ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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酒場と言えば?


第43話 酒場

人の従来が絶えないオラリオのメインストリート

 

様々な酒場が開店の用意を始める日が沈み始めた時間帯に、周りにある酒場の中でも一番大きな店の中に一人の少年が入っていった。

 

「チィース」

 

「まだ店は開いてないよ―――って色坊かい、どうしたんだい?」

 

「えっと、今日五人ほど予約したいんですけど大丈夫ですか?」

 

「今日かい?随分唐突だね。まぁとりあえず座りな」

 

カウンターの中で忙しなく手を動かしていた女店主がパタパタと走り回るウェイトレスに声を掛け、色をカウンター席に座らせる。

 

程なくして猫人(キャトピーブル)の少女が飲み物をカウンターに置いた所で、店主は手を休めて少年の方に顔を向けた。

 

「何時も前日には予入れてるあんたにしちゃあ、珍しいじゃないか」

 

「いやー、ちょっと森の妖精を怒らせてしまいましてね。ほら、女の子って引きずると怖いじゃないですか」

 

「なんだい女かい?色坊も隅に置けないねぇ」

 

呆れた様子の店主に色は、あははーと誤魔化しの笑い声を上げた後、カウンターに置かれた飲み物に口を付けた

 

「まぁ今日は空いてるからね、予約なら大丈夫だよ」

 

「マジっすか!!いや~良かった良かった!!」

 

「その対価と言っちゃなんだが、この前のやっておくれよ」

 

「お安い御用っスよ!」

 

言うと同時に色はカウンター席から立ち上がり店主の双肩に掌を置き

 

「どうっすか。ここら辺でいいですか?」

 

「あぁ、いいねぇ。そこだよそこそこ」

 

レベルが上がってから更に磨きかかったスキルを使い、店主の肩コリをほぐしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから悪かったって。許してくれよレフィーヤ」

 

「許すとか許さないとか、そういう問題じゃないでしょう!?」

 

色とりどりの料理が並べられている机の上でパンッと両手を合わせて謝る俺に、レフィーヤはその整った顔をプンスカさせながら、声を荒げた。

 

「大体、何の確認も無しに魔法をぶっぱなすって頭おかしいんじゃないんですか!?」

 

「いやー、何時も流れでやってたから、ついやってしまったんだ」

 

「ついってなんですか!!ついって!!!」

 

どうやらこの年下のエルフは俺の精一杯の謝罪がお気に召さない。よし、それじゃあ物量作戦だ

 

「とりあえず、これでも食べて落ち着けって。今日は俺の奢りだぞ~」

 

「ハグッ!?」

 

口に突っ込んだのは『豊饒の女主人』自慢の一品、極上の素材を外国からわざわざ取り寄せ、手間暇掛けて作られた究極の『合鴨ロース』。

 

薄く切り分けられたそれを口に放り込まれたレフィーヤは、リスの様に頬をもごもごした後、ゆっくりの口の物を飲み込み、まるでこの世の全ての快楽を口の中で味わった表情をした後こう言った

 

「こんな美味しい物を頂いても誤魔化されませんからね!!」

 

「チッ、騙されなかったか」

 

「ローガさん、色さんはウィリディスさんに何をしたのですか?」

 

「あぁ?アイズを探して本拠(ホーム)に入ったアイツを入団試験に巻き込んだんだとよ」

 

「都市で最も厳しいと噂されてる【ヘスティア・ファミリア】の入団試験に?それは災難だったねぇ、レフィーヤちゃん」

 

俺とレフィーヤのいざこざを尻目に、今日集まった37階層攻略パーティー(ベート君、ミィシャさん、リオンさん)の三人は助ける素振りなんて微塵も見せずに談笑しながら食事を続けていた。

 

たまにはこのメンバーで集まろうと考えていた所にレフィーアが丁度現れたから声を掛けたのだが、せっかくの酒の席だというのに、まだ今朝の事を怒っているらしい

 

