ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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その原作をぶち殺す!!




第5話 試練

ベル・クラネルは目の前に佇むアイツに恐怖・・・ではなく怒りを感じた。

 

『・・・ヴゥ』

 

・・・どこ見てんだよ。

 

ベル・クラネルは解っている、そのモンスターが何を・・・誰を警戒しているのか。

 

『・・・ヴォォォ』

 

「・・・・・・みろよ」

 

初めてその姿を見た時は普通の年上の青年だった。

 

『ヴォォォォォ!』

 

「・・・っちをみろよッ!」

 

だけど初めてクエストに行った時にその印象は変わった、次第にそれは、初めて魔法を使った時、リリを助けた時、クエストをクリアした時、そして・・・憧れの人に稽古をつけて貰っている時。突如現れた黒い青年に対する印象は、感情は、目まぐるしい程に変化していく。

 

『ヴゥォォォォォォォォォォ!!!!!!!』

 

「こっちを見ろよっ!『ミノタウロス』ッ!お前の相手はこの僕だぁ!」

 

その感情は今の僕には解らない、でも、一つだけ解っている事があるとしたら。

 

コイツを倒して前に進もう、背中を任せた黒い青年に、追いつかれないように・・・追いつけるように。

 

 

 

 

これは、いずれ最強の名を欲しいままにする者達の【眷属の物語(ファミリアミィス)

 

 

 

 

 

「静かすぎる?」

 

俺はベルの言葉に耳を傾け周囲を見渡す。

 

場所は9階層、10階層に行く道筋には確かに、モンスターがいつもより少ない気がした。

 

「少ないって言うよりさっきからモンスターが1匹も居ませんね」

 

「気にしすぎって訳でも無いよなぁ・・・いったん帰るか?」

 

そうベルに聞いてみる、前にミィシャさんに言われたのだ「冒険者は絶対に冒険をしちゃだめだよ?」、と

 

この不気味な状態で進むのは明らかに、ミィシャさんの言う冒険、をしていることになるんじゃないのだろうか?

 

「・・・行こう、10階層へ」

 

「べ、ベル様?」

 

「あ、ああ行くか・・・」

 

どうやらベルは先に進む事に決めたらしい、俺とリリはベルの背中を足早に追いかけた、何かに追われるように・・・何かに急かされるように・・・

 

 

 

「結局何も無かったな」

 

場所は10階層、お馴染みの霧がかった白い視界に邪魔されて、俺達三人はモンスターを警戒しながら前に足を進めていた。

 

「油断は禁物ですよ、色様」

 

「油断って言っても、この階層にも何回も来てるからなぁ」

 

そう言いつつ腕を組みながら歩いている俺にリリは「それでもです」と指を立てながら念を押してきた。

 

「いいですか?ダンジョンと言うものは油断している時が一番危険なんです、しっかり気を引き締めて行かなければ何時か足元をすくわれますよ?」

 

「ねっベル様」と言いつつベルの方に同意を求めるリリの顔は果たして引き締まっているのだろうか?

 

「ベル様?」

 

「どうしたんだ?ベル?」

 

リリの問いかけに反応しないベルを見やると、10階層の一角、初めて俺達がオークと戦った場所に、気付けば着いていたらしい。

 

「おーい、どうした、べ「静かにッ!」ル?」

 

ベルは見据えていた、木々の隙間からソイツがやってくるのを。赤い体に片角、見る者に恐怖を植え付けるであろう巨体・・・15階層に出てくるモンスター、狂牛『ミノタウロス』が何故かそこにいた。

 

『ヴォォォォォォォ!!!!!』

 

『ミノタウロス』は雄たけびを上げ、何処からか持って来た大剣を掲げ、こちらに突進してきた、当たればひとたまりも無いその攻撃に、ナイフを構えたベルは・・・ベルは

 

「何ボーとしてんだっ!ベルッ!!!!」

 

俺は動かないベルの前に立ち、向かってくる狂牛に向けて横合いから蹴りを放った。

 

『グォォォォォォォ』

 

「おいおい、嘘だろ!怯んだだけかよ!?」

 

並みのモンスターを楽々粉砕できる俺の渾身の一撃は、しかし、狂牛を少し怯ませただけに収まる。

 

『ガァァァァ!!!』

 

蹴られた体制のまま狂牛は俺に向かって大剣のフルスイングをかましてきた。腕をクロスさせ、何時ものように向き(ベクトル)を操り反射しようとするが、

 

「グッ・・うおっ!?」

 

反射しきれねぇ!?

