時間があったらまた書き直ししようと思います。
今回は短めのお話。
Aクラス戦が明日に迫るFクラス。
クラス代表である雄二と共に、明久達Fクラス数名はAクラスへ敵情視察に向かっているはずだ。
「俺のダンクを見せてやるぜ!」
「おいバカ、こっちパスしろって!届かないの分かりきってんだろぉ!?」
「ちっ、あと3センチ足りない…!」
「30センチの間違いだろwwお前の身長でダンクとか笑わせんなww」
『確かに160後半の身長でダンクは無謀だよな』
「そんなの本人だって分かってるわよ、多分。でも試合じゃないし、ただの遊びならあれくらいふざけたっていいでしょ?」
『まぁあれはあれで楽しそうだし、見てて飽きないから良いけど』
そんな中、俺がいるのは体育館。
現在Eクラスの人間に混ざってバスケの真っ最中である。
予想外の参加人数の多さに今は待機状態だがそれも会話をする相手、Eクラス代表中林宏美がいるのでそう退屈はしない。
「ねぇ、それよりAクラスの…敵情視察?だっけ。坂本たちと一緒に行かなくて良かったの?」
『敵情視察って言っても出来ることなんて大した事無いからな。せいぜい明日の勝負内容を決めるだけだから大勢で行ったって意味ねーし、こうやって遊んでる方がずっと有意義だよ。宏美も含めて、Eクラスってホントにスポーツ大好きで助かった』
そもそもそんな些細な事のためにAクラスに付いていきたいとは思わない。
「…未だに名前で呼ばれるのは違和感があるのよね。昨日まで敵同士だったのよ?たった一日で名前呼びに変わるって、その切り替えの早さは何なのよ」
目線を合わせずにぶっきらぼうに言う宏美を見て彼女なりの照れ隠しだと理解するも、あえてからかう事はしなかった。
せっかく放課後にこうして遊びに誘ってもらえたのだ。
試召戦争が理由でEクラスとの間に変な禍根が残るのも嫌だったし、何より今はこの場をただ楽しみたかった。
『初対面からファーストネームで呼ぶのは、アメリカじゃ当たり前だったからな。それが身に付いてんだよ、俺は。【友達】ならなおさらだろ?嫌だって言うなら、苗字で呼ぶけど』
友達、というフレーズを強調する事で、試召戦争時に交わした約束を相手に思い出させる。
「友達、ね。…分かったわよ。でもね、私は日本人なの!ケイみたいにそんな急に名前で呼ばれたらちょっと戸惑うの、それぐらいは理解してよね!」
俺だって日本人だけど。
恥ずかしさが吹っ切れたのか開き直ったのかは定かではないが、名前で呼び返す宏美は端から見ていて微笑ましいものだった。
『そういうもんか?Fクラスの連中は普通に名前で呼んでくるけど』
「Fクラスはいろいろと普通の日本人ってやつから外れてるじゃない。むしろ普通を求める方がどうかしてるわ」
『おいおい、それって俺も含まれてんの?』
「当たり前でしょ?何処の世界に試召戦争中に友達になろうなんて言い出す奴がいるのよ」
その後は他愛も無い会話を互いに笑い合いながら続けていく。
『(…楽しいな)』
手で予備のボールをクルクルと翻弄させながら、純粋にそう思った。
思えばこの学校に来てから今まで、妙に気を張り続けていた気がする。
入学早々の、学園長との神経を削る会話。
所属するFクラスは好戦的で始業式の次の日に試召戦争を始める始末。
そのFクラスを一歩出れば、周りからはFクラスの劣等性のレッテルを貼り付けられる上に、極めつけの今回のAクラス戦。
鬱憤がたまった結果、高橋先生に僅かに素を晒してしまった件に関してはもう目も当てられない。
これしきで疲れたと言う気は勿論無い。
しかしこうやって自分の責務も何もかも忘れられる時間というのは、やはり大切で良いものだ。
『にしても、明日のAクラス戦はどうなんのかな』
ふと、教室で別れた明久や雄二達の事を考えた。