「もう、聞いているんですか色さん!!」

 

「わかったわかった。じゃあどうやったら許してくれるんだよ?」

 

「ふふん、それはですね」

 

即座にドヤ顔を向けて来る辺り、既にどうやったら許すか決めていたのだろう。

 

「私を【ヘスティア・ファミリア】の遠征に同行させてください!!!」

 

「いいよ」

 

「即答ですか!?」

 

怒った顔がちょっと面白かったから今までのらりくらりと躱していた、なんて言ったらもっと怒るんだろうなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも本当にそんな簡単に決めちゃっていいんですか?」

 

「良いって良いって、むしろレフィーヤみたいな強いエルフなら大歓迎だって」

 

「そ、そうですか……」

 

強いという言葉に照れたのか、それとも酒のせいなのか、若干赤らめた顔に両手を持っていくレフィーヤ。そんな可愛らしいエルフに更に飲み物を奢ってやるとしよう

 

「店員さーん!!キンッキンに冷えた麦酒持ってきて!!」

 

「はーい!!」

 

返事をしたのは、ここで住み込みで働くことになった半人半鳥(ハーピィ)のフィアだ。忙しそうな店内で、パタパタと羽根を揺らす彼女は、笑顔を絶やすこともなく、注文をこなすため厨房の奥に入っていった。

 

「あっという間に異端児(ゼノス)さん達オラリオの町に馴染みましたねぇ」

 

「だろ?頑張った甲斐あったってもんだ」

 

そう言いながら両手を後頭部で組み、背もたれに体重を預ける。今思えば本当に上手いこと事が運んだよな。一歩間違えたらどうなっていた事やら、少なくとも協力者が一人でも欠けていたらこうはならなかっただろう

 

チラッとその協力者の一人であるミィシャさんに視線を向けてみた。

 

「ングッングップファ~。んんー!!久々の休日に飲むお酒さいこ~。店員さーん麦酒もう一本追加で!!」

 

「はーい!!」

 

(あね)さん、あまり飲み過ぎると明日の仕事に差し支えますよ?」

 

「大丈夫だって。心配性だなぁバーバルちゃんは!!」

 

ミィシャさん、日々の仕事に疲れたおっさんみたいになってますよ。バーバリアンのバーバルちゃんはそれでも、長い期間匿ってくれたミィシャさんに恩を返すため、彼女に対してまるで執事の様に接しており、今日だって甲斐甲斐しく料理を切り分けたりしている。

 

「おい、持ってきてやったぞ」

 

それから暫く話ながら飲んだり食べたりしていると背後からぶっきらぼうな声が、釣られて後を向くと真新しいウェイトレスの衣装を着ているアマゾネスが慣れない接客している姿が視線に映った。

 

いやー、随分面白いことになってんな。ちょっと声かけてみるか

 

「店員さーん!!接客してんだからもっと笑顔を見せた方がいいですよー!!」

 

「そうだぞ、アマゾネスの姉ぇちゃん!!」

 

「他の店員を見習えー!!!」

 

「笑った方が可愛いよー!!!」

 

「なっ!?お、お前ぇ!!!」

 

俺の大声を合図に周りの冒険者が一斉に一人のアマゾネスを囃し立てた。その光景をはっはっはっーと笑い飛ばしていると、店員が顔を真っ赤にしながらズンズンと此方へ向かってくる

 

「ええ!?ししし色さん!!何挑発してるんですか!?ちょっとあの店員さんこっちに向かって来ますよ!?」

 

慌てるレフィーヤを尻目にその店員はドンッ!!とテーブルに両手を力強く叩きつけ、綺麗な顔と砂色の髪に似合わない形相で俺を睨みつけて来る

 

ま、それぐらいの事しか出来ない訳なのだが

 

「あぁ?なんだよバーチェ、文句あんのか?」

 

口元に弧を描き挑発するような口調で喋りかける俺に、彼女は「うっ……ぐっ……何でもない!!」とだけ言って予想どうり何もせず店の接客に戻って行った。

 

「あ、あのー色さん?今バーチェって名前が聞こえた様な気がするんですけど……」

 

「おい糞鴉、あのアマゾネスに何しやがった?」

 

何故か恐る恐るといった感じに聞いて来るレフィーヤと面倒そうに聞いて来るベート君。もしかして二人ともバーチェと知り合いだったのかな?