 

そのまま吹っ飛び、『迷宮の武器庫(ランドフォーム)』の中に突っ込んだ。

 

「色!?」

 

「色様!?」

 

遠くからベルとリリの声が聞こえる。ダメージは、無い、幸い『迷宮の武器庫(ランドフォーム)』に突っ込んだ時には反射をしっかり展開できたので、体には傷一つ付いていなかった・・・だが。

 

「腕が痺れてんな」

 

赤い『ミノタウロス』の攻撃、あの一撃は俺の反射でも相殺しきれなかったらしい、つまりこれが(ミノタウロスの一撃)今の俺の【ステイタス】の限界なのだろう。

 

『グォォォォォォ!!!』

 

俺を敵と見据えたためか、『ミノタウロス』はベル達を無視して俺の方へ突っ込んできた。

 

「やってられっかっ!」

 

そう言いながら跳躍、向かってくるミノタウロスを飛び越えベル達の前に着地し、これからどうするかを聞くことにする。

 

「で、アイツどうすんだよ?」

 

「に、逃げましょうベル様!色様が吹き飛ばされたんですよ!?敵いっこありません!」

 

リリは必死になってベルにしがみ付いていた、今まで一回もダメージを食らわなかった俺が吹き飛ばされた事が、リリの戦意を完全に無くさせていた。

 

「リリ、ごめんそれは出来そうにない」

 

「どうしてですかぁ!?」

 

半狂乱になって叫ぶリリにベルはとある一角を指さした。

 

リリと俺は、その一角を見つめ・・・息を飲んだ

 

「なんだよ・・・あれ」

 

「・・・わからない」

 

「はぁ!?わからない!?おかしいじゃないですか!?どうして私達はあんな物をッあんなものを見逃していたんですかッ!?」

 

「だから解らないって言ってるだろっ!?」

 

俺達が見据える先、『ミノタウロス』とは逆方向、9階層に戻る穴にはモンスターの群れが、いや・・・モンスターの軍が陣取っていた。

 

小さい者は『ゴブリン』、大きい者は『インファント・ドラゴン』まで、この上層に存在するありとあらゆるモンスターが100を優に超える軍となり、俺達(雑兵)を見下げている。

 

気付いた時には前門の虎後門の狼の状態だった。

 

「どうする!おいベルどうする!?」

 

『ミノタウロス』だけでも厄介なのに何でこんなことになってんだ!!

 

「・・・・が止める」

 

「え?なんだって?」

 

ベルの声は次第に迫ってきているモンスターの声にかき消された。

 

ベルはもう一度「すぅっ」と息を吸い、何かを決意したような顔で。

 

「僕が『ミノタウロス』を倒すから!!色達はあのモンスターを頼むよっ!」

 

「べべべベル様!?こんな時に何を「解った」えぇぇ!?」

 

ベルの作戦とも言えない作戦を聞いて、俺は即答で答えた。

 

いや、それしかないのだ。この三人の中で全体攻撃が出来る俺は、あの数を相手にするのにうってつけだし、リリではあの『ミノタウロス』に傷一つ付けられないだろう、そうすると必然的に、【ステイタス】の一番高いベル一人が『ミノタウロス』の相手をする事になる。

 

俺は腕に着けているガントレットをもう一度しっかり着けなおしながら『ミノタウロス』を見据えるベルに言葉を投げた。

 

「ベル、いいか?アイツには俺のベクトル操作を突破する攻撃力と防御力がある、気をつけろよ」

 

俺はそう言いながらベルと背中合わせになり、拳を構える、恐らくベルもあのナイフを握っているのだろう。

 

「誰に言ってんの?僕は【ヘスティア・ファミリア】団長、ベル・クラネルだよ?色は自分の事だけ心配しときなよ」

 

「はっはっはっ言うじゃねぇか、オーケー背中は俺に任せろ、団長!」

 

その声に合わせて俺の隣に立った小柄な少女も声を上げた。

 

「あーもうっ!こうなったらできるだけ暴れてやりますよ!!ええっ!やってやりますとも!!!!」

 

三人の間に合図は要らなかった、各々のタイミングで自身の見定めるモンスターに向かって行く。

 

俺は走りながら気合を込め、モンスターの軍隊に叫ぶ、ここから後ろに行かせないように、ベルの下に踏み込ませない様に。

 

「悪ィが、こっから先は一方通行だ。 侵入は禁止ってなァ!大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて、無様にもとの居場所へ引き返しやがれェェェ! 」