明日の試召戦争を有利な条件に持っていけるかは雄二の手腕次第だが、あいつなら恐らく何とかしてしまうんじゃないかという変な予感が俺の中にはある。
ただ、それでもFクラスが不利である事には変わらない。
そこをどう戦うかは…あいつら次第だろう。
「そうね…私達Eクラスならともかく、さすがにAクラス相手じゃ勝ち目なんて見るまでも無いわよね。姫路瑞希一人いたって、この戦力差はカバーしきれないわ」
『クラスから一人ずつ出して1対1とかいう勝負方法なら瑞希を出せば勝ち目は十分あるかもだけどな…さすがにそれは無いか』
そんなふざけた勝負は誰からも認められないし、他の無関係のクラスの恨みすら買いかねない。
もしそういった条件で勝利したとしても、それは瑞希の勝利であってFクラスの勝利とはほぼ無関係だからだ。
誰がどう見ても、たまたま瑞希を手に入れたFクラスのまぐれとしか映らない。
努力もせず学年最高クラスの設備を手に入れるFクラス。
そんな彼らを見て、他のクラスがどんな感情を抱くかは想像に難くない。
始業式早々、必要以上に敵を作る事はこれからのことを考えても得策じゃない事は少し考えればすぐ分かる。
雄二なら目先の事に囚われず、瑞希を使う際のこういったデメリットを理解していると思うから、そこらへんは大丈夫だろうけれど。
「姫路さんのいるFクラスに1対1の勝負を受け入れるなんて、Aクラスは絶対にしないでしょうね。全面的にぶつかれば100%勝てる相手だもの。そんなリスクを負う必要性も無い」
持っているボールを地面にバウンドさせて弄ぶ。
『そうだな…ただ、クラス同士の全面戦争をするまでもなく開かれた学力差だし、1対1じゃなくても少人数対決くらいは受け入れてくれるかもな』
「だとしてもAクラスの勝ちは揺るがないわ。なんなら賭けてみる?」
『冗談。Fクラスに賭ける奴がいる訳ねーだろ』
Eクラスに勝った余韻からかAクラスにも勝てるのではないかと変な希望を抱いている連中を少数見かけたが、俺にしてみれば笑い話でしかない。
ああも大きく開かれた点数差で勝利をモノに出来るというのなら、是非見せてもらいたいものだ。
「それもそうね。でも少しは勝ってみせるって気概でも見せてみなさいよ、ケイは他人事じゃないんだか、らっ」
話の最中の隙をつかれて、ボールが宏美の手に奪われた。どうりでさっきから目線がボールを見つめていたわけだ。
『つっても、他人ごとにしか思えねぇしな…』
実際俺の感覚ではもはや他人事に限りなく近い。
Aクラス設備を欲しいとも思わないし、Aクラスに勝ちたいという欲求も持っていない。
Fクラスの人間と俺の間にある温度差はこういった所から来るのだろう。
会話の途中で、試合に使われていたボールがこちらに転がって来た。
「おーい、喋ってないでお前らも一緒にやろーぜー!」
「人数とか別に何人でも良いからさーっ!」
ボールの勢いを殺して拾い上げると同時に掛かってくるお誘いの言葉。
『ちょうど良い。いい加減、体がうずうずしてたとこだ』
「奇遇ね、私もよ」
動きづらい制服の上着を脱ぎ、慣れた手つきでネクタイを無造作に外し、床に投げ捨てる。
『さぁーて。俺はスポーツだけはそう簡単に手加減しねぇぞ?』
「ふふ、何それ。まるで他の事では手加減してるみたいじゃない」
『人の揚げ足取んなっつーの。ほら、行くぞ』
こうして他にもたくさんの人間がゲームに参加した事により、本来5対5で行われるはずのバスケが二桁にも上る大人数で行われた。
ルールもガン無視の無茶苦茶なものだったが、生活面で様々な抑圧を強いられている俺にとっては、何よりも充実した時間だった。
なんという宏美ルート。
オリキャラを無駄に出したくないなーって思ってたらこの子しかEクラスって目立った子いないから…出張ってくるのも当然っちゃ当然ですが。