 

「あ、そっか。【ロキ・ファミリア】ってカーリーの所と戦った事があったんだったっけ」

 

「「!?」」

 

ポンッと手を打つと驚いた顔をする二人。あれ?これ言っちゃダメなやつだったっけ?

 

て痛い痛い!!

 

「ベート君!!頭超痛いんだけど!?」

 

「テメェは!!何処まで調べてやがった!!!」

 

拳で米神をグリグリされて涙目になりながら、戦争の時の主な情報源に目を向けた。

 

助けて『情報の魔女(ピンク・レディ)』!!!

 

ニッコリ

 

ですよねー、うっかり口を滑らした俺が悪いですよねー

 

「まぁまぁ、落ち着いてくださいローガさん」

 

「そ、そうですよベートさん。一応【カーリー・ファミリア】との件は終わったんですし。それに、もう色さんの顔が真っ青に………」

 

「チッ」

 

「ノおおおおおお!!!!」

 

「確か色君達は【カーリー・ファミリア】との勝負に勝ったから、何でも言う事を聞かせる権利を使ってバーチェさんを豊饒の女主人(ここで)で働かせてるんだよね」

 

「えぇ!?」

 

「はぁ!?」

 

解放された頭を抱えながらのたうち回っていたらミィシャさんが事の経緯を説明してくれたらしい。わりと最近の出来事だけどやっぱり知ってたんですね。

 

「まぁ勝った権利って言っても五億ヴァリスほど請求しただけですよ。それでカーリーたちがダンジョンで稼ぎ終るまで人質としてうちで預かってるバーチェをここで働かせてるって訳です」

 

「いやいやいや、あの【カーリー・ファミリア】に勝っちゃったんですか!?どうやって!?」

 

「え?腕相撲でだけど」

 

「腕相撲!?」

 

そう、腕相撲だ。

 

宴会を開いている時に喧嘩を売って来たバーチェとアルガナは、俺達の有用性をさりげなく理解させ負けた方を好きなように出来る権利をチラつかせただけで何の疑いも無くこっちが提案した勝負内容に自信満々に承諾してきた。あとは簡単だ、力比べをうちの力値最強にあっさりと勝ってもらうだけ。

 

正しく【カーリー・ファミリア】はカモがネギを背負ってやってきた感じですね!!とはうちの力値最強の談である

 

「それにしても【ヘスティア・ファミリア】が指定した条件で勝負するなんて馬鹿だよねぇ」

 

「確かに、周りの冒険者が必死に止めていたのを聞かなかった彼女達は擁護のしようもなかったですね」

 

そうそう、店の中じゃ迷惑掛かるからって机引っ張り出して外でやる事になったんだけど、その時周りの冒険者が凄い騒いでたんだよな…………ん?

 

「あれ?リオンさんあの時の居たんですか?」

 

「えっ!?――――あっ!!」

 

「大丈夫ですか?」

 

俺の何気ない質問に酷く動揺したのかリオンさん手に持ったコップを落しそうになった。まぁ、この人レベル高いから空中でキャッチしたんだけど、それにしても何でこんなに動揺したのだろうか?

