない物を頭に押し当てた瞬間、正体不明の黒い力が少年を包み込む所を

 

そして、少年が人間から怪物、更に上の存在に姿を変える所を

 

(翼と……角?)

 

そこに居るのは怪物でも人間でもない

 

物質化したAIMと電熱融解した超硬金属(アダマンタイト)で構築された羽衣(つばさ)

 

頭上に生えた一本の巻き角

 

完全に黒に染まり切った瞳

 

全身を隙間なく覆う雷

 

雷神

 

「ッ!?」

 

雷を司る神の様な存在感を放つそれは、呆然と見上げる【剣姫】に無動作で雷の裁き(砲弾)を上空から叩きつけた

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

バックステップ

 

咄嗟に風を纏いながら後ろに飛んだアイズは、一瞬前に自分がいた場所が雷により破壊されている事に途方もない危機感を感じた

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

雷の翼が横凪ぎに払われ、屈んだ際に触れた自分の髪先が雷に触れた事により消滅する。足を止める訳にはいかない、そう感じた【剣姫】の頭の中に、今までに無い程の警鐘が鳴り響く

 

「ivsf飛wq」

 

気付いた時には、雷と同等の速さで目の前まで迫っていた雷神が、異界の言語を呟きながら、雷化した自身の鉤爪(右腕)を振り下ろそうとしていた

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!!!」

 

咄嗟に唱えた三度目の付与魔法(エンチャント)。己の内に眠っていた力を噴出させるかのごとく、産み出した大いなる『風』は烈風となり、その全てを敵対する雷神を打倒すべく振るわれた

 

ゴオッ!!!バシュッ!!!

 

大部屋の中心で音が弾ける

 

吹き飛ばされたのは力負けしたアイズの方だ。後ろに飛んだ身体を何とか風で制御し、着地した瞬間放たれた雷砲を転がりながらギリギリ避ける。

 

彼女は思う、このままでは勝てないと

 

(それじゃダメ)

 

彼女は想う、あの人に勝ちたいと

 

(それでもダメ)

 

彼女は憎む(おもう)、アイツを殺さないと

 

(うん、それでいいよ)

 

「ちょっと強くなったからって、私に勝てると思わないで」

 

(さぁ、速く。目の前にいる大好き(ダイキライ)無敵の英雄(ゴミムシ)(コロ)してきて)

 

「ゴミ虫」

 

黒金色に染められた瞳の奥には燃えるような懸想(憎悪)羨望(狂気)が渦巻き、血液が沸騰するような感覚を感じながら。

 

(貴方ノ全テヲアノ人ニブツケテキテ)

 

いつの間にか隣に居た、漆黒のドレスを着ている幼い自分(アイズ)に促されるように、彼女(アイズ)は四度目の『魔法』を唱えた。

 

「【荒れ狂え(テンペスト)!!!!!】」

 

その呪文を唱えた瞬間、アイズは身体中の魔力が外側に放出される実感と共に、迫り来る雷神を打倒出来るだけの力を手に入れた快感を得る。

 

小さな竜巻(サイクロン)となった彼女は手に持った《デスペレート》を今まで以上に力強く握りしめ――――僅かに笑みを浮かべた

 

「………行く」

 

「――――yjrp悪qw」

 

そして

 

風神(アイズ)雷神(しき)が激突する

 

それは神話に刻まれるレベルの激闘

 

超硬金属(アダマンタイト)で建造された硬質な壁は紙の様に裂け、最硬金属(オリハルコン)ですら数秒も持たない。

 

雷翼が風の鎧と接触する度に耳を(つんざ)くような轟音が鳴り響き、雷速と風速で駆け抜ける二人の背後には当たり前のように破壊が撒き散らされた。

 

途中から雷神の力が更に強まり、体が異形に変化し、それに呼応するように風神も五度目の魔法を唱える。

 

風の鎧を通常の攻撃では突破出来ないと察した雷神は、剣、槍、斧、弓矢、様々な武器を具現化し雷速で射出するようになり、風神はその尽くを風の閃光を纏う一本の剣で切り払った。

 

「あああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

声になら無い雄叫びを上げながら、アイズは自身の精神力(マインド)が限界に近づいている事を感じていた。しかし、その事に焦りはない、焦っている暇など無い!!

