ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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この話の後、恐らく彼女は色の回りの女性に対して無意識のうちに全方位の攻撃をかましている



第39.5話 後日談であり前日談

微睡みの中、ふんわりとした香りが鼻腔をくすぐり少しだけ意識が浮上する。

 

やたら良い匂いに思わず口元が緩み、うっすらと瞼を開けるとそこには、窓から射し込む日に照らされ金色に輝いている髪の毛が微かに見えた。

 

「…………あぁ春ちゃんか」

 

ボソッと呟きながら、狐人(ルナール)の耳を触るため、ゆっくりと頭に手を持って行く。一応、娼婦(笑)な彼女は、どうやらヘスティアと同じく俺と一緒に寝る事に抵抗はないらしい。まぁ別にいやらしい事をする気はさらさら無いが、それなら好都合と寝てる間に耳や尻尾をモフモフさせてもらっているのだ

 

と、言うわけで―――モフモフ~

 

「……………ぁぅ」

 

「……………ん?」

 

掌で触れた感覚は、何時ものモフモフではなくサラサラ。

 

いや、意味わかんねぇし、とりあえずモフモフさせろ

 

ぼー、とした頭でそう思った俺は、今度は反対の手を尻尾の方に持っていく

 

ふにふに

 

「……………ぅ…ん」

 

あー、ここ背中だわ。もうちょい下に尻尾が、モフモフがあるはず

 

むにむに

 

「……ふぁ……ぁ…」

 

あれ?ねぇな。もっと下か?どこだ~尻尾~

 

むにゅむにゅ

 

「………んぅ…………ゃ」

 

わかった、これ服の中に入ってんだ。ふへへ、引っ張りだしてやるぜぇ

 

むにゅん

 

「あんッ!」

 

「…………」

 

皆さん、おはようございます。完全に意識が覚醒した黒鐘 色です、唐突ですが現状を説明させてもらって宜しいでしょうか?

 

ベッドの上で寝ている金髪を、俺が抱き締めている………

 

なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!?!?!?!?!?

 

どういう状況!?意味わかぁんなぁい、混乱がヤバい混乱が!?どうなってんの!?

 

「…お………とう……さん」

 

ちょっまって!?そっちから抱き締めるな!!!離れられねぇから!?あとお父さんじゃねえから!?

 

「おかあ…………さん?」

 

お母さんでもねぇぇぇからぁぁぁあ!!!!おい、本当に待て、待ってください!?足を腰に絡めて来ないで下さい!?誰か助けて!!!ステイタス封印されてる状態じゃあ逃げれねぇ!!!

 

ガチャ

 

「色さん、朝御飯出来た……す」

 

「あ、ラウルさんたs」

 

「し、失礼したっす!?」

 

あの野郎逃げやがったぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!

 

「ふへへ…………きぃ……」

 

近い近い近い!?背中に腕を回すな馬鹿!!!胸に顔を付けるな馬鹿!!!スリスリするなぁぁぁぁぁあああああ!!!!!ああああああれか、実は俺を社会的に抹殺する作戦か!!!でも残念でしたぁぁ、この状況誰がどう見ても俺がお前に襲われてる様にしか見えねぇからぁあああああ!!!!

 

「ん…ぅ……もっ……と」

 

ごめんさないごめんなさいごめんなさい!!!!謝るから早く起きてくださぁぁぁぁあああいいいい!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数十分後、ようやく起きた金髪から解放された俺は、この館の神室の扉を勢いよく開けた。

 

「どうなってんすか、ロキさん!!!!!」

 

「ぶははははは。朝から大変やったなぁ、色君」

 

俺の顔を見た神物(じんぶつ)、ロキさんはゲラゲラと笑いだした、どうやらラウル経由で俺と金髪の話は耳に入っていたらしい。

 

「昨日の歓迎会の時にやけにニヤニヤしてると思ったらこういうことだったのか!!ていうか

お前も早く離れろっつうの!!!」

 

振り向くと、起きた時からどんだけ止めろと言っても俺の服の裾を指でしっかり摘まみ、離さないでいる金髪がキョトンと首を傾け

 

「でも私、ロキにぼでぃーがーどを頼まれたから」

 

とか言ってきた。そして、朝っぱらから何回も聴かされたその言葉を金髪に吹き込んだであろうロキさんは、腹を抱えて大爆笑してる。

 

「お前ボディーガードの意味わかってんの?」

 

「任せて、私は色………君から、離れない…から」

 

絶対意味分かってないだろコイツ。少なくても俺の知ってるボディーガードは、守る対象のベッドに潜り込んで一緒に寝たりしねぇよ。

 

「まぁそういうことや、色君がここに居る間はうちのアイズたんがしっかり守ったるから安心しぃや」

 

「安心出来ないんだけど!?」

 

この人俺がコイツにどんな目に会わされて来たかわかってんの!?このままじゃ、ふとした拍子にくびり殺されちゃうかもしれないよ!?