 

「あの……」

 

少しだけ気になった俺はリオンさんに更に質問を重ねようとして――――

 

「なははは!!!こんな所で立ち止まって何してんですか!!!丁度いいです一緒に飲みましょう!!!」

 

「ちょっ、待って!?」

 

「な、何だ貴様は!?」

 

姦しく店の中に入って来た3人に先の言葉が見事に潰されたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切っ掛けは、だし巻きや枝豆などのおつまみが追加された頃合いにレフィーヤが「私、今度【ヘスティア・ファミリア】の遠征に着いて行くことになったんですよ」と口を滑らした事だった

 

まずそれに反応したのは自称偶々通りがかっただけの【剣姫】だ。

 

彼女は言う「どうしてレフィーヤは良くて私は駄目なの?ずるい」と

 

次に反応したのは自称偶然通りがかっただけのエルフだ。

 

彼女は言う「貴様らみたいな危険な集団にレフィーヤを任せる事は出来ない」と

 

最後に反応したのは店の前でコソコソしていた二人を酔った勢いで店内に引っ張って来た小人族(パルゥム)だ。

 

彼女は言う「おかわりくださーい!!!」と

 

「リリ、幾らなんでも飲み過ぎだぞ。てか、お前ソーマさんの所に顔見せに行ってたんじゃないのかよ?」

 

「あぁ、ちょっと飲み比べしてたらファミリア全員飲み潰れてしまったんですよね。本当はまだまだ飲み足りなっかったんですけど勝手にお酒を貰う訳にはいかないじゃないですか。それで、色さんがここに居る事を思い出しまして飲み直しに……と」

 

「向こうでも飲んで来たのかよ。お前そんな酒好きだったっけ?」

 

「うーん、そんな事はなかったんですけどねぇ。何かレベルが上がってから体がお酒を求めてるって言いますか……お、来たようですね。色さん、乾杯です!!」

 

「たく、しゃーねーなぁ」

 

「「かんぱーい!!」」

 

「かんぱーい!!じゃないですよぉ!?こっちから目を逸らさないで下さい!!!」

 

やたら無表情の二人に挟まれて完全に酔いが完冷めてるであろうレフィーヤの涙声が、ジョッキを打ち付け合った俺達に突き刺さる。いや、リリは完全にお構いなしに酒を煽っていた。何時も思うけど、この子抜け目ないって言うか結構図太い所あるよね

 

「てか、フィルヴィスさんは【ロキ・ファミリア】じゃないしレフィーヤの事に深く突っ込まない方が良いんじゃないの?」

 

そう言いながら店主が持ってきたジョッキを純白の衣装を着た黒髪のエルフの前に差し出した。彼女は少しだけ躊躇するも、それを受け取り一気に煽る。その飲みっぷりに感心するのも束の間、ドンッと空のジョッキが机に叩き落とされた

 

「いいか!!【悪夢を運ぶ黒翼(クロウ・ザ・ナイトメア)】!!!」

 

「おい、その二つ名で呼ぶの止めろや」

 

「お前達は世間からどれぐらい危険な存在に思われてるか理解しているのか!?」

 

話し合いじゃ埒が明かないからと、くじ引きで決められた痛恨の二つ名を叫んだフィルヴィスは、俺の制止に全く耳を貸さずに話を続ける。リリは自分が進言した二つ名になったのにどうしてこうなった

 

とりあえず今度から神会に行くときはヘスティアに開運のお守りを持たせることにしよう。

 

「ダンジョンに入れば大規模な『怪物の宴(モンスター・パーティー)』が必ず起こり、ダンジョンから出ても問題が絶えない!!そこの小人族(パルゥム)も最近は【怒蛇(ヨルムガンド)】と争っていると聞いたぞ!!こんな無茶苦茶で馬鹿みたいなファミリアにレフィーヤを任せられるものか!!!!」

 

「あ、あのぅ、【怒蛇(ヨルムガンド)】は私のファミリアの先輩なのであまり悪く言わないで欲しいんすけど」

 

「勘違いしているようですが、あれは向こうが絡んできてるのであってリリは被害者ですから」

 