 

「――――――――ッ!!!!」

 

「クッ!?」

 

突如後ろから振るわれる雷爪、眼前の雷剣や雷槍を切り伏せていたアイズは、咄嗟に身体を捻り、剣を横凪ぎに振るう

 

バゴゥッ!!!

 

光と音に支配される空間の中、アイズは更に剣を真下に叩きつけるように振り下ろす

 

バジンッ!!!

 

下からかち上げられた雷斧を叩き折った彼女は、更に背後を突き刺す

 

ズンッ!!!!

 

様々な武器と自身の爪を雷速で振るう雷神()と、限界以上の風を付与し条件反射で動いている風神(アイズ)の間には、『技と駆け引き』など存在しない。

 

常に全力、常に全開、考える事すら無駄とばかりに化物の様に(本能のまま)殺し合う

 

「GAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

「はぁッ!!!!」

 

そして、その時がやって来た。二人の間に奇跡的に空いた10(メドル)程の空間、雷爪(右腕)と剣に込められた莫大な風と雷の力。

 

疾風迅雷

 

裂けたのは、雷神の爪。

 

「…………クッ!?」

 

そして、風神の脇腹

 

「――――ッァアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

雷神はこの時、勝機を見出だし、駆けた。雷の軌道のようにジグザグに動き回りながら、血が流れる脇腹を押さえている風神に容赦ない雷蹴を浴びせる

 

「――――シッ!!!」

 

しかし、それは囮だ。

 

少女は自分の窮地に、何時か誰かに教わり、また教えた事を断片的に思い出していた

 

止めの一撃は、油断に最も近い

 

「ウッ!?」

 

雷神の脚から、風神が流した同じ量の血液が噴出する。普通ならこれで決着が付いている筈だ、本来なら脚を失った人間は動けないのだから。しかし、この戦いは人間の戦いの範疇には収まらない、故に、まともに動けない二人が取った行動は

 

接近格闘(インファイト)

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

防御を捨てた死闘

 

腕を振るう度に血を飛ばし

 

脚がブレる度に肉が削れ

 

身体を動かす度に命を燃やす

 

この時点で意識を飛ばしながら闘っている二人は、お互いの事しか考えていない

 

異端児の事も忘れ

 

仲間の事も忘れ

 

家族の事も忘れ

 

自分の生命(いのち)の事すら忘れ

 

ただ目の前の存在を殺す事だけは忘れずに

 

そして

 

遂に決着の時が来た

 

それは隙だ、風神の僅かに出来た隙。しかし先ほどの事で学習した雷神は飛び付かず、身体を宙に踊らせる

 

「「………」」

 

一瞬だけ絡まった視線

 

覚醒する意識

 

煮え滾る想い

 

超電磁砲(レールガン)!!!!」

 

「リル・ラファーガ!!!!」

 

今までの数倍強力になっている、お互いの必殺が放たれた。上から落とされた黒雷と下から跳んだ神風は、部屋の中央で爆発に変わり。

 

閃光と破壊に包まれた空間で色は唯一動かせる左腕を振り絞った。

 

(てめぇにだけは、二度と見下されねぇッ!!!!)

 

見下ろしてくる金髪(格上)は、紛れもなく黒鐘 色の強さへの原点(オリジン)

 

だから少年は手を伸ばす

 

自分の奥に秘められた力に手を伸ばす

 

「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

雷翼が黒翼に変わり

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

黒翼が白翼に変貌した

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」

 

「エェェアァァリィィアァァルゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!」

 

拳と剣、二つの不壊武器(デュランダル)があり得ない程の衝撃で軋みを上げ

 

色とアイズは白い光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――貴方は誰?

