IS~鉄の華~   作:レスト00

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皆さんお久しぶりです。
今回は短くなって申し訳ないです。


三十八話

 

 

 大きな駆動音と衝突音を繰り返す昭弘と箒の戦闘にギャラリーが注意を惹かれていく中、簪とセシリアもまた勝敗を決するために全力を注いでく。

 

(昭弘との連携は無視。マルチロックシステムの限定使用で敵機のビットの位置を把握。砲口の発光現象を早い順にナンバリング。優先目標をビットに設定。回避軌道と一回の射出時間の計測――――)

 

 片手の装甲を格納し、生身の手で投影型キーボードを弾き、即席で自機のハイパーセンサーが拾う情報を処理するプログラムを組んでいく。時折牽制と迎撃でもう片方の手で射撃を加えていくことも忘れない。

 言葉にすればそれだけの事であるが、それを実行するのがどれだけ難しいのかは言うまでもない。

 

(――――――)

 

 一方で、セシリアの方は“回避機動とビットの同時使用を行いながらのスナイピング”という入学当初にはできなかったことを、ほぼ無心になるほどの集中力を維持しながら続けていた。

 本来であればセシリアも簪と同じく、並列思考をしながらの操作が得意分野であるのだが、ビットの同時使用をする訓練を繰り返した結果、それが今の自身には適していないことを感じたのだ。

 当初は理論派である彼女も様々な思考を巡らせながら操作をしていたのだが、自身も動きながらとなると思考がストップした瞬間に起こる入力のラグが致命的な隙になるという結論に早々に達する。

 そのことで一度担任である千冬に相談すると、彼女はこう返した。

 

「身体に覚えこませろ」

 

 天才肌で感覚派な彼女ならではの意見であった。

 しかし、そこはそれ、世界の天辺を取った選手の意見であるため、セシリアはそれを律義に訓練し、余計なことを考えないようにしながらの操作を繰り返した。

 何度も失敗し、何度も足が止まり、何度も余計なことを考えてしまう。そんな自分にいい加減嫌気が差しはじめ、疲労もピークに達した頃に、セシリアは“その”感覚を掴む。

 仮想標的が放つ弾幕を回避しながら、その射線の先に意識を伸ばす感覚を機体に通した瞬間、それに反応するようにビットが起動しその標的を打ち抜いたのだ。

 

「…………え?」

 

 初めて成功し、達成した自身の目標は存外達成感がないものであった。

 しかし、一度の成功の成果は大きかったのか、それからは失敗をしつつも着実に成功頻度を上げていき、今回のトーナメントで使用するには十分な精度に仕上げる。

 もっとも、その状態ではタッグに必要な僚機との連携が十分にできるほどの余裕がまだなかったが。

 しかし、そんなデメリットも相手が“一対一で戦える状況”を整えてくれたため、在ってないようなものである。

 

(流石専用機持ちの候補生。こっちの対応一つ一つにすぐに対応してくる。でも――――)

 

(いけませんわね。これは雑念ですわ。でも――――)

 

 お互いの手の内を曝しつつも、それに即座に対応、切り返すさまは派手さこそないものの激しさを増していく。

 

((――――とても楽しい))

 

 お互いに口元が緩んだことをハイパーセンサーを通じて見合う。

 それに気付いた二人は視線と銃弾のやり取りを通じて伝え合う。

 

(ついてこれる?)

 

(そちらはどう返すのかしら?)

 

 それは試合を経てお互いを研磨し合う生徒や選手の理想形の一つであった。

 お互いの全力をぶつけ、負けないように先へ、更に上へと行こうとする成長の兆しである。

 

「…………あの二人、すごいことになってない?」

 

「観客席に解析用の機器が無いのが悔やまれるね」

 

 観客席の中でこの二人の試合に釘付けになっているのは、二、三年の生徒と元選手でありながら、企業の開発畑に転科した者たちであった。

 彼女たちの中で渦巻くのは、二つの感情だ。

 一年のまだ前期でそこまでできるようになっている二人への感心と、自分たちにとって喉から手が出るほど欲しかった“好敵手”という存在がいることへの嫉妬である。

 ある意味で羨望の的になった二人は、そんなことは知らんとばかりに試合を進めていく。

 

(まだ!まだ!!まだ!!!まだ!!!!)

 

(もっと!もっと!!もっと!!!もっと!!!!)

 

 機体の稼働率と集中力が際限なく高まっていく一方で、逆に機体のシールドエネルギーはそれに比例するように大きくその値を減らしていく。

 いつまでも続くと思いそうになるその攻防はそれから数分後に終わりを迎える。

 昭弘がグシオンのシールドを展開し、“取っ手のついた大型の鈍器”にした状態で箒を殴り飛ばす。

 その衝撃で飛ばされそうになった瞬間、箒は月石社に注文していた隠し玉――――鉄扇を展開し、無防備になっている攻撃モーション後の昭弘の頭部に投げつける。

 それが直撃し、昭弘はその時点でシールドエネルギーが尽きる。

 それを見届け、着地が間に合わずアリーナの外壁に叩きつけられた箒の方もシールドエネルギーが尽きた。

 そして、試合の決着は簪とセシリアの二人に託された瞬間、同時にその二人の機体のシールドエネルギーがゼロになったことを、アリーナのモニターが告げる。

 

『試合終了。結果は両チーム引き分け』

 

 無機質なアナウンスが流れた後、数瞬の間を置いて両チームを称える拍手と歓声がアリーナを包んだ。

 

 

 

 

 

 





ハイ、というわけで試合終了です。

今回で大体の成長具合が分かったと思えていただければ幸いです。
……ぶっちゃけISキャラ同士の試合って書く意味あるのって?思ってしまってなんか短くなりました。

まぁ、次回は皆さんお待ちかねの三日月とワンサマーの試合になるかなぁと思います。……いえ、まぁ、予定では三日月の本番はその”後”ですけどね
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