レフィーヤは遠慮がちにリリはだし巻き卵をつつきながら反論するが、顔を赤らめたエルフは関係ないとばかりに俺に詰め寄って来た。

 

「そもそもお前みたいな胡散臭い男は信用ならん!!!」

 

「いやいやいや、好き勝手言ってくれるけど着いて行きたいって言ったのレフィーヤだからね?」

 

「それもお前が唆したのだろう!!!!」

 

何この酔っ払い、凄い腹立つんですけどー。リモコン忘れてなきゃ速攻廃人にしてたからね

 

「だったらもシャリアさんも着いた来たらいいじゃないですか」

 

「ちょっとリリさん、いきなり何言ってんですか?」

 

「色さん、どうせ一人や二人増えた所で変わりませんよ。それで、どうですか?」

 

「臨むところだ!!!」

 

「あれ俺の意見は?俺、副団長なんですけど………」

 

もうヤダこの酔っ払いども

 

「大変だねぇ、色君」

 

「お前も苦労してんだな」

 

ベート君とミィシャさん、労いの言葉を掛けてくれるのは嬉しいんですけど口元がニヤけてますよ。

 

「色、私も……」

 

「お前は駄目に決まってんだろ」

 

「!?」

 

いや、そんな絶望的な顔されても、お前だけは絶対に連れて行かねぇから。ただでさえ付きまとわれてるのにダンジョンまで顔会わすとかありえねぇから

 

「あ、あの、良かったらアイズさんも連れて行って貰えると……」

 

「レフィーヤの頼みでも却下。大体俺達のパーティーにコイツは飛び抜け過ぎてんだよ。レベル3とか4とかしか居ないのにレベル6なんて連れて行けるか」

 

「うぅ、でもですね………えっと……」

 

下を向いて落ち込んでるアイツを見て、オロオロするレフィーア。だが残念、俺の理論武装には強い味方が付いているのだ

 

「俺達みたいな中堅ファミリアの遠征にレベル6を連れて行くなんてギルドが許すわけないですよねぇ、ミィシャさん?」

 

そう、我らがギルドマスターミィシャ・フロッドさんがここ居ますのですよ。結構ルールに緩いこの人でも流石に遠征に第一級冒険者を連れて行くのは許可しないだろう。

 

さぁ、無理だって言っちまってくだせぇ!!

 

「えっ?別にいいんじゃないかな?」

 

「うへぇ!?」

 

あれ、なんで!?あまりにも予想外の返答だったから変な声出たわ!!

 

「おかしくない!?だって俺達のファミリの最高レベルが4なのにレベル6なんて連れて行ったらパワーバランス崩れすぎじゃん!!」

 

「確かに普通のファミリアじゃあそうかもね。で・も・ね」

 

そこで言葉を区切るとミィシャさんの人差し指が俺の鼻先に突き付けられた。あ、これ不味いパターンだ

 

「【ヘスティア・ファミリア】の等級(ランク)は幾つだっかな~?」

 

「………Bです」

 

「ハイよくできましたぁ。これがDなら許可しないんだけど派閥の格付けとしてB相当なら、例えレベル4が最高レベルでも一人ぐらい第一級冒険者を連れて行っても誰も文句言えないんだよね~。まぁ本来、レベル4が二人だけの【ファミリア】がB等級(ランク)ってのが異常なんだけどさ」

 

あれ?理論武装とはいったい………。てかミィシャさん俺に対する嫌がらせで遊んでるだけですよね!?

 

「てへぺろ☆」

 

あざといぃぃぃいいいいいいいい!!!!

 

「じゃあ、着いて行ってもいいの?」

 

「良かったですね、アイズさん」

 

舌を出してウィンクしてきたミィシャさんに頭を抱えているとそんな不穏な声が耳に入る。まてまてまて、この流れは非常に不味い!?

 

ドンッ!!