 

真っ白な空間の中、大人の自分(アイズ)は純黒のドレスを纏った幼い自分(アイズ)に問いかける

 

(貴方は私)

 

――――――――違う

 

明確な否定、大人の自分(アイズ)の腕には一降りの銀剣が握られてる

 

(私を殺すの?)

 

――――貴方はいらない

 

否定、銀閃が少女(アイズ)を貫こうとした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

――――純黒を纏ったアイズが三日月の笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

(本当にいいのかよ?お姫様)

 

気づけば、幼いアイズは何処にも居なくなっていて

 

(今の戦いはアンタだって悪くなかっただろ?)

 

代わりに居るのは――――何かだ

 

(だってよ、この一戦だけでアンタの【ステイタス】は劇的に延びている筈だぜ?)

 

何かは、やけに愉しそうにアイズに語りかけてくる

 

(今までは確かに、こっちが一方的に楽させて貰ったけど?こっからはお互いWin-Winの関係ってやつだ。だから仲良くしていかないか?)

 

その言葉の羅列にピクリとも耳を貸さず、アイズは銀剣を振り上げた

 

(チッ黙りかよ。糞っタレのアビリティが、何処までも俺の邪魔をしやがって。あーあ、せっかく相性抜群の混じり者を見つけたってのに勿体ない)

 

一閃――――アイズの中に居た、何かは、これ以上喋らせたくないかの様に、容赦なく切り捨てられる

 

(まぁいい、方法は幾らでもある。止まっている暇はないぜ――――)

 

 

 

ご主人様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼女(アイズ)は意識を取り戻し、一人の少年を限定に反転していた想いが通常に戻った反動により、全身に流れる血液がドクンッと揺らいだ

 

「……………ぁ……」

 

溢れてくる記憶は過去の自分

 

「ぁぁ…………」

 

何時も何時も、彼の姿を見かけては攻撃していた自分

 

「んあっ…あぁ……あああああ……ああああああああああッッ!!!」

 

激しい雨の中、常に彼の命を散らそうとしている自分

 

「わたしっ…わたしっ……なんてことを………」

 

限界越えた力を使い、全力で彼と殺し合う自分

 

「わたしっ………私なんて事をッ!!!!!」

 

そして、ボロ布の様に墜ちていく彼と、それを見上げる自分

 

「あああああ…!!!あぁ…!!あぁあああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

溢れてくる涙、喉から絞り出される叫換、絶え間ない後悔

 

少女は顔を涙でぐちゃぐちゃにさせながら、全力で風を纏い彼の元へ駆け抜けた。

 

――――速くッ

 

――――もっと速くッ!!!

 

――――もっともっと速くッ!!!!

 

産まれて初めて叩き出した最速のスピードは、少年が地面に落ちる前に追い付いた。しかしそこで魔力が切れたのだろう、体の制御が効かなくなった少女は、傷だらけの少年をしっかりと抱き締め、その勢いのまま最硬金属(オリハルコン)の壁に衝突する

 

「……う……ぐっ………死な……ないで……」

 

先程の戦いと、ぶつかった衝撃で意識を朦朧とさせながらも、決して放さなかった腕の中の少年にアイズは言葉を掛けた

 

「死なないで………死なないでッ!!!」

 

何度も掛ける言葉とは裏腹に、色の心音は徐々に小さくなっていく。その事に顔を青ざめさせたアイズは回りを見渡すが、あるのは瓦礫と破壊の傷跡だけ

 

(なにか………なにかないのッ…………あ!?)

 

思い出した、確かあの時彼は!!

 

アイズは色の衣服を脱がし初めた、ボロボロになっている制服だが一ヶ所だけ無事な所がある。それは心臓の部分、手を伸ばすのはそこの内ポケット。

 

(………あった!!…………ッ!?)

 

そこには三本の試験管が入っていた。うち二本はアイズの目論み通り万能薬(エリクサー)だ、そして最後の一本は

 

対専用呪詛(アンチ・カース)の…………秘薬………)

 

考えずとも理解できる。

 

どこまでも優しい彼はきっと、ずっとあんな態度を取っていた自分ですら救う手段を用意していたのだ。

 

溢れた涙が止まらない

 

(………これでッ!!)