 

「まぁまぁ、落ち着きぃや色君。いいか、ファミリアじゃあ主神の命令は絶対や、そんなうちがアイズたんにボディーガードを命じたんやで?だから色君は大丈夫や」

 

「これまでロキさんの命令に背いて攻撃されてたんですけど!?」

 

「………………じゃあ、こうしよ」

 

この人誤魔化したよ!?

 

「アイズたん、今日から色君が帰るまで色君の言うこと何でも聞くんや、わかったな?」

 

「うん、わかった」

 

驚くほど素直に首を縦に振った金髪は

 

「オッケー。じゃあ今日から俺が帰るまで一切近づくな」

 

「嫌」

 

驚くほど速く先程の言葉を撤回した

 

「ロキさぁん?」

 

「い、いややわぁ色君、ボディーガードやのに一切近付かへんなんて出来るわけないやん。それに、そんなに嫌やったらアイズたんが添い寝してる時になんで大声出して無理矢理起こさへんかったん?」

 

「…………………………いや、でもあんな気持ち良さげに寝られたら起こし辛いって言うか――――てそんな事はどうでもいいんですよ!!!」

 

がーっと吠えながら詰め寄る俺を、ロキさんはニヤニヤした顔を隠そうともせず言葉巧みに追い詰めていく。そして数分後には完全に言いくるめられてしまった

 

「な?うちと色君の仲やねんから折れてくれてもいいやん」

 

「う、ぐ…………わかり、ました。今回だけ、ですよ」

 

「いやぁ色君なら分かってくれると思ってたわ!!」

 

異端児(ゼノス)の事を引き合いに出すとか卑怯なんじゃないですかねぇ!?

 

「あぁもう、こうなったらやってやるよ!!フェルズ、あの人にちょっと伝言頼むわ」

 

緊急時用の水晶にそういいながら神室を後にした。勿論、俺の後ろには服の裾を摘まんだ金髪が付いてきている、散歩されている犬か俺は。そのまま二人で黄昏の館の廊下を歩いて行くと、対面から大きな影を引き連れた小さな人影が手を降ってきた。

 

「やぁ、おはよう色。今朝は、というより今まさに大変そうだね」

 

「お早うございますフィンさん、現在進行形でマジ大変っす。アステリオスもおはよ」

 

スッと会釈したアステリオスと、苦笑いしているフィンさんの前で盛大にため息を吐いた。後ろからは、頭に?マークを出しながら首を傾けているであろう金髪の気配を感じる。いやお前が原因だからな

 

「それで、アステリオスはどうでしたか?フィンさん」

 

「彼は良くやってくれてるよ。今朝も破壊された館の修繕と少しばかり手合わせをしたんだけどね、正直想像以上だ」

 

フィンさんの言葉を受けたアステリオスが少しだけ誇らしげに胸を張り、彼が羽織っている【ロキ・ファミリア】のエンブレムが刺繍されているマントが揺れる。うん、上手いことやって行けそうで良かった。

 

「あぁそうだ、ティオネさんとティオナさん借りても良いですか?ちょっと出掛けるんで」

 

「ンー、その様子だとロキが関わっていそうだね。いいだろう、二人は門の前で待たせておくからその間に外出する準備をしてくるといい。僅かばかりだが金貨も渡そう」

 

「本当にすいません」

 

相変わらず察しの良いフィンさんに深々と頭を下げ、そこから外出する準備をするために廊下をズンズンと歩いていく。すると後ろから金髪の声が

 

「あの、どこ行くの?色………君」

 

「あぁ?なんでてめぇにそんな事言わなきゃなんねぇんだ、金髪ゥ」

 

何時ものやり取りの様に口を開いた。すると、裾を引っ張る力が僅かに強められる

 

「…………ごめん……なさい」

 

「………………………………はぁ、港だよ。港に行く」

 

「あ、ありがとう!」

 

何故か強まった裾の感覚に俺はこう思う――――くっそやりづれぇぇぇぇえええええええええええ!!!!