 

「却下です!!!」

 

俺が口を開く前に叩きつけられたグラス。音の発生源は―――

 

「え?何でここにいるの春ちゃん。確か【イシュタル・ファミリア】の宴会に呼ばれてたんじゃ……」

 

「二次会だよ、二次会。久しぶりだね黒鐘、【栄光を導く白脚(グローリー・ラビット)】は元気かい?」

 

新しく付けられたベルの二つ名を口にしたのは、踊り子の衣装を纏ったアマゾネスの女性。彼女は他のアマゾネスが座っている席から自分の椅子を持ってこちらに歩いて来た。

 

「おぉ、久しぶりですねアイシャさん。うちの団長なら呆れるぐらい元気ですよ。今夜もうちの主神とデートしてるぐらいです」

 

「へぇ、中々お盛んじゃないか、あの発情兎。どれ、隣いいかい?」

 

「どうぞどうぞ」

 

少しだけ詰め、隣に座って貰う。割と大きめのテーブルを予約しといてよかったぜ。

 

「貴方は少々【ヘスティア・ファミリア】に関わり過ぎです!!ヘスティア様やリリ様が寛大でなければ、本拠(ホーム)に無断で入るなんて暴挙、この【プリンセス・天狐(てんこ)】が絶対に許しませぬ!!!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「ちょっといきなり何なんですか貴方は!!アイズさんに失礼ですよ!!!」

 

「貴方こそ何なんですか?これは(わたくし)の【ファミリア】と、この方の問題です。余計な口は挟まないで下さいませ!!」

 

うわー、春ちゃん顔真っ赤にして相当酔ってるな。まぁ酒あんま強くないのに二次会なんて行ったんだから、そうなるわな。それと、本人が気に入ってるから面と向かっては言えないけど、あの二つ名を高らかに叫ぶのは本当に恥ずかしいから止めて欲しいです。

 

「おい鴉。あの狐人(ルナール)は大丈夫だったのか?」

 

レフィーアと春ちゃんが今にも幕開けそうなキャットファイトを止めようとしたら、不意にベート君から声を掛けられた。恐らく戦争遊戯(ウォーゲーム)の時の怪我の事を言っているのだろう。その割と真剣眼差しに、まさか……と俺は思い、一言

 

「惚れた?」

 

「違うわ!!殺すぞ糞鴉!!!」

 

「だよねー。いやー、ベート君にはレナちゃんが居るもんねー」

 

「本当に殺すぞ!?」

 

ガチの殺気を飛ばして来たので冷や汗を掻きながら、冗談だって、と慌てて両手を振った。うーん。レナちゃん可愛いと思うんだけどなー

 

「と、とりあえず春ちゃんはあの通り五体満足で元気ですよ」

 

「……………」

 

「ベート君?」

 

「チッ、なんでもねぇ」

 

それ以上会話をしたくないのかベート君はグビッとジョッキの中身を勢いよく煽った。何だったのだろうか?まぁ、そんな事を考えてる暇なんてなくなった訳だなのだが

 

「わたしはしきとダンジョンにいきたいの!!!」

 

さて、問題です

 

この子供みたいに駄々をこねて、座った俺に正面から抱き着いて来てるのは誰でしょう?

 

「しきぃ、いっしょにダンジョンいこ?」

 

答え?もちろん

 

「離れてください!!!アイズ様!!」

 

「離れてください!?アイズさん!!」

 

酔っぱらったアイズ・ヴァレンシュタインさんでしたー

 

誰だこいつに酒飲ませやがった奴!!!

 

「おい!?離れろっつうの!!!」

 

「やーだー!!しきがいっしょにダンジョンいくっていうまではなれないもん!!」

 

「何が、もん、だ!!子供かお前は!!」

 

レフィーアと春ちゃんが懸命に引き剥がそうとしてくれてるが、レベル6のコイツを引き剥がせるわけも無く、力の方向(ベクトル)を操っても酔っぱらったコイツは更にギュッと抱きしめる強さを増していくばかりで殆ど無意味になっている。

 

こういう時は、うちの力値最強に頼むとしよう

 

「助けてリリえもん!!!」

 

「全く、しょうがないですねぇ」

 

そう言うとリリは新たな《スキル》を使い、その小さな体から黒い霧を噴出させて自身に纏わせた。ひゃっほう、やっちゃってくだせぇ、リリの姉御!!!