 

「こっちを見ろよっ!『ミノタウロス』ッ!お前の相手はこの僕だぁ!」

 

俺とベルの叫び声が重なる、この試練に負けないために、打ち勝つために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターの軍に向かい走りながら俺は両手に全集中力を注いでいた。

 

「圧縮、圧縮、空気を圧縮!」

 

そのまま掌に空気を集めていると、次第に光の玉が出来上がって来て、それをモンスターの中心に向けてぶん投げる。

 

「くらえぇぇぇ!!!【プラズマ弾】ッ!!」

 

原作の一方通行(アクセラレータ)みたいに空気を圧縮して作った【プラズマ弾】は、着弾と同時に周囲のモンスターを吹き飛ばした、それを見たリリが爆風の中で「何ですかぁ!?あれぇ!?」と叫ぶ。

 

「口よりも手を動かせぇ!今のでも半分も削れてねぇぞ!」

 

「後で色様の《スキル》について教えて貰いますからね!!」

 

「解ったから前っ!!来てんぞッ!!」

 

「あーもう!鬱陶しいッ!」

 

そう言いながらリリは【プラズマ弾】を逃れた『ファーブルモス』や『ニードルラビット』等、持っているボウガンで一撃で倒せるモンスターを的確に倒していた。

 

「くっそッ、数が多い!食らえっ!!石の礫(ショットガン)!」

 

放たれた大量の石の礫(ショットガン)は『バットバット』や『インプ』などの小型のモンスターを、地上や空中関係なしに薙ぎ払った。

 

『グォォォォォ!!!』

 

『ウォォォォォ!!!』

 

「お前たちには、これだッ!!」

 

言いながら持っていた小石から鉄の塊に代え、『シルバーバック』や『オーク』等の大型モンスターに投げつける。投げた鉄の礫(弾丸)は大型モンスターをまとめて貫き滅ぼしていく。

 

「色様!出来るだけ波状攻撃を心がけて下さい!あと後ろを取られたら囲まれて終わりです!・・・主にリリが!」

 

「解ってる!こういうのはゲームで散々経験してるからな!任せろ!」

 

「その言葉、信じますよ!」

 

リリの言葉を聞きながら俺は石や鉄を投げる!投げる!投げる!!

 

「ッ!?色様ッ!!こっちのモンスターが、『迷宮の武器庫(ランドフォーム)』を使ってます!リリでは対処できません!早く来てください!」

 

「応!って嘘だろ!?なんで『インファント・ドラゴン』が『天然武器(ネイチャーウエポン)』の鎧着込んでんだよっ!」

 

「知りませんよっ!早くなんとかしてください!!」

 

「くっそおおおおおおおおお!!!」

 

俺はリリの元まで全力で駆け寄り『インファント・ドラゴン』に飛び蹴りを食らわした。

 

『グギャァァァァァァ!!!』

 

「うるせぇ!!これでも食らえぇ!!」

 

俺は直撃させた『インファント・ドラゴン』の鎧に空いた穴に、ガントレットを突っ込んだ。

 

「体の中から破裂しろぉ!!」

 

『グボァァァァァァ!!!』

 

瞬間、ベクトル操作により体内を無茶苦茶にかき回された『インファント・ドラゴン』の体は無残にも爆発する。

 

「何ですかこれ!?殆どすべてのモンスターが『天然武器(ネイチャーウエポン)』を持ってるんですけど!?」

 

「わからん!もう異常事態過ぎて何が何だか分からん!」

 

俺たちの戦いは続く・・・

 

 

 

 

 

 

 

モンスターを殲滅し初めて何分か経った頃、唐突にリリが叫んだ。

 

「色様!!ベル様の所へモンスターがッ!!」

 

「ッ!?」

 

驚いた俺は手に持っていた鉄の礫を落とし、空を飛びながらベルに近づいている『バットパット』の方向へ飛翔した。

 

クソッ霧で視界が悪すぎる!モンスターの正確な位置が解らねぇ!