 

そのあと、寝巻きから私服に着替える為、引っ付いてくる金髪を引き剥がすのに30分ぐらい掛かり、何故か俺がアマゾネス姉妹に滅茶苦茶怒られた。やっぱり罠じゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、フェルズに探知機能を外して貰ったキュクロプスの羽帽子を被りながらやって来たのは、都市を出て直ぐにある港町、メレンだ。雑多に停泊されている船の上、自前に連絡していたTHE海の男みたいな格好をしている男神に手を降って挨拶する

 

「どうも、来ましたニョルズさん!!」

 

「おぉ!!色君、良く来てくれた!!」

 

手を振り返してくれた漁業系ファミリアの主神、ニョルズさんは、身軽に船から飛び降りたあと、俺のところまで駆けつけ、わざわざ握手をしてくれる

 

「本当に良く来てくれた、君は海の英雄だ!!」

 

「あの、それは流石に言い過ぎ、てか手が痛いです」

 

ギュウと両手で握り締められた右手が悲鳴をあげ、顔が引き攣る。しかしテンションがハイになっているニョルズさんは気づかずにそのまま腕をブンブンと振りだした

 

「言い過ぎなもんか!!君が流行らしてくれた海の歌のお陰で漁業系ファミリアが増えたし、それに――――おっとすまない、今日はあの子に会いに来たのだったね」

 

その言葉と共にようやく右腕が解放され、ニョルズさんはロログ湖に向かって大声を上げた

 

「おーい!!マリィちゃん!!色君が来たぞー!!!!」

 

腹から出されたであろう大音量が水面に響き渡り、暫くすると停められてある船の近くがちゃぽんと音を立てた

 

「色ィ!!オ久シサシブリ、ネ!!」

 

現れたのは見た者全てを魅了出来そうな美貌と、幼げな表情を併せ持っている人魚(マーメイド)異端児(ゼノス)、マリィだ。【ニョルズ・ファミリア】のエンブレムが刻まれたネックレスを首に掛けている彼女は、戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる前に人造迷宮(クノッソス)経由で【一方通行(アクセラレータ)】を使い水ごと運び出していたのだが、それから一回も会えてなかったので、こうやって様子を見に来た訳である。

 

「ようマリィ、久しぶり。元気そうで良かったぜ、ニョルズさんの所で良い子にしてるか?」

 

「ウン!!今日モイッパイモンスターヲ散ラシタンダヨ!!ロッド達ニモ褒メラレタ!!」

 

元気に両手を上げた人魚(マーメイド)の頭を撫でてやると「ムフー」と嬉しそうに鼻を鳴らす。マリィの配属先を【ニョルズ・ファミリア】にして正解だったみたいだな

 

「この数日でマリィにどれだけ助けられたか。君には感謝してもしきれない、俺達に出来ることがあるなら何でも言ってくれ」

 

キラキラした瞳で詰め寄ってくるニョルズさんに若干引きながら、俺はもう一つの目的

を果たすため、ティオネさんとティオナさんが奮闘しているであろう小屋を指差し

 

「ここら辺でどっか良い感じのスポット無いですかね?」

 

と耳打ちした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、やるぞ!!」

 

「えっと………これは」

 

ニョルズさんから借りたサーフパンツを履いた俺の目の前には、白い上下一組(ツーピース)の水着を纏った金髪が顔を真っ青にさせながら水面を見つめていた

 

「お前俺から離れないって言ったよな?取り敢えず、ちょっと深い所まで泳ぐから付いてこいよ」

 

「その、私は………うぅ」

 

はっはっはっ、付いてこれないよなぁ!!だってお前泳げないもん!!俺は決めたのだ、自前に調べ上げていたこの情報使い、コイツに今までの仕返しを存分にすると!!

 

「ほらほら、どうしたぁ?海にはモンスターが多いって聞くから襲われちゃたらどうしよう?」

 

勿論嘘だ、この海域はマリィの魅了(チャーム)により、モンスターどころか危険な魚全般が近づいてこないし、いざって時にはアマゾネス姉妹に待機してもらっている。ふふふ、そこで指を加えて俺の優雅な泳ぎを見ているが良い!!!