 

「………うぷ………す、すいません。ちょっとトイレに……」

 

「えぇ!?」

 

そう言うとリリの姉御は纏った霧を霧散させ、店の奥に―――どうやら朝から飲み続けた弊害がここに来て現れたようだ

 

ヤベェこれどうしよう、《スキル》のお陰で一応染めつける痛みは殆どないけど、このままじゃ俺の世間体が非常に不味い。

 

他に何か打開策は………お?

 

「お、おいバーチェ!!助けろ、お前の力ならコイツを引きはがせるだろ!!」

 

「すまないな、私は今仕事中だ」

 

あの女、それだけ言って厨房の奥に引っ込みやがった!?くっそ、注目がここに集まってやがる、明日の情報誌にスキャンダルで取り上げられでもしたら目も当てられねぇぞ

 

「ベート君助け――」

 

「自分で何とかしやがれ」

 

ですよねー。ベート君そこまで甘くないですよねー。

 

「いい加減離れろ!!!」

 

「やだ!!」

 

「は、離れてくださいアイズさん!!―――でも酔っぱらったアイズさん可愛い……」

 

「貴方はいつもいつも色様とくっつき過ぎですよ!!!」

 

「あはは~、色君顔真っ赤だ~」

 

「なんだい、黒鐘も隅に置けないじゃないか。こりゃ、うちの主神様も大変だねぇ」

 

因みにこの後ミアさんの拳骨が何故か俺の上に落とされ、更に俺に抱き着いたまま寝始めたコイツをダンジョンに連れて行くように約束させられたのであった

 

「全く、酒の席で女を泣かすんじゃないよ色坊」

 

「い、いやミアさん!?俺とコイツはそんな関係じゃないんですって!!」

 

世の中って本当に理不尽だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンの遥か下、深い深い階層

 

過去、迷宮都市の頂点に君臨していた【ゼウス・ファミリア】が名付けたそこの名前は『竜の壺』。

 

階層を無視して強力な砲撃を放つ『ヴァルガング・ドラゴン』

 

(メドル)もの紫紺の体を空に躍らせる『イル・ワイバーン』

 

本来なら都市最大派閥が決死の覚悟を持って攻略するその階層は―――

 

『ゴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 

たった一体のモンスターによって地獄と化していた

 

それは唐突に生れ落ち、瞬く間にその場にいる竜達を食い尽くしたのだ

 

その光景を、まともな人間が見たならばこういうだろう

 

「悪夢だ」と

 

逃げようとする飛竜に食らい付く長い首

 

砲竜の砲撃を受けてもビクともしない漆黒の鱗

 

天にも突き抜けるほどの巨体

 

そして、周りを纏う瘴気。

 

その禍々しさは、かの黒龍にも匹敵するかもしれない。

 

『見ィツケタ』

 

しかし、周りに散らばっている食い散らかされた魔石をかき分け、その悪夢に近づく影が現れた。

 

『ゴゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!』

 

無造作に近づいて来る生物に、一つの階層を単身で壊滅させた怪物は咆哮する。それは警告であり、あと一歩でも近づけば死ぬ事を意味していた

 

『ォォオオオオ……』

 

『コレデヤット』

 

だが、怪物よりも遥かに小さな影は歩みを止める事はなく、怪物も攻撃に移れない

 

『オオォ………』

 

『アノ外敵ヲ、コロセル』

 

まるで運命の様に二つの化物は近づき――――――

 

 




さて、次回はダンジョン回になります。

大規模になっていくキャラたちを上手く活躍させられるか心配であります……
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