 

風を纏い空を飛び、空を飛んでいる『バットバット』になんとか追いつく、そして・・・

 

「進入禁止だオラぁ!!」

 

『ギィッ』

 

蹴り殺した。

 

そのまま空を飛びながら、三分の一ぐらいまで減った眼下のモンスターの軍隊を見下ろした。

 

「埒が明かねぇな・・・試してみるか」

 

【プラズマ弾】は威力はあるが、ただでさえ視界が悪い霧の中にモンスターを散らばらせるからダメだな、小石も無いし、鉄もさっき落としてしまって弾数が0、肉弾戦は論外だしリリも、もう限界だ。ボウガンの矢が尽きたのだろう、予備のナイフで応戦している。

 

チラッとベルの方を見ると、どうやら最終局面らしく、ベルが『ミノタウロス』の大剣を構え、『ミノタウロス』は自身の角を前に突き出していた。

 

・・・やってみるか

 

目を瞑り息を吸う

 

俺の《スキル》一方通行(アクセラレータ)に必要な力は原作の超能力(演算能力)ではなくイメージ(空想能力)だ。・・・だから

 

空想(イメージ)しろ、すべての敵を薙ぎ払う力を

 

妄想(イメージ)しろ、荒れ狂う暴風を

 

幻想(イメージ)しろ、風を刃を、敵を飲み込む力を!!

 

すべての風を掌握しあの軍団を蹴散らす力を、味方を守る力を夢想(イメージ)しろ!

 

「リリィ!!!離れろォォ!!!」

 

言うな否や10階層に暴風が吹き荒れた、俺の声を聴いたリリが、モンスターを誘き寄せる肉塊を囮に安全圏に走っているのを確認し、

 

 

ダンジョンすべての風を世界を・・・掌握する!

 

「いっけぇぇぇぇ!!!【テンペスト】ォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

死の竜巻はモンスターの頭上に現れた。

 

『ヒゲェ!?』

 

『クゲェ!?』

 

まず犠牲になったのは空を飛んでいるモンスター達だ、翼をズタボロにされ、逃げようとしたものも、竜巻の中に吸い込まれていく。

 

『グォォ!?』

 

『ガァァ!?』

 

次に犠牲になったのが竜巻の真下にいたモンスターだ、死んだ原因は圧死、空気による圧力に耐えられず、その身を滅ぼされていく。

 

『ギヤァァァァァ!!!』

 

『グガァァァァァ!!!』

 

最後に犠牲になったのが周りにいたモンスターだ、どれだけ強靭なモンスターも『天然武器(ネイチャーウエポン)』も台風(大自然の力)の前に、なすすべなく中心に吸い込まれ、潰されていく。

 

そして死の竜巻が収まった頃には、モンスターの軍隊は跡形もなく消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つぅかぁれぇたぁぁぁぁぁぁ」

 

「ははは、ずいぶんお疲れの様だねぇ、色君?」

 

その言葉を聞きながら俺はドカッ!とソファーに腰を下ろした。

 

「そりゃ疲れるぞ?10階層でミノタウロスは現れるは、武装したモンスター軍団は現れるは、止めに事件についてギルドに報告しなくちゃいけないは、しかもミノタウロスを倒した後ベルは疲れて寝ているはで、全部俺とリリが片付けたんだぞ?もうクタクタだっつうの」

 

そう言いながらベットの上で気持ちよさそうに寝ているベルを眺める

 

「うへへぇ、色ぃ、見てたぁ」

 

「何も見てねぇよ!?気持ち悪いわ!?」

 

人が苦労している時に、どんな夢見てんのコイツ!?

 

「まぁまぁ、今日は皆頑張った訳だし、今はそっとしとこうじゃないか」

 

「・・・はぁ、そうだな」

 

今日はこのまま寝るかと思い、微睡んでいる俺の耳元にヘスティアの声が届いた。

 

「色君もし良かったら【ステイタス】を更新しないかい?モンスターの軍団を殆ど殲滅したんだろ?莫大な【経験値(エクセリア)】が溜まっていると思うんだけど、どうかな?」

 

そういったヘスティアに対して俺は手を振るだけで了承の合図をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その3日後、Lv.2到達記録を大幅に塗り替えた、世界最速冒険者(レコードホルダー)が誕生する、その冒険者の名前は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  

 

 

 

 ベル・クラネル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先越されたなぁ・・・」

 

俺は自分の【ステイタス】を見ながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒鐘 色

 

 Lv.1

 

 力:A863

 

 耐久:S961

 

 器用:S999

 

 敏捷:S999

 

 魔力:I0

 

 《魔法》

 

【】

 

《スキル》

 

一方通行(アクセラレータ)

 

・範囲内の向き(ベクトル)を自在に操れる

 

・自身のステイタスにより能力増大

 

 

幻想御手(レベルアッパー)

 

・レベルアップまでの最適化

 

・レベルアップ時の【ステイタス】のブースト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オッタル「ワシが育てた」
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