 

「い、今行くから!?待ってて――――――――がぼっ!?」

 

「なにしてんの!?」

 

わりと浅瀬でぼこぼこと溺れだした金髪に慌てて泳ぎ寄った。そしたら、うんまぁ、抱きつかれるよね

 

「た、たす!!色、助けて!?」

 

「わ、わかった!!わかったから抱き付くなバカ!?自分がどんな格好してんのか分かってんのか!?」

 

「離さないで!?離しちゃやだ!!!」

 

「痛い!?」

 

完全にパニックになった金髪は、必死になって俺の背中に両手を回し、ギュウギュウと体を押し付けてきた。混乱して力加減を忘れたためか、俺の体もギュウギュウと嫌な音を立てている。

 

「あぁ、もう落ち着け!!!」

 

「あう!?」

 

本当は全力で嫌なのだが命には替えられない、仕方が無いので抱き締め返してやる。溺れていた子供を助けた時に落ち着かせた方法なのだが、どうやら金髪にも有効だったらしく、数秒で静かになった。

 

「うぅ……くそ、なんでこんな事に」

 

「…………しき……くん?」

 

悪態をついて見下ろすと、海水と涙で目を充血させている金髪が腕の中から見上げてきていた。ウルウルとした瞳を真っ正面から見返し、俺は自分で自分の頭を疑う発言を口から捻り出す

 

「俺が……俺がお前に……泳ぎ方を…………教えてやる」

 

「いい……の?」

 

ベル達が居たらこう言うだろう、本当にお人好しなんだから、てな

 

「ボディーガードが泳げなかったら困るから仕方なくだ、分かったな?仕方なくだぞ?勘違いすんなよ?」

 

「う、うん。ありがとう、色……君」

 

でも、いくら嫌いでも泣いてる女ほっとけるほど俺は非情になれねぇんだよなぁ。

 

「あと、その君付け止めろ気持ち悪い。呼び捨てでいいから」

 

「あ、ありがとう…………色」

 

名前を呟いた後、自分の状況を理解した金髪は頬をほんのりと紅く染めらせながら、溺れないように俺の肩に手を置き、ゆっくりと体を離していく。

 

え?なにその反応、かわ――――

 

「いくねぇから!!危なかった!!何か知らんがすげぇ危なかった!!!」

 

「?」

 

「いいから手を取れ、始めるぞ!!」

 

「う、うん」

 

もう本当に、どうしてこうなった!!!!

 

そして、泳ぎの練習が始まって数時間後――――

 

「大丈夫だから、落ち着いてゆっくりと顔付けて体浮かしてみな」

 

「わ、わかった」

 

色はわりと真剣にアイズに泳ぎを教えていた。

 

「飲み物持ってきたよ~ってあの二人まだやってるの?」

 

「えぇ、まだまだ止める気配がないからゆっくりと待ってましょう」

 

「うわー、カラス君って面倒見いいんだねぇ」

 

その様子を木陰に隠れながら見ていた姉妹は、殆ど上達しないアイズに根気強く泳ぎを教えている色に感心した眼差しを向ける

 

「あいつは人に物を教えるのが得意なのさぁ。そのお陰で平行詠唱を覚えられたって言う人間がいるほどにねぇ」

 

「「!?」」

 

気配を全く感じなかった事に二人は驚き、慌てて振り向いた。

 

そこには、赤いワンピースを羽織った絶世の美少女、フリュネが棒アイスをペロペロと舐めながら、面白そうに泳ぎの練習をしている二人を眺めている

 

「あ、あんたどうしてここに!?」

 

「そ、そうだよ!!確かここの場所は誰にも知られてないはずじゃあ!?」

 

「ふんっ、たまたま通りがかっただけだよぉ」

 

本当は色からフェルズ経由で教えられていたのだが、わざわざ話す義理もないフリュネは素っ気なくそう返した。そんな分かりやすい嘘を付かれたティオネが、怒りに眉をつり上げる

 

「口封じにぶっ殺してやろうか、この蛙女!!」

 

「ダメだよティオネ!?落ち着いて!!」

 

「すみません、ミス・ティオネ。彼女は今、イシュタル様から負けた罰として【ステイタス】を封印されているので、矛を納めてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「「!?」」

 

唐突に声を掛けられた姉妹は、恭しくお辞儀をする赤帽子(レッドキャップ)小怪物(ゴブリン)に声を失った。ピシッとした燕尾服に身を包まれた彼は、モンスターとはかけ離れた気品に満ちており、両手には大きな宝石が輝く指輪が数種類はめられている、首から垂れ下がっている高級そうな懐中時計に彫られている【イシュタル・ファミリア】のエンブレムを見るまでもなく、彼が何処の所属か分かるだろう

 

「余計な事を言うんじゃないよぉ、赤帽子(レッドキャップ)ぅ」

 

「すみません、貴方を御守りするのが私の役目なので、どうか御容赦を」

 