 

万能薬(エリクサー)一本を赤黒くなった腕や、出血が酷い足に丁重に掛けていく。そして、二本目を半分ほど掛けた時に彼女は気づいた。

 

傷が塞がった彼の容態が、少しも好転していない事に

 

「なんでッ!!!なんでッ!?」

 

アイズは知らない、黒鐘 色は限界をとうに越え過ぎていた。【食蜂操祈(メンタルアウト)】を使った状態で、雷速で動き回っていた身体は、その代償により内側から弾け。【一方通行(アクセラレータ)】の細かい操作が無意識に出来ていなければ3秒で即死に至っていただろう。

 

故に、外傷は完治出来たとしても、内蔵は取り返しの付かない事態になっている

 

「死なないでッ!!生きてッ!!色ッ!!!」

 

それは咄嗟の判断

 

試験管に半分ほど残っていた万能薬(エリクサー)を口に含んだ少女は

 

血を垂れ流す少年の唇に、自身の唇を押し当てた

 

(お願い………生きて…………色…………死なない………で………)

 

精神疲弊(マインドダウン)により薄れていく意識の中、遠い幼い日に父と母に言われた言葉を思い出す。

 

――――あなたも素敵な相手(ひと)に出会えるといいね

 

――――いつか、お前だけの英雄に巡り会えるといいな

 

二人の言葉に、純白の衣服を着込んだ幼い自分(アイズ)は困り顔でこう言った

 

『うん、会えたよ。でも私ね、その人にいっぱい酷いことしちゃった。だから今度は………』

 

数秒後、アイズはずっと自分と戦ってくれた(英雄)を包み込むように優しく抱き締めながら、ゆっくりと意識を落とすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は移り変わる

 

 

 

 

 

「なんでですか………」

 

白の少年は自分に立ち塞がる存在に声を震わせた

 

「やれやれ、死ぬところじゃったわい」

 

「聖衣が無ければ危なかったぞ」

 

それは氷像から自力で解き放たれたドワーフとハイエルフ――――ではなく

 

「君の勇気、見せてもらったよ」

 

大爆発の中、小さな少女を守り切った小人族(パルゥム)――――ではなく

 

「なんで…………どうしてッ!?」

 

漆黒の体皮、紅色の角、片手に持った両刃斧(ラビュリス)

 

「どうしてですかッ!?アステリオスさんッ!!!!」

 

あと少しで旗の部屋(ゴール)に届きそうな兎の前に立ち塞がるのは――――漆黒の猛牛

 

「悪いけど彼は」

 

勇者は錯乱する兎に、絶望的な一言を投げ掛けた

 

「すでに『調教(テイム)』済みだ」

 

ベル・クラネルの死闘が始まる

 

「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

「ッ!?」

 

歴史に刻まれる死闘が

 

 

 

 

 

 

 

 

リリルカ・アーデ

 

 Lv.2

 

 力:A870

 

 耐久:D541

 

 器用:I83

 

 敏捷:G206

 

 魔力:I28

 

 狩人:H

 

《魔法》 

 

【シンダー・エラ】

 

・変身魔法

 

・変身後は詠唱時のイメージ依存。具体性欠如の際は失敗(ファンブル)

 

・模倣推奨

 

・詠唱式【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】

 

・解呪式【響く十二時のお告げ】

 

《スキル》

 

縁下力持(アーテル・アシスト)

 

・一定以上の装備加重時における補正。

 

・能力補正は重量に比例。

 

怪力乱神(スパイラル・パワー)

 

・装備加重時における倍率補正。

 

・能力補正は重量に比例し上昇。

 

・力値限定。

 

 

 

 




ふはは、誰もアイズが色とチューするとは思ってなかっただろう。

ベルとアイズのフラグをバッキバキに折っていたのは殆ど、この為だったんだぜ。

【ロキ・ファミリア】との戦いの行方と

これからの色とアイズの関係の変化をお楽しみに



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