まるで、どこかのお嬢様と執事みたいなやり取りに、アマゾネス姉妹は絶句する。しかも、中々に様になっているので、笑うことも出来ないでいた

 

「いいぞー、顔を上げて、浸けて、また上げて、浸けて」

 

「ゴボゴボ、し、色!?だめ、おぼれ、溺れる!?」

 

「いやいや上手く行ってたから。俺に抱き付いたまま体を浮かせられる様になったんだから、もう少しで泳げるって」

 

「クックックッ、馬鹿弟子が面白い見せ物があるって言うから来てみれば、あの【剣姫】が泳げなかったとはねぇ。よぉし、あれを摘まみに飲むよぉ、赤帽子(レッドキャップ)

 

パチンッと指を鳴らすフリュネは、一瞬のうちに用意された椅子に腰掛け、一瞬のうちに用意されたテーブルとパラソルの下、脚を組みながら一瞬のうちに用意されていた、程よく冷やされたカクテルに口を付けた。

 

「「す、凄い」」

 

目にも止まらない速業を見せられたアマゾネス姉妹は、フリュネの言葉に反応すら出来ずに唖然と佇み。それを行った小怪物(ゴブリン)は、何事も無かったかのようにフリュネの脇で、肉果実(ミルーツ)を上品に切り分けている。

 

その後、ティオナがフリュネにちょっかいを掛けたり、フリュネの年齢を聴いた二人が驚きの声を上げたり、赤帽子(レッドキャップ)が一芸として手品を披露したり、アイズが何とか平泳ぎを習得するまで騒がしくしながら海辺を眺めているのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付けば空が紅に染まり、黒い鳥が鳴いている。ティオネさん達を先に帰らして正解だったみたいだな

 

「ただいま帰りました~」

 

「ただい………ま」

 

夕暮れ時にようやく帰って来た俺達を迎えてくれたのは以外な人物達だった

 

「そう、俺がガネーシャだ!!!」

 

「いや、それはわかったってガネーシャっち」

 

「リド、放っておけ。ガネーシャ様のそれは何時もの事だ」

 

玄関先を騒がしくしているのは【ガネーシャ・ファミリア】の主神、ガネーシャさんと団長のシャクティさん、配属先になったリドだ。リドは俺たちに気づくと両手を降って像のエンブレムが施されているブレスレットを光らせながら近づいて来る。

 

「クロっちじゃねぇか!!謹慎中なのに出掛けてて良かったのか?」

 

「おう、ロキさんから許可貰ってな。他の異端児(ゼノス)達の様子を見てきたんだ」

 

まぁその条件が、金髪のわがまま(ボディーガード)を受け入れるって事だったのだが

 

「悪ぃな色っち、本当ならリーダーのオイラがしなきゃいけねぇのに」

 

「いいって、俺が好きでやった事何だから気にすんな。それで?ガネーシャさん達はどうしてここに?」

 

顔をガネーシャさん、ではなくシャクティさんに向ける。悪い()ではないんだけど、あの人何時も話を脱線させるから進まないんだよなぁ

 

「あぁ、私達は治安調査の事後報告に来ただけだ。もっとも、オラリオの外から来た人間にはオラリオの冒険者が特殊な調教(テイム)を覚え、喋るモンスターが増えたなどと言う()が蔓延っていたお陰で、大した問題にはなっていなかったがな」

 

「あ、あはは~、そりゃよかった。そんなことよりリドはどうっすか?」

 

ミィシャさんがやってのけた裏工作(根回し)を笑って誤魔化した俺は即座に話題を変える。勘の鋭い女って怖い

 

「良くやってくれているぞ、実力も申し分ないしな。今度の遠征には是非付いてきてもらう」

 

「黒鐘 色よ、よくぞ彼ら(ゼノス)の存在意義を証明してくれた!!ガネーシャ大感激!!!」

 

「俺やることあるから、じゃ」

 

「「「え!?」」」

 

驚く三人を他所に俺はそそくさと黄昏の館の門を潜った。勿論俺の後ろには不思議そうに俺達をやり取りを見ていた金髪が付いてきている

 

「あの、どうしたの?色」

 

「なんでもねぇよ」

 

うん、本当にあの神様は何するか分かんねぇな!!!なんでサラッと今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)の本当の目的を話そうとするの!?異端児(ゼノス)の有用性をオラリオの住人達に見せつける為に生放送(リアルタイム)で大鏡の映像を良い感じに編集していたフェルズの努力が無駄になる所だよ!?

 

「これからどうするの?」

 

心の中で不確定要素の塊(ガネーシャさん)に盛大に叫んでいると、相変わらずピッタリと付いてくる金髪が聞いてくる。その両手には、帰る時にニョルズさんに貰った袋が音を立てていた。

 

女に荷物を持たせるのはどうなのかって?相手が金髪なのだから気にしちゃいけない

 

「用があるのはここだよここ」

 

「厨房?」

 

そう、俺が向かった先は黄昏の館の厨房。つまり、今からすることは料理だ

 

「言っとくけどロキさんから許可は貰ってるからな。さぁて、やりますか」

 

腕捲りをした俺は手を洗い、魔石製の冷蔵庫から適当な材料を放り出していく。

 

「なに、作るの?」

 

「あん?これだよ、これ」

 

そう言いながらスマホの画面を見せるが、俺の世界の文字が分からない金髪は首を傾けるばかりだ。いやぁ、昔ノリでスクショしたクックパッドの画像が残っていて良かったぜ。

 

「さてと、先ずはキャベツを切って…………これキャベツだよな?」

 

多分キャベツであろう野菜をトントントンと小気味良く刻んでいく。あぁ、ちなみに俺の料理の腕は

 

「――――痛ってぇ!?指がぁぁ!!!」

 

あまりよろしく無かったらしい。

 

だってしょうがないじゃん、料理なんて家庭科の授業でピーラー使ってジャガイモの皮剥いたぐらいだもん。そんな都合良くどこぞのラノベ主人公の様にはいかないって。

 

「し、色大丈夫!?血がっ!!血が出てるっ!!!」

 

そしてお前はどうして俺よりパニクってんの?言っとくけど、お前に付けられた傷の方が遥かにヤバイからね?まぁ、お陰で冷静になれたからいいけど

 

「落ち着け、ちょっと切っただけだから、そのうち治るから。ていうか俺って包丁も使えないのか、【ステイタス】封印されても武器の適正ねぇのは変わらねぇのな」

 

うーん、どうしたものか。キャベツ刻むのはいいんだけどやりきった時には俺の両手がズタボロなるだろうし、フェルズ呼んで治癒してもらいながら料理する訳にもいかねぇし…………ん?

 

「なぁ、お前これ刻んで」

 

「え?うんわかった」

 

瞬間、金髪が持った包丁が俺の視界から消え、ズダダダダダダっという音が厨房に鳴り響いた

 

「出来たよ?」

 

まな板の上には、可愛そうなぐらい刻まれ尽くしたキャベツだったものが置かれている。滅茶苦茶雑だけど、これならまぁ何とかなるだろ。

 

「それじゃあ、これ全部刻んどいて。俺は他の事しとくから」

 

「わかった!」

 

勢い良く頷いた金髪は、何故かやたらと気合いを入れ、物凄い勢いで大量の野菜達を刻んでいく。その後ろ姿に少しだけ頼もしさを感じた俺は、鐘楼の館(ホーム)から持ってきていた自家製ソースを冷蔵庫から取り出しながらボソッと呟いた

 

「やるじゃん―――アイズ」

 

「ひゃ!?」

 

ストンッッ!!!

 

「ちょっ!?包丁飛んできたんだけど!?」

 

「い、いま、ななななななま!?」

 

「お前やっぱり俺の事殺そうとしてるだろ!?」

 

ちなみに、この後二人で何とか作り上げた海鮮お好み焼きは【ロキ・ファミリア】の人達、特にロキさんに好評だったと言っておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでお前は何で今日も俺のベッドに潜り込んでんの!?」

 

「それは…………色を一人にしちゃいけないと思って」

 

「余計なお世話だっつうの!!いいから離れろ!!」

 

「やだ」

 

「色さん、朝御飯の――――失礼したっす!?皆ぁ!!やっぱりあの二人そういう関係みたいだったっすぅぅうぅぅぅううううううううううう!!!!」

 

「あぁもう、またかよこんちくしょう!!――――行くぞ、アイズ!!」

 

「ッ!?…………うん!!」

 

 

 

 

これは、どこまでも自分に厳しい少女が初めて他人に何かを求め、どこまでも他人に優しい少年が初めて自分の為に戦った、そんな二人の後日談(エピローグ)であり前日談(プロローグ)なのだ。

 

 

 

 

 




メモリア・フレーゼ中々面白いです。他のキャラの小説以外の一面が見れるのが良いですね。近いうちに、メモリア・フレーゼ風の色君のステイタスを活動報告にでも書いておくので、興味があれば